転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2039話

 幾月が死んでから、数日。

当然の話だが、幾月が死んだくらいで特に学校生活に変わりはなかった。

 いやまぁ、元々学園長をしていた幾月だったが、途中で失踪した形になっており、桐条グループから新しい理事長が送られてきていたからな。

 そう考えれば、幾月が死んだところで今更月光館学園で特に何か変わったりといったことがないのは当然だった。

 ただ、S.E.E.Sの方では、やっぱり幾月が死んだというのは色々と思う者が多かったらしく、何人かが色々と考え込んでいるように思えた。

 幸い……って言い方はどうかと思うが、俺とゆかりの場合は幾月との付き合いそのものがそこまで深いものではなかったという事もあって、そこまで深刻な感じにはならなかったが。

 ともあれ、学校生活そのものは今まで通りに……

 

「はい、皆。こちらに注目。今日は転入生がいます」

 

 鳥海の言葉に、クラスから『また!?』と声を揃えて皆が言ったのは、ある意味当然だろう。

 俺、有里、チドリ、アイギス……今年に入ってから、まだ半年ちょっとの間に、既にこのクラスには4人もの転入生がやってきたのだ。

 普通に考えて、とてもではないが有り得ない流れだろう。

 もっとも、実際にはこれは桐条グループの方で影時間関係の面々を1つの教室に集めておきたいという考えからのものだが。

 ……つまり、今回の転入生も影時間の関係者なのか?

 だが、もしそれが本当なのであれば、それこそ美鶴辺りから前もって話が通っていてもおかしくはない筈なんだが。

 もしかして、美鶴が単純に忘れていただけとか……

 普通に考えれば、あの美鶴だけにそんな事は心配する必要はない。

 だが、今の美鶴は……幾月の件もあって、色々と複雑な感じになっている。

 それに、結局のところ影時間の件もまだ解決していない。

 イレギュラーシャドウを全て倒したにも関わらず、月光館学園は毎晩のようにタルタロスに変わっているし、その中には当然のようにシャドウもいる。

 前回封印の間があった時点で、その辺りは予想出来てもおかしくはなかったんだろう。……今更の話だが。

 ともあれ、そんな状況である以上、もしこのクラスに転入生が来るとしても、美鶴がこっちに連絡を入れ忘れていたという可能性は十分にある。

 あるいは……実は影時間に全く関係なく、本当に偶然このクラスに転入してきたとか?

 けどそうなると、それこそ続けて何人もの生徒が転入してきたこのクラスに新しく転入生が来る……という時点で、色々とおかしいのは間違いない。

 そこまでの事情は知らずとも、こうして連続してこのクラスに転入生が来るのは異常と感じているのだろう。他の生徒達も、ざわついている。

 

「ねぇ、アクセル。もしかして、美鶴先輩から何か聞いてた?」

 

 隣の席に座っているゆかりが尋ねてくるが、俺に出来るのは首を横に振るだけだ。

 

「そう。アクセルも知らないんだ。てっきり、美鶴先輩が私に話し忘れてただけかと思ってたんだけど」

 

 何故か最近、ゆかりは美鶴と仲が良い。

 いや、前からそこまで仲が悪かったって訳じゃないんだが、今はより仲良くなっている感じだ。

 一体2人の間に何があったのやら。

 そんな風に考えている間にも鳥海の話は続き……

 

「さて、では入ってきて」

 

 扉の外にそう声を掛ける。

 そうして姿を現したのは、1人の男。

 寒いからか、マフラーを首に巻いており……顔立ちもそれなりに整っていると言ってもいいだろう。

 だが、そんな事は関係がない。

 俺がその男を見た瞬間、このペルソナ世界に来てから初めて人に対して念動力が危険を知らせてきたのだ。

 あの男は危険だ、と。

 ……その男の仕草を見ている限り、特に危険を感じさせるような事はない。

 だが、間違いなく念動力は、あの男を危険だと示しているのだ。

 

「望月綾時です。少し前までは外国にいたので、ちょっと慣れないところがあるけど、よろしくお願いします。あ、特に可愛い女の子は仲良くしてくれると嬉しいな」

 

 ヘラリ、と。笑みを浮かべてそう告げる望月。

 見るからに軽い様子で挨拶をしているが、それでも俺の中にある念動力は、間違いなく望月を危険な相手だと示している。

 ……となると、もしかして幾月と同じように演技でもしてるのか?

 可能性としては十分にあるが……そもそも、望月はどこの手の者だ?

 美鶴から連絡がないのを考えれば、間違いなく桐条グループに所属している人物ではない。

 となると、他の組織の人間?

 だが、今の月光館学園に人を送ってくるだけの余裕がある組織が、そうそうあるか?

 タカヤの手の者か……とも思ったが、チドリを見ると特におかしな様子はない。

 まぁ、チドリが抜けた後でタカヤが戦力を補充させる為に得た人材という可能性も、ないではないが……可能性としては、そう多くないと思う。

 他に考えられる可能性としては、今までは全く顔を出してこなかった第三者の場合。

 考えてみれば当然なのだが、影時間やそれに関わる研究というのは莫大な利益となる。

 特にタルタロスから得られたマジックアイテムの類は、影時間の悲劇とかを抜きにして考えれば、組織であっても個人であっても、どうあっても手に入れたいと思う者が出て来てもおかしくはない。

 そっちの類か?

 まぁ、結局のところ望月がどういう風に対応してくるのかでこっちの動きも変わる訳だが……暫くは様子を見るしかない、か。

 そう思っていたのだが……

 

「貴方は駄目であります!」

 

 1時限目の授業が終わった休み時間、アイギスのそんな声が周囲に響く。

 ちなみに望月の席は、有里の近く。

 ……そう、この世界の原作では主人公と思われる有里の近くなのだ。

 ともあれ、そんな場所に望月が座っているという事は……実は望月も原作キャラだったりするのか?

 だとすれば、俺の気にしすぎ?

 いや、だが……念動力は間違いなく望月という人物が危険だと俺に知らせている。

 勿論、こうして見る限りでは望月にどこか怪しいところがある訳でもない。

 それでも、俺は望月に対する警戒を解く気はなかった。

 今まで幾多もの、それこそ数限りない戦場を潜り抜けてきた俺は、念動力により何度も命を救われてきた。

 そんな状況なだけに、自分が感じた第一印象と念動力のどちらを信じるかと言われれば、俺は間違いなく後者、念動力を信じるだろう。

 それだけ絶対的な信頼を、俺は念動力に抱いているのだから。

 アイギスもまた、俺と同じように望月の異常さを察知した……といったところか?

 もっとも、どこからそれを察知したのかは、俺にも分からないが。

 

「えっと、僕が駄目ってどういう事かな? ちょっと分からないんだけど。……出来れば、僕は君とも仲良くやっていきたいんだけど」

 

 困った様子でアイギスにそう言う望月だったが、その様子を見る限りでは、やはり何か演技をしているようには思えない。

 ……いや、ここでこうしていてもどうしようもない。今はとにかく、望月と話してみて、そこで何か異常がないのかを確認してみる方が先か。

 もしその状況で何も異常を感じないようであれば……そう、例えば望月本人にはその気がなくても、それ以外の何らかの要素で怪しむべき要素があるという可能性は十分以上にある。

 

「あら、アイギスがあんな風に言うなんて珍しいわね」

 

 ゆかりが、少し珍しそうに呟く。

 実際、アイギスは多少的外れな事を言う時はあるが、基本的に人当たりは良い。

 その辺り、恐らく基本プログラムにそういう風に仕込まれているんだろうが。

 それだけに、ああやって駄目だと一言で言うアイギスというのは、何か妙な感じがする。

 ゆかりもそれなりにアイギスと話す事は多いので、その辺りに違和感があるのだろう。

 

「ちょっと行ってくる」

「え? アクセルが行くの? 珍しい」

 

 ゆかりのその言葉には、微妙に異論があったが……今はとにかく、望月と話しておきたい。

 授業の合間の休み時間は、昼休みならともかく、それ以外は短い。

 それは、逆に言えば今の状況でなら望月と短時間だけ話せるという事を意味している。

 

「まぁ、ちょっと話してみたいと思ってな。俺と同じ転入生だし」

「ふーん。……まぁ、いいけど」

 

 ゆかりの方は、望月に特に興味はないのかそれだけだ。

 何気に望月は顔立ちも整っているし、有里程ではないにしろ、多くの女達からキャーキャー言われてもおかしくないんだけどな。

 いやまぁ、恋人の立場としては、そうならない事を喜ぶというのが最善の選択なんだろうが。

 ともあれ、俺はアイギスと話している望月に近づいていく。

 

「何やら騒がしいようだけど、どうしたんだ?」

「アルマーさん……この人は、駄目なのであります!」

 

 アイギスが俺に気が付くと、望月を指さしながらそう告げる。

 そんなアイギスに、望月は困った様子でこちらに視線を向けてきた。

 

「何だか、僕は駄目らしいよ?」

 

 いきなり駄目出しされた望月だったが、アイギスに怒っている様子はない。

 人当たりは間違いなく良い。……何で念動力が望月から危険を察知してるのやら。

 やっぱりさっき考えたように、望月が危険なのではなく、それ以外の何か別の要因があるという事か。

 

「駄目らしいな。……で、何で駄目なんだ? その理由くらいは教えてもいいんじゃないか?」

 

 俺の言葉に、望月はほっとした様子になる。

 ……まぁ、理由も何も言わずに駄目だと言われたのだから、それを許容出来るかと言われれば、普通は否だろう。

 せめて、どういうのでもいいから理由があれば、それを直すという事も出来るのに。……あくまでも普通であれば、の話だが。

 もしアイギスが俺と同じ理由で望月を嫌っているのであれば、話は別だが。

 

「理由は……理由は分かりませんが、駄目なのであります!」

 

 そう言うと、アイギスは有里を抱き上げ、横抱き……いわゆる、お姫様抱っこをしながら教室から出ていく。

 いや、普通ならお姫様抱っこをされるのはアイギスの方じゃないか?

 有里は王子様とか一部で言われているのを考えると、もしかしてあれはお姫様抱っこではなく、王子様抱っこなのか?

 そんな馬鹿な事を考えていると、望月が俺の方を見ながら肩を竦めてくる。

 

「逃げられちゃった。うーん、ここまで女の子に嫌われると、ちょっとショックだな」

「アイギスの場合は色々と特別だからな。それもしょうがない」

 

 有里第一主義であるとか……何よりアンドロイドであるとか。

 そんなアイギスだけに、クラスの中でも浮き気味なのは確かだ。

 もっとも、同じように浮き気味なチドリと一緒に、順平が何だかんだとクラスに馴染めるようにしてるから、そこまで問題になっていないのだが。

 そもそもの話、有里と仲が良いって時点で、迂闊にアイギスを攻撃すれば有里のファンクラブのブラックリストに載ってしまう。

 

「うん? そうかもしれないけど、それでも彼女のような可愛い子に嫌われるのは、多少なりともショックだよ」

 

 へぇ……度量も広い、と。

 こうして話してみても、やっぱり望月は特に何も妙なところはない。

 多少軽い感じではあるが、後ろ暗いところがあるようには思えないのだ。

 だが……こうして話している今でも、俺の中にある念動力は目の前にいる望月が危険だと、そう反応している。

 そうなると、やっぱり何かあるのは間違いないと思うんだが……それが何なのか分からないというのは、痛いな。

 

「そう言えば、君は?」

「ん? ああ、俺はアクセル。アクセル・アルマー。俺もこのクラスに転入してきたんだ」

 

 俺の言葉に、望月が興味深そうに視線を向けてくる。

 

「君も転入生なのかい?」

「ああ。もっとも、俺が転入してきたのは半年以上前だけどな。それに……お前が話してた有里も転入生だし、アイギスも転入生だな。後はあそこにいるチドリって女も転入生だ」

「随分と転入生が多いんだね。このクラスは、転入生が集まるようにという規則でもあるのかい?」

「そういうのはないな。ただ……誰かの何かしらの意図があるのは間違いないだろうが」

 

 まさか、これだけ転入生が1つのクラスに集まっている状況で、偶然こうなったなんて事は言っても説得力がないだろう。

 普通なら、転入生の類は他のクラスにも分散させるものなのだろうから。

 そんな俺達がこのクラスに集まっているのは、純粋に桐条グループの思惑からだ。

 望月がどうなのかは、まだ分からないが。

 

「ふーん。……色々と面白そうな感じがするね」

「そうか? まぁ、そうかもな。このクラスの居心地がいいというのは、俺が保証するよ」

「ふふっ、それは彼女がいるからかな?」

 

 そう言う望月の視線を追うと、そこではゆかりが慌てて視線を逸らしているところだった。

 何だかんだと言いつつも、やっぱり俺と望月の事が気になっていたらしい。

 

「そうだな、それは否定しない。それで……」

 

 望月との会話を続けようとしたのだが、それを邪魔したのは2時限目が始まる事を知らせるチャイムの音だった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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