「初めまして、アクセル代表、ブライト中尉。私がこの基地を任されている、イーサン・ライヤー大佐だ」
そう言い、イーサンはにこやかな笑みを浮かべて握手を求めてくる。
ブライトは一瞬驚きの表情を浮かべ……それを強引に隠して、敬礼するかどうか迷った後で、握手をした。
ブライトも、当然のようにリュウからイーサンがどのような人物なのかは聞いていたのだろうが、それとは全く違う印象だったのだろう。
目の前でにこやかに笑みを浮かべているイーサンを見れば、そのように思ってもおかしくはない。
だが……俺の目から見れば、イーサンの浮かべている笑みは張り付けたような笑みという表現が相応しい、そんな笑みだ。
少なくても、その笑みの後ろには何らかの表には出せないような顔があるのは、ほぼ間違いないと思われた。
とはいえ、連邦軍という巨大な組織に所属している者としては、それはある意味で普通かもしれないが。
俺達と親しいゴップやレビルだって、組織のトップにいる以上は後ろ暗い事の1つや2つはあってもおかしくないし。
「ルナ・ジオン……いや、正確にはシャドウミラーを率いているアクセル・アルマーだ」
「一国の代表が戦場に出るのは危険なのでは?」
そう告げるイーサンだが、俺を心配するような事を口にしつつ、俺の姿を怪しむ様子はない。
現在の俺は、10代半ばの姿となっており、一般的に知られている……例えば、ルナ・ジオンの建国宣言でセイラの隣にいた20代の姿ではない。
にも関わらず、全く慌てた様子もなく俺をアクセルだと認識するのは……レビルやゴップから情報を貰っているのか?
それとも、それ以外の場所から情報を得たという可能性もあるか。
何だかんだと、結局俺はこの姿で活動しているし。
そうなると、何らかの手段でその辺りの情報を得てもおかしくはない、のか?
とはいえ、大佐という階級でそのような事が出来るのかと言われれば、また疑問ではあるのだが。
「その辺は心配ない。俺はこう見えて幾つも戦場を潜り抜けてきたんだ。この戦争で死ぬような真似はそうそうない」
実際には魔法や気といったような攻撃でなければ、俺にダメージを与えるような事は出来ないのだが……その辺りは、イーサンには言わない方がいいだろう。
言えば、それこそ俺を便利な戦力として使いそうだし。
「そうですか」
イーサンの方も、特にそれ以上突っ込んでくるような事はない。
ここで何か下手な事を言った場合、藪蛇になると理解しているのだろう。
「ああ。そうだ。それで、俺達はモルモット隊とこの基地で合流する予定になっていた筈なんだが……そっちはどうなっている? 何でも、ジオン軍のMS部隊とぶつかって被害を受けたらしいが」
「被害と言っても、そこまで大きなものではないので、心配はいりませんよ。この基地にストックしてある予備部品である程度はどうにかなります」
「そうなのですか? 私が聞いた話では、モルモット隊が使っているMSはこちらで使っているMSと違う機種だという話でしたが……」
「ブライト中尉、君の言葉は正しい。だが、違う機種であるとはいえ、ルーツとしてはそう遠く離れてはいないのだ。であれば、共通する部品があってもおかしくはないだろう? ……もっとも、部品のストックはあまりないので、頻繁に今回のような事になると困ってしまうが」
ストックが少ない、か。
なるほど。その辺りを突いて、こちらに恩を売ってくる訳か。
さて、どうしたものやら。
「モルモット隊のMSの部品そのものは、幸いにしてある程度余裕のある場所だったのだが……それでも、ただでさえ少ないMSの部品を使う事になったのは、痛い」
「つまり、そのMSの部品を使わせる分、東南アジア戦線の戦力として戦うのが代価だと?」
「……」
まさか、単刀直入に言われるとは思っていなかったのか、イーサンは数秒沈黙を保つ。
とはいえ、何らかの理由をつけてこちらを戦力として使うというのは分かっていた以上、今回の一件はそこまで驚くべき事ではない。
元々こっちはゴップからの依頼で大きな戦いに参加する事になる以上、モルモット隊との連携をしっかりとしておく必要があるので、実はイーサンからの提案は願ったり叶ったりというところだったりする。
とはいえ、向こうのペースのままだと色々と面倒な事になる以上、こちらとしても一矢報いる必要がある。
「取りあえず、そっちの戦力として動くのに、俺は異論はない。ただ、あくまでもホワイトベースの艦長はブライトだから、ブライトがいいと言えばの話だがな」
その言葉に、イーサンの口元が僅かに緩む。
うん、こうして感情を完全に隠しきれないところが、イーサンの甘いところだよな。
レビルに及ばない理由か。
とはいえ、ここで一矢報いる為の矢を放っておくか。
「ただし、ホワイトベースを戦力として使うのなら、レビルから許可を貰っておけよ。モルモット隊はどうか分からないが、ホワイトベースはレビル直轄の部隊だし」
「なっ!?」
俺の口から出た言葉に、イーサンが驚愕の声を上げる。
レビルに強い対抗心を持っているイーサンとしては、そのレビルに頭を下げるような事になるのは内心とても穏やかではいられない。
俺達に貸しを作るつもりが、レビルに借りを作る事になってしまうのだから、イーサンにしてみれば洒落にならない出来事だ。
「この東南アジア戦線の戦いの天秤を連邦軍に傾けられるんだ。レビルに……大将に頭を下げるというのは、そこまでおかしな話ではないと思うが?」
「それは……」
実際に間違いではないのだから、イーサンも反論出来ない。
ここでレビルに頭を下げるのを拒否するとなると、それこそ何故だ? と追求される事になりかねなかった。
「その代わり、俺達がこの東南アジア戦線を連邦軍が有利になるようにするんだから、そこまで悪い話じゃないと思うんだがな」
「……少し、考えさせて欲しい」
その言葉を最後に、イーサンとの面談は終了となる。
さて、イーサンはどう出るか。
あくまでも自分のプライドを重要視して、レビルに頭を下げるような真似をしないか。
それとも、この東南アジア戦線で手柄を上げる為にレビルに頭を下げるか。
正直なところ、結果的に見れば後者の方が最良の選択だとは思うんだけどな。
ただ、イーサンのプライドがそれを許容するかどうかというのは、また別の話だろう。
「アクセル、何だってあんな風に挑発するような事を言ったんだ?」
ホワイトベースに戻る途中で、不意にブライトがそう声を掛けてくる。
ブライトにしてみれば、俺が口にしたイーサンへの言葉は、挑発でしかなかったのだろう。
まぁ、実際に挑発だったのは間違いのない事実なのだが。
ともあれ、今回の一件に関してはこっちとしても色々と思うところがある訳で……
「正直な話、イーサンが信用出来なかったというのが大きいな」
「信用出来ない? レビル将軍に対抗心を持っているという話だったが、穏やかな性格をしているように見えたが?」
ブライトの目から見れば、そんな風に思えたのだろう。
だが、俺はあの手の奴をよく知っている。
自分の目的……手柄の為なら、平気で部下を使い捨てにするような奴だ。
もっとも、俺が知ってる中ではそこまで酷くはない様子ではあったが。
とはいえ、イーサンの性格を考えれば、俺達を捨て石として使う可能性は高い。
イーサンにしてみれば、俺達がここで戦死すれば、ジオン軍に被害を与えつつ、レビル直轄の部隊はそこまでの強さを持っていないという事を証明する事になるのだから。
だが、レビルに話を通した上で俺達を使うとすれば、そんな真似は出来なくなる。
もしそれが知られるような事になれば、イーサン自身の破滅なのだから。
対抗心から、レビルが破滅をするのなら、あるいは一か八かといった事をやってもおかしくはないが、レビルの直轄の部隊……言ってみれば、レビルの手足を道連れにしての自分の破滅というのは、決してイーサンにとっては認められないだろう。
そうなれば、余程の事がなければこっちの思い通りに動いてくれると思うんだが。
「うん? 何だ?」
格納庫に向かっている途中で、ふとブライトがそんな声を上げる。
ちなみに移動に関してはブライトが車を運転していた。
……軍艦の艦長が運転手をするというのは、正直どうかと思わないでもないんだが。
ただ、ブライトに言わせれば俺に運転させるよりはマシという事らしい。
俺が運転するのを、そこまで気にする必要はないと思うんだが。
ともあれ、基地……とは言っても、この戦争中に臨時で作られた基地だけに、全てがコンクリートで固められているという訳ではなく、土が剥き出しになっている所も多い。
言ってみれば、必要最低限の場所だけをどうにかしつらえたといったところか。
そんな場所を走っていたのだが、軍用車だからか車のクッションが弱く、土が剥き出しになっている場所ではかなり跳ねる。
ともあれ、そんな場所を走っていたブライトが、ふと声を上げて見ている視線の先では……
「喧嘩か」
正確には、喧嘩とは呼べない。
ドレッドヘアの男が、3人の連邦軍の兵士に一方的に攻撃されているのだから。
ドレッドヘアの男は、身体付きも軍人らしく逞しい。
それに比べると、3人の方は……痩せ型と呼ぶべき連中や女。
3人の中で、1人はドレッドヘアの男には及ばないまでも、軍人らしい身体付きをしていた。
そうして見る間に近づいてくる光景を見ていると、やがて車が停まる。
当然のように、車を停めたのはブライトだ。
何をしようとしているのかというのは、それこそ考えるまでもなく明らかだろう。
……生真面目なブライトだけに、喧嘩……いや、一方的な暴行を見すごすことは出来なかったという事か。
さて、この場合俺はどうすればいいのか。
少しだけそう思ったが、ブライトが殴られるような事にでもなれば、色々と面倒な事になりかねない。
怪我の治療で、無駄な時間が必要となるのは、今の状況では面白くなかった。
ああ、でもこの基地の兵士達がブライトに暴行を加えたとして、イーサンに貸しを作る事は出来るのか。
それが、殆ど役に立たないような、そんな貸しではあっても。
「止めないか! 何をしている!」
周囲に響くブライトの声。
暴行現場を見ていた周囲の見物客達は、いきなりの無粋な乱入者に不満の視線を向ける。
これで、ブライトがもっと迫力のある外見をしていたのならまだしも、ブライトはまだ若い。
それこそ、本来ならまだ士官学校に通っている年齢なのだ。
そしてここはジオン軍との戦いの最前線で、そこで戦っている兵士達にとって、階級だけは立派であっても若造のブライトは決して尊敬される事はない。
寧ろ、下士官のリュウの方がこういう場合は相応しかっただろう。
「何ですか、中尉殿。俺達はレクリエーションをやってるだけなんですが? 無粋な真似は遠慮してくれると助かります」
そう言ったのは、3人組の中で一番体格のいい男。
言葉こそ丁寧だが、そこにあるのは嘲笑の色に近い。
「貴様等、何をしているのか。1人をよってたかって暴行するなど、恥を知れ!」
「暴行ですか? さっきも言ったように、これはあくまでもレクリエーションです。中尉殿には分からないかもしれませんが、前線では珍しくもないんですよ」
「ひゃひゃひゃ。そうそう、レクリエーション、レクリエーション」
痩せている男がそう言い、女の方はそれに同意するように笑みを浮かべる。
「サンダース軍曹!」
そんな中、1人の男が地面に膝を突いた男……サンダース軍曹と言うらしいが、その男に向かって駆け寄っていく。
階級章を見る限り、どうやら少尉らしい。
その少尉は、サンダースが無事――重傷を負っていないという意味で――であるのを知ると、安堵する。
そして、サンダースを相手に殴る蹴るをしていた相手を睨み付けた。
サンダースが口の中で『俺は死神じゃねえ』とか言ってる言葉が聞こえてきたが、それはあくまでも俺に混沌精霊としての五感があるからこその事だ。
実際、サンダースを助けに来た少尉の男の耳にも、その言葉が入ってるようには思えなかったし。
さて、取りあえずこのままだと騒ぎが広がるだけだし、ここはとっとと片付けた方がいい。
車を降りてブライトの側まで移動すると、サンダースを殴りまくっていた3人の軍人に向かって口を開く。
「お前達、所属を言え。後でイーサン大佐に報告する必要があるからな」
『っ!?』
俺の言葉に、3人が……いや、周囲で様子を見ていた他の連中も、驚愕の視線を向けてくる。
まさか、中尉のブライトと私服の俺がこの基地の司令官であるイーサンと繋がりがあるとは思っていなかったのだろう。
信じられないといった視線をこっちに向けてくるが……危険だと思ったのか、リーダー格の男が他の2人に合図をすると、その場から素早く立ち去っていったのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469