「ヘリオン作戦？」
俺がその作戦名を聞いたのは、セイラと手を繋いでいたのをアンリに見られた翌日だった。
昨日はジオン軍のトライデント作戦とジャベリン作戦について話を聞いたと思ったら、その翌日には連邦軍が行ったヘリオン作戦。
何だか、ここ数日になって急激に戦争が動き始めたな。
もっとも、今までも別に膠着状態になっていた訳ではなく、宇宙や地球で普通に戦争は行われていた。
ただ、昨日や今日行われた作戦は、比較的大きな作戦だったので、俺の耳に入りやすかったというだけだろう。
「それで？ 具体的にヘリオン作戦というのは、どういう作戦なんだ？」
俺のその問いに、レオンは皮肉げな笑みを浮かべて口を開く。
「簡単に言ってしまえば、地球軌道上に位置するジオン軍の軍艦に対する大規模な攻撃となります。連邦軍にとっては、そこにいるジオン軍はよっぽど邪魔だったんでしょうね。……無理もありませんが」
「だろうな」
軌道上をジオン軍に占拠されているということは、即ち頭を押さえられているようなものだ。
地球に侵攻しているジオン軍はともかく、連邦軍にしてみれば、それは面白い事ではないだろう。
その気持ちは分かる。分かるが……
「元々、連邦軍はこれまでにかなりの宇宙での戦力を失っている筈だ。それこそ、ルナツーからはなるべく戦力を出さないようにしているといった感じでな。そんな中で、よくもそこまで大規模な作戦を行う決心が出来たな」
「こちらに入ってきた情報によると、いわゆるタカ派と呼ばれる軍人達が強行にこの作戦を通したとか。……勝てるという自信があるのかどうかは、私にも分かりませんが」
レオンのその言葉は、俺にも納得出来るものがある。
戦争序盤に連邦軍が敗れたのは、結局のところジオン軍がミノフスキー粒子やMSといった隠し球を持っていたのが大きい。
それはつまり、今の状況であってもその戦力差は覆っておらず、結果としてこの戦いの趨勢は見えたも同様だった。
「どうします？ シャドウミラーから……もしくは、ルナ・ジオン軍から戦力を出しますか？」
「あー……どうだろうな」
セイラはトライデント作戦、ジャベリン作戦の両方に関わるつもりはなく、両軍にも増援を送るようなことはしていなかった。
その辺りの事情を考えると、恐らく今回の作戦でも同様の態度をとってもおかしくはない。
そうなると、シャドウミラーが戦力を派遣しても……まぁ、正直な話、シャドウミラーが協力すれば連邦軍も勝てるとは思うが、それでも今はそうするつもりはない。
「いや、止めておく」
「そうですか。……ちなみに、もし援軍を出すとすれば、どちらに出しました？」
興味を惹かれたといった様子でレオンが尋ねてくるが、俺がそれに対する答えは決まっている。
「連邦軍だな」
「おや？ ……てっきり、ジオン軍に協力するのかと思いましたが」
「そうだな、俺達が協力しない状況であれば、勝つのはジオン軍だ。それなら、ジオン軍に協力した方がいいというのは分かる。だが……それはつまり、俺達が協力すれば連邦軍が勝てるという事でもであるだろ？ 俺達が協力しなくても勝てるジオン軍と、俺達が協力しなければ負ける連邦軍。どっちに手を貸した方が感謝され、美味しい思いを出来るのかは……それこそ、考えるまでもない」
「なるほど。言われてみればそうですね」
そう告げるレオンだったが、俺が考えつくような事を政治班のレオンが考えつかないとは、到底思えない。
それこそ、恐らくこの件は全て分かった上で俺に尋ねてきたのだろう。
……何を考えてそのような真似をしようとしたのかは、分からないが。
それでも俺がレオンの行動に不安を覚えないのは、レオンが鵬法璽によってシャドウミラーに不利益を与えないようにとされている為だ。
だからこそ、恐らく何らかの意味があってあのような事を言ったのだろうが……それは、取りあえず心配する必要がないという事を意味している。
「それに、ルナ・ジオンとジオン公国は、表向きには敵対関係にあるしな。それに比べると、連邦軍とは……友好勢力とまでは言わないが、それでも友好的な中立といったところだ。なら、連邦軍に協力するのは当然だろ？」
ゴップとの関係は友好関係と言ってもいいが、それが連邦軍全体、連邦政府全体ともなれば、話が違ってくる。
結局のところ、幾らゴップ個人と友好関係を築いても、そこに組織という存在が入ってくれば、話は別なのだ。
当然ゴップもそれを理解しているし、ルナ・ジオンの面々も同様だろう。
その辺りを考えた上でも、やはりと言うべきか、協力すべきなのは連邦軍だという思いは変わらない。
ザビ家の思想は、色々な意味で不味い。
スペースノイド独立の為とか言いながら、平気でスペースノイドを虐殺してるし、スペースノイドにとっては故郷とも言うべきコロニーを地球に落としている。
その辺りを考えると、とてもではないがザビ家に協力したいとは思わない。
セイラ達に行ってきた仕打ちの件もあるしな。
「そういうものですか。……正直なところ、私にしてみればどちらでもいいのですが。アクセル代表がそう言うのであれば、私も納得します。では、私はまだ仕事があるので、これで失礼しますね」
そう言い、レオンは俺の前から立ち去る。
それにしても……本当に、連邦軍は無茶な真似をしたな。
乾坤一擲と言えば聞こえはいいが、それは勝算があってこその行動だ。
まだMSも存在しない今の連邦軍に、地球軌道上にいるジオン軍艦隊をどうにか出来るとは、到底思えない。
それこそ、この独立戦争の序盤……1週間戦争と呼ぶべき戦争において、連邦軍はジオン軍に徹底的にしてやられた。
地球上でこそ、三次元の動きが制約されたMSに対して幾らかの勝利を得られるようにはなったが、それはあくまでも地球上での事だ。
この宇宙では、勝ち目がほぼ皆無なのは間違いなかった。
鹵獲したザクを使うのなら、多少は抵抗出来るかもしれないが。
「タカ派ってのは、威勢がいい時にはともかく、自軍が負けてる状態で……それも、戦力をなるべく温存する必要があるような時には、邪魔でしかないな」
その結果が如実に表れたのが、今回の一件だろう。
あるいは、もしかしたらルナツーにおいて何らかの画期的な発見があった、と。そういう可能性もなきにしもあらずといったところなのだが……少なくても、今の俺にそのような発見があったという情報は入っていない。
連邦軍のMS開発計画のように、もしかしたらコンピュータに情報を残さないようにしているという可能性もあるのだが……正直、どうだろうな。
連邦軍が何を考えているのかは分からないが、やっぱり今回の一件は半ば暴走に近いというのが、俺の判断だった。
「ゴップも、かなり大変そうだけどな」
連邦軍において、補給で大きな力を振るっているのがゴップである以上、今回の一件に関しても当然絡んでいる筈だ。
その辺、ジェーンに後で探りを入れて貰うか？
ゴップとの交渉は基本的にジェーンが行っている以上、そうするのが最善の筈だった。
「ま、今はこれ以上ここで考えていても仕方がないか」
そう呟き、俺は影のゲートに身体を沈めてホワイトスターの交流区画に向かうのだった。
「あやや？ アクセル君がここに来るのは珍しいなー」
交流区画にある喫茶店でナポリタンを食べていると、不意にそんな声が聞こえてくる。
聞き覚えのあるその声に視線を向けると、そこには近衛と桜咲という2人の姿があった。
「そうか？ この喫茶店のナポリタンは美味いから、それなりに来るけど……そっちは？」
「あはは。うちもナポリタン目当てなんよ。せっちゃんにも美味しいナポリタンを作ってあげたいと思ってるんやけど、どうしてもこの店の味にはならないんよね」
「だよな。ここのナポリタンは美味いよな」
近衛の言葉に、全力で同意してしまう。
実際、ナポリタンを出す喫茶店とか食堂とかはあるけど、ここの喫茶店で出されるナポリタンは明らかに違う。
正直、何故そこまで普通のナポリタンと違うのかが分からないくらい、美味い。
俺が知ってる限りだと、ナポリタンというのは茹でたパスタをケチャップやウインナー、ピーマン、マッシュルームとかと炒めるだけって料理なんだが……
「そうやね。ナポリタンで一番大事なトマトが、普通のトマトじゃないって、前に聞いた事があるけど……どこのトマトを使ってるのか、分からんわ」
「いえ、でもこのちゃんが作ってくれるナポリタンも、十分に美味しいですよ！」
近衛の隣に座った桜咲が、即座にそう告げる。
近衛も料理の腕はかなり高い。
麻帆良学園では、明日菜と同じ部屋で、その食事を一手に引き受けていたらしいし。
……おかげで、明日菜が作れる料理は、カップラーメンとか目玉焼きとかゆで卵とか、そういうのらしいが。
とはいえ、超包子で働く事も多くなり、四葉からも料理を教えて貰っているらしいので、今ではそれなりに料理が出来るようになっているらしいけど。
そもそもの話、近衛と桜咲が同居……同棲している以上、今の明日菜はホワイトスターで1人暮らしだ。
毎回外食って訳にもいかないだろうから、自然とある程度は料理が出来るようになったのだろう。
「ありがと、せっちゃん。……でも悔しいなぁ。どこのトマトを使ってるのかが分かれば、これと同じ味を出せる……とは限らんけど、近づく事は出来るんやろうけど」
そう告げる近衛だったが、当然この店でも自分の店の売りたるナポリタンのトマトソースをどうやって作っているのかというのは、企業秘密だろう。
そして、近衛がトマトの種類を見つけ出すのも難しい。
あるいは、ネギま世界のトマトだけという事であれば、もしかしたら……本当にもしかしたらだが、どうにか出来た可能性もある。
だが、生憎とここはホワイトスターだ。
幾つもの世界と繋がっているハブ的な場所である以上、この喫茶店がどこの世界の、どの地方からトマトを入手しているのかを調べるのは、無理とは言わないが気の遠くなる時間が必要となるだろう。
「まぁ、気長に探すんだな。……運が良ければ、このナポリタンよりも美味いトマトケチャップを作れるかもしれないし」
これは嘘という訳ではない。
それこそ幾つもの世界と繋がっているホワイトスターの利便性や、時の指輪の受信機を持っている近衛の不老。この2つが組み合わされば……最終的には、この喫茶店で使っているのよりも美味いトマトソースを作れる可能性はある。
とはいえ、それにはかなり料理に対する探究心が必要となってくるだろうが。
「そやね。せっちゃんにも、美味しい料理を食べさせてやりたいし」
「このちゃん……」
近衛の言葉に、桜咲が感動したように呟く。
にしても、この2人は本当に仲が良いな。
技術班が開発した、女同士でも子供を作れるという技術……それを本格的に試してもおかしくはないんだが、まだそっちには手を出していないらしい。
この様子を見れば、それこそすぐにでも子供を欲しいと思っても不思議ではないと思うんだが。
「あー、とりあえずイチャつくのなら、俺の前じゃなくて別のところでやってくれ。具体的に言えば、お前達の家の寝室とかな」
「なぁっ！？ な、なななななななななな！」
俺の言葉に、桜咲が顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
……そんな桜咲の横では、薄らと顔を赤くした近衛が両頬に手を当て、イヤンイヤンといった風に照れている。
相変わらずだな、この2人。
今ではシャドウミラーの中でも有名なカップルだというのに、本人達にはあまり自覚がないらしい。
いつまでも初々しいと言うべきか？
その辺りについては、今は考えなくてもいいか。
それこそ、俺がいない場所で存分にイチャついて欲しい。
「で？ えーっと、何の話だったか。女同士で子供を作る為の技術についての話だったか？」
「ちょっ！ そんな話は全くしてないのに、何で急にそんな話になるんですか！」
俺の言葉に、桜咲が顔を真っ赤にしてそう告げる。
この反応を見る限りだと、恐らくこの技術については相応に相談をしていたといったところか。
それでも実際にその技術について実施していないという事は、まだ心が決まっていないという事か。
その辺はあくまでも個人の判断だから、俺からは特に何も言わないが。
「違います！ ナポリタンについてでしょう！ トマト、トマトの話題ですってば！」
「あれ？ そうだったか？」
「うーん……どうやったかなぁ」
俺の言葉に、近衛もそう返してくる。
そんな俺達2人を見て、桜咲は顔を真っ赤にしながら、うーうーと唸るのだった。
アクセル・アルマー
LV：43
PP：235
格闘：305
射撃：325
技量：315
防御：315
回避：345
命中：365
SP：1987
エースボーナス：SPブースト（SPを消費してスライムの性能をアップする）
成長タイプ：万能・特殊
空：S
陸：S
海：S
宇：S
精神：加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル：EXPアップ
SPブースト（SPアップLv.9&SP回復&集中力）
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法（炎）
魔法（影）
魔法（召喚）
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数：1435