転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2012話

 鉄板を使った前夜祭……いや、寧ろ練習会と呼ぶべきか? それは、俺が予想していたよりも圧倒的な好評で終わった。

 いや、アワビとかサザエとかを持ってくれば当然なのか?

 ともあれ、結局じゃんけん大会では5人の勝者が決められ、アワビを1つずつ食べる事が出来……世の中には勝者と敗者がいる事を示した。

 ……実は空間倉庫の中に、同じ大きさのアワビが数十個入ってるって事は、言わないでおこう。

 俺が行ったのは日本の領海外にある無人島で、当然のようにそこに住んでいる者はいない。

 つまり、そこには何年も……下手をすれば十年、場合によっては数十年近くも生きているアワビとかがいる事になる。

 そんなのがそこら中にいたのだから、俺がそれを獲るのは当然だろう。

 他にもタコやら魚やらウニやら……そういう魚をかなり獲る事が出来た。

 まさに、俺にとってその島は食材の宝庫だと言えるだろう。

 ……一応山もあったから、もしかしたらそっちを探したりすれば、猪とか鹿とか、肉の類も獲ることが出来たかもしれないが……まさか、学園祭でジビエ料理を出す訳にもいかないので、取りあえず放っておく事にした。

 いやまぁ、ジビエ料理と言っても俺が出来るのは、それこそステーキとかそう言うのだけどな。

 とてもではないが、料理店で出しているようなジビエ料理を作るような真似が出来ない。

 ともあれ、そんな訳で色々と好評の試食会……いや、前夜祭? から数日……その日の放課後、俺達は学園祭の準備に追われていた。

 

「ちょっと、友近! そこはもっと派手にって言ったでしょ!」

「いや、けどよ。派手すぎると意味がないんじゃないか?」

 

 女子生徒に叱られているのは、友近。

 現在俺達は、模擬店の外側を作っていた。

 借りてきたのが鉄板含めた調理器具一式であった以上、当然ながら模擬店の外側は作らなければならないのだ。

 まぁ、ぶっちゃけ俺達のクラスで他にやるべき事はないしな。

 一応俺も含めて、調理経験のある奴は相応に練習をしておくようにとか決められているが、結局やるのは鉄板で焼くだけだ。

 ……実際には鉄板焼きは、シンプルな料理だけに奥が深いとかいう話を以前何かのTV番組でやってたけど、俺達がやるのはあくまでも高校生がやる学園祭の模擬店だ。

 本物の味を求めるのなら、それこそ料亭にでも行けばいいだけの話だ。

 まさか、学園祭の模擬店で出されている料理を食べて、不味い! とか言い出す奴はいないだろう。

 勿論、それが黒焦げだったり、とても食えないような味付けだったりすれば、話は別だが。

 

「ちょっと! 嫌よこんな制服! メイド服じゃないんだから!」

 

 ペンキを塗ってると、そんな声が聞こえてくる。

 そちらに視線を向けると、そこではゆかりがメイド服……いや、正確にはメイド服に似た服を手にして、思い切り不満を露わにしていた。

 いっそ、俺の空間倉庫にあるハイレグアーマーを着てみるとかすれば、ちょっと面白そうな気がしないでもないんだが。

 ともあれ、ゆかりの言葉に他の女達が反対の声を上げる。

 ……ただ、中にはメイド服を着るのもいいと考えている女もいるのか、反対しているのは大体女の半分くらいでしかない。

 さて、ゆかりは無事にメイド服を逃れる事が出来るのかな?

 

「アルマー君、お金の件だけど……」

 

 ゆかりの攻防を見ていると、そんな声が掛けられる。

 声のした方に振り向くと、同級生の女がいた。

 

「金? ああ、悪い。1人2000円だったか?」

「うん。そう。それか相応の食材だけど……どうする?」

 

 学園祭という事で、クラスには当然のように補助金が支給されている。

 だが、それ以上の分を使う場合は、当然そのクラスで用意する必要があった。

 ただ、同時に学園祭で稼いだ金額はクラスで分ける事も出来るのだから、上手くいけば少額で大量のリターンが戻ってくる可能性もある訳だ。

 勿論それは逆に模擬店とかが失敗した場合、損をするという事になってる訳だが……

 

「俺は食材で頼む。アワビとかサザエとか、安く手に入れるルートを持ってるしな」

 

 安く手に入れられるルートとか言うと、何だか怪しげな取引をしているように思える。

 それこそ、密漁とか。

 だが、俺の場合は日本の領海外にある無人島で獲ってくるのだから、漁業権とかそういうのは関係ない……と、思う。

 実際には細かい法律とか分からないが、そもそも俺の存在自体色々な意味で法律云々なんて話じゃないしな。

 ともあれ、この前の長鳴神社の一件で俺がアワビとかサザエを持って来たのを見ていて、味わいもした女は素直に頷く。

 どうやらアワビの地獄焼き肝醤油ソース和えは、女を納得させるに十分な味をしていたらしい。

 ちなみに、刺身で食うアワビはコリコリとした食感を楽しむものだが、熱を通すとかなり柔らかくなって、全く違う食感になるんだよな。

 

「じゃあ、他の人にも聞いてくるから。その……頑張ってね」

 

 そう言うと、女は何故か頬を薄らと赤く染めて俺の前から去っていく。

 何故か友人と思われる女達の前に行くと、キャーキャーといった声を上げていたが……何か嬉しい事でもあったのか?

 ゆかりがメイド服を手にしたまま、そんな女達に視線を向けていたが……もしかして、あの女達はメイド服賛成派なのか?

 そんな風に考えつつ、ペンキを塗る作業に戻ろうとすると……不意に携帯に着信がある。

 何だ? 美鶴辺りから何か手伝って欲しいって連絡か?

 そう考えるも、電話ではなくメールだった。

 だが、メールの差出人は見知らぬ相手。

 チェーンメールだったか、その類のメールかとも思ったが、題名が『写真の男を見つけました』というのを見た瞬間、一瞬動きを止める。

 そうしてメールを開くと、そこには短い文章が書かれていた。

 

『マサです。以前探していた写真の男達を見つけました。正確には誰かから逃げているのを見つけて匿っています。どうすればいいですか?』

 

 そう書かれているメール。

 マサというのは、荒垣が抑制剤の件で弱ってるところを殴った奴だ。

 そして順平を探す為にポロニアンモールの方に行った時、俺に絡んできて……そして順平の写真を送って、それを探すようにと言っておいた相手。

 俺の強さを知っているマサが、まさか悪戯でこんなメールを送ってくる筈もない。

 もしかしたら、復讐する手筈が整って……という可能性も考えたが……あの時の実力差を考えれば、それこそ生身で何人集めたところで意味がないというのは、向こうも理解している筈だ。

 つまり、これは俺を嵌める為のメールではなく……本当に順平を見つけたという事になる。

 だが……メールには『男達』とある。達。……つまり、順平だけではなく他にも誰かがいるという事か。タカヤや幾月が逃げてくる筈はないし、そうなると……ジン辺りが逃げ出したのか?

 いや、けどジンはタカヤに心酔している様子だったしな。

 そうなると、ストレガだったか? その集団にはタカヤとジン以外にもいるって事になるのか。ともあれ……

 

「ゆかり!」

「え? ちょっ、何よいきなり!」

 

 メイド服についての言い争いをしていたゆかりは、突然大声で呼ばれた事で驚き、俺の方に視線を向けてくる。

 いや、今の声で俺の方に視線を向けてきているのはゆかりだけではない。

 教室で作業をしていた者の多くが俺の方に視線を向けていた。

 

「ちょっと来てくれ。それと有里とアイギスはいるか?」

「えっと、有里君とアイギスなら鳥海先生に用事を頼まれて、少し前に出ていったけど」

 

 この場合、用事を頼まれたのはあくまでも有里で、アイギスはそんな有里にくっついていったって事か。

 ちっ、タイミングが悪い。

 取りあえずあの2人がいないなら、まずは俺達だけで一旦向こうと合流して、一応マサの罠ではない事を確認してから、美鶴達に知らせた方がいいか。まずないと判断はしたが、それはあくまでも俺の判断であって、実際にはどうなのかは分からないしな。

 それに……逃げているとメールにはあった。

 つまり、恐らくはストレガだと思うが、追われてる訳だ。

 

「何よ、いきなり呼んで」

 

 メイド服の件で言い合っているところで呼ばれたのが面白くなかったのか、不満そうに言ってくるゆかりに携帯のメールを見せる。

 それを見て、ゆかりは小さく息を呑む。

 

「ねぇ、このマサって……アクセルが前に言ってた男?」

「ああ。正直なところ期待してなかったんだが、まさかそっちに引っ掛かるとは思わなかった。とにかく、このメールが本当なのかどうかを確認する。お前も行くか?」

「当然でしょ。けど、桐条先輩には連絡をしなくてもいいの?」

「その心配は分かるが、取りあえず向こうの様子をきちんと確認してからだ。万が一、待ち伏せとか、そういう風にされている可能性を考えるとな」

 

 そう告げる俺の言葉に、ゆかりは素早く頷く。

 

「悪い、俺とゆかりはちょっと抜ける。もしかしたら、今日はもう戻ってこないかもしれないから、時間になったら解散してくれ」

「ちょっ、こんな時間にデートかよ!?」

 

 友近がそう叫び、当然のように俺とゆかりに……頬を赤く染めたゆかりに視線が向けられるが、何故かゆかりはいつものように否定せず、俺の腕を抱く。

 まだ夏服……つまり薄い生地の制服だけに、ゆかりの年齢以上に発達している双丘が、俺の肘にひしゃげて潰される。

 そんなゆかりの様子に教室に残っていた者達がざわつく。

 ゆかりはそんな中、1人の女に……さっき俺に話し掛けてきた女に視線を向けていたが、すぐに俺を引っ張って教室から出ていく。

 そうして教室から出ると、すぐに抱いていた俺の腕を離し、顔を真っ赤にしたままだが学校を出る。

 本来なら学校の中からでも影の転移は出来たんだが、今は学園祭の準備期間という事で、色々と忙しい。

 普段使っていない教室とかも、普通に使われていたりするしな。

 そんな訳で、学校から出るとすぐに建物の陰に入り、影のゲートでポロニアンモール駅に向かう。

 そうしてポロニアンモール駅の近くに到着すると、メールでポロニアンモール駅に迎えに来るように送る。

 そのまま、数分……ゆかりと2人で落ち着かない様子で時間を潰していると、やがて見覚えのある人物が姿を現す。

 どうやら、前もってこの辺りで待っていたのだろう。

 

「お久しぶりです、アルマーさん」

 

 そう言って頭を下げてくる。

 ん? あの時、俺は名前を言ったか?

 一瞬そう思うも、そもそも俺はポートアイランドの近辺で有名人だ。本当に俺の事を調べようと思えば、そう難しい話でもないだろう。

 

「それで? 順平……写真の男を見つけたって話だが?」

「はい。すぐに案内します。ただ……」

 

 口籠もるその様子は、何かを言いたいが、言ってもいいのかと、そんな風に思っているように見える。

 

「どうした?」

「いえ、アルマーさんから渡された写真の男は間違いなくいるんですが、1人じゃないんですよ」

 

 メールにも書いてあった複数形での表現。

 どうやらそれは、何かの間違いだとかそういう事ではないらしい。

 

「そうか。取りあえず案内してくれ。どういう相手なのかは、こっちで見てから判断する。……ちなみに、眼鏡を掛けた関西弁の男か?」

「え? いえ。違います。その……妙な格好をした女ですが」

「……へぇ」

 

 男の言葉に、ゆかりが一言だけ漏らす。

 その声を聞いた瞬間、俺達を案内する為にやって来た男は間違いなく触れてはいけない何かに触れたかのように、一瞬ビクリとした。

 いやまぁ、そんなゆかりの気持ちも分からないではないんだけどな。

 イレギュラーシャドウとの戦いがあった日に、誰にも何も言わないでいきなりいなくなって……その上、幾月やタカヤの騒動だ。

 当然のように順平の事は心配し、事実時間があれば色々と探し回っていたし、桐条グループの力も借りて探していた。

 なのに、そんなに俺達に心配を掛けていた中で、本人は女と一緒にイチャついていた。

 それを聞いたゆかりが、そう簡単に許せる筈がないだろう。

 

「取りあえず落ち着け。俺達を迎えに来た男に当たっても意味はないだろ。何か言いたいのなら、その男じゃなくて順平に直接言った方がいい」

 

 そう言うと、少しだけゆかりは落ち着く。

 男の方は、俺に感謝の視線を送っていた。

 一見すれば普通の女子高生にしか見えないゆかりだが、実際には連日のようにタルタロスに挑み、命懸けの戦いを繰り返しているのだ。

 本気になった時の迫力は、その辺にいる不良程度にどうこう出来るような代物ではない。

 それこそ、今のゆかりが本気になれば、弓やペルソナといった能力がなくても、素手の状態ですら不良の10人程度は相手に出来てもおかしくはないのだから。

 

「……そうね。その辺りはしっかりと順平に言わせて貰おうかしら。じゃあ、順平のいる場所に案内してくれる?」

 

 そう告げるゆかりは、満面の笑みを浮かべていたが……その笑みを見た不良がぎこちない動きで頷いたのを見れば、それがどれだけの迫力を持っていたのかが分かるだろう。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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