転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2014話

 メーディア、順平が呼んだペルソナが、いきなりチドリによって召喚された。

 当然のようにいきなりペルソナを召喚するというのは、敵対行動と認識されてもおかしくはない。

 だが、それでも俺がすぐにチドリを攻撃しなかったのは、そのチドリが苦しそうに喚いているからだ。

 ゆかりの方に視線を向けると、いつでもペルソナを召喚出来るように既に手に召喚器が握られている。

 いつでもイオを召喚出来るように準備を整えているが、メーディアを召喚されただけで部屋の中の空間的な余裕はない。

 マサの部屋……というか、溜まり場となっているこの部屋は、決してそこまで広い訳ではないのだから。

 そんな場所でペルソナ召喚されれば、それだけで空間的な余裕は殆どなくなっている。

 

「おい、チドリ! チドリってば!」

 

 順平が必死にチドリに向かって話し掛けているが、そのチドリは……

 

「あああああああああああああああああああああっ!」

 

 雄叫びとも悲鳴ともつかない声を上げているだけだ。

 何だ? 一瞬、タカヤや幾月が俺を誘き寄せてチドリを使って攻撃する……そんな風に思っていたんだが、ペルソナが召喚されても一行にこっちに攻撃をしてくる様子はない。

 ただ、チドリは叫んでいるだけ。

 ……待て。この叫び、以前どこかで……

 そう思った次の瞬間、チドリのペルソナは動く。

 ただし、その動きはこっちに攻撃をしてくるのではなく……チドリの首に手を伸ばしたのだ。

 そう、まるで首を絞めるかのように。

 

『は?』

 

 間の抜けた声を上げたのは、俺とゆかり。

 当然だろう。誰が、召喚されたペルソナが召喚した相手の首を絞めるような真似をすると思うだろうか。

 明らかに異常と呼ぶべき行動であり、一瞬唖然とした様子を見せてしまったのは当然だった。

 

「アクセル、ゆかりッチ、頼む! メーディアを止めてくれ!」

 

 メーディアというのが、チドリのペルソナなのは明らかだったが……何を思ってこんな風になってるんだ?

 いや、取りあえずこのままではチドリが酸欠で死ぬ……よりも前に、下手をすればメーディアに首の骨を折られて死んでしまいかねない。

 メーディアが具体的にどれだけの力を持っているのかというのは、傍から見ても分からないのだから、その心配も当然だろう。

 ペルソナにおいて、その外見というのはあまり当てにならないというのは、これまでの経験から十分に理解出来ていた。

 一瞬刈り取る者を召喚しようかと思ったが、この部屋の広さ的にそんな余裕はない。

 つまり……

 

「俺が直接止めればいいんだろ!」

 

 そう言い、メーディアを直接殴りつける。

 普通であれば、生身でペルソナに殴りかかるような真似というのは、自殺行為以外のなにものでもない。

 だが、俺の場合は色々な意味で普通とは違う。

 そもそも俺は普通の人間ではなく、混沌精霊だ。

 そんな俺の拳は、メーディアの身体にめり込み……その一撃がメーディアにとっては大きな痛手だったのか、もしくは単純にその一撃で我を取り戻したのか……その姿は消えていく。

 メーディアが消えたのと同時に、叫んでいたチドリも大人しくなっている。

 

「……ふぅ。どうやら何とかなったか」

「アクセル、お前……」

 

 唖然とした表情を浮かべて俺を見ているのは、当然のように順平だ。

 まぁ、順平にしてみれば、まさか生身の人間がペルソナを殴るような真似をするとは、全く思ってもいなかったのだろう。

 実際、これは俺が混沌精霊だからこそ出来る……いや、真田辺りなら実は出来たりもするか?

 一瞬そんな風に思うが、取りあえず今はその事は置いておくとする。

 

「落ち着け。それで、チドリの症状……俺は覚えがあるんだが?」

 

 そんな俺の言葉に、順平とゆかりは真剣な表情で落ち着いた様子のチドリを見る。

 俺が何を言いたいのか、理解したからだろう。

 そう、チドリの先程の表情は、どこからどう見ても……明らかに、制御剤の副作用で苦しんでいた荒垣と同じだった。

 もっとも、あくまでもそう見えるというだけで実際に制御剤のせいなのかどうかは、俺にも分からない。

 ……まぁ、イクシールを飲ませれば荒垣と同じように回復すると思うが……イクシールの希少性を考えると、そうほいほいと使う事が出来ないのも事実。

 そうなると、やっぱり辰巳記念病院の方で治療をして貰った方がいいだろう。

 美鶴から聞いた話によると、荒垣の一件で向こうも色々と制御剤についての情報を得る事が出来て、それを研究しているらしいし。

 本当に命の危機なら、俺もイクシールを躊躇うような事はないが、こうして見る限り、チドリは落ち着いている。

 いやまぁ、俺がペルソナを殴ったから、その衝撃で……という可能性も考えられるが。

 ともあれ、今は俺が何かをするよりもこの世界の技術に任せた方がよかった。

 そんな風に思っていると、部屋の前に数人がやって来たのが分かる。

 ……マサが戻ってきたのか? いや、気配が違うな。となると、幾月やタカヤ? だが、こちらも気配が違う。

 そうなると……そんな俺の思いを証明するかのように、扉がノックされる。

 

「すいません、桐条グループの者です。岳羽ゆかりさんはこちらにいらっしゃいますか?」

 

 そんな声が扉の向こうから聞こえてくれば、それが誰なのかというのは考えるまでもなく明らかだった。

 それでも一応……もしかしたらタカヤやその仲間という可能性もあるので、扉を開けようとしたゆかりを制して、俺が代わりに扉を開ける。

 すると扉の向こうにいたのは、間違いなく桐条グループの者だった。

 何故それが分かったのかと言えば、幾月が行方を眩ました後でその部屋の物を持っていった連中の1人だったからだ。

 ……あの時、俺も巌戸台分寮にいたんだよな。

 だからこそ、この男があの時の1人だと分かったわけで。

 

「ああ、アクセルさんも一緒でしたか。それで、病人の方は……」

「部屋の中にいる。俺達も病院に行きたいが、一緒に行って構わないか?」

 

 一応、本当に一応だが、まだ桐条グループの中に幾月の手の者が残っている可能性はある。

 その為、影のゲートを使えば一瞬で転移出来るにも関わらず、こうして俺達も一緒に行く事にした訳だ。

 ……ただ、考えてみれば、チドリは意識を失ってるんだし、そのまま影のゲートで辰巳記念病院まで行けば良かったんじゃ? と思わないでもなかったが……まぁ、ゆかりの連絡を貰って美鶴がそう判断したという事は、何か意味があるのだろう。

 例えば、特殊な治療器具を用意する必要があるとか。

 まぁ、まだ制御剤が原因だというのははっきりと確定は出来ないんだから、検査とかもする必要があるんだろうけど。

 ああ、そう考えれば、やっぱりある程度準備をする必要があるってのは納得出来るな。

 ともあれ、来たのが桐条グループの者なら問題はない。

 チドリを順平に背負わせて部屋を出る。

 アパートの前に用意されていたのは、予想外なことにワンボックスカーだった。

 病人を運ぶのなら、普通は救急車だろうが……幾月やタカヤに知られる可能性を少しでも下げたかったといったところか。

 そんな訳で車の中にチドリを背負った順平を乗せ、俺とゆかりも乗るとそのまま出発する。

 鍵は……と思ったが、そう言えばマサが鍵は別に掛けなくてもいいとか言っていた事を思い出し、気にしない事にした。

 そうして辰巳記念病院まで向かっている間、車の中は沈黙に包まれる。

 桐条グループから来た男達は、運転に集中しながら尾行している車がいないかどうかを確認して、こちらに話し掛けてくる様子はない。

 ゆかりは……美鶴や武治といった個人に対してであれば、それなりに打ち解けてきているが、それが桐条グループとなればまだそこまで気安く接する事は出来ない。

 順平は座席で横になっているチドリを心配そうに眺めていた。

 うーん、この状況で別に和気藹々と話をしたいとは思えないが、それでも車の中が暗い雰囲気なのはあまり面白くない。

 となると、多少なりとも話をする必要が出てくる訳で……そうだな、取りあえず空気を変える為に、話題を提供するか。

 

「そう言えば、今度の学園祭でうちのクラスは鉄板焼きの屋台をやる事になったぞ」

「……は?」

 

 まさかこの状況でそんな言葉が出てくるとは思わなかったのか、順平は唖然とした表情をこちらに向けている。

 ゆかりの方も、いきなり何を言い出すんだ? といったような呆れの表情を向けていた。

 

「友近を含めて、クラスの連中も順平がいないのを心配してたぞ」

「……ははっ、普通ならそっちを最初に話さないか? 何で最初が屋台の話題なんだよ」

「いや、何となくな。……ちなみに、練習として長鳴神社の境内で鉄板焼きをやったけど、その時は肉とかアワビとかエビとか、色々と焼いて美味かったぞ」

「ずるっ! 何だよそれ。何で俺がいない時にそんな事を……」

 

 順平にしてみれば、それは自分がいない時に全員でパーティをやったようにも思えるのだろう。……実際、鉄板焼きを皆で楽しんだんだから、決してそれは間違いという訳ではない。

 

「そう言ってもな。順平がいれば誘ったけど、順平はいなかったし」

「俺がカップラーメンかコンビニ弁当、菓子パンとかを食べてる時に……」

 

 恨めしそうな視線が向けられるが……いやまぁ、そうだよな。

 どこを拠点にしていたのかは分からないが、順平や幾月を捜索する為に、桐条グループは動き回っていた筈だ。

 そうである以上、食事はそういう簡単なものにするしかないのは当然だ。

 もっとも、最近はカップラーメンとかも大分美味くなってきてるので、味という点ではそこまで不満を抱かなくてもいいだろうが。

 実際、TVでCMをしているカップラーメンとかは、撮り方もあるだろうけどかなり美味そうだし。

 コンビニ弁当は……まぁ、イメージ的に健康に悪そうだよな。

 もっとも、カップラーメンとコンビニ弁当のどっちが身体に悪いかと言われれば、カップラーメンの方がかろうじて上か?

 ああ、でも塩分に関しては、カップラーメンの麺と具だけを食べてスープは捨てればそこまででもないのか?

 どのみち、健康に悪くても美味ければ俺の場合はそういうのは全く意味がないんだが。

 

「取りあえず、学園祭では色々と美味い料理でも食ってくれ。一応目玉としてはアワビの地獄焼き、肝ソースを和えてって料理がお勧めだぞ」

「地獄焼きって、何だよその物騒な名前は!」

 

 ナイス突っ込み、とでも言えばいいのか?

 まぁ、それはともあれ……実際、その料理名は適切だと思ってる。

 生きている新鮮な状態のアワビを鉄板の上で焼くのだ。

 生きたまま焼かれていくその熱さに、普段はあまり動くことのないアワビが思い切り身体を動かしているその様子は、まさに地獄と呼んでも間違いではない。

 ……それでも美味いから、いいんだけどな。

 

「名は体を表す……いや、この場合はちょっと違うか? ともあれ、お勧めの料理なのは間違いない」

「そりゃそうだろ。普通、学園祭でアワビなんて食ったりしないって。そもそも、アワビを使った鉄板焼きって幾らで売るんだよ?」

「そうだな。利益も必要だし……まぁ、1500円ってところか」

「……思ったより安いな」

 

 俺の言葉に驚く順平。

 アワビは俺が捕まえてきた奴なので、仕入れの値段は無料。つまり、その1500円が丸々クラスの利益になる訳だ。

 ぶっちゃけ、俺が思い切り損をしているのだが、今回はあくまでも学園祭を楽しむという目的で用意したので、赤字程度はどうという事はない。

 それに、金を稼ぐという意味では幾らでも当てはあるし。

 ……うん、取りあえず俺が言えるのは、タルタロス万歳ってだけだな。

 正直なところ、影時間を解決すればタルタロスがなくなってしまうというのはかなり痛い。

 毎晩のようにタルタロスには宝箱が補充されるのだから、出来れば影時間が解決してもタルタロスだけは残って欲しい。

 ホワイトスターと連絡を取る為には、影時間の解決は必須だと思われる以上、二者択一となれば、考えるまでもないんだが。

 

「ま、企業努力をしてるからな」

「いや、企業って何だよ」

「有限会社アルマー民間軍事会社?」

「傭兵かよっ!」

 

 うんうん、順平のこの突っ込みも、聞くのが久しぶりだとどこか懐かしい気分すらあるな。

 

「あのね、あんた達……よくこんな状況でそんな馬鹿話をしてられるわね」

 

 俺と順平のやり取りを見ていたゆかりが、呆れたように言ってくる。

 実際、ゆかりがそう怒りたくなる気持ちも分からないではないが……今の状況でやるべき事は特にないってのも事実なんだよな。

 色々と順平からは詳しい話を聞いてみたいとは思うが、それは美鶴達が一緒の時の方がいいだろうし。

 

「そろそろ到着します」

 

 運転席にいる桐条グループの男の言葉に、視線を車の窓に向けると……辰巳記念病院の姿が見えてくるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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