転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2154話

 ルナ・ジオンが月を占拠してから、数日……予想外な事に、その間には特に大きな騒動はなかった。

 そう、例えばジオン軍や連邦軍の部隊が月を取り返す為に部隊を派遣してくるといった真似はの話だが。

 それ以外の小さい騒動、具体的には月面都市の中でもルナ・ジオンに従うのが嫌だという連中が暴れたりしたのを鎮圧するといった行為は幾つかあったようだが。

 まぁ、結局は量産型Wやメギロート、バッタといった戦力によって鎮圧され、大きな騒動になるような事はなかった。

 ……連邦軍はジオン軍を相手に散々連戦連敗している以上、例え月を取り戻したくても戦力がないのかもしれないが。

 そういう意味では、ジオン軍の方も突撃機動軍の所有する兵器の多くが破壊されてしまい、迂闊に軍事行動を起こせなかったというのはある。

 そういう感じで、宇宙はいっそ不気味な程に平和な時間が流れていた。

 とはいえ、連邦軍とジオン軍が偶然遭遇して戦いになるといった事はそれなりにあったみたいだが。

 ともあれ、そんな感じで宇宙は平和な一時だったが、地球では違っている。

 それこそ、ジオン軍と連邦軍がかなり派手にやり合っているらしい。

 宇宙が平和だったのは、ジオンも連邦も、まずは一番厄介な相手と優先的に戦っていたからというのもあるのだろう。

 もっとも、ルナ・ジオンに対して決して監視の目を緩めるような真似はしていないと思われる。

 そんな中で、俺が何をやっているのかと言えば……

 

「ほら、そっち! バッファローを逃がすなよ! マイクローン化されていても獰猛だからな!」

 

 俺のその言葉に、サイド3から移住してきた面々――顔立ちから考えて、恐らくマハル出身だろう――が慌てたように地面を走っているバッファローを追う。

 本来の大きさであれば、バッファローはかなり巨大だ。

 それこそ、生身の人間が一人でどうこう出来る相手ではない。

 だが、マイクローン装置によって小型化された今のバッファローは、それこそ足首くらいまでの大きさしかない。

 子猫や子犬といったのと同じくらいの大きさ。

 もっとも、それでも角はきちんと存在するし、先端は鋭利に尖っている。

 そうである以上、小さいからといって甘く考えていれば……

 

「痛ぁっ!」

 

 あ、やっぱり。

 見た目からしてごつい、オルテガ並の体格の男は、バッファローを捕まえようとして伸ばした手を角で突かれ、痛みに悲鳴を上げる。

 とはいえ、バッファローが小さいおかげでそこまで大きな被害ではない。

 分かりやすく表現をするのなら、ザリガニやカニに手を挟まれたといった程度だろう。

 致命傷ではないが、痛いものは痛い……といったところか。

 ちなみにそんな光景は珍しくなく、現在はいたる場所で繰り広げられている。

 もっとも、中には何人かバッファローを手なずけてしまった者もおり、そのような者達は角で突かれるような事はなく、そっとバッファローを撫でたりしているが。

 現在ここにいるのは、クレイドルで働く上で牧畜を選択した者達だ。

 ……何で牧畜でバッファロー? と思ったが、コロニーで育ってきた連中には当然のように牛でも馬でも、それ以外でも、他の生き物に接する機会は少ない。

 そんな訳で、牧畜をやる面々は日々様々な動物に触れてるって事なんだが……これ、普通に牛、馬、羊、山羊、ダチョウ、といった、メジャーな動物辺りで良かったんじゃないか?

 いやまぁ、山羊やダチョウがメジャーかどうかは疑問の余地ありだが。

 ただ、ダチョウというのは雑食性で環境の変化にも強く、肉も不味くはない。卵も巨大で食い応えがあるし、羽根も装飾品の材料として売りに出せる。

 ダチョウも人懐っこく、世話をするのに困ることはない。

 そういう意味では、かなり将来性のある動物と言ってもいい。

 もっとも、絞める時には一手間掛ける必要があるので、万能って訳でもないんだが。

 ともあれ、今日はこの連中がバッファローを相手に慣れるという事で、特にやるべき仕事のなかった俺がここを任された訳だ。

 俺がいれば、取りあえず安心だとでも思われたのだろう。

 こんな小さなバッファローなのだから、俺がいるいないは全く関係ないと思うんだが。

 そんな風に考えていると、輸送機が数機空を飛んでいくのが見える。

 その輸送機がどこに向かっているのかというのは、進行方向を見れば明らかだ。

 そちらにあるのは海で、今日海に魚の類を放すという情報を前もって聞いていたのだから。

 

「これですぐには無理でも、数年後には新鮮な魚を食べる事が出来るようになるかもしれないな」

 

 今年と来年くらいは、魚の生態系やらクレイドルで生きていた魚に何の問題もないかを調べるといった事をする必要があるだろうが、それが終わればある程度漁も出来るようになる筈だった。

 コロニーや月面都市では無理な、漁師という職業。

 それがクレイドルに現れるのも時間の問題だろう。

 海兵隊所属の誰かさんは、真っ先に漁師になりそうではあったが。

 

「ああああああああああああっ! ちょっ! アクセルさん! その子達を止めて下さぁいっ!」

 

 飛び去った輸送機を眺めていた俺の耳に、ふとそんな声……いや、悲鳴が聞こえてくる。

 その悲鳴のした方に視線を向けると、そこでは先程までバッファローと戯れていた女が、走って逃げているバッファローを追っているところだった。

 どうやら、バッファローに逃げられたらしい。

 自分で動くのも若干面倒だったので、右手を白炎にして炎獣を生み出す。

 とはいえ、バッファローは子犬程度の大きさである以上、わざわざ巨大な……それこそ獅子や虎のような大きな炎獣を生み出す必要はない。

 普通の犬よりも若干大きな、秋田犬くらいの炎獣を数十匹生み出し、解き放つ。

 炎獣は俺が何も言わなくても考えを理解しているのか、逃げているバッファローの前に移動する。

 女から逃げ出したバッファローにしてみれば、自分よりも遙かに巨大な得体の知れない何かがいきなり前に立ち塞がったのだから、それに驚異を覚えて動きを止めるのも当然だろう。

 そして、動きを止めれば後ろから追いかけてきていた女が見事にキャッチし……

 

「えっと……」

 

 いきなり自分の前に姿を現した炎獣に、どうすればいいのか迷ってる。

 騒がれても面倒なので、一応声を掛けておくか。

 

「それは炎獣。俺が魔法で生み出したものだ。人間には危害を加えないし、その白い炎は触っても火傷をするような事はないから安心しろ」

「……触っても、本当に大丈夫なんですか?」

 

 女は、逃げ出したバッファローを捕またまま、そう尋ねてくる。

 いや、興味深く炎獣を見ているのは女だけではない。他のバッファローと戯れていた者達も、炎獣を興味深そうに見ていた。

 そこまで興味深いのか?

 そう思わないでもなかったが、このUC世界の人間にとって、炎獣やら魔法やらというのは、存在しないのだから興味深くて当然だろう。

 

「あー……しょうがない。ほら」

 

 このままでは収まらないだろうと判断し、今度は無数の炎獣を作る。

 その数、約100匹。

 それぞれが犬や猫、狐、狸、鳥……そんな感じで周囲を飛び回り始めた。

 何だかバッファローが怯えているようにも思えるが、それは気のせいだろう。

 そんな風に思いつつ、俺は改めて周囲に視線を向ける。

 元は荒れ地だったとは思えない程に、周囲には木々が生えていた。

 まだルナ・ジオンが建国されてから数日にも関わらず、だ。

 これは、それこそ休む必要がない量産型W、バッタ、メギロート……それとイルメヤを含めた無人機の面々が、文字通りの意味で24時間働けますか的な感じで働いているからこその結果だ。

 樹木の移植や生物を放すといった作業に使われているそれらの総数は、数万どころか数億に達している。

 当然ながらクレイドルの中心、セイラの居城の近くにあるゲートの近くでは、かなり忙しい事になっている筈だった。

 それこそ24時間働ける云々といった感じで。

 セイラの住居たる城は、当然のように防音やら何やらがしっかりとしてるし、ゲートや城の近くには一般人が住む事は禁止されているので、特に問題はなかったのだが……もしそういうのがなければ、一日中家の隣で何らかの工事をしているかのような音で、眠る事が出来なくなっている者もいた筈だった。

 そういう点でも、ゲートのある場所をシャドウミラーの基地にするというのは、悪くない選択肢だったのだろう。

 ともあれ、そんな無人機やら何やらの力によって、現在クレイドルの緑地化や生態系の構築は猛スピードで進んでいる。

 

「アクセル代表、その、この子を下さい!」

 

 先程バッファローを逃がした女が、左手にバッファロー、右手の犬の炎獣を抱えながら俺にそう言ってくる。

 

「許可出来る訳がないだろ。その炎獣は、本物の動物とかじゃない。あくまでも俺の白炎で作った、疑似生命体だ。もし連れていっても、いずれ魔力がなくなって消滅するぞ」

 

 まぁ、俺が定期的に魔力を込めるといった真似をすれば、すぐには消えないんだが……ぶっちゃけ、面倒臭いしな。

 それに、今日はこうして偶然暇してるが、ルナ・ジオンの後ろ盾たるシャドウミラーの代表として、いざって時はかなり忙しくなるし。

 その辺りの情報を説明すると、女も納得したのか、残念そうにしながら頷く。

 

「そうですよね。アクセル代表はシャドウミラーの代表ですし、月の大魔王としてはそう暇な時間はないですよね」

「この戦争が終わった後で……待て。何だ、その月の大魔王って」

 

 俺と話していた女が、本当に自然に口にしたので、最初思い切り流しそうになったぞ。

 いやまぁ、月の大魔王というのが何を示しているのかは、俺にも分かるのだが。

 

「え? 月の大魔王。ほら、青い巨星とか、黒い三連星とかみたいな、異名ですよ」

「いや、それは分かる。分かるんだが……何がどうなって月の大魔王なんてのになったんだ?」

 

 そう言いつつも、月面都市や月面にあるジオン軍の基地、マスドライバーといった施設を1日……実質的には数時間で占拠し、翌日には予告してあった通り突撃機動軍の戦力が集まっていたグラナダをニーズヘッグ1機だけで占拠。それも、一切の損傷もなく。

 おまけに、俺が操るニーズヘッグはとてもではないが正義の味方といった様相はしておらず、どこからどう見てもラスボスや隠しボスといった外見をしている。

 その辺りの事情を考えれば、月の大魔王なんて物騒な異名を付けられても納得出来ない訳ではないが……それでも、いかにもすぎる。

 というか、大魔王という単語が使われている時点でシャドウミラーの人間が関わっているのは予想出来た。

 大魔王というのは、幾つかの世界で俺を示す単語なのだから。

 その上で、俺に異名の件で恨み……とまではいかずとも、思うところがある人物。

 そう考えて、真っ先に1人の顔が思い浮かび……俺は通信機を起動して、その人物に通信を送る。

 

『ん? おう、どうしたアクセル。今、こっちは結構急がしくて、お前と話しているような暇はないんだけど』

 

 ムウの今日の仕事は、確かMSの模擬戦だった筈だ。

 ルナ・ジオンの戦力たるMS隊を鍛えるのは、その後ろ盾のシャドウミラーとしては当然の結果だった

 それだけに、ムウが忙しいというのも分からないではないが……

 

「月の大魔王」

 

 その一言を口にしただけで、ムウは何故俺が通信を送ってきたのかを理解したのだろう。

 先程の忙しいといったのとは全く違う表情で、面白そうな視線をこちらに向けてくる。

 

『もう気がついたのか。俺の予想よりはちょっと早かったな。てっきり、もう数日は保つと思ったんだけど』

「何のつもりだ?」

『べっつにー? ただ、単純にあれだけの強さを見せつけたアクセルが異名の1つも持ってないってのは、正直どうかと思ってな』

 

 それは否定出来ない意見ではあった。

 あれだけの活躍を見せたのだから、当然のように異名は付くだろう。それはおかしくないが……

 

「だからって、わざわざあんな異名を付けるのは、正直どうなんだよ?」

『あのなぁ、散々エンデュミオンの鷹だとかなんとかやってきたんだから、それくらいは別にいいだろ。それに、似合わない異名って訳じゃないし』

「それは……まぁ、そうだが」

 

 幾つかの世界で俺が大魔王だとか何とか言われているのは知ってるし、妙な異名を付けられるよりは慣れた異名の方がいいのも間違いはない。

 

『だろう? なら問題はないと思うが?』

 

 してやったりといった笑みを浮かべるムウを見て、俺はそれ以上なにも言えず……取りあえず、月の大魔王という、ムウが広めた異名を受け入れるのだった。

 いやまぁ、別にこの異名が嫌って訳じゃないんだから、構わないんだけどな。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:235
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1435

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