転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2176話

 正直なところ、明日菜達がこの場に……連邦の使節団との交流会の場にいるのは、疑問でしかない。

 だが……今それよりも重要な事は、ジト目でこちらを見ている明日菜をどうするか、という事だろう。

 

「で? 何で明日菜がここに?」

「……連邦だっけ? その組織の人達に、私達の力を見せるようにって要望がきたのよ」

「あー……なるほど」

 

 明日菜の事だから、何となく遊びに来たとか言われるかと思ったんだが、予想外にしっかりとした理由だったらしい。

 近衛は回復魔法が使える、分かりやすい魔法使いだ。

 桜咲は、神鳴流という気を使う流派の使い手だ。

 明日菜は……咸卦法とかいう気と魔力を合成して使う、一種のブーストを得意としている。

 その辺りの事情を考えれば、明日菜達がここに呼ばれる理由としては十分、か。

 俺達以外の者であっても、普通に魔法が使える事が出来ると、そうした態度を見せたいシャドウミラーやルナ・ジオン側の思惑と、魔法についてより多くの情報を集めている連邦の思惑が一致した形だ。

 

「なるほど。まぁ、それなら納得だな。……とはいえ、普通なら実働班の連中を連れてくればいいだけのような気もするけど」

「知らないわよ、その辺は。……で? 私はこれで私達がUC世界にやって来た理由を説明したけど……アクセルの方は一体どうなっているのか、教えて貰ってもいいかしら?」

 

 コメカミに薄らと血管を浮かび上がらせながら、告げる明日菜。

 美人なだけに、色々と残念な感じだ。

 とはいえ、ここで迂闊なことを言えば間違いなく咸卦法による攻撃が来る。

 連邦の使節団の者達にしてみれば、その光景は面白いのかもしれないが……少なくても、俺はそんな目に遭うのはごめんだった。

 物理攻撃は全く効果がなく、それこそ拳銃や狙撃銃、バズーカ、ミサイル……核兵器ですら、俺には効果がない。

 だが、そんな俺にも魔力や気といったものを使った攻撃は十分なくらいに効果がある。

 そういう意味では、明日菜の咸卦法というのは俺にダメージを与えるには十分なだけの威力を持っているのだ。

 連邦の人間がいるこの場所で、そのような光景を見せるのは色々な意味で危険なのは間違いない。

 

「あー、ほら。落ち着け。俺はジェーンとこれからのルナ・ジオンについての話をしていただけだ。なぁ?」

「ふふっ、そうですね。そういう事にしておきましょう」

「……おい」

 

 意味ありげな様子で告げるジェーン。

 当然そんなジェーンの様子を見れば、明日菜にとって面白くはない訳で……

 

「アクセル?」

「あー……ほら。あまり気にするな。これはジェーンが得意としている悪戯だ、悪戯」

 

 実際、俺とジェーンの間には特に何かがある訳でもない。

 であれば、別にここまで焦る必要もないのだが……

 

「あれ、アクセル君。それに明日菜達も。どうしたの、こんな場所で」

 

 そんな声がして、救いの女神が姿を現す。

 こっちにやって来たのは、円。

 それこそ、明日菜を始めとした面々とは、10年以上もの付き合いが……もしくは、もっと長い付き合いのある相手。

 そんな円の出現に、少しは落ち着いたのだろう。明日菜はそっと視線を逸らしながら口を開く。

 

「別に、ちょっとアクセルと話していただけよ。……そっちはどうしたの? アクセルを探しに?」

「え? あ、うん。そうそう。実はクレイドルで牛丼店を開きたいって人がいてね。……いや、この世界にも牛丼ってあったんだ」

 

 しみじみと呟く円。

 冷静沈着で出来る女といった様子の円だが、そんな円の弱点の1つが牛丼だ。いや、弱点って言ってもいいのかどうかは分からないけど。

 俺と初めて会った時から、円は牛丼という料理に強い思いを抱いていた。

 そんな円にしてみれば、このUC世界における牛丼というのは興味深いものなのだろう。

 

「あー……話は分かったけど、それを俺のところに持ってこられてもな。いや、けどそうだな。出来ればルナ・ジオン側ともその辺については話しておいた方がいいか」

「そう? まぁ、アクセル君がそれでいいのなら、私は構わないけど」

 

 円は俺の言葉に、一瞬だけ明日菜の方を見るも……結局それ以上は何も言わず、俺と共にその場から立ち去る。

 ……立ち去る前に、近衛や桜咲に軽く手を振っていたが。

 ともあれ、俺は円と一緒にその場を離れ、広い会議室の中を歩く。

 

「で? 牛丼って……本気か? サイド7とかサイド3とかでも色々と歩き回ったけど、牛丼屋とかは見た事がなかったぞ」

 

 ハンバーガーショップの類はそれなりにあったのだが……そういう意味では、やはりこのUC世界というのは洋風の文化が強いのだろう。

 

「そうね。出来れば本気で進めてみたいとは思うけど。あれはアクセル君をあの場から連れ出す為の方便よ? 本気で進めてみたいけど」

 

 何故2回言った。

 いや、円にとって、牛丼というのはそれ程の意味を持っているという事なのだろう。

 にしても、あの場から連れ出すか。

 それは俺にとっても嬉しかったが……つまり、円は明日菜に俺が責められている光景を、じっと見ていたと。そういう事なのか?

 そんな円に対し、若干不満そうな視線を向けてしまったのは……俺としては、仕方のない事だろう。

 

「何? もう少し見ていた方が良かった?」

「そうは言わないけど、出来ればもう少し早めに助けに来てくれれば嬉しかった」

「あのねぇ……アクセル君ももっと頻繁に明日菜を構ってあげてれば、こういう事にはならなかったのよ? 全く……」

 

 そう告げる円の言葉に、俺はそっと視線を逸らす。

 円が何を言いたいのかは分かっている。分かっているが……俺の方にも、色々と問題はあるのだ。

 

「そう言えば、技術班の誰だったか……ちょっと忘れたけど、女同士でも子供を作れるようになる技術を研究しているらしいな」

「……随分と豪快に話題を逸らすわね。まぁ、いいけど。で? その技術を真っ先に使うのが、あの2人って訳?」

 

 この場合のあの2人というのが誰を示しているのか。それは、考えるまでもなく明らかだ。

 

「近衛と桜咲の子供か。どんな子供になるのやら」

 

 ネギま世界の中でも屈指の魔力量を持つ近衛と、神鳴流の使い手として極めて高いレベルで気を使いこなす桜咲。しかも烏族のハーフで翼を持っているという事は、その子供にもその特徴が受け継がれる可能性が高い。

 魔力と気を使いこなし、虚空瞬動を使わずとも翼で空を飛べる。

 言ってみれば……明日菜の上位互換だと感じるのは、決して俺の気のせいではない、筈だ。うん。

 

「あの2人の子供かぁ。……ちょっと興味あるわね」

 

 円もまた、近衛と桜咲の子供には興味があるのか、そう告げる。

 ……ちなみに。本当にちなみにの話だが、以前レモンに混沌精霊と化した俺の身体をしっかりと、それこそ身体の隅々まで、これ以上ないってくらいに入念に検査をして貰った事がある。

 その結果分かった事は、人間ではなくなった俺の身体でも子供を作れるという事だ。

 ただし、その確率は普通の人間としてかなり低い。

 ……レモン曰く、俺は1つの生命体として個で完結しているから、らしい。

 もっとも、本当の意味で個として完結している場合は、それこそ子供を作るような真似は出来ないので、不完全な意味で個として完結している、というのが正確らしいが。

 ともあれ、毎晩のように夜には10人を超える恋人達全員が力尽きるまで行為が行われているのに、それでも誰も妊娠していないというのは、それが原因らしい。

 この場合、喜べばいいのか、悲しめばいいのか……正直どう反応していいのか迷ったのは内緒だ。

 ただ、子供が出来る可能性が少ないがあると聞き、マリューや千鶴、ミナトといったような母性の強い連中が喜んでいたので、取りあえず良しとしておく。

 子供が出来る確率はかなり低いらしいので、本当にいつになるのかは分からないのだが。

 ……もっとも、毎晩の出来事を考えれば、それこそ明日誰かが妊娠してもおかしくはない。

 

「アクセル君? どうしたの?」

 

 そんな俺の様子が気になったのか、円がそう尋ねてくる。

 だが、俺はそれに対して首を横に振り、何でもないと返事をする。

 

「ちょっとあの2人の子供がどういう子供になるのかを考えていただけだ。……あの2人の能力を受け継いだ子供が、シャドウミラーで育つ。これって、色々ともの凄い事になりそうだとは思わないか?」

「……否定はしないわ」

 

 円は俺の言葉に何を考えたのか、数秒の沈黙の後でそう告げる。

 俺の恋人の中でも常識枠の1人である円だけに、俺の言葉に色々と思うところがあっても不思議ではない。

 まぁ、本当に常識枠だというのであれば、それこそネギま世界の魔法界で拳闘士として活躍し、上位に位置するだけの強さを得るような事は、そうそう出来ないだろうが。

 

「あ、ほら。アクセル君。向こうでちょっと呼んでるみたいよ。行ってみた方がいいんじゃない?」

 

 ふと、俺と話していた円はそんな事を告げてくる。

 俺を呼んでいる? それって、一体誰がだ?

 そんな疑問を抱きつつ、そちらに視線を向けると……ラルが俺の方に視線を向けていた。

 

「ラルか。……分かった。じゃあ、ちょっと行ってくるけど……円はどうするんだ?」

「え? 私? うーん、そうね。……出来れば他の人とも色々と話してみたいわね。特に、連邦の人とは全く話していないんだし」

 

 そう告げる円の様子から、取りあえず放っておいても構わないだろうと判断し、俺はラルの方に向かう。

 

「じゃあ、この辺でな」

「ええ。……ただ、あまり女の人に粉を掛けないようにね」

「いや、そんなつもりはないんだが……」

 

 一応円も俺とジェーンのやり取りについては気になっていたのか、そんな風に言ってくる。

 円にしてみれば、先程のやり取りには若干なりとも思うところがあったのだろう。

 ……とはいえ、だからと言って俺がそれで何かを言えば、藪蛇になりそうだしな。

 そんな訳で、俺はそれ以上何も言わずにその場を後にし、ラルの下に向かう。

 何だかんだと、ラルは俺が来るのを待っていたらしく、何故か笑みを浮かべながら口を開く。

 

「アクセル、ちょっといいか?」

「ああ、構わないけど……何かあったのか?」

「いや、実はな、連邦からやってきた使節団の何人かから、ホワイトスターを見てみたいと言われてな」

「あー……そっちもか」

 

 何となくだけど、そうなるような予感はしていた。

 実際、俺が話していた男からも似たような事を言われたし。

 ともあれ、そっちを希望する者が多い場合は、一体どうするべきか。

 こっちとしても、一応向こうがそう希望するのであれば、対応する必要がある。

 ……とはいえ、向こうの希望をそのまま受け入れるってのも、正直どうかと思うしな。

 寧ろ、向こうとしてはこっちにそんな風に判断させたいのではないか? とすら思ってしまう。

 

「そっちも? アクセルの方もか?」

「ああ。俺がさっき話した奴は、それを臭わせていた。……とはいえ、向こうにしてみれば死活問題だろうし、無理もないけどな」

「それは否定せん」

 

 ルナ・ジオンのみがシャドウミラーと繋がっているという今の状況は、連邦にしてみればかなり面倒な事なのは間違いないだろう。

 出来れば、連邦もそこに入り込みたいと、そう考えてもおかしくはない。

 とはいえ、こちらとしてはそれを許可出来る筈もない。

 

「その辺り、正直どうしたものだろうな。こっちとしては何人かなら受け入れても構わないんだが……」

 

 ただ、どうせなら何らかの利益を引き出してからホワイトスターに連れて行きたい。

 ……ホワイトスターに連れて行けば、間違いなくお互いの技術格差をしっかりと理解出来るだろう。

 そういう連中は、シャドウミラーにとって非常にありがたい相手なのは間違いない。

 そんな訳で、受け入れるのなら受け入れても構わないと、そう思ってはいるのだ。

 

「ふむ、利益か。……いっそルナツーでも貰うか?」

 

 珍しく、ラルが冗談を口にする。

 まぁ、ジオン公国はハワイ諸島を差し出したし、まだこちらに寄越してはいないが、ドロスやグワジン級を譲渡すると言っている。

 であれば、連邦もこっちに何らかの献上品――という表現はどうかと思うが――を渡すというのは、ありだろう。

 

「とはいえ、ルナツーを寄越すような真似はしないだろ」

 

 ルナツーは、宇宙に残った連邦軍の最後の拠点だ。

 ……実際にはサイド7とかもあるのを考えれば、まだ余裕はあるのかもしれないが。

 そのようなルナツーを、ルナ・ジオンに渡すかと言われれば……まず考えられない事だった。

 あればあったで、月の周辺に持ってくるか……もしくは、今の位置でルナ・ジオンの基地として使うというのも面白そうではあるが。

 そんな風に考えつつ、俺はラルと言葉を交わすのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:235
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1435

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