転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2028話

 文化祭が終わってから少し経ち、9月から10月に変わった頃……後片付けも終わって文化祭の余韻も消え、ようやく俺達は普通の生活に戻っていた。

 秋になりつつも、まだ夏の残滓を残していた気温も、既に完全に秋に変わっている。

 

「うわっ、美味しい!」

 

 屋台で買った焼き芋を一口食べたゆかりが、嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「……うん、美味しい」

 

 そう言って、少しだけ嬉しそうにしたのはチドリ。

 既にその制服は、チドリの代名詞たるゴスロリではなく、月光館学園の制服となっている。

 チドリが俺達のクラスに転入した時は、当然のようにクラスの中で大騒ぎになった。

 いやまぁ、4月に俺と有里が転入してきてから、まだ半年くらいなのに、再びクラスに新しい生徒が転入してきたのだから、そうして騒動になるのも無理はない。

 月光館学園の理事長は、既に幾月の代わりに人が送られてきている。

 当然のように桐条グループの人間の新しい理事長は、チドリを俺達のクラスに転入させる事を躊躇いはしなかった。

 1つのクラスに何人も連続して転入生がくるという点では、教師の間では色々と物議を醸したりもしたのだろう。

 実際、俺達の担任の鳥海は色々と疲れた様子を見せていたし。

 ただ、月光館学園はあくまでも桐条グループ傘下の学校だ。

 そして、タルタロスを始めとする影時間を解決する為には、桐条グループ総帥の武治は手を抜くつもりがない。

 ……そういう訳で、鳥海にはこれからも色々と頑張って貰う事になるんだろう。

 ともあれ、そうして転入も無事に終わり……そして、順平は色々と嫉まれる事になった。

 チドリが学園祭で俺達がやっていた模擬店に来た事を覚えていた者も大勢いたのだろう。

 その結果としては、当然の事だった。

 まぁ、それ以外にもチドリが勉強を思い切り苦手としているという点でも大きな騒動となったが。

 考えてみれば当然なのだが、チドリは今まで学校に行った事はなかった。

 ましてや、自分だけで勉強をするといった真似をするような性格でもない。

 そんな訳で、正直なところ小学生くらいから勉強をする必要がある……らしいので、最近では毎日のように美鶴が用意した家庭教師から寮で勉強を教わっているらしい。

 そんなストレスを発散するように、チドリは影時間になればタルタロスで暴れている。

 ちなみに、チドリの使っている武器は片手で持てるくらいの斧の柄に鎖がついている、鎖鎌ならぬ、鎖斧とでも呼ぶべき武器だ。

 ……見た目にこれ程凶悪な武器もちょっとないと思えるくらいの、そんな武器。

 その斧を投げてシャドウを攻撃するのは、チドリと息が合わない状況で戦場を共にした場合は、最悪の結果を想定しなければならないと思ったのは間違いない。

 もっとも、順平はチドリを信じて戦いに参加していたが。……これが、愛の力という奴なのだろう。

 ともあれ、そんな忙しい……影時間関係ではなく、勉強的な意味で忙しい日々を送っているチドリだけに、こうして帰る途中に買い食いをするというのは、非常に嬉しいのだろう。

 特に焼き芋というのは、秋になればこれ! といった料理の1つだ。

 焼き芋か。炎獣とかを使えば、結構簡単に作れたりするか?

 でもな、焼き芋が美味くなるのは、石焼き芋……つまり、石の持つ遠赤外線効果? とかいうのが理由だと、ちょっと前にTVで見た覚えがある。

 ああ、でも落ち葉とかを焼いて作る焼き芋とかも有名なのを考えれば、普通に炎獣で焼いてもどうにかなるのか?

 そんな風に考えつつ、商店街を通っていく。

 

「ああ、俺は今日の夕食の材料を買っていかないといけないから、スーパーに寄っていくけど……どうする?」

「あ、じゃあさ。私が今日はアクセルの夕食を作ってあげようか? 確か、前にそんな話をした事があったわよね?」

 

 ゆかりのその言葉に、少しだけ不安を感じる。

 いや、ゆかりも寮で食事の出ない時とかは自炊とかをしている筈なので、料理が出来ないって訳じゃないと思うんだが……それでも、もしかしたらと、そう思ってしまうのは、俺の気のせいか?

 だが、恋人の手料理を食べるというのは、高校生にとっては間違いなく幸運なイベントの筈だ。

 そうである以上、ここでそれを見逃す手はないだろう。

 ……最悪、俺の場合は不味くても身体に害はない。

 ただ、不味いと感じるだけなのを考えれば、そこまで問題はない。……とてもではないが、進んでやりたいとは思わないが。

 勿論、ゆかりが実は料理を作るのが上手いという可能性も否定は出来ないが。

 

「そうだな、じゃあ頼む。今日はどんな食事になるのか、楽しみにさせて貰うよ」

「ふふっ、そうね。楽しみにしているといいわ。……それで、チドリはどうする?」

「料理……順平も喜ぶ?」

「え? チドリも料理を作るって事? うーん、今まで料理をした事は?」

 

 尋ねるゆかりに、チドリは首を横に振るだけだ。

 まぁ、今までのチドリの生活を考えれば、料理をするような事はなかっただろう。

 食事の類も、それこそコンビニ弁当とかそういうのが多かったんだろうし。

 

「うーん……そうなると、凝った料理をどうこうするのは、ちょっと難しいわね。じゃあ、簡単な料理でもしてみるとか? カレーとかなら、ルーを使えばそんなに難しくはないだろうし」

 

 そんな訳で、俺達は3人揃って行きつけのスーパーに寄るのだった。

 ちなみに俺は、適当に食料やコロマル用にドッグフードを買っておく。

 新鮮な野菜とか総菜の類を買った俺を見てゆかりが若干不機嫌そうになっていたが、別にこれはゆかりの料理の腕を信じていない訳ではなく、単純に明日、もしくは明後日……それ以降の食事に使う分だと言って納得させた。

 実際、それは決して間違っている訳ではない。

 空間倉庫に入れておけば、新鮮な野菜はいつまでも新鮮なままで、総菜の類も悪くなるような事はないのだから。

 

「ふーん。……ま、アクセルがそう言うなら一応信じておこうかしら。チドリは? 材料をちゃんと買った?」

「うん」

 

 カレールーに豚肉、ジャガイモ、タマネギ、ニンジン。買った物を見ると、特におかしな物はない。

 料理の素人が知ったかぶりをして、適当に隠し味とか考えると、とんでもない失敗をするんだが……今回に限っては、その辺りを心配する必要はないのだろう。

 もっとも、寮の方に何か危険物がある可能性は否定出来ないが。

 

「じゃ、私はこれで帰るわね。順平が部活から帰ってくる前に料理を作りたいし」

 

 そう言い、チドリはそのまま帰っていく。

 

「チドリだけで本当に大丈夫だと思うか?」

「うーん、でも荒垣さんがいるから、大丈夫じゃない? 私も色々と教えて貰ったし」

「……そうなのか?」

 

 俺が簡単なものではあっても、料理が出来るようになったのは、言うまでもなく荒垣から教えて貰ったおかげだ。

 だが、まさかゆかりまでもが荒垣から料理を習っていたとは……更にチドリにも料理を教えているとなると、もしかして荒垣ってS.E.E.Sや俺達も含めて全ての料理のルーツとなる人物なのかもしれないな。……少し大袈裟かもしれないが。

 ともあれ、買い物を終えてチドリと別れた俺達は、そのまま俺のアパートに向かうのだった。

 

 

 

 

 

「もうちょっと待っててね」

 

 台所の方から漂ってくる香りは、食欲をそそる香りだ。

 そんな台所の方を見ていると、それに気が付いたゆかりがそう言ってくる。

 ちなみに今日のメニューは秋という事で大ぶりの秋刀魚を使った塩焼きと、肉じゃがの2つがメインで、それ以外には味噌汁、炒め物……といった感じのメニューになっている。

 ゆかり曰く、出来ればキノコの炊き込みご飯を作りたかったらしいが、時間がなかったとか何とか。

 炊飯器で炊くだけなら、そこまで時間は掛からないと思うんだけどな。

 そう言ったら、食べるだけならそれでもいいけど、美味い炊き込みご飯を作るには色々と下準備が必要、らしい。

 炊き込みご飯の素とかを買ってきて、それに追加で椎茸、シメジ、エリンギ、エノキ……その他諸々のキノコを入れるだけなんだが、荒垣から色々と習ったゆかりにしてみれば、そんな簡単なものでもないとか。

 ともあれ、俺が何かを手伝うかと言っても、そもそもこのアパートの台所はそこまで広くない。それこそ1人で使ってても狭いと感じるくらいなのだから、その辺りはしょうがない。

 うーん……こうなればいっそ、巌戸台分寮に引っ越すのもありか?

 一番の不安要素だった幾月がいなくなった以上、もう巌戸台分寮に引っ越すのに忌避感はない。

 ただ、そうなると、半ば向こうに抱え込まれた……といった感じになるだけに、歴とした別勢力であるという事を考えれば……やめておいた方がいいのかもしれないんだよな。

 そんな風に考えていると、不意に携帯にメールが届く。

 誰からだ? と思って見てみれば、天田からのメールだった。

 珍しい……って訳でもないんだよな。

 俺がゲイ・ボルクを使っているという事もあり、天田からはそれなりの頻度で訓練に付き合って欲しいと誘いが来る。

 まぁ、大抵そういう時はメールじゃなくて電話でなんだが……

 そんな風に疑問を抱きながらメールを見てみると、今日の夜……午後10時くらいにちょっと会えないかという相談の内容だった。

 これがゆかりからのメールであれば、それなりに喜んだりしてもおかしくはないんだが……それが、天田からじゃなぁ。

 ただ、天田の相談となれば、槍の訓練の事か……もしくは、母親の仇、荒垣の事か。

 そうなれば、迂闊に断る訳にもいかないのは事実であり、了解というメールを送る。

 

「どうしたの?」

 

 丁度そのタイミングで、ゆかりがサンマの塩焼きを両手にそれぞ持って来た。

 2枚の皿があるという事は、予想していたがゆかりも夕食をここで食べていくという事なのだろう。

 

「天田から槍の事でちょっと相談をな」

「あー……なるほど」

 

 ゆかりも、俺が天田に槍の訓練をしているのは分かっているので、特に疑問に思う様子はない。

 

「あの子、ちょっと頑張りすぎてるような気がしない?」

 

 サンマの乗った皿をテーブルに起きながら尋ねるゆかりの言葉に、頷きを返す。

 それは、実際に感じていた事だからな。

 ゆかりの言葉通り、天田は少しでも自分の力を伸ばそうと頑張っている。それはいいのだが、頑張りすぎているというのが、俺にとっても不安の残る事だ。

 実際、美鶴からもその辺りを心配されていたりもするし。

 

「そうだな、影時間の前にちょっと会いに行く事になってるから、その時に話してみるよ」

「そうして。……さ、取り合えず夕食にしましょう。私の料理の腕をしっかりと味わって貰わないといけないしね」

 

 そう言い、ゆかりは台所の方に向かい、秋刀魚に使う大根おろしや肉じゃがの入った器、肉が入った野菜炒めに、炊きたてのご飯を装い、ついでに白菜の浅漬けを準備する。

 味噌汁は、秋らしくナメコの味噌汁。

 さすがにこの浅漬けはスーパーで買ってきたものだが、テーブルの上にある料理は、これぞ和食といった感じだ。……野菜炒めが和食に入るのかどうかは、微妙なところだが。

 しかも野菜炒めの味付けには焼肉のたれを使ってるし。

 ともあれ……見ただけで美味いのは分かる。

 ……見た目だけで味は駄目という可能性もあるが、少なくてもこうして見ている限りでは間違いなく美味いと思える料理だ。

 

「さて、じゃあ食べましょうか」

 

 そう言い、ちょっと早い夕食を開始する。

 いや、午後6時ちょっと前だし、別に早くもないのか?

 ともあれ、TVでやってるニュースを見ながら、俺とゆかりは食事をする。

 

「何て言えばいいのかしら……こういう古いアパートで、夕日を浴びながらTVを見て食べる食事って……昭和って気がしない?」

「……言われてみれば、昭和っぽいか? それも昭和の末じゃなくて、中間くらい? もっとも、昭和にこういう大きな薄型TVの類はなかっただろうけどな」

 

 昭和のTVといったら、当然のようにブラウン管のTVだろう。

 そういう意味では、TVが思い切り違和感を生み出していた。

 いや、TVだけじゃなくて携帯とかもちょっと違和感があるか。

 そんな風に思いながら、肉じゃがを口に運ぶ。

 まだ出来たばかりでしっかりと味が染みてるという訳はないが、出来たてでジャガイモが美味いためだろう。ほくほくした食感がいい感じだ。

 牛肉やタマネギ、糸こんにゃく……どれもいい味を出している。

 どう? と視線で尋ねてくるゆかりに、俺は一言だけ呟く。

 

「美味い」

 

 その一言で、ゆかりには十分だったのだろう。

 嬉しそうな笑みを浮かべ……そして自分でも肉じゃがを口に運び、満足出来たのか、小さく頷いていた。

 そんなゆかりと会話をしながら、俺は楽しい夕食を終えるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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