「ギニアス様、この数値を見てください!」
「ほう、素晴らしい。……アイナとアプサラスの負荷はどのような具合だ?」
「アイナ様の心拍数は問題ありません。アプサラスの方も問題ないかと」
「ふむ、なら数値をもう少し上げてみるか」
そんな会話が聞こえてくる中で、俺は空中を飛び回っているアプサラスを見る。
綾子とのデートが終了してから数日、今日は以前ギニアスに言った通り、アプサラスの試験をする為に影のゲートを使ってオーストラリアにやって来ていた。
幸い……という表現がどうかは分からないが、ハワイからオーストラリアまではそこまで距離がない。
それに、オーストラリアはコロニー落としの影響もあって、かなり複雑な状況になっているしな。
コロニー落としをしたのはジオン軍で、当然のようにオーストラリアに住む人々にしてみれば、ジオン軍は憎むべき敵だ。
だが、同時に今ここで生き延びるにはジオン軍からの援助物資がなければ不可能……とは言わないが、非常に厳しいのも事実な訳で、ジオン軍に頼るしかない。
そんな複雑な気持ちを抱き、それでも生き延びる為にジオン軍と友好的な関係が築かれていた。
もっとも、それはあくまでも表向きのことで、本心でどう思っているのかというのは全く分からないのだが。
完全にジオン軍のマッチポンプだよな、これ。
それが分かっていても、この地の住人はジオン軍に頼るしかないのだが。
連邦軍の方も、色々と行動を起こしてはいるのだが……このオーストラリアという点では、やはりまだジオン軍が有利らしい。
「それにしても……シドニー湾、か」
以前宇宙から地球を見た時の事を思い出す。
ジャブローを狙ったコロニー落としにより、オーストラリアにあったシドニーという都市は、ほぼ完全に消滅してしまった。
破壊された場所に海水が流れ込み、今ではシドニー湾と呼ばれているらしい。
アクセル・アルマーとして生まれてから色々な戦いをくぐり抜けてきたが、ここまで大規模な破壊兵器というのは、ちょっと珍しい。
「アクセル代表!」
シドニー湾について考えていると、技術者の1人が俺を呼んでいるのが分かった。
一瞬ジオン軍か連邦軍に見つかったのか? と思ったが、その顔に浮かんでいるのは嬉しそうな笑みであるのを見ると、違ったのだろう。
「どうした?」
「はい、予定していた実験の半数が無事に完了しました。これから次の段階に入ります」
どうやら、わざわざその辺について説明に来たらしい。
それだけ喜んでいるからこその話なんだろうが。
「そうか、それは何よりだ。この前のアプサラスの試験で色々と改修する必要があった所は、無事に改修されたのか?」
サハラ砂漠でメガ粒子砲や、その他諸々の試験をやった結果、大幅設計見直し……という程ではないが、小さな改修場所がそれなりに出て来たという話を、ギニアスから聞いた。
あの日からまだそんなに時間が経っていないだけに、どうなのかと思ったのだが……
俺に話し掛けてきた男は、その言葉に満面の笑みを浮かべる。
「勿論です。あの日の実験のおかげで、今のアプサラスの完成度はより高くなっています。ギニアス様も非常に喜んでいましたよ」
嘘やお世辞という訳ではなく、どうやらこれは本気で言ってるらしい。
なら、俺からは特に何も言う事はない。
「それに、今日の試験でもまだ幾つか改修場所が出て来てますし……これはⅢのフィードバックにかなり役立つかと」
「そこまでか?」
「はい。正直なところ、ここまで潤沢に物資を用意して貰ったからこそ出来る事なんですけどね」
「アプサラス計画は、俺にとっても非常に興味深い計画だしな。物資不足、資金不足でアプサラスの開発が滞るなんて真似は許容出来ない」
アプサラス計画は、シャドウミラーだけではなくルナ・ジオンに対しても大きな福音をもたらす事になるのは間違いないだろう。
……もっとも、シャドウミラーならともかく、ルナ・ジオン軍として考えると、コストが高すぎて量産するのは難しいだろうが。
そうなると、コストが高いだけに数少ないアプサラスが出来るだけ被害を受けないように高い防御性能、もしくは運動性が必要になる。
そうなると、ルナ・チタニウムか?
いや、ヅダの関節部分に使っただけで、コストが跳ね上がった代物だ。
ガンダムのように、ルナ・チタニウムで装甲を作るなんて事になれば……それも、アプサラスのような巨体の全てをルナ・チタニウム製にするとなると、そのコストは洒落にならない。
シャドウミラーなら出せない事もないが……ただ、ルナ・チタニウムで防げるのは実弾だけなんだよな。
ガンダムやガンキャノンが装備しているようなビームライフルを相手にするとなると、折角の装甲も意味をなさないのは間違いのない事実だった。
であれば、わざわざルナ・チタニウムにする必要はない、か?
その辺りは何だかんだで結構迷うところなのは事実だ。
「なぁ、アプサラスは敵の攻撃を食らった時は、かなり脆いよな?」
「ええ、まぁ……」
突然の俺の言葉に、技術者の男は答えにくそうにしながらも、間違いなく頷く。
だが、そんな俺に対し、技術者はすぐに言葉を続ける。
「ですが、基本的にアプサラスは遠距離……それも空中からメガ粒子砲を撃つという運用方法を想定して開発されたMAなので、敵の攻撃を食らうというのは想定されていません。それこそ、敵の攻撃を食らうよりも前に、先制攻撃で敵に壊滅的な被害を与えるという感じです。それに、例え敵が接近してきても、護衛のMSを配置予定ですし」
そう言えば、グフカスタムの件もあったか。
グフカスタムをダラニに乗せれば、アプサラスの護衛という意味では問題はない。
「護衛ありきのMAか。……将来的には、アプサラスだけでどうにかなって欲しいんだけどな」
「ギニアス様もそうしたいと考えてはいるようなんですがね」
俺の言葉に、技術者がそう告げる。
なるほど。ギニアスにとっても、出来ればアプサラスだけで戦力として完結させたいとは思っているのか。
そうなると、試作機である今のアプサラスⅡでは無理でも、Ⅲになった時は近接防御用の何らかの武装を搭載する可能性があってもおかしくはない。
とはいえ、それでも問題はある。
それは、アプサラスのパイロットがアイナだという事だ。
パイロットがガトーやノリスのような者達であれば、敵を倒すのに躊躇はしないだろう。
だが、そのパイロットがアイナとなると……その性格を考えれば、近接戦闘で上手く対処出来るかどうかは、難しい。
これが、メガ粒子砲を撃つだけなら、遠距離からの攻撃という事でストレスはない……訳じゃないが、近接戦闘をするよりは少ないのだが。
言ってみれば、ミサイルの発射スイッチを押すのと、実際に相手が見える位置で重火器の類を使った戦闘になる時は、前者が圧倒的にストレスが少ないといったところか。
そういう風に考えると、アイナのアプサラスはメガ粒子砲を使った遠距離射撃に徹底させて、近接防御はダラニに乗ったMSに任せるという選択肢も、ない訳ではない。
にしても、アプサラスの警護か。……いっそ、ダラニに乗ったMSではなく、空を飛べるMSを用意するか?
ぱっと思いつくのは、エアリーズ。
そもそも、エアリーズはリーオーをベースとして開発された機体だ。
若干違うが、ザクⅡJ型をベースにグフが開発されたのと、似たようなものか?
「アイナの性格を考えると、アプサラスⅢでは近接用の武装は装備しない方がいいかもしれないな?」
「え? それだと、さっきまでと言ってる事が……」
「ああ。それは俺も分かっている。けど、アプサラスのパイロットはアイナなんだろ? だとすると、近接用の武器があっても使いこなせるとは思えない。場合によっては、それがピンチの原因になる可能性もある」
武器がなければ、敵が近づいてきたら逃げの一択だろう。
だが、武器があるとなると、逃げるか攻撃するかで迷ってしまい、その隙を敵に突かれる可能性もあった。
偵察機の中でも、武装が用意されていない機体があるというのは、その辺りの理由が大きい。
ましてや、それで攻撃された時にミサイルの類があれば、誘爆するという可能性も十分にあった。
そう説明すると、技術者は難しそうな表情を浮かべる。
もしアプサラスのパイロットが、アイナではなく普通の……しっかりとした訓練を受けたパイロットだったら、その辺はもう少し話が違ったのだろうが。
いっそ、パイロットを変える……いや、サハリン家の復興の為に、そして何よりギニアスがここまで進めてきたアプサラス計画である以上、ここでアイナをパイロットから外すのをギニアスが許容するのは難しいだろう。
「そうなると、難しいか」
「結局どうなるんでしょう?」
技術者にしてみれば、いきなり俺が妙な事を言い始め、そして考え始めたようにも思えたのだろう。
不安が混ざった視線をこちらに向けてくる。
「今までアプサラス計画は順調に進んできたけど、これから……実戦で使うとなると、難しい事になりそうだと思ってな」
「……やはりアイナ様が?」
「それが一番大きいのは事実だ」
俺は、それこそこれまで数えるのも馬鹿らしくなるくらいの戦場を潜り抜けてきた。
だからこそ、戦場で戦うのを躊躇しない……言ってみれば、人を殺すという行為にすら慣れてしまっているが、アイナは別だ。
ギニアスの為にという事でアプサラスのパイロットを引き受けたのだろうし、純粋な操縦技術という一点においては、それなりに……ギニアスを満足させるだけの操縦技術は持っている。
だが、それはあくまでも訓練での事であって、言ってみれば士官学校を卒業したばかりの新米と変わらない。
ましてや、アイナは基本的に優しい性格をしており、人を殺すという行為そのものには忌避感を覚える可能性が高い。
とはいえ、今の状況を考えるとその優しさは甘さとなり、結果としてアイナ本人を危険に陥れる可能性が高いのだが。
「出来れば、アイナじゃなくて別のパイロットにアプサラスの操縦を任せるというのが、一番いいんだけどな」
「……それだと、ギニアス様が自分で操縦すると言いかねないのですが」
少し困った様子の技術者。
以前まで……ジオン公国にいた時のギニアスであれば、自分がMAに乗るという考えは抱かなかっただろう。
そもそも、病気でとてもではないがMAに乗れなかった筈だ。
いや、全く乗れないという訳ではないだろうが、もしアプサラスに乗っても、操縦の際に発するGによって骨折したりとか、そんな風になっていてもおかしくはない。
だが、今は違う。
今のギニアスは健康体で、ある程度身体も鍛えてる――それでも軍人には遠く及ばないが――らしい。
であれば、確かに今のギニアスならアプサラスに乗っても、問題はない。
もっとも、アプサラスの開発者だからといって、MAを上手く操縦出来るかどうかとなると、それはまた話が別なのだろうが。
「ギニアスの技術力は、ルナ・ジオンの宝の1つだしな」
それは決してお世辞でも何でもない、俺の素直な思いだ。
ルナ・ジオンではジオニック、ツィマッド、MIP、それ以外にも3大兵器メーカー程ではないにしろ、様々な会社からやってきた技術者達、そしてジオン軍の中で働いていたメカニックや技術者、研究者、更には連邦からやってきた者達までをも組み込んで、ディアナという国営の兵器メーカーを作った。
そんな技術者達の集まりの中でも、ギニアスは恐らく……いや、確実に頭1つ分、もしくはそれ以上に高い能力を持っている技術者だ。
……だからこそ、出来ればギニアスにはいずれディアナを背負って立って欲しいと思っている。
「ありがとうございます」
俺の言葉に嘘はないと判断したのだろう。
ギニアスの部下の技術者は、嬉しそうに満面の笑みを浮かべて頭を下げてくる。
何気に、ギニアスって部下に慕われているよな。
部下としても、ギニアスの能力は十分に理解しているからってところか。
「取りあえず、お前はアプサラスの方に集中してくれ。アプサラスをどうにかするにしても、この実験を成功させないと意味はないだろうし。ましてや、今日の件でも色々と改修場所は出て来るんだろ?」
「それは……はい、多分」
出来れば、もう改修する場所はありませんとか言って欲しかったんだが……
それだけアプサラスの開発は難しいという事か。
そもそもの話、MAと分類はされていても、そのMAというのは基本的にMS以外の……人型以外の兵器といった分類だ。
当然そうなれば、MAとは言っても開発に難航するのは事実な訳で……
「色々と大変だろうが、頑張ってくれ。物資の方は、可能な限りこっちでも用意するから」
そう告げ、俺はミノフスキークラフトで空を飛んでいるアプサラスに視線を向けるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469