転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2036話

「おお、アクセルにゆかりッチ、こっちこっち!」

 

 桐条グループの研究所に到着し、美鶴に案内されてその建物の中に入っていくと、少ししてそんな声が聞こえてくる。

 誰がその声の持ち主なのかというのは、それこそ考えるまでもない。

 俺やゆかりにとっては、聞き慣れた……聞き飽きた声だったのだから。

 

「順平、チドリはどうしたんだ?」

「あー……ちょっと気分を悪くしてな」

 

 その言葉で、チドリの素性を思い出す。

 そう言えば、チドリは桐条グループによって強制的にペルソナ使いとして覚醒させられたんだったか。

 そのおかげで、ペルソナ使いとなる事は出来たが、その暴走を抑える為に制御剤が必要となり、その制御剤は使用者の命を削る。

 ……まぁ、今のチドリはイクシールによって制御剤の副作用もないんだが、それでもやはり桐条グループの研究者や技術者がいる場所に行くのは、精神的に厳しいものがあるのだろう。

 特に、桐条グループで現在活躍している研究者や技術者は、エルゴ研の生き残りとかもいるんだろうし。

 何しろ、研究者の中でも上の立場だった幾月からして、元エルゴ研らしいしな。

 ともあれ、そんな連中がいる場所に来れば、チドリの立場としてはトラウマを刺激されてしまってもおかしくはない。

 

「で、見舞いにでも行くのか?」

 

 順平の手にスポーツ飲料のペットボトルが握られているのを見て、そう尋ねる。

 

「ま、そんなとこだな。じゃ、取りあえず俺は行くから、また後で」

 

 そう言い、順平は去っていく。

 うーん……あれは若干浮かれているのか? いや、チドリが気分を悪くしたということで、浮き足だっていると表現するべきか。

 

「チドリをここに連れてくるのは、不味かったんじゃないか?」

「そう思わないでもなかったがな。だが、チドリだけを寮に残しておく訳にもいかないだろう? それこそ、タカヤだったか? あの男がやって来たりすれば、不味い事になる。それに……チドリ本人が行くと言って聞かなくてな」

 

 なるほど。本人が行くと言ってるのであれば、美鶴の立場としては断る訳にもいかないか。

 

「そうか」

 

 それでも美鶴がチドリを気にしているのは分かるので、取りあえずこれ以上は何も言わず、それだけで流す事にする。

 そんな俺の考えは美鶴も理解したのか、その話はこれで終わりとして、俺達を連れて再び通路を歩き始める。

 途中で何度かカードや指紋、網膜、声紋といったものを使って本人確認を済ませていく。

 見れば分かるが、セキュリティ的な意味ではかなり頑丈な場所だな。

 これも、幾月の対策か?

 いや、元々アイギスという存在はこのペルソナ世界であってもかなり貴重な存在の筈だ。

 それを調べる事が出来る設備の整っている場所ともなれば、当然のように設備的にも高度なものが揃っていて当然か。

 そうして幾つもの扉を通り……やがて、有里達がいる場所に到着する。

 

「あ、アクセルさん達も来たんですね」

 

 そう言いながら、笑みを浮かべて声を掛けてきたのは、天田。

 その近くには荒垣の姿がある。

 ……うん、こうして見る限りだと、多分荒垣が天田に色々と言われてたんだろうな。

 元々復讐として、荒垣を殺すのではなく生かして罪悪感を抱かせるといった方法を選んだ天田だ。

 だが、俺が見た感じでは、別に天田はその件で荒垣にネチネチと何かを言うような真似はしていない。

 本当に、ごく普通に荒垣に接しているだけだ。

 元々、天田は荒垣に対して好意を抱いていたというのも、関わってはいるのだろう。

 ともあれ、そんな感じで現在はやり取りをしている訳だ。

 さて、いつまでああいうやり取りが続くのやら。

 そんな風に考えつつ、俺は天田に頷きを返す。

 

「ああ。学校に向かってる途中で美鶴に拾われてな」

「そうなんですか? 僕達は朝からここに来てましたけど」

「そうらしいな」

「それで……聞きました?」

 

 天田が何について言ってるのかというのは、それこそ考えるまでもなく明らかだろう。

 アイギスの中に仕込まれていたプログラムについてだというのは、明らかだった。

 

「ああ。かなり凶悪なプログラムらしいな」

「はい。……正直、幾月さんがあんな事までやるとは、思っていなかったです」

 

 荒垣と話していた時と違い、少し落ち込んだ様子で呟く。

 そう言えば、天田を巌戸台分寮に連れて来たのは、幾月だったらしい。

 天田が影時間に対する適性やペルソナの素質を持っていたからこそ、巌戸台分寮に連れて行ったんだろうが、そんな天田にとって幾月は恩人……と言ってもいいような存在だった。

 そうである以上、その幾月が自分達を裏切っていたという事は当然のように思いたくないし……ましてや、こうして仲間の1人といえるアイギスに意識を残したまま自分に絶対服従させるようなプログラムを組むとは、思ってもいなかったのだろう。

 

「まぁ、向こうが何を考えているのかってのは……捕まえてから白状させればいいだろ」

 

 正直なところ、幾月を生かして捕らえる必要があるのかどうかというのは、俺には分からない。

 幾月程度であれば、それこそわざわざそのような手間を掛けるのもどうかと思うし。

 だからといって、この場でそれを言わない程度の分別は俺にもあった。

 ……まぁ、破滅願望を持っているタカヤと行動を共にしていながら、そのタカヤに切り捨てられようとしてるのを見れば、下手をすると俺達と再会するよりも前に、殺されてしまう可能性も決して否定出来ないのだが。

 出来ればタカヤ達がさっさと幾月を片付けてくれないかなというのが、俺の正直な気持ちだ。

 もっとも、幾月の死体でもない限り、実はどこかに潜んでいて……といったことを警戒する必要が出てくるから、それはそれで困るのだが。

 

「ともあれ、幾月がアイギスに仕込んだ毒は既に消去された。今は……その服従プログラム以外に何か他のプログラムの類がないかどうかを確認してるんだったよな?」

 

 視線を向けて尋ねると、美鶴は頷く。

 

「うむ。もっとも、幾月は普段から色々と忙しかった筈だ。あのようなプログラムを他にアイギスに仕掛けるのも、難しいと思うが」

「月光館学園の理事長をやって、影時間の研究者として活動して、その上で……だからな」

 

 苦々しげに呟く真田。

 荒垣が途中でS.E.E.Sを一度抜けた以上、美鶴の次に幾月と親しいのは、真田なのだからこの反応も当然だろう。

 もし幾月が出て来たら、それこそすぐにでも真田は殴りに行きそうだ。

 何だかんだと、真田も単純で猪突猛進な性格をしているし。

 

「取りあえずアイギスの件は置いておくとして……結局俺達がここに集まった理由は何だ?」

 

 話が一段落したところで、俺は改めて美鶴に尋ねる。

 正直なところ、アイギスの件については俺達とゆかりにそういうプログラムがあったというのを知らせるだけで、わざわざここまで連れて来る必要もない。

 それに……

 

「コロマルの姿がないようだが」

「あ、ああ。コロマルはちょっとな。その、私も連れて来たかったのだが、ここには色々と精密な機器の類もあるからと言われて……」

「あー……うん、大体分かった」

 

 コロマルはその辺の人間よりも頭はいいが、結局犬であるのは変わらない。

 そうである以上、どうしてもアイギスの調査とかが可能なような場所に連れて来る訳にはいかなかったという事なのだろう。

 それに、コロマルは基本的に長鳴神社の境内にいる。

 無理にそこから離して、ここのような遠くまで連れてくるというのは……コロマル本人――本犬とするべきか――が好まないだろう。

 勿論、無理をすれば来るだろうが、今はそこまで無理をする必要もないといったところか。

 

「それで、アクセル達をここに連れて来たのは……今夜の件だ」

 

 美鶴の口から出た、今夜という言葉。

 その言葉に、自然とそれを聞いていた者達の表情が引き締まる。

 つまり美鶴は……いや、この場合は桐条グループは、か? 今夜、幾月がこちらに攻撃を仕掛けてくると判断しているのだろう。

 

「早すぎねえか? 昨日の今日だろ?」

 

 荒垣のその言葉に何人かが頷く。

 実際、それも間違っている訳ではない。ないのだが……

 

「俺は美鶴の言葉に賛成だ。昨日の今日で、こちらも幾らか疲れが残っているように見られる事や、何よりも大きいのは、影時間が終わったと俺達が思い込んでいるのに、また今夜影時間がやってくれば、俺達はショックを受ける。そのタイミングは、幾月にとっては絶好の機会と言ってもいい筈だ」

 

 そう言うと、荒垣も少し考えて頷く。

 また、これは口に出す事はなかったが、タカヤの存在もある。

 何だかんだと、幾月の頭がいいのは事実だ。

 そうである以上、タカヤが自分を切り捨てようとしているという事を考えないという可能性はないだろう。

 それこそ、まだ協力態勢にあるうちに……そう思うのは、恐らく間違いない。

 

「そうなると、やはり今夜か?」

「その方が可能性としてはかなり高いだろうな。幾月も、こっちに時間的な余裕はあまり与えたくない筈だろうし」

「今日は、お父様も巌戸台分寮に来て貰う予定となっている。幾月が何を企んでいるのかはまだ分からないが、今の状況でお父様を1人にしておくのは危険だからな」

「……まぁ、そうだろうな」

 

 幾月が何を狙っているのかは分からないが、それでも桐条グループ総帥の武治という存在は、幾月が危害を加えないとは限らない。

 そうなると、やはり武治も俺達と一緒にいた方が、被害を受けないという意味ではありなのだろう。

 

「それで、アクセル達にも、今日は夜に私達と一緒にいて欲しいのだが……構わないか? その一応寿司は用意させたが」

 

 以前俺が寿司を好きだと言った事を覚えていたのか、美鶴はそんな風に提案してくる。

 

「うおっ、寿司ってマジっすか!?」

 

 そして、ちょうどこのタイミングで部屋に入ってきたのは、順平とチドリ。

 

「もういい……みたいだな」

 

 いいのか? と聞かなくても、順平と一緒にいるチドリの様子を見れば、その体調は問題ないだろうというのは、分かった。

 にしても、またタイミング良く戻ってきたな。

 

「ああ。最後のイレギュラーシャドウを倒した祝い、というのもある。……アイギスの件もあって、素直には喜べないがな」

 

 美鶴の言葉に、順平がやっちまったといった表情を浮かべて呟く。

 そういう点も含めて、順平はムードメーカーなんだから、そこまで気にしなくてもいいと思うんだが。

 チドリも順平の様子を気にしてはいないようだし。

 

「そうか。夕食に寿司を奢ってくれるというのなら、俺は文句がない。ゆかりは?」

「私もいいわ。けど、コロマルはどうするの? 犬って寿司とか苦手だった筈だけど」

「正確には、寿司じゃなくて酢飯だな。ネタの部分だけなら、犬は全く問題なく食える」

 

 料理の話になったからか、荒垣がそう言ってくる。

 美鶴は荒垣の言葉に頷き、少し考えてから口を開く。

 

「では、コロマルの分は寿司ではなくて海鮮丼にしよう。それなら喜んでくれる筈だ」

 

 海鮮丼とちらし寿司の違いは、酢飯を使ってるかどうかだ。

 実際にはもっと色々と細かい違いはあるのかもしれないが、俺の中ではそのくらいの差しかない。

 で、酢飯が駄目なら海鮮丼にすればいいという美鶴も、俺と同じように考えているのだろう。

 

「寿司って美味しいの?」

 

 チドリが順平にそんな風に聞いてるのが聞こえてくるが……まぁ、タカヤ達と行動を共にしていれば、寿司を食ったりとかは出来ないか。

 ……コンビニとかスーパーでパック寿司を買ったりとかは出来たかもしれないが。

 ただ、常に上半身裸のタカヤは、食料を買いに行くような事は出来ない筈だ。

 チドリの姿も色々と目立つが、それでもゴスロリを着ている者は皆無って訳じゃないから、そこまで目立たない。

 普通に考えれば、やっぱり目立たずに買い物が出来るのはジンか。

 

「取りあえず、何が起きるにしろ……一番危険なのは今夜だ。私の予想では、ほぼ間違いなく幾月は行動を起こすだろう。その為、夕食は存分に食べて英気を養って欲しい。……もっとも、食いすぎて動けなくなるといった事はないようにして欲しいがな」

 

 そう言う美鶴の視線が向けられているのは、俺……ではなく、有里だ。

 順平から以前聞いた話によると、有里もその体格に似合わずかなり食うらしい。

 大食いをする奴が自分の周りに2人もいるのは何だかな、と言っていた。

 当然ながら、有里以外のもう1人というのは俺の事なのだろう。

 それを否定出来ないくらい、俺は食ってるしな。

 

「さて、寿司の件は後での楽しみにとっておくとして……今は、今夜幾月が攻めてきた場合についての、そしてタカヤやジンという2人と戦いになった場合の対処法について話し合うとしよう」

 

 そう言いながら、美鶴は既に用意してあったのか、紙をそれぞれに渡す。

 

「それはチドリから聞き出した、タカヤとジンのペルソナの能力だ」

 

 その言葉と共に、今夜の対策を練り始める事になる。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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