ミデアを襲っていた……もしくは俺達を誘き寄せる為にミデアをエサに使った敵を迎撃した後、俺達はすぐに東南アジア戦線の基地に向かった。
襲撃された辺りで一旦ミデアを着地させてから事情を説明してもよかったのだが、もしかしたら一度退いたと見せてまた攻撃をしてくるといった可能性を考えると、やはりここは安全を重視した方がいいという結論になったのだ。
個人的には、もし攻めてくるのならイフリート改を鹵獲するチャンスだと思わないでもなかったんだが……ブライトやマチルダにしてみれば、今はミデアの安全を第一に考えるべきだと、そういう事らしい。
その件については若干思うところがない訳でもなかったが、ブライトとマチルダが揃ってそう言うのならと、俺も大人しく基地に戻る事に同意したのだった。
そんな訳で、基地に到着するとマチルダは色々と手続きを終え、部下に荷物を下ろすように言った後で、改めてブライトの艦長室にやって来た。
ここにいるのは、ホワイトベース側からは、ブライト、リュウ、俺。
ミデア隊からは、マチルダと軍服を着崩した軍人が1人。
この軍人は、初めて見る顔だな。
こうしてマチルダが連れて来たとなると、どのような人物なのかは大体予想出来る。
恐らく、ミデアのコンテナに乗っていたMSのパイロット。
そう思うと、向こうも俺が自分を見ている事に気が付いたのだろう。
野生の獣という言葉が相応しいその人物は、俺と目が合うとニヤリとした笑みを向けてくる。
本人としては友好的な笑みなのかもしれないが、傍から見れば獲物を見つけた獰猛な肉食獣の如き笑みと言ってもいい。
「では、改めて。……ブライト中尉、今回は……いえ、今回もでしょうか。とにかく助かりました。ヤザン少尉達がいたおかげで何とか持ち堪える事が出来ていましたが、もしあのままホワイトベースが来るのが遅ければ、いずれミデアは撃墜されていたでしょうし」
ヤザン少尉、か。
マチルダがそう言いながら自分と一緒にいる男を見たという事は、この男がヤザンという人物なのだろう。
「いえ、マチルダ中尉達が無事で何よりです。特に今回はピクシーのビームライフルも持ってきてくれたという事なので、これでピクシーの戦力は更に増すでしょう」
「そうだな。正直なところ90mmサブマシンガンでは威力不足が目立っていたし。そういう意味でも、ミデアが来てくれて助かった。……それで、そっちのヤザンとかいうのはMSのパイロットという事でいいのか?」
「はい。ヤザン少尉」
「へいへい。ヤザン・ゲーブル少尉だ。俺と部下2人が、ホワイトベースに所属する事になったから、よろしく頼む」
ヤザン・ゲーブル、か。
こうして会った感じでは、軍人というよりは戦士といった印象だ。
ブライトはそんなヤザンの態度に微かに面白くなさそうな様子を示しているが、俺はヤザンのような性格はそんなに嫌いではない。
ネギま世界の拳闘士とか、ヤザンに似たような感じだしな。
シャドウミラーの中でも、ムラタとかがいる。
とはいえ、こうして獰猛な雰囲気を表に出すという辺り、ヤザンはまだ甘い。
ムラタも以前はそんな感じだったが、今では普段はそのような雰囲気を出していない。
言ってみれば、己の中にある獣性を飼い慣らした、と言うべきか。
……そのおかげで、ミステリアスで影を感じさせるナイスミドルといった印象を持っている奴が多いらしいが。
俺にとって不思議なのは、おじさん好きの明日菜があまりムラタに興味を持たないといったところか。
まぁ、それは結構前からの話だが。
「ヤザン少尉!」
ヤザンの言葉遣いをマチルダが注意するが、注意された方は全く気にした様子を見せていない。
この辺り、ヤザンにとってはいつもの事なのだろう。
連邦軍の中にもこういう奴がいたんだな。
そう思うと、思わず笑みが漏れる。
「ん?」
そんな俺の笑みに、ヤザンがどうかしたのか? といった様子で視線を向けてくるが、俺はそれに何でもないと首を横に振ってから口を開く。
「アクセル・アルマーだ。現在はホワイトベースの傭兵のようなことをしていると言えば、分かりやすいか?」
「ほう、あんたが?」
ヤザンが興味深そうな様子で俺を見てくる。
言葉からは、俺を軽んじているように思えるが、その目の光には強い好奇心があった。
「……握れるかい?」
そう言い、ヤザンは俺に手を出してくる。
握る? と疑問に思ったが、握手を求めているのと、握るかという言葉を考えれば、ヤザンが何を望んでいるのかは、考えるまでもなく明らかだった。
つまり、こういう場面でよくあるような握力勝負をしようというのだろう。
「あ」
そんなヤザンを見て、リュウが思わず声を上げる。
リュウは俺の身体能力がどのようなものなのか知っているからだろう。
勿論、俺の能力の全てを知っている訳ではないだろうが、それでも柔道の一件や、今までホワイトベースで一緒に行動してきた事で、ある程度は理解しているのだ。
それはブライトも同様で、ヤザンの挑戦的な態度に先程の不愉快そうな表情を消してあちゃあ……といった様子を見せていたが、マチルダはそんな2人の様子に気が付くよりも、ヤザンを窘める方を優先する。
「ヤザン少尉!」
「いや、構わない。それが望みなら、叶えてやろう。最初にどっちが上なのかを躾けるのは、野犬相手にも重要だしな」
「かっはははは! 野犬か。そうかもしれんな」
野犬と言われた事を怒るでもなく……それどころか喜んで受け入れ、改めて俺に握手を求めてくるヤザン。
それを握り、ヤザンは次第に力を込めてくる。
ヤザンにしてみれば、俺の外見から考えた場合はこの程度の力で十分だと思ったのかもしれない。
そんなヤザンに対し、俺も同じように次第に力を込めていく。
少しだけ驚きの表情が浮かんだのは、ヤザンにしてみればまさか俺が正面から受けて立つとは思っていなかった為か。
ともあれ、俺はヤザンの手を握り潰さないように、慎重に力を込めていく。
それは、言ってみれば生卵の黄身を握らないように持つ……といった作業に似ている。
少し力加減を誤れば、潰してしまいかねないような、そんな緊張感。
「ぐ……」
ヤザンの口から呻き声が出るが、それでもヤザンはギブアップしてこない。
獣染みた雰囲気を持っているのなら、俺との間にある力の差を理解してもよさそうなものなんだけどな。
そんな風に考えつつ、俺は慎重に力を込めていき……
「分かった、俺の負けだ! 離してくれ!」
十数秒が経ち、ヤザンの口からギブアップ宣言が出た。
「これで、どっちが上か分かっただろ?」
「ああ、分かったよ。あんたが上だ」
そう言いながらも、ヤザンの口に悔しそうな色はない。
寧ろ、先程よりも獰猛な笑みが浮かんですらいた。
ヤザンにしてみれば、俺が上なのかどうかというのは、そこまで重要な事でもないのだろう。
いや、俺が上だからこそ倒すべき相手であると、そう認識してもおかしくはない。
「すみません、アクセル代表」
そんなヤザンに代わって、マチルダが俺に向かって頭を下げてくる。
マチルダにしてみれば、自分が連れて来た相手がいきなり喧嘩を売ったようなものだから、そのように反応してもおかしくはない。
「気にするな。こっちはそこまで気にしてないし。何より、今のホワイトベースに戦力は多い方がいい。それも、腕利きのMSパイロットはな。……ヤザン、MSに乗っての実戦は?」
「セイバーフィッシュならともかく、MSはまだそんなにねえな。何しろ、突然呼び出されてMSの訓練を受けて、その中でも優秀な奴ってことで、俺とダンケル、ラムサスの3人がいきなりここに運ばれてきたんだし」
連邦軍の方でも、MSパイロットの訓練は順調に進んでいるらしい。
本来なら性格も軍人らしい者を選びたいのだが、今は性格よりも技量ってところか。
実際、その選択肢は間違っていない。
現在は何とか互角に戦っているとはいえ、ジオン軍のMSに連邦軍の通常兵器で立ち向かうのは……不可能ではないが、キルレシオ的な意味では非常に難しいのも事実なのだから。
「モルモット隊以外のMS隊も送り込んでくるのか。……厄介だな」
俺の呟きにブライトとリュウが同意し、マチルダも憂いの表情を浮かべる。
それはつまり、ユーラシア大陸でゴップやレビルがホワイトベースに任せる依頼というのは、現有のホワイトベース隊の戦力だけでは対処するのが難しいと思われている事を意味している。
だが、今のホワイトベース隊が持つ戦力は、正直なところこのUC世界全体で見ても有数のものだ。
にも関わらず、更に追加で戦力を送ってくるとなると……
「今まで以上の激戦区は間違いないな。それこそ、ラサ基地攻略とは比べものにならない程に」
俺の口から出た呟きに、ブライトとリュウ、マチルダの3人が同意する。
激戦区になるだろう場所を攻めるからこそ、ホワイトベースに更に戦力を集めたと言われれば、それは決して間違いではない。
「へへっ、激戦区か。面白いな」
ブライト達が深刻な表情をしているのとは裏腹に、ヤザンは寧ろ望むところだといったように獰猛な笑みを浮かべる。
激戦区と呼ばれるだろう戦いがそう遠くない場所に迫っているのに、それでも戦意を失わない……どころか、寧ろ戦意を滾らせているという点では、ヤザンがこの部隊に派遣されてきた理由が分かるな。
とはいえ、何だか問題児を押しつけられたという気がしないでもないが。
それでも文句を言えないのは、ミデアのコンテナからドップを撃墜していた時の腕前がなかなかのものだったからだろう。
また、ヤザンの雰囲気から考えても、腕は悪くないと思われる。
実際にどれだけの技量を持っているのか……それを確認する必要もあるが。
「本当にそんな激戦区になるかどうかは分からないが、まずはヤザン達の技量を確認するのが先だな。……ようやく最近はモルモット隊との連携も上手くいくようになっていたのに、ここで更に追加というのは、正直微妙なところだが」
そう言いつつも、連携の確認という意味ではぶっちゃけ俺はそこまで関わっていなかったりする。
ピクシーという、現状では地上用としては最高峰の性能を持つMSに、幾多もの戦場を潜り抜けてきた俺の操縦能力、そして連邦軍に所属している訳でもない傭兵的な存在。
それらの理由から、基本的に俺は遊軍的な役割を持つ事が多いのだ。
そういう訳で、俺は連携に全く関わらない……訳ではないが、他の面々に比べると連携について考える必要がそこまで多くないのは間違いない。
その辺は、アムロやユウ達に頑張って貰うとしよう。
「ともあれ、アクセル。俺とMSで戦ってみないか?」
「あー……俺と戦うよりも前に、ホワイトベース隊のMSパイロット達と戦っておいた方がいいと思うぞ。ヤザンの技量を侮る訳じゃないが、ホワイトベースのMSパイロットは技量が高い奴が多いし」
ヤザンが具体的にどれだけの能力を持っているのかというのは、まだ分からない。
だが、MSの操縦訓練を終えてすぐにホワイトベースに送られてきたという事は、実戦らしい実戦は経験していない……そこまでいかなくても、数は少ないと思ってもいい。
だとすれば、恐らく技量的な問題ではホワイトベースにいるMSパイロットと戦っても勝つのは難しいと思う。
その辺は本人の才能もあるので、実際にどれだけの強さを誇るのかは、戦ってみないと分からないだろうが。
そんな訳でヤザンには一度アムロやユウを始めとする面々とシミュレータでいいので、戦って貰う必要がある。
あのミデアのコンテナの中の戦いで……もしくは、数少ない実戦経験で、自分達の力を過信するような事になっては、ちょっと洒落にならないし。
であれば、それこそ激戦区になるだろう場所の攻略――まだ確実ではないが――をする時に、妙な暴走をされても困る。
そういう意味で……言ってみれば、一度鼻っ柱をへし折る的な真似をして貰う必要があった。
また、そうやってシミュレータで訓練をして、もし万が一、億が一にでもヤザンが勝ったりしたら、それはそれで面白い事になると思うが。
そう簡単にそんな事にはならないと思うけど。
ぶっちゃけた話、この世界の主人公で高いニュータイプ能力を持つアムロと半ば互角に戦えるユウという存在が色々な意味で異常なだけで、そんなイレギュラーな人物は1人で十分だ。
というか、アムロと互角に戦えるとなると、恐らくはユウも原作に出て来る人物の1人なんだとは思うが……ブルーディスティニーとかを考えると確実に。
「ともあれ、だ。ヤザンは部下と一緒に格納庫に行って、シミュレータでいいから模擬戦を挑んでみるといい。その結果で、お前達がどのように扱われるのかってのがはっきりすると思うし。……それとも、負けるのが怖いか?」
「はっ! 安い挑発だな。けどまぁ、アクセルがそこまで言うんだ。戦わせて貰うとしようかね。ただし、俺が模擬戦で全勝したら、次はアクセルと戦わせて貰うからな! それでいいよな!」
「ああ、それでいい」
出来ればな、と最後に付け加えたかったが、それは言わない。
だが、ヤザンは野生の勘か何かで俺の言いたい事を理解したのか、やる気を漲らせて艦長室から足音も荒く立ち去るのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:580
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1500