転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2198話

「ルナ・チタニウム……か。その金属については俺も色々と情報を入手してるけど、それをヅダに使うのは難しいんじゃないか?」

 

 美鶴とデートをしてから、数日後。俺は、クレイドルにある屋台で偶然会ったジャンと一緒にガレットを食べながら言葉を交わしていた。

 ちなみにガレットというのは、言ってみればそば粉を使ったクレープだ。

 ただし日本で知られているクレープのように、生クリームや果物、チョコといったものを使って作るデザートではなく、卵とかハムとかそういうのが入った、言ってみればサンドイッチとかハンバーガーとかのような、ファーストフード系のクレープだ。

 ……ちなみに、幸い、本当に幸いな事に、現在のところはクレイドルにゴーヤクレープの魔の手は伸びていない。少なくても、俺はそれを売ってる店を見たことはなかった。

 もっとも、ホワイトスターと交流を重ねると、いずれどこからともなく、その手が伸びてくるのだが。

 ともあれ、ちょっと珍しかったので食べていこうと思ったら、同じ事を考えたのかジャンもまた屋台に並んでおり……現在は、こうして一緒に食べている訳だ。

 そして俺とジャンが一緒に食べているとなると、話題はヅダの事になるのは確実な訳で……その話題の1つが、ヅダにルナ・チタニウムを使いたいというものだった。

 ルナ・チタニウムというのは、月の重力下だけで作ることが出来る特殊なチタン、アルミニウム、レアアースを使って作られる合金の事だ。

 存在そのものは、それこそ今から15年以上前に知られていて、その性能も非常に素晴らしいのだが……とにかく、コストが馬鹿高い。

 おまけに加工も非常に困難ということもあり、存在そのものは知られていつつも、それを使おうと考える者はそう多くはなかったらしい。

 

「ですが、ヅダの欠陥……に対処するには、フレームそのものを強化するのが一番手っ取り早いのが事実です」

 

 欠陥という言葉を口にした時、ジャンの表情は非常に微妙なものになったが、それでもそのまま言い切った。

 

「お前の気持ちは分かる。それに、折角ルナ・ジオンの本拠地として月を手にしているんだから、月だけで作れるルナ・チタニウムを使いたいというのも理解出来る。だが……以前も言ったと思うが、ヅダは一握りのエースパイロットが乗る機体ではなく、一般の兵士も乗るような量産機として採用される予定だ。そうなると、コストの問題も大きくなってくる」

 

 シャドウを使っているシャドウミラーに所属している俺が言っても、説得力はないけどな。

 何しろ、シャドウは量産機という扱いの割には1機製造するのにエースパイロットが使うカスタム機並のコストが掛かってるのだから。

 そんな俺がルナ・チタニウムはコストが高すぎるから止めろと言っても、普通は納得出来ないだろう。

 

「ですが、ルナ・チタニウムを使えば、性能は上がるのです!」

「だろうな。けど、やっぱりその辺にはコストの問題が関わってくるんだよ。……ただ、そうだな。装甲とか全てをルナ・チタニウムにするんじゃなくて、機体の重要な場所にルナ・チタニウムを使うというのはどうだ? 関節とか。そういう部分だけに使うのなら、多少はコストも高くなるだろうが、許容範囲内になるんじゃないか?」

「……それは……」

 

 俺の意見に、ガレットを食べていたジャンの手が止まる。

 そこまで突飛な意見を言ったつもりはなかったんだが……ジャンにとっては、そんなに意外だったのか?

 関節部分だけであっても強化するとか、そういうのは技術者なら普通に考えられてもおかしくはないと思うんだが。

 ……正直な話、コスト高という点だけなら、それこそシャドウミラーの方で援助してもいいとは思う。

 そうすれば、シャドウの件もあるように、コスト高の件は無視出来るだろうし。

 だが……それはあくまでもヅダだけの事を考えた場合での話でしかない。

 UC世界において、MSというのは発展途上、言わば過渡期にある。

 そのような時に試行錯誤し、切磋琢磨していく事は、技術の蓄積という点も将来的に必ずプラスになる。

 そんな状況でシャドウミラーが安易に手を貸すような真似をすれば、この世界のMSの発展を阻害するだけではなく、ルナ・ジオンという国で開発するMSはシャドウミラーの技術や資源を前提としたものにもなりかねない。

 純粋にルナ・ジオンという国の現状だけを考えれば、それもいいのかもしれないが……将来的に見た場合や、何よりUC世界における独自の技術の発展を希望するシャドウミラーとしては、それはあまり歓迎出来ることではない。

 そうである以上、ジャンにとっては納得出来ない事もあるだろうが、現状のままでどうにかして貰う必要があった。

 勿論、全く手を貸さないという訳ではない。

 それこそ、例えばルナ・チタニウムを関節部分に使うくらいの資源であれば、融通してもいい。

 一応、このルナ・チタニウムというのもUC世界独自の技術だから、ある程度集めておいた方がいいだろうし。

 とはいえ、UC世界においてはかなり性能の高い合金たるルナ・チタニウムなのだが、シャドウミラーにしてみればそこまででもない。

 軽く強靱という意味では、圧倒的なまでに上位互換の、それこそビーム兵器の威力までを上昇させるようなガンダニュウム合金という代物がある。

 しかも、シャドウミラーではそのガンダニュウム合金にPS装甲を組み合わせる事にも成功しているし、今はまだ俺しか使えていないがT-LINKフレームという代物すら作り出している。

 それを考えれば、ルナ・チタニウムはある程度の量を入手したら、資料という形で倉庫に収納される事になって終わる……んだろうな、やっぱり。この場合は。

 

「……分かりました。アクセル代表の言葉を皆に伝えてみます」

 

 俺が引く気はないと判断したのか、ジャンはガレットを食べながらも残念そうに告げる。

 

「シャドウミラーの力を頼るよりは、それこそツィマッド社やこの世界の技術者達で協力して解決した方が、将来的にはツィマッド社……いや、ルナ・ジオンという国の技術の為にはなると思うぞ」

「言われてみれば、そうですね」

 

 こっちの言葉にあっさりと意見を翻したように見えるジャンだったが、それが本気なのかどうかは、俺にも分からない。

 俺の機嫌を損ねないように、そう言っている可能性も十分にあったのだから。

 とはいえ、俺にその辺りまでどうにかしろという方が無理なのも事実な訳で……まぁ、困難な事に皆で協力して挑み、その結果として団結力が高まる事を期待しよう。

 

「では、この件をすぐに他の者達と相談する必要があるので、これで失礼します」

 

 ジャンはそう言うと、残っていたガレットを半ば強引に口の中に詰め込むと、その場から走り去っていく。

 その後ろ姿を見送りつつ、俺はガレットをゆっくりと味わう。

 ホワイトスターにもガレットを売っている店はあるし、正直なところを言えば、このガレットよりも美味い。

 だが、それでも……こうしてクレイドルの街中でガレットを食べるというのは、雰囲気を味わうという意味では、まだ見慣れないだけにホワイトスターよりも上かもしれない。

 言ってみれば、祭りの屋台で食べる屋台の料理は、本来ならそこまで美味くはないのに祭りの雰囲気で美味いと感じられるといったのと同じ感じか。

 具の8割……場合によっては9割かそれ以上がキャベツのお好み焼きとか、何個かタコの入っていないたこ焼き。

 普通の生活の中でそういうのを食べる事になれば、不満しか口に出ないだろう。

 だが、祭りという雰囲気の中では、不思議とそのような料理であっても許せるのだ。

 俺がガレットを食べながら感じているのも、ある意味でそれに近い。

 

「あれ、アクセルじゃん。こんなところで何をしてるんだ?」

 

 ガレットを食べながら街並みを見ていると、不意にそんな声を掛けられる。

 その聞き覚えのある声に視線を向けると……

 

「何だ、エンデュミオンの鷹か」

「何だよ、月の大魔王」

 

 俺に声を掛けてきたのは、エンデュミオンの鷹こと、ムウ・ラ・フラガ。

 向こうもこっちの言葉に月の大魔王という軽口を返してくる。

 ……この月の大魔王って異名、俺が思った以上に広がってるんだよな。

 いやまぁ、たった1機のMS――正確にはMSではないのだが――でグラナダを陥落させたんだから、強烈な印象を残したのは分からないでもない。

 その上で、月の大魔王という異名が広まっていったのだから、それを受け入れるような余地は誰にでもあったと、そういう事なのだろう。

 ここまで広がってしまった以上、今更それを取り消すような真似は出来ないだろう。

 そもそも、大魔王とか何とか今までも普通に言われてきただけに、そこまで気にしていないというのが、正直なところでもあるのだが。

 

「で? 何だってムウがクレイドルにいるんだ?」

 

 エンデュミオンの鷹と月の大魔王という言葉に、周囲にいた者達からの視線を受けつつ、そうムウに尋ねる。

 エンデュミオンの鷹も月の大魔王も、このクレイドルでは……いや、UC世界では有名な異名だ。

 それがこんな場所にいると知れば、視線を集めるのも当然だろう。

 俺の顔は建国宣言とかにも出て知られているのだが、それでも意外と気がつかれなかったのは少し驚きだ。

 いやまぁ、知られていても俺がお忍びでこうしてきているんだから……と、そういう風に思っていた相手とかも多そうだけど。

 ともあれ、こうして人目を引くような真似をすれば、馬鹿な事を考える奴が出てきてもおかしくはない。

 それこそ、俺やムウとお近づきになって、美味しい思いをしようと考えるような奴とか。

 だからこそ、そんな面倒な事になる前に移動した方がいいんだが……まぁ、そういう奴はそういう奴で、後でセイラとかに報告しておけばいいから、別にいいか。

 

「ちょっとルナ・ジオン軍の連中と模擬戦をな」

「あー……なるほど。それで? 腕はどうだった?」

「上がって来ているのは間違いないな。……にしても、今更、本当に今更の話だが、ジンやシグーをナチュラルが使っていると思うと、微妙に思うところがあるな」

 

 そう思うのは、やはりムウがSEED世界の出身で、ザフトとの戦いが始まった時から最前線で戦ってきたからだろう。

 俺が呼んだエンデュミオンの鷹という異名も、その時についたものだし。

 

「ムウの気持ちも分かるけどな。ただ、ジンとかシグーはコーディネイターでなくても使えるように、色々と改修されてるだろ。……もっとも、このUC世界の人間は色々と特殊だから、精鋭くらいになれば使えてもおかしくはないけど」

 

 そもそもの話、コーディネイターというのはあくまでも人間に可能な動きしか出来ない。

 別に、人間以上の存在という訳でもない以上、恐らくSEED世界のナチュラルでも、ジンを始めとするザフトのMSを操縦出来る者がいても、おかしな話ではない。

 寧ろ、人間以上の存在という事であれば、ムウやクルーゼが持っていたようなニュータイプ染みた共感覚だったり、SEEDとかいう能力だったりの方が、それらしいだろう。

 

「分かってはいるんだけどな。……ん? アクセル、何か美味そうなの食ってるな。それ……何て料理だったか。以前テュカと一緒に食った……ああ、そう。ガレットだったか」

「知ってたのか」

 

 ここで妻のナタルではなくテュカの名前が出たのは、後でナタル辺りに報告しておくとして。

 

「ああ、言ってみれば蕎麦粉のクレープだろ? ……一応聞くけど、ゴーヤは入ってないよな?」

 

 このように尋ねてくるという事は、恐らくムウもゴーヤクレープによって痛い目に遭った事があるのだろう。

 

「ああ、普通のガレットだ」

「そうか。……なら、俺も食うかな」

 

 そう言い、少し離れた場所にある屋台で、ムウもガレットを買うと、そのまま俺の隣に座る。

 先程まではジャンがいた場所だ。

 

「で? これからルナ・ジオンはどうすると思う?」

「正直なところ、それを俺に聞かれてもな」

 

 ガレットを食べながら尋ねてくるムウだったが、ルナ・ジオンがこれからどう動くのかといった事を、俺が知っている筈もない。

 まぁ、ゴップと会談をした時のようにアドバイスをしたりといった真似は出来るが、結局のところはそこまでの話だ。

 最終的に決めるのは、ルナ・ジオンの幹部達……そして、女王たるセイラだ。

 

「何だかんだで、ジオン公国とも資源の取引をしている関係で、敵対しつつ貿易も続けているといった妙な関係なのは間違いないんだよな。連邦とはそれなりに友好的な関係を築いているし……サイド6の方は、特にこれといった何かがある訳でもないし」

 

 ジオン軍、連邦軍共にルナ・ジオンに攻めてくるといった真似もしていないし……そう考えれば、やはり半ば膠着状態に近くなっていると言ってもいい。

 寧ろ、月よりもハワイの方が、色々と動きは活発なんだろうなと思いつつ、俺はムウと一緒にガレットを食べるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:235
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1435

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