バンッ、という音と共にガンキャノンのコックピットの一部が破壊される。
既にガンキャノンが一体どのような有様となっているのかは分からないが、恐らくガンダムよりも厚いルナ・チタニウムの装甲もかなり溶けてしまっているだろう。
しっかりと確認する事は出来ないが、コックピットの中の温度が既に人間が耐えきれない温度なのは間違いない。
そんな温度の中であっても、俺は特に動揺する事なく、これからどうするべきなのかを考えていたが。
普通の人間ならもう死ぬか気絶していてもおかしくはないが、混沌精霊の俺は普通の人間ではない。
幾ら大気圏に突入していても、そこには魔力も気も何もない純粋たる物理現象である以上、混沌精霊の俺を殺す……ましてや、ダメージを与えるといった事が出来る筈もない。
そんな事を考えていると、コックピットの一部が熱か何かでショートして小さな爆発が起きていた。
うん、取りあえずこれで死ぬような事はないにしても、ガンキャノンのコックピットにいたままだとどうしようもないか。
そう判断し、白炎を使ってコックピットを内側から破壊しつつ、機体の外に出る。
まさか、ここまで破壊された状況で普通にコックピットの開閉が出来る筈もないのだから、この行為は不可抗力だろう。
コックピットの外に出ると、当然ながらまだガンキャノンは大気圏に突入しているところだった。
俺が予想した通り……いや、それ以上にガンキャノンの装甲はドロドロに溶けており、低反動キャノンは熱で溶けたのかこの衝撃で吹き飛んだのかは分からないが既に存在せず、右手と左足も……あ、俺がコックピットから出たのが関係しているのか、残っていた左手と右足、頭部も一斉に吹き飛んでいった。
更には俺が抜け出た後のコックピットが大気圏突入の熱によって破壊され、その部分を起点としてガンキャノン全体が破壊されていった。
……うん。ガンキャノンそのものが消失したのは連邦軍に悪いと思うけど、ガンキャノンという意味でならまだカイの機体が残っているし、いいよな。
唯一残っていたガンダム――プロトタイプガンダムはディアナで調べられているが――を無事に救ったし、何よりも機体性能に助けられたとはいえ、赤い彗星のシャアと互角に戦えるパイロットを助けたというのは、褒められてもおかしくはない筈だ。
そんな風に考えつつも、ガンキャノンに触れて半ば残骸と化しているそれを空間倉庫に収納する。
大気圏に突入している時だから、爆発の光がなくても……そう思った瞬間、少し離れた所で不意に爆発が起きる。
何だ? と一瞬疑問に思ったが、すぐにその爆発の正体に思い当たった。
恐らく、ガンダムに纏わり付いていたザクだろう。
俺が吹き飛ばした後、そのまま大気圏に突入し、爆発したと思われる。
……あ、でも俺が撃破した訳ではない為か、ステータスの撃墜数の数値は変わっていないな。
まぁ、俺は吹き飛ばしただけで、実質的には自爆のようなものだしな。
ともあれ、ザクの爆発をガンキャノンの爆発と誤認してくれる事を祈ろう。
とはいえ、ガンキャノンの残骸は使い道がないんだよな。
教育型コンピュータは、それこそプロトタイプガンダムの方でどうとでもなるし……まぁ、最悪の場合はホワイトスターのキブツに放り込めばいいか。
そう判断し、生身で大気圏に突入しながらホワイトベースの姿を探す。
幸いにも、ホワイトベースはそこまで離れた位置にはいなかった。
……いや、これは単純にさっき俺がガンキャノンで蹴ったガンダムを回収する為に、移動してきたのか?
とはいえ、こうして移動してきたということは本来の地球降下コースから外れたのは確実であり……おい、本当にアフリカに降下したりはしないだろうな?
そんな疑問を抱きつつ、ホワイトベースに向かおうとするも……大気圏に突入している今の状況で、ホワイトベースの中に入れる筈もない。
実際、さっきまでは甲板上にいたガンタンク隊の姿も既になく、カイのガンキャノンも格納庫に戻っている。
それでもこのままでは、降下中にホワイトベースから離れてしまう可能性があるので、取りあえず甲板の上で降下が終了するのを待っておくか。
そう判断し、大気圏に突入しながら空中を移動してホワイトベースに向かう。
その途中、大気圏外にムサイ級の姿を確認したが……まぁ、それは別にいいか。
もしかしたらこの光景を見えているのかもしれないが、取りあえずそれは置いておくとしよう。
そんな風に考えつつも移動し、ホワイトベースの甲板上に着地する。
……そのまま、俺はホワイトベースが大気圏突入を終えるまで、待つ事になる。
とはいえ、今の状況でまさか雑誌を読むなどといった事も出来ない。
そんな訳で暇を持て余していたんだが……
「お、抜けたか」
やがて大気圏を抜けたのを確認して、そう呟く。
さて、そうなると問題は……うん、どうやってブリッジと連絡を取るかだな。
今の状況で格納庫とかを開けるのはちょっと難しいだろうし……なら、取りあえずはブリッジに直接姿を見せればいいだろう。
ホワイトベースは、木馬といった様子の姿をしており、その首の部分がブリッジとなっている。
そんな訳で、俺はそのままホワイトベースの地面を蹴って浮かび、ブリッジ部分に向かう。
すると、声は聞こえないがブリッジの中でブライトとリードが何やら言い争っている様子が見えた訳だが……それが何についてなのかは、予想が出来る。
何しろ、シャドウミラーの代表たる俺が大気圏突入時に死んだ、と。そう思っているのだから。
そんな風にブリッジの中を眺めていると、そんな2人のやり取りを眺めていたミナトが、視線を感じたのか俺の方を見る。
その視線に少し呆れの感情があったのは、俺の気のせいではないだろう。
そして、ミナトの視線に気が付いたのか、ミライがこちらに視線を向け……次の瞬間、大きな悲鳴を上げる。
いやまぁ、俺は外にいるから聞こえなかったけど。
ともあれ、そんな悲鳴が起きれば当然のように言い争いをしていたブライトとリードもミライに視線を向け、次にミライの視線を追うようにこっちに視線を向け……
俺が軽く手を振ったのを見て、ブライトとリード……いや、ミナトと既に悲鳴を上げたミライ以外の全員の口から悲鳴が上がった。
取りあえず中に入れるようにして欲しいと、そうジェスチャーで示してから、俺は格納庫のある方に向かう。
恐らくあれで俺の意図は通じた筈だし、もし通じていなくてもミナトが教えてくれる筈だ。
そうして格納庫の方に向かうと……ブリッジから連絡が入ったのか、大気圏突入の際に閉まっていたシャッターが開き、そして……
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』
その向こう側にいたメカニックやパイロット達が、シャッターの向こう側にいた俺を見た瞬間、揃って歓声とも悲鳴ともつかない声を上げる。
……こちらでも、唯一俺が混沌精霊であると知っている綾子のみが、特に驚いた様子を見せず、どこか呆れの視線を俺に向けていた。
「アクセルさん、無事だったんですか!?」
最初にそう声を発したのは、アムロだ。
自分を助ける為に、俺が身を挺してガンダムを救った。
そう思っていたのであれば、そのように思ってしまうのも当然だろう。
驚き、感動、歓喜、罪悪感……様々な感情が入り交じった様子のアムロに、俺は頷く。
「魔法ってのは、凄いだろ?」
取りあえずそれだけを告げる。
実際には魔法ではなく混沌精霊の能力なのだが、それを言う事が出来ない以上、こう言うしかなかった。
「魔法、ねぇ……」
俺の言葉に何か怪しいと思えるところでもあったのか、魔法と聞いたカイはどこか胡散臭そうな視線を俺に向ける。
世の中を斜に構えて見ているカイにしてみれば、魔法などという存在をそう簡単に認める事は出来ないのだろう。
「ただ、魔法を使っても俺が無事に脱出するのが精々で、ガンキャノンは大気圏突入の際の動きで爆発してしまった。……悪いな」
そんな俺の言葉に、メカニック達は即座に首を横に振る。
「いえ、アクセルさんが生きて帰ってきてくれたんなら、それに越した事はないですよ。……ガンキャノンはもう1機ありますし」
「そう言って貰えると、俺としても助かるよ」
まぁ、俺達……俺、綾子、ミナトの3人は地球に降りればもうホワイトベースからも降りるんだ。
ガンキャノンがなくなったのはホワイトベースにとっては痛いかもしれないが、それでも一度に出撃する戦力が不足するという事はないと思うし。
「それで、ホワイトベースはガンダムを助ける為に大気圏突入コースをずれたみたいだが、どの辺に降りるのか分かったか?」
ホワイトベースはまだ地上に降りていない。
正確には、現在いるのは雲の上だ。
だからこそ、地上の様子が見えずに尋ねたのだが……
「その、北米らしいです」
「あー……うん。それはまた……」
メカニックの1人が呟く声に、俺はそう返す。
SEED世界の時はアフリカに降下する事になったが、この世界では北米なのか。
UC世界において、ジャブローの存在する南米は連邦軍の勢力圏内だが、北米はジオン軍の勢力圏内となっている。
そんな場所に降下した上に、このホワイトベースは連邦軍にとって機密とも呼ぶべき最新鋭のMSを有している。……まぁ、ガンキャノンは1機俺が壊してしまったし、プロトタイプガンダムは月で徹底的に調べられているが。
ともあれ、連邦軍の秘密兵器と言ってもいいような存在が、ジオン軍の勢力圏内に降下したとなると、当然のようにジオン軍としては、鹵獲、もしくは撃墜を狙ってくるだろう。
おまけに北米となると、それは地球方面軍を率いるガルマ・ザビの本拠地だ。
セイラから聞いた話によると、ガルマは家柄だけで出世したと思われているのがコンプレックスになっており、それ故に手柄を求める傾向にあるそうだ。
そんなところにホワイトベースが落ちてきたら、どう反応するのか。
それは、考えるまでもなく明らかだろう。
「ホワイトベースとしては、厄介だな」
「……はい」
メカニックが、俺の言葉に頷く。
とはいえ、ホワイトベースにとっては厄介なのだが、ルナ・ジオンとしてはそんなに悪い話ではない。
北米からハワイまでは、決して近いとは言えないが、それでも地球の反対側という程に離れている訳でもないのだから。
それこそその気になれば、ジオン軍の基地から輸送機なり何なりを盗んできて、それでハワイに向かうという手段も皆無という訳ではない。
とはいえ、そんな真似をした場合、ホワイトベースを……この世界で最重要の人物と思われる、アムロをみすみす見殺しにする事にもなりかねないんだよな。
これが、普通にジャブローに……とまではいかないが、それでも連邦軍の勢力圏内……もしくは、ジオン軍の勢力圏内であってもすぐにそこから脱出出来る場所であれば、すぐに脱出するといった真似も出来たのだが。
「それで、これからどうするのかは……」
決めたのか?
そう言おうとした俺の言葉に首を横に振ったのは、リュウ。
「残念だが、今のところはそれどころじゃなかったからな。アムロとガンダムを失いそうになっていて、それが何とかなったかと思えば、アクセルが戦死……いや、実際には戦死じゃなかったんだが、そう思ってたのは間違いない。そんな訳で、それどころじゃなかったってのが、正直なところだ」
「あー……うん。まぁ、だろうな」
預かっていた他国で一番偉い俺を、戦闘で殺したかと思ってしまったのだ。
おまけにその国……シャドウミラーは、明らかにこの世界の連邦よりも技術力も戦力も上となれば、その一件で色々と混乱してもしょうがないか。
「まぁ、こうして無事だったから良かったけど。……本当に、魔法ってのは凄いんだな」
しみじみと感心した様子でリュウが俺を眺め……
「あ、ちょっと待ってよ!」
「ハロ、ハロ、コッチダ、コッチダ」
と、不意にそんな声が聞こえてくる。
声のした方に視線を向けると、そこではカツ、レツ、キッカの3人の子供が、ハロを追いかけていた。
ハロ? ……うん、あれハロだよな。
SEED世界でアスランが作ってたとかなんとかいう。
いや、ガンダムやらザクやらグフやらドムやらという共通点があるんだし、ハロという共通点があっても構わないのか?
どこからハロが出て来たのかは、全く分からなかったが。
ともあれ、そんな3人と1匹……1機? のお陰で、俺の方に向けられる視線が幾分か和らぎ、更には格納庫の中に満ちていた雰囲気も同様に驚きの色が少なくなったというのは、俺にとっても幸運だった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:345
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1456