俺に突然感謝の言葉を口にしたボルクだったが、その光景は色々と目立っていた事もあったので、取りあえず場所を移す事にする。
最初はホワイトベースにある俺の部屋で話そうかとも思ったのだが、何となくそんな気分になれず……ホワイトベースの修理をするメカニック達が、部屋の機能――電気とか――を一時的に停止する、と言われたのも大きい。
ともあれ、そんな訳でホワイトベースの修理とかの邪魔にならない場所として、外で話を聞く事になった。
「ほら、取りあえずこれでも飲め」
「え?」
空間倉庫から取り出した紅茶に、目を大きく開くボルク。
鋭い目つきをしているボルクだったが、今のような表情を浮かべると、それも台無しだな。
ともあれ、ボルクは俺の名前は知っていても、その能力とかまでは知らなかったらしい。
受け取った缶紅茶と俺を何度も見ている。
「どうした? 俺の名前を知ってるって事は、俺が魔法使いだって事も知ってるんじゃないのか?」
まぁ、空間倉庫は実際には魔法ではないんだが……その辺について知らない奴は、意味不明の現象という事で普通に魔法で信じたりする。
実際、ボルクもそんな俺の言葉を素直に信じ、納得した様子で『ご馳走になります』と言いながら、缶紅茶のプルタブを開ける。
俺もまた同じようにしながら、紅茶を飲む。
アップルティーというのは、缶紅茶でもそこそこ珍しい。
ミルクティーなら缶紅茶でもそれなりにメジャーなんだけどな。
そうしてお互いに喉を潤してから、俺は改めてボルクに尋ねる。
「それで? 何だって急に俺に感謝したんだ? この世界には色々と干渉してるから、それが理由で感謝されるって事は結構あるけど」
特に月……それもクレイドルに住んでいる者は、その住み心地の良さからセイラと同様俺に感謝する者も多い。
連邦軍だと強硬派を叩き潰したことよる感謝か?
そう思っていると、ボルクが口を開く。
「いえ。実は今回の大規模なミデア隊を率いるのは、本来ならマチルダ中尉ではなく、自分の上官たる、ノクト少佐の筈でした」
「筈でしたってことは……それに実際に、マチルダが来たという事は、ノクトってのは何か問題あったのか?」
「はい」
俺の言葉に、ボルクは即座に頷く。
それこそ一瞬の躊躇も何もない様子で頷いたのを見ると、そのノクトという人物に余程思うところがあったのだろう。
「あー……うん、そうか。取りあえずその理由は聞いた方がいいのか?」
「そうですね。聞いてもあまり気分の良い話ではないので、聞かない方がいいかと。ただ、ノクト少佐はアクセル代表のおかげで現在は軍刑務所にいて、軍事裁判が開かれるのを待っている、とだけ覚えて貰えれば」
うん、いやまぁ……そこだけを聞けば、明らかに色々と問題のある人物なのは間違いないよな。
俺は会った事もないが、そのノクトという人物には哀れさを覚える。けど……
「俺のおかげ?」
そう、疑問を抱く。
色々とこの世界に介入している自覚はあるが、それでも今回の一件に関しては特に何かした覚えがない。
そもそも、ノクトとやらがいたのは地上で、地球上における月の影響力はそこまで強くはない。
宇宙でなら、かなりの影響力を持っているという自覚があるのだが。
「はい。アクセル代表と……いえ、正確には月と強硬派の一件で地球にいる軍人も色々と調べられ、その結果ノクト少佐が今までやってきた様々な悪事が白日の下に晒されて、その結果が……」
「なるほど」
そこまで言われれば、俺にもボルクが何を言っているのか理解する。
連邦軍にとって、ルナツーで大きな影響力を持っていた強硬派というのは、非常に厄介な存在だった。
その強硬派がルナ・ジオン軍によって処分されたのを切っ掛けに、地上に残っている強硬派やら、それとは関係がなくても後ろ暗い事がある相手を調べたと、そういう訳なのだろう。
そうなると、連邦軍の中で結構な数の膿が出されたような感じか?
そこまでを狙っていた訳ではなかったが、それでも今回の一件を考えると、この結果は良かったのか、悪かったのか。……ホワイトベース隊の事を思えば、間違いなく良かったのか。
もしそんな奴がマチルダの代わりにミデア隊を率いてきたりしたとなると、間違いなく散々な目に遭っていたのは間違いないのだから。
それこそ、ミデア隊が襲われていた時に、俺にピクシーを使わせるといった判断が出来ていたのかどうかも怪しい。
……いや、寧ろ自分の身の安全の為にピクシーを使わせるような真似をしたかもしれないな。
「今まで、何人もの軍人が奴の私利私欲のために命を落として来ました。それを前もって止める事が出来なかったのが悔しいですが、それでもアクセル代表のお陰で、これ以上は無為に死ぬ軍人がいなくなったのは連邦軍の軍人として嬉しく思います」
「なるほど。それで感謝か」
軍人としては、そういう男は許容出来ないのだろう。
とはいえ、別の組織に所属している者にしてみれば、そのような相手が敵にいるというのは情報を引き出したりなんなりといったことが出来るので、非常にありがたかったりするのだが。
連邦軍程の巨大な組織ともなれば、汚職が酷いのは今回の一件でかなり処分されたのだろうが、そこまでではない……言い方は若干悪いが程々に汚職をやっているような奴や、尻尾を掴ませないような上手さを持つ存在は今回も生き残っているのだろうから、その辺の相手と接触する事は可能だろうけど。
「けど、ルナツーを攻略したのは、正確にはシャドウミラーじゃなくて、ルナ・ジオン軍だろ? なら、そこまで俺に感謝する必要はないと思うんだが」
「いえ。アクセル代表がこの世界にやってこなければ、このような事にはならなかったかと」
「……まぁ、感謝してくれるのなら、こっちとしては素直に受け止めるけどな。ちなみに、シャドウミラー……とは言わないけど、月に来るのなら歓迎するぞ?」
メカニック達からも強い信頼を抱かれていたのを見ると、このボルクという人物は有能な軍人なのは間違いない。
であれば、引き抜いておいた方がいいだろう。
そんな思いで誘いを掛けたのだが……
「いえ、残念ですが断らせてください。こう見えても、連邦軍に対しては愛着を持ってますので」
あっさりとそう断られる。
有能な軍人というのは、幾らいてもいいんだけどな。
実際には有能な軍人は現在でもかなり多く、本当に欲しいのは政治家とかそっち関係の人間なのだが。
ゴップ辺りを引っ張ってくる事が出来ればいいんだが……難しいだろうな。
まぁ、精々恩を売っておいて、ジオンとの戦争が終わったら引き抜いてみるか。
「そうか。残念だが、無理に引き抜く訳にはいかないか」
「ありがとうございます。……その、正直なところ意外でした」
「意外? 何がだ?」
「いえ、こうもあっさりと諦めてくれるとは、思ってもいなかったので」
「まぁ、有能な軍人ってだけなら、それこそルナ・ジオン軍には大量にいるからな。有能な人材は多ければ多い程にいいが、無理に集めようとは思っていない」
そんな俺の言葉に、ボルクは少し意外そうな表情を浮かべつつも、それ以上は何かを言うような様子はなく、敬礼をしてくる。
「では、自分はこれで失礼します。アクセル代表、改めて今回の件についてはお礼を言わせてください。ありがとうございました」
「気にするな。最終的にマチルダがこのミデア隊を率いてきてくれたのは、俺にとっても嬉しかったからな。お前が言うノクトとかいう奴が率いてきていれば、間違いなく色々と問題になっていただろうし」
ボルクから聞いた話によると、ノクトという人物がミデア隊を率いていた場合、恐らく……いや、ほぼ間違いなくジオン軍に攻撃をされた時には降伏していただろう。
そうなれば、俺に渡される筈だったピクシーもジオン軍に奪われていた筈だ。
であれば、こっちとしてもノクトがミデア隊を率いていなかったのは助かったのは間違いないのだから。
「ありがとうございます。では」
そう言い、去っていくボルク。
その後ろ姿を見送った後で、気分を切り替える為に周囲を見回し……そして、マチルダから渡された手紙を手に取る。
さて、ゴップからの依頼ってのは、一体どんなものなのやら。
気分が切り替わった事で、封筒を破いて手紙を取り出す。
映像ディスクとかそういうのを送ってきてもいいと思うんだが、手紙は手紙で問題がないか。
再生機器の類がなくても、問題なく見る事が出来るし。
そこに書かれている内容を読み……一旦空を見上げ、雲がない青空を一瞥してから、再び手紙を読む。
だが、そこに書かれている内容は、やはり変わっていない。
書かれてる内容は、最初は季節の挨拶の定型文。
そこは取りあえず読み飛ばし、改めて本題の部分に目を通す。
書かれているのは、これからのホワイトベースの進路に関してだ。
以前ジャブローから送られてきた命令では、ホワイトベースは何とかジオン軍の防衛線を突破して南米に来るようにと命令されていた。
だが、手紙に書かれているのは、ジャブローに行くのではなく、太平洋を渡ってユーラシア大陸に渡って欲しいという事だった。
この状況でユーラシア大陸に渡って何をしようというのかは分からないが、ともあれゴップが俺にしてきた依頼というのは、ユーラシア大陸に向かうまでのホワイトベースの護衛。
その報酬が、ピクシーだったらしい。
ちなみに、本来ならピクシーにも教育型コンピュータが搭載されているらしいのだが、俺に譲渡される機体はその教育型コンピュータが搭載されていないらしく……これは喜ぶべきか? それとも残念がるべきか?
まぁ、教育型コンピュータがあれば、俺の操縦データが連邦軍に盗まれる可能性もある以上、その心配をしなくてもいいという事で、喜ぶべきか。
もしかしたら、俺に知られないようにデータを収集して送信するといった真似も……いや、ゴップの事だし、そんな馬鹿な真似はしないか。
ともあれ、ユーラシア大陸に渡った後で何らかの依頼が別にあるという事を臭わせてはいるが、その辺はまだしっかりと書かれてはいない。
恐らくユーラシア大陸に渡ってから、という事なのだろう。
一体、何を依頼されるのかは分からないが、ゴップとの関係は良好にしておくに越した事はない。
また、ピクシーという報酬は非常に美味しいし、ユーラシア大陸での依頼も受ければ追加で報酬をくれるという事なら、引き受けないという選択肢はない。
にしても、ユーラシア大陸での依頼か。
普通に考えれば、ジオン軍が占領している場所を攻略して欲しい、とか。そういう話題か?
もしくは、連邦軍製のMSの模擬戦相手とか。
それ以外にも色々と思いつくが、取りあえずその一件に関しては後で考えればいいだろう。
そう思いながらも、俺がホワイトベースでユーラシア大陸まで行くのは、既に決定事項となっていた。
ただ、そうなると問題なのは……ミナトと綾子の2人をどうするか、だな。
正確には、どう説明するかというのが正しい。
あの2人には、ハワイに行くという事でこうしてホワイトベースと一緒に行動しているのだ。
そんな状況で、ハワイに寄りはするものの、実際にはユーラシア大陸に行くと言った場合、どうなるか。
特にミナトとは、ハワイでデートをするって約束もしてるしな。
まぁ、補給物資とか、ホワイトベースの修理とかを考えると、ハワイで一息付けるというのは、ブライトにとってもありがたいのは間違いないだろうが。
機密的な意味でどこまでホワイトベースの修理が出来るかどうかは分からないが。
少なくても、ミデア隊が連れて来た技術者達が今やってる修理だけで、あそこまでダメージを受けたホワイトベースが完全に修復されるというのは、まず有り得ない。
本気で完全に修理するのなら、それこそどこかのドックにでも入ってしっかりと修理する必要があるだろう。
……まぁ、それでもガンダムやガンキャノンの方は多少時間が掛かるものの、ほぼ完全に修理が可能だという話だから、大気圏突入直後よりはよっぽどマシなのだろうが。
ともあれ、ユーラシア大陸に向かうにしても、ハワイで数日休憩するのは必須だろう。
ブライトにもその辺は言っておくとして、まずは取りあえず俺がホワイトベースに残るというのを、ブライトに知らせる必要があるか。
後は、この依頼を引き受けるというのをマチルダにも知らせた方がいいのは間違いない。
そう判断し、俺は手紙を空間倉庫に戻してから、ホワイトベースのある方に戻る。
早速修理作業をしている何人かに話を聞き、ブライトとマチルダのいる場所……艦長室に向かう。
その途中でも、ホワイトベースの中で何人ものメカニック達が忙しそうに動いており、ホワイトベースの通路や壁を剥がして、色々検査したりもしていた。
それが、現在のホワイトベースがどれだけ損耗しているのかという事を意味している。
そんな面々を見ながら艦長室の前に到着し、軽くノックする。
すると少ししてから扉が開き、ブライトが顔を出す。
「アクセルか。……どうした?」
「ああ、ピクシーの一件の依頼を受ける事にしてな。ホワイトベースがこれからユーラシア大陸に向かうのは知ってるか?」
「ああ、少し前に聞いた。……つまり?」
「取りあえず、ユーラシア大陸までは俺も一緒に行く事にした。その後の、向こうでの依頼を引き受けるかどうかはまだ分からないが。それでいいよな?」
扉の隙間から見えるマチルダにそう声を掛けると、マチルダは俺の言葉に素直に頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:425
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1469