転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2200話

 シェリルがライブを開くという話は、すぐにルナ・ジオン上層部で広まり、決定した。

 その速度は、正直なところ俺が予想していた以上のものであり……何気に、ルナ・ジオンがハワイにおける反抗勢力を重要視しているということを意味していた証拠だろう。

 もっとも、ハワイにもコバッタや量産型Wが送り込まれてはいるので、テロ行為の類を行おうとした連中は結構な数が既に捕まっている。

 ……ちなみに、ハワイで捕まったそのような犯罪者は、HLVによって打ち上げられてクレイドルに連れて行かれ、そこで他の犯罪者達と同じようにマブラヴ世界の合成食を食べさせられながら農作業を行う事になる。

 実際、犯罪者だからといってただ飯を食わせるような余裕はない以上、当然の結果だろう。

 実際には、そのただ飯はマブラヴ世界の合成食で、それを食べるのが嫌な犯罪者達は必死に農作業をする事になるのだが。

 ともあれ、思ったら即行動といったような反抗勢力はそのような感じになったが、今回の場合、問題になっているのは思慮深い反抗勢力だ。

 そういう奴は、迂闊に行動に出さないだけに表に出るという事が少ない。

 そのような者達を、シェリルのライブでこちら側に引き寄せる……といった真似をしたいというのが、ルナ・ジオンの狙いなのだろう。

 とはいえ、シェリルの歌がどのようなものなのかは、セイラ以外知らない。

 いや、セイラが知っているのも、あくまでも俺の記憶を通しての歌であり……そういう意味では、やはり直接聞いた方がいいだろうという事で、実際にシェリルはルナ・ジオンの幹部の前で歌ったのだが……その効果は予想以上だった。

 シャドウミラーに対して何かと批判的だった、アンリの連れてきた政治家の面々ですら、シェリルの歌が終わったところで立ち上がって拍手をしていた……と言えば、その凄さが分かるだろう。

 また、その後もシャドウミラーに対しての態度も柔らかくなっている。

 これでフィリオの演出もあったら、一体どうなっていた事やら。

 そんな風に思いつつ、俺は常夏の地たるハワイの太陽を浴びながら、ライブ会場を作っている光景を眺めていた。

 

「何だか、俺がハワイに来るとこんな光景だけを見ているような気がするな」

「あら、そう? でも、それはそれでいいんじゃない?」

 

 麦わら帽子を被ったシェリルが、俺の横でそう告げる。

 上機嫌なのは、やはり自分が歌う為のステージが着々と出来上がっているからだろう。

 全力で歌う事は、シェリルにとっては大きな意味を持つ。

 ……特に、一時期は病気でもう歌えなくなりそうだった……というのを覚えていれば、やはり自分がこうして歌えるというのは嬉しい事なのだろう。

 

「そう言えば、フィリオとの打ち合わせの方はどうなってる?」

「悪くはないわね。……悪くは」

 

 そう告げるシェリルの様子を見る限り、悪くはないけど決して満足をしているという訳でもないらしい。

 まぁ、言ってみれば一昔前のアイドルを好むフィリオと、今風のシェリルだ。

 どうしても、その辺りには上手くいかないという事もあるのだろう。

 

「けど、フィリオ……いや、この場合は演出家と言うべきか? その演出家としっかりと話をして、お互いの認識を合わせておくというのも重要な事だろ?」

 

 そう言うと、シェリルは当然といった様子で頷く。

 

「それくらいは分かってるわよ。実際に、しっかりと話をしてはいるしね。ただ、向こうも簡単に折れなくて」

「だろうな」

 

 フィリオのアイドル好きというのは、フェアリオンの開発者であるという事を考えれば、明らかだ。

 寧ろフェアリオンのようなAMを開発するだけの熱心なアイドル好きと言ってもいい。

 そうなると、やはりというか当然のように一家言を持つようになる。

 その辺りが、シェリルと食い違っている原因だろう。

 それでも、シェリルとフィリオはしっかりとお互いに話し合い、どのようなステージにするのか、そしてどのような演出にするのかを決めるといったところか。

 

「まぁ、頑張ってくれ。俺もシェリルのライブは楽しみにしてるからな」

「アクセルにそう言われたら、張り切るしかないわね。……ふふ」

 

 面白そうに、そして楽しそうに、満足そうに笑みを浮かべるシェリル。

 シェリルにとって、やはりライブというのは色々な意味で特別なものだという事なのだろう。

 そんなシェリルと話しつつ、ハワイの街中を歩く。

 ……ちなみに、シェリルは麦わら帽子以外にも、今は俺の空間倉庫の中に入っていたサングラスで変装をしている。

 その理由は……

 

『シャドウミラーの幹部にして、異世界では銀河の歌姫とも呼ばれた、シェリル・ノーム。今度行われるライブでは、そのシェリル・ノームの歌を聴く事が出来ます! 皆さん、異世界の歌姫の歌、聴きたくありませんか!?』

 

 街中の街頭TVにて、そんな映像が流れている。

 当然ながら、その映像の中にはシェリルの姿もある訳で……今の状況でシェリルが街中を歩けば、間違いなく騒動になってしまうだろう。

 

「ふふっ、ハワイでライブをしたいとは言ったけど、まさかここまで大掛かりなものになるとは思ってもいなかったわ」

 

 そんな映像を見ながら、シェリルは満足そうに笑みを浮かべる。

 シェリルにしてみれば、恐らくもっと小さなステージでのライブになると、そう思っていたのだろう。

 だが、ルナ・ジオンの考えと上手く組み合わさった結果として、今のような状況になった訳だ。

 とはいえ、当然のようにシェリルはそれに不満を抱いてはいない。

 シェリルにとって、今回の一件は寧ろ渡りに船と言ってもいいだろう。

 元々歌うという事が好きな……それこそ、自分の人生だと言い切る程のシェリルだけに、大勢の前で歌えるということはむしろ望むところだ。

 ……まぁ、俺と付き合うようになってからは、歌だけが自分の人生といった風には思わなくなっているみたいだったが、それでも歌がシェリルの人生の大きな部分を占めているのは、間違いのない事実だ。

 

「俺はシェリルの歌を大勢に聴いて貰えるという事で、ステージが大きくなるのは大歓迎だけどな」

 

 そう告げると、シェリルは嬉しそうに……本当に嬉しそうに笑い、俺の腕に抱きついてくる。

 恋人達の中では平均的……だが、一般の平均から言えば、明らかに巨乳と呼ぶに相応しい双丘が、俺の腕に押し潰されて、その柔らかさを堪能させる。

 

「ほら、アクセル。折角なんだから、もうちょっと色々と見て回りましょうよ。まずあっちから」

 

 そう言い、シェリルが俺の腕を引っ張っていく。

 やがて到着したのは、食事……というよりは、ハンバーガーやホットドッグといった軽食の類を売ってるような店の並んでいる通りだ。

 

「ね、アクセル。ちょっと何か買っていきましょうよ。お腹が減ったし」

「シェリルがそう言うのなら、俺は構わないけどな」

 

 一瞬、シェリルの体型の心配をしたが、考えてみればエヴァの訓練を受けているシェリルの場合、幾ら食べてもそのカロリーは運動して消費されてしまう。

 寧ろ、食べる量が少ないと痩せていってしまいかねない。……特に、その魅力的な胸から。

 だからこそ、何気に家で食べる時の食事は、かなりの量がある。

 ……夕食は夜の生活の事も考えてかなり多い食事量になっているのだが、それでもカロリー不足になる事は珍しくはない。

 いやまぁ、それをやっている俺が言うべき事じゃないんだろうけど。

 

「折角ハワイに来たんだし、どうせならハワイならではの料理を食べたいところだけど、ハンバーガーでもいいか。シェリルもハンバーガーでいいか?」

 

 ハワイで有名な食べ物……ロコモコとかか? 出来ればそういうのを食べたいとは思ったけど、ロコモコは片手間に……歩きながら食べられる料理の類ではないので、今は食べるのはちょっと無理だ。

 あ、でもロコモコバーガーってのはあるな。……普通のハンバーガーとどう違うのかは分からないけど。

 ともあれ、折角なのでという事で、俺はロコモコバーガーを、シェリルはチーズバーガーを購入して、周囲の様子を観光しながら食べる。

 

「ああ、具材は普通のハンバーガーとそう変わらないけど、ソースが違うのか。一応具材に卵が入ってるところはそれっぽいけど」

「へぇ、そうなんだ。こっちのチーズバーガーもなかなか美味しいわよ。一口食べてみる?」

 

 シェリルがそう言い、俺にハンバーガーを差し出してくる。

 これはいわゆる、あーんって奴か? ……何だか、微妙に違う気もするけど。

 ともあれ、俺はそんな風に思いつつもチーズバーガーを食べる。

 恐らく観光客向け……今だとクレイドルに行く客に対してか? ともあれ、そういう連中を相手にした店だけに、味はあまり期待出来ないだろうと思っていたんだが、予想外に美味くて驚く。

 いやまぁ、俺のロコモコバーガーも美味いんだから、あの店が当たりだというのははっきりしてたんだが。

 

「美味いな」

「でしょ? そっちもちょうだい」

 

 そう言うシェリルに、俺は持っていたロコモコバーガーを渡す。

 それをシェリルが一口食べ……すると、当然のように周囲にいる男達からは嫉妬の視線を向けられる。

 麦わら帽子とサングラスで変装しているとは言っても、シェリルの場合は雰囲気で美人だと理解出来るんだろうな。

 とはいえ、クレイドルに行こうとしている連中の中にも女連れの奴は多いんだから、……あ、ほら。やっぱり。

 こっちに嫉妬の視線を向けていた男が、一緒にいた女に思い切り足の甲を踏まれて痛がっている。

 そんな風になってるのはそこだけではなく、他の場所もだ。

 ジオン公国の独立戦争中という事もあって、旅行とかはそう簡単に出来るものではない。

 とはいえ、全く出来ないという訳でもないので、資産家であればハワイにバカンスをしに来るといった真似も出来ない訳ではないのだが。

 特に今のハワイは、ルナ・ジオンが占拠しているということで、連邦軍もジオン軍も手を出せない状況にある。

 それこそ、ルナ・ジオンがどれだけの戦力を持っているのかは、月の制圧作戦やグラナダ制圧作戦で証明されている。

 そうである以上、迂闊にルナ・ジオンに喧嘩を売るなどといった真似が出来る筈もなく……自然とハワイの周辺では連邦軍やジオン軍の戦いも控えられるようになっていった。

 この辺、以前月の周辺で戦いになった時にルナ・ジオン軍が介入した事も影響してるんだろうな。

 そんな風に思っていると、不意に視線の先に見覚えのある人物が姿を現す。

 

「あれ? 何でこんなところに?」

 

 その人物……フィリオは、俺とシェリルを見ると、少しだけ驚いたようにそう告げる。

 

「いや、それを聞きたいのはこっちの方なんだけどな。そっちこそ、何をしてるんだ?」

「僕は、ちょっとこのハワイという土地をしっかりと見ておきたかったんだ。そこに住んでいる人の感性によっても、ライブの時の演出とかは色々と違ってくるしね」

 

 そう告げるフィリオの言葉に、俺の隣でシェリルも頷いている。

 どうやら、そのフィリオの意見にはシェリルも賛成らしい。

 そっち方面に詳しくない俺にしてみれば、それこそそういうものなのか? としか思えないんだが。

 ともあれ、本職――シェリルはともかく、フィリオの本職は技術班の技術者だが――の2人がそう言うのであれば、恐らくそういう事なのだろうと、俺も納得するしか出来ない。

 

「それで? 結構シェリルとぶつかってるって話も聞いたけど?」

「あー……うん。それは否定しない。アクセルからも何か言って……いや、アクセルが何か言ったら、それはシェリルの味方をしそうだな」

「そうか? ……まぁ、その可能性も否定は出来ないかも」

 

 俺の趣味として、シェリルのライブのような今風の方が好みだというのもある。

 もっとも、今風と何度も言ってるが、それはあくまでも俺がそう感じてるだけであって、実際には今風とかではない可能性もあるのだが。

 何より、幾つもの世界が存在する以上、今風と言われてもそれがどの世界の今風なのかといった問題もある。

 ……それと、可愛らしいよりも色っぽい方が好みというのもあって、それは否定出来ない。

 

「だろ? だから、まぁ……その辺はこっちで話して決めるよ。ああ、そうだ。そう言えば水中用MSを出す演出をして欲しいって言われてるんだけど……どう思う?」

「……なるほど」

 

 誰がフィリオにそんな要望を出したのかは分からないが、その狙いは分からないでもない。

 ルナ・ジオンが所有するハワイには、これだけの種類の水中用MSがあるのだと、そう示したいのだろう。

 ハワイの住民の中でも、ルナ・ジオンに好意的であれば頼もしさを覚えるだろうし、敵対的な相手であれば、それだけの水中用MSがあるのかと怖がるだろう。

 もっとも、敵対的な相手がシェリルのライブに来るとは、ちょっと思えないが。

 そんな風に考えつつ、俺はフィリオとシェリルの2人と話すのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:235
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1435

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