転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2018話

「順平!? おい、ちょっとお前どこに行ってたんだよ!」

 

 教室に姿を現した順平を見て、友近は嬉しそうに叫ぶ。

 そんな友近の声は朝のHR前で雑然としていた教室中に響き、当然のように、他の者達も声のした方……そして声を発した友近が見ている順平に視線を向ける。

 すると、クラスの中でも順平とそれなり以上に親しい者達は、皆が揃って順平に声を掛ける。

 ムードメーカーだけあって、順平はクラスの中でもかなり顔が広い。

 ……まぁ、急に巌戸台分寮に引っ越したという事もあり、美鶴や真田、有里といった面子のファンからは若干嫉まれているところもあるのだが。

 

「いや、うん。まぁ……用事は大体片付いたから、何とかな」

 

 順平とチドリを確保してから、既に数日……今まで順平が学校に来なかったのは、何だかんだと順平が軟禁されていたという事もあり、それを検査していたというのもあるし、多少心を開くようになったとはいえ、それでもやはりチドリが現在一番心を開いているのは順平だからという理由が大きい。

 それでも何とか順平が学校に来る事が出来るようになったのは、チドリも何とかなったからなんだろう。

 ……美鶴から聞いた話によると、順平がいない場合はスケッチブックを与えておけば、ずっとそれに何かを描いているらしい。

 もっとも、その絵はかなり下手……いや、独創的で、一般的な感性ではちょっと分かりにくいらしいが。

 ともあれ、そんな訳でチドリの問題も何とかなり、こうして順平が学校に来る事が出来る用になった訳だ。

 

「いやー、それにしてもナイスタイミング。本当に良いところで来てくれたな」

「……え? 何だよ。ちょっと……いや、かなり嫌な予感がするんだけど」

 

 満面の笑みを浮かべる友近に、反射的に数歩後退る順平。

 だが、友近はそんな順平を逃がさないと、一気に前に出て順平の両肩を掴む。

 今の動き、その辺の素人に出来るような動きじゃなかった気がするんだが……いやまぁ、順平も最近は学校を休んでいた影響で剣道部にも顔を出していなかった筈だ。

 そうなれば、身体の動きが鈍ってもしょうがないか。

 案の定、宮本が今のやり取りを見て、どこか呆れたような表情を浮かべているし。

 

「いや、本当に助かった。鉄板を運ぶのとか、模擬店の組み立てとか、今のうちに運んでおける食材の移動とか……力仕事が出来る奴は、幾らいてもいいんだからな」

 

 満面の笑みを浮かべている友近だが、実際には道連れが出来て嬉しい……というのが正しいか?

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれよ! そういう体力仕事なら、俺じゃなくてアクセルだろ!?」

 

 焦った様子の順平の声が教室の中に響く。

 その判断は決して間違っている訳じゃない。訳じゃないんだが……

 

「今まで学園祭の準備をサボっていた順平と、鉄板料理の屋台のアイディアを出して、実際に学園祭の時は調理する俺。……さて、この状況で発言権があるのはどっちだろうな」

「ぐっ……」

 

 俺の言葉に、順平が声も出せずに黙り込む。

 まぁ、順平の場合は手伝いたくなくて手伝っていなかった訳じゃなく、タカヤや幾月達に監禁されていたから準備に参加出来なかったんだが……それは秘密にするように言われているのだから、それをこの場で言える筈もない。

 結局数秒黙った後、しょうがないと両手を上げる。

 

「お手上げ侍だ」

「何よ、それ」

 

 順平の妙な言葉に対し、ゆかりが素早く突っ込みを入れる。

 いやまぁ……うん。取りあえずお手上げ侍に関しては、俺は何も言わないでおこう。

 ここで妙な突っ込みを入れれば、話が変な方向に飛んでいくだろう。

 

「はいはい、皆、座ってね。朝のHRを始めるわよー!」

 

 タイミングよく鳥海が姿を現し、そうして何だかんだで順平を含めて俺達は自分の席に戻るのだった。

 

 

 

 

 

「順平、その板はこっちに持って来てくれ! 絵を描く時に描きやすいように、横にして置いてくれよ!」

「分かった!」

 

 学園祭が近くなれば、当然のように授業を潰して学園祭の準備をする事も多くなる。

 そんな時間……順平は、友近が言っていたように、主に力仕事に駆り出されていた。

 もっとも、順平も自分が休んでいる間にクラスの準備が進んでいて、殆ど協力出来なかったと気にしているのだろう。

 特に文句を言うような事もなく、友近の指示に従って木の板を教室まで持って来ていた。

 この板が何に使われるのかと言えば、屋台の……そう、デコレーションと表現すればいいのか?

 屋台を飾り付ける鎧的な感じの奴だ。

 それと、看板とかそういうのもある。

 そんな訳で、何だかんだと屋台の準備は苦労しながらも進んでいた。

 

「……有里、上手っ!」

 

 有里が描いている看板の下書きを見て、思わず呟く。

 看板は、当然のように直接ペンキとかで描くのではなく、最初は鉛筆とかで下書きをする必要がある。

 そして、それをするよりも前に、どのような看板にすべきかというのをクラスの中で絵が上手いという面々を集めてコンペをやったのだが……明らかに、美術部の描いたデザインより、有里の描いたデザインの方が上手い。

 いやまぁ、元々有里は恐らくこの世界の原作の主人公なんだから、絵が上手くてもおかしくはない。

 もしかしたら、原作だと美術部に入っていた……という可能性も、否定はできない。

 

「きゃーーーーっ! 有里君、凄いじゃない」

「本当、凄い上手い……ね、もし良かったら、私の絵も描いてくれないかな? その……もし有里君が望むなら、ヌードでも……」

「ちょっと、何を抜け駆けしてるのよ。後でファンクラブに報告するわよ」

「え、あ、ちょっと。嘘、嘘だってば。……けど、有里君にヌードで絵を描いて貰いたくない?」

「その話の流れで、どこが嘘だと……」

 

 いつの間にか、有里の絵を褒めるところから女同士の争いに発展しつつあった。

 相変わらず、有里は人気があるな。

 もっとも有里本人は、そんな誘惑に引っ掛かるような事はないのだが。

 何だかんだで、山岸一筋なんだよな。

 ……その割に、有里のファンクラブが山岸にちょっかいを出すようなところは、見た事がない。

 普通であれば、ファンクラブを作る程に有里に好意を抱いているのだから、その有里が付き合っている山岸への当たりが強くなるのも当然だろう。

 だが、何がどういう流れになったのか、ファンクラブは寧ろ山岸をフォローしているのを見かける事が多い。

 まぁ、以前の苛めのような事が起きて、それをファンクラブの連中がやっていると有里が知れば、自分達が色々と酷い目に遭うと知っているからかもしれないが。

 それでもファンクラブの人数を考えれば、その辺りに考えが及ばないで、多分見つかるような事はないだろう、山岸だったら何かされても言わないだろうという風に考える者が出て来てもおかしくはない。

 実際、山岸は自分が苛められているという状況に対して、何の行動も起こさず唯々諾々とその環境に甘んじていたのだから、そういう風に思われても何もおかしくはない。

 いや、寧ろ当然だろうとすら思う。

 もっとも、そういう風に考えても結局誰も行動に出ないのは……有里が何か動いているのか、それともファンクラブの規律が高いのかのどちらかだろうが。

 

「アクセル、ちょっとこっちに来てくれる? 当日のメニューについて相談したいんだけど」

 

 そう告げるゆかりの声に頷くと、当日屋台で調理をする者達が集まっている場所に向かう。

 

「で、メニューで相談って?」

「あのね、アルマー君。焼きそばだけじゃなくて、焼きうどんも作って欲しいって意見があって」

「あー……なるほど」

 

 ゆかりの側にいた女の言葉に、少しだけ納得したような表情を浮かべ……だが、同時に難しいとも思う。

 いや、焼きうどんを作るのはそこまで難しい話ではない。

 材料は焼きそばと若干違うが、肉は共通して使えるし、使う野菜も焼きそばでは使わない長ネギとかは、鉄板焼きに使う野菜で流用出来るのだから。

 だが……問題なのは、味付けだ。

 焼きそばは基本的にソースだけだ。

 いや、勿論塩焼きそばとか、餡かけ焼きそばとかそういうのがあるのは知っているし、俺もそれなりに好きだが、それでもやはり割合で考えれば、焼きそば=ソース焼きそばという認識で間違いないだろう。

 だが、焼きうどんの場合は、ソース味と醤油味の2種類があり、多少の差はあっても、半ば拮抗している。

 俺は醤油味の方が好みなのだが。

 ともあれ、そんな状況で焼きうどんをメニューに加えるような真似をすれば、場合によっては両方の味付けをしなければならなくなる。

 焼きそばと一緒に調理をしているだけでも色々と面倒なのに、そこに焼きうどん2種類というのは……間違いなく、色々と面倒な事になるのは確実だった。

 それに実際に調理をする者の負担を考えても、俺は体力的に問題はないが、中には文化系の部活で普段から運動を殆どしていないという者もいる。

 料理って、何気に結構疲れるしな。

 1人前、2人前程度ならともかく、学園祭の屋台ともなればその作る量はかなり多くなるのは間違いない。

 

「取りあえず、俺は反対だな」

 

 そう言い、反対する理由を話していく。

 最初は焼きうどんを提案してきた者達も反対していたが、俺がその理由を説明すると納得していく。

 

「私の家は醤油味だけど、それが普通じゃないの?」

「何言ってるのよ。普通はソースでしょ」

「はぁ? ソースなんか焼きそばで十分じゃない。焼きうどんは和風の料理なんだから、醤油でしょ」

「何言ってるのよ。中華料理で出てくる焼きそばに、ソース焼きそばなんてないのよ? あくまでも、日本独自のものなの。なら、当然焼きうどんだってソースでいいじゃない」

「塩焼きそばとかあるんだから、いっそ塩だれで焼きうどんを作ってもいいんじゃない?」

「あ、それちょっと美味しそう」

「えー……塩味の焼きうどんって、ちょっとイメージ湧かないんだけど。うちで焼きうどんを作るときは、焼肉のたれで味付けしてるわよ?」

『却下だ背教者』

 

 焼き肉のたれで味付けをしていると言った瞬間、何故か調理班の面々は声を揃えて却下する。……いや、背教者って何だよ背教者って。

 焼肉のたれ使っても、別にそんなに悪いとは思わないけどな。

 焼肉のたれというのは、言ってみれば様々な調味料が混ざった複合調味料のようなものだ。

 それを焼きうどんに使うのは、別にそこまで変じゃないとは思うんだが……

 まぁ、ああやって全員が一致団結して反対している以上、多分焼肉のたれが駄目だとかそういう事じゃなくて、それ以外に何らかの理由があるのあろう。

 下手に口出しをすれば、何だか分からないがこっちに厄介事が降り掛かってきそうな気がするし。

 

「とにかく、焼きそばをやるんなら焼きうどんはなし。焼きうどんをやるなら焼きそばはなしの方向で。俺はどっちでもいいけど、多分売れるのは間違いなく焼きそばだと思う」

 

 そう言うと、焼きうどん推奨派の面々は黙り込んでいく。

 いや、焼きうどんも美味いし、俺も好きだ。

 だが……学園祭という祭りでどちらが売れるかと言えば……やっぱり焼きそばだろう。

 祭りという雰囲気に合っているのは、間違いなく焼きそばなのだから。

 そして金を稼ぐのが目的である以上、焼きそばと焼きうどんのどちらを選ぶかを考えれば、選択の余地はない。

 

「うー……しょうがないわね。分かったわよ。じゃあ、焼きそばで。……いっそ焼きそばじゃなくて、焼きパスタにでも挑戦してみる? 目新しいし、売れるかも?」

 

 そんな意見が出るも、そもそも焼きパスタって何だ? 俺は食った事も、見た事もないぞ。

 普通に考えれば、焼きそばの蒸し麺の代わりにパスタを使った料理なんだろうけど。

 だが、何となくゲテモノ臭がするような、しないような……

 目新しい料理を出せば、それなりに売れるだろう。だが……目新しいからといって、それが焼きそば以上に売れるかと言われば微妙なところだ。

 

「そもそも、パスタを茹でるって時点で普通に調理時間が延びるだろ」

 

 焼きそばとかの蒸し麺は、蒸した状態で普通に売っている。

 だが、茹でた状態でパスタが売っている筈はなく……いや、実は売ってたりするのか? 俺が行くスーパーだと、そういうのはなかったように思うが。

 ともあれ、もしあったとしても、そこまでメジャーではないのは間違いない。

 それを用意するのは、ちょっと難しいだろう。

 味付けも、焼きパスタという風になるとソース味なんて風には出来ないだろうし。

 

「下手に奇をてらって、在庫が大量に出たら……クラスの連中に恨まれるぞ?」

 

 その言葉は、かなり重かったらしく……結果的に、焼きうどんも焼きパスタも、塩味の焼きそばも諦め、普通にソース焼きそばを作る事になるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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