転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2172話

 クレイドルには多くの人が集まってくるようになったが、その中でも目立っているのは、やはりというか、当然のように学者達だろう。

 学者達にとって、異世界と繋がっているというクレイドルはこれ以上ない程に興味を惹くのか、何人、何十人どころか、100人近い人数の学者達が現在クレイドルに滞在している。

 しかも、これは今の時点での話であって、現在クレイドルに向かっているカトンボやら自分達で借りた宇宙船やら……その手の者達を集めると、場合によっては1000人を超えてもおかしくはない。

 まぁ、クレイドルの広さを考えれば、その程度は余裕で受け入れる事は出来るんだが……いっそ、学者の為の街、研究都市とかを作っても面白いかもしれないな。

 ともあれ、そんな風に大勢がいる学者の中でも、特に現在進行形ではしゃいでいるのは、生物学者だった。

 本来ならこの世界にはいない生物。それらが生物学者達の好奇心やら何やらを強く刺激しているらしい。

 とはいえ、こっちとしてはそんな連中であっても相応に役立つのは間違いなく……だからこそ、偶然暇をしていた俺が、何となく学者達の護衛を引き受ける事になった訳だ。

 もっとも、この場合の護衛というのは、野生動物から……というのもあるが、一応人を相手にしての警戒もある。

 この学者達が、誰かに狙われないとも限らないのだから。

 普通に考えれば、生物学者が他人に狙われるなどといったことは起きにくい。

 だが、それはあくまでも普通ならであって、実際に狙われた者がいたとなれば、話は別だった。

 一昨日、クレイドルの中で生き物の調査をしていた学者の1人が、何者かに襲われたのだ。

 結局その時は護衛についていた量産型Wが襲撃者を取り押さえたのだが、取り押さえられた瞬間に奥歯に仕込んでいた毒を飲んで自殺。

 結局何も情報を得る事は出来なかった。

 一応といった感じでその背景を探るべくルリやラピスに色々と調べて貰いはしたのだが、結局分かったのはデータベース上には存在しない人物……戸籍やら何やらも一切ない人物だという事だけだった。

 当然のように、そのような人物が簡単にルナ・ジオンに入国といった真似が出来る筈もないのだが、何故か……本当に何故か、その人物は入国していた。

 その辺りも詳しく調べてみたが、申告されていた書類は真っ赤な偽物……いや、別に偽物という訳ではないが、男がルナ・ジオンに来るすぐ前に用意されたものだというのがはっきりとしただけだった。

 当然そこも調べたのだが……予想外な事に、ルリやラピスであっても追跡は出来なかった。

 長谷川にも頼んでみたが、こちらもお手上げ。

 どうやらネットに接するのは最低限になっており、結果としてルリ、ラピス、長谷川といった面々でもどうにも出来なかったらしい。

 これが、ルリ達の弱点――ネットワークに接続してなければ無意味――を突いた形となったのは、偶然だったのか、それとも狙ったのか。

 個人的には偶然だと思いたいところだが。

 ただ、それでも万が一を考えれば、こちらとしても手を打っておく必要があり……暇な俺に白羽の矢が立った訳だ。

 実際、俺が護衛をしているのであれば、それこそ誰が何をしようとも、それを迎撃するのは問題ない。問題ないのだが……

 

「ああああああああああああああっ! 待てって言ってるだろ! 好き勝手に行動するんじゃない!」

 

 そんな俺の怒声が周囲に響く。

 いや、クレイドルにやって来た時点で、この連中が好奇心旺盛な者達だというのは、当然のように知っていた。

 そもそも、好奇心旺盛でもなければ、わざわざクレイドルまでやってきたりはしなかっただろうし。

 そうである以上、この結果は予想してしかるべきだったのかもしれないが……それでも、実際にその場に直面している俺が怒声を上げるのも当然だろう。

 何しろ、この連中ときたらマイペースというか、自分の思う通りにしか行動しないのだ。

 それこそ、出来れば1人ずつにコバッタではなく、メギロートでもつけたいと思うくらいには。

 一応コバッタでも、ある程度の護衛は可能となっている。

 だが、それはあくまでもある程度だけであって、本格的に襲撃をしてくればそれを防ぐような真似は出来ない。

 量産型Wをもっと連れてきた方がよかったか?

 ただ、何だかんだと量産型Wは優秀だからこそ、他に多くの仕事があったりするんだよな。

 

「おおおおおおおおおおっ! こ、これは……この動物は何だ!? どうすれば、このような姿になるのだ!」

 

 視線の先でそう叫んでいるのは、UC世界においてもそれなりに優秀な学者だ。

 一応、今日俺が率いてきた中では一番偉い……という事になっている。

 もっとも、本人は偉いとかそういうのよりも、自分の知的好奇心を満足させる為に動くのが最重要といった様子ではあったが。

 

「あー、ほら。落ち着け。取りあえず落ち着け。お前が怖い顔をしてるから、逃げそうになってるぞ」

 

 そう言いながら、綿毛のような毛に身体全体を包まれている、リスのような生き物に突進しようとする学者を止める。

 そうして動きを止めた視線の先では、そのリスのような生き物は耳を羽ばたかせながら飛んでいった。

 ……そう、俺がリスではなくリスのような生き物と表現していたのは、そのリスのような生き物は耳が大きく、その耳を羽ばたかせる事によって空を飛べるからだ。

 正直なところを言わせて貰えば、そのリスの翼……耳か。その耳の大きさでリスが飛べるとは思えない。思えないのだが……それでも飛んでいるのだから、恐らく物理的な方法以外の何かがあるのだろう。

 にしても、この生き物は……やっぱりマクロス世界から連れてこられた奴か?

 普通の地球では、このような生き物はいない。

 いや、もしかしたらいるのかもしれないが、少なくても俺は知らなかった。

 ネギま世界なら、普通にあるかもしれないが。

 ああ、でも向こうだと火星の魔法世界の生き物は普通の世界で生きる事は出来なかったか?

 とはいえ、ワイバーンの件もあるので確実にどうこうといえる訳ではないのだが。

 

「あああああ!」

 

 俺のせいで逃げ出してしまった! と、不満を露わにする学者。

 だが、俺はそれに構わず……

 

「ほら、お前も! 離れすぎるな!」

 

 影槍の、刃のないものを伸ばしてその身体を絡め取って動きを止める。

 

「おわぁっ! こ、これは一体!?」

 

 焦った様子を見せる学者だったが、俺はそれに答えずこっちに引っ張ってくる。

 向こうにしてみれば、いきなり自分に巻き付いた何かが自分を運んでいる訳で、普通ならパニックになってもおかしくはない。

 おかしくはないのだが……こうして見る限りでは、本人は喜んでいるようにしか見えない。

 まぁ、クレイドルでは実際に魔法を見る事が出来るというのは、当然のように知られている。

 そうである以上、学者も魔法を見た程度で驚く事はないのだろう。

 とはいえ……俺がそんな相手の心情を考えたりする必要もないので、特に気にしたりはしないで、また別の相手に影槍を伸ばしてこっちに引っ張ってくるのだが。

 

「なぁ、アクセル代表。ヒュドラとかいう異世界の動物を見る事は出来ないのか? 聞いた話では、普通の動物とは違うらしいが」

「あー……ヒュドラは大人しいとはいえ、肉食獣なのに変わりはないんだ。素人が迂闊に近寄ると、色々と危険だ」

「それは分かっている。だが、アクセル代表がいるのなら、その辺の心配はいらないのではないか? であれば……」

 

 この学者連中、俺がアクセル・アルマーだと知っても特に動揺したり驚いたりといった事をしないのは助かるんだが……だからって、俺をいいように使うか?

 

「取りあえず、その選択は却下だ。お前達、狙われてるって自覚はあるのか? 一応俺が護衛についているとはいえ、絶対に守れるって訳じゃないんだぞ?」

「そうだな」

 

 ふと、いきなりそんな真面目な声が聞こえてきた事により、驚く。

 いや、それも当然だろう。なぜなら、そう答えのはこの学者達の中で一番偉い人物……そう、あの巨大な耳を持つリスを何とかして捕まえようと……もしくは、観察したいと思っていた学者だったのだから。

 意外と言えば、あまりに意外。

 そんな光景を眺めつつ、俺は自分でも怪しげな視線を学者に向けられるのを止められなかった。

 

「で? 一体何を考えてそんな事を言ったんだ? まさか、本気で……という訳じゃないよな?」

「ん、ごほん、ごほん、ごほん」

 

 俺の言葉に、あからさまに咳をする学者。

 

「で? 何が狙いなんだ?」

「いや、アクセル代表は炎の動物を出す事が出来ると聞いている。しかも、その炎の獣……炎獣と言ったか。その炎獣はかなりの強さを持つのだろう?」

「……どこでそれを知ったんだ?」

 

 正直なところ、炎獣についての情報を学者達が知ってるとは思わなかった。

 いや、別に隠していた訳じゃないし、ちょっと事情通の相手に聞けば、その程度は普通に分かってもおかしくはないのだが。

 

「蛇の道は蛇……と言いたいところだけど、そこまで難しい話じゃない。何日か前に金髪の軽そうな男に会ってな。その男から、アクセル代表が炎獣というのを使えると聞かされただけだ」

 

 金髪の軽そうな男?

 そう言われて、すぐに思いついたのは……当然ながら、エンデュミオンの鷹こと、ムウだった。

 いやまぁ、俺の能力を知っていて、金髪で軽そうな男。

 そんな条件にピッタリな奴は、そうそういない。

 となると、やっぱりその正体はムウの可能性が非常に高かった。

 あいつめ、まだ俺がエンデュミオンの鷹の異名を使ったことを根に持ってるのか?

 いやまぁ、俺もちょっと調子に乗りすぎたとは思うけど。

 ただ、ムウだって俺に月の大魔王という異名をつけて広げたんだから、その辺はもういいだろうに。

 

「あー……まぁ、取りあえず誰がお前達に炎獣の事を言ったのかは分かった。不可能を可能にする男だな」

 

 今度ムウをエヴァと本気で戦わせてみるか? それなら、結構面白い事になるような気がしないでもないけど。

 不可能を可能にするって言ってるくらいなんだし、それくらいは出来てもおかしくはないよな。

 うん、エヴァもたまには本気で戦いたいみたいな事を言っていたような気がするし、ムウには不可能を可能にしてもらうとするか。

 何だかんだとエヴァも優しいから、ムウを直接殺すような事はしないだろうし。

 

「で? どうなんだ? 炎獣というのを見せて貰えるのか?」

「あー、そうだな。まぁ、別に隠していた訳でもないから、それくらいはいいか」

 

 呟き、俺は右手を白炎へと変える。

 

『おお!』

 

 聞こえてきた他の学者達の驚愕の声。

 その声を背景に、生み出された炎獣はそれぞれ犬、猫、鳥、狐、狸、鹿、猪……といったように、様々な動物の姿をとる。

 そうした後で、炎獣達はそれぞれ好き勝手に動き始めた。

 それを見た学者達は、即座にそれを追う。

 もっとも、中には一瞬躊躇している者もいたが。

 そんな躊躇している者の1人が、そっと俺の方を見てきた。

 

「な、なぁ。アクセル代表。その……炎獣というのは炎で出来ているんだが、それは触っても問題ないんだよな? 火傷をするとか、そういう事は……」

「安心しろ。炎獣の炎は普通の炎じゃない。それは、白炎……白い炎なのを見れば、一目で分かるだろ。お前達が炎獣に危害を加えようとしない限りは、特に怪我をする事はない」

 

 もっとも、それは逆に言えば炎獣に危害を加えようとすれば、炎獣も反撃するという事なのだが。

 さて、学者の何人が火傷をするかな?

 勿論、そっと触れたり、触ってもいいのかと聞いてきたりした相手なら、火傷をするような事もないのだが。

 ともあれ、多くの学者達が炎獣の方に向かって近づいていく。

 ……おい、お前達。野生動物――野生と表現してもいいのかどうかは微妙だが――の観察はいいのか?

 向こうの方で、牛に近い……それでいながらユニコーンのように額から長い一本の角を持っている動物が、不思議そうにこっちを見ているぞ?

 いや、この場合はこっちを見ているのではなく、炎獣を見ているのか?

 まぁ、どちらにしろこっちに興味を持っているのは間違いないのだが。

 

「熱ぃっ!」

 

 そんな牛を見ていると、ふと悲鳴が聞こえてくる。

 悲鳴のした方に視線を向ければ、そこではやはりというか、予想通りというか炎獣を前に大きく手を振っている学者の姿があった。

 正直なところ、あー……やっぱりという思いが強い。

 ちなみにそんな学者のすぐ側では、狐の炎獣が優雅に歩いていた。

 恐らく……いや、間違いなくあの炎獣にちょっかいを出して、その結果として火傷を負う事になったのだろう。

 ……にしても、こういう時にこんなにのんびりとしていてもいいものなのか。

 そんな風に思いつつ、俺は束の間のバカンスともいえる仕事を楽しむのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:235
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1435

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