転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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2005話

「では、アルマーさん。私達はこちらを探すであります」

「ああ、分かった。……本当に俺が一緒じゃなくてもいいのか?」

「大丈夫。何かあっても風花は僕が守るから」

「湊君……」

 

 有里の言葉に、山岸が目を潤ませて有里を熱い視線で見つめる。

 いやまぁ、うん。……これぞ馬鹿ップルって奴だな。

 実際、周囲の通行人の何人かは有里と山岸を見てケッとでも言いたげな様子を見せてるし。

 これがまさに、砂糖を吐くって奴だろう。

 コーヒー派のフェイトをここに連れてくれば、丁度いい感じになりそうだけどな。

 ともあれ、これ以上この2人の側にいればやる気をなくしそうなので、俺はさっさとその場を離れる。

 俺、有里、山岸、アイギス。

 部活でちょっと抜ける事が出来ないゆかりや真田、生徒会の仕事がある美鶴はここにはおらず、天田と荒垣、コロマルの2人と1匹はこことは別の場所を探している。

 そんな訳でこうして順平を探す為にポロニアンモールまでやってきたんだが……この辺り、実はそんなに来る事がないからあまり知らないんだよな。

 ポートアイランド駅の周辺や住んでいる巌戸台の辺りなら結構来るんだが。

 勿論全く来た事がないって訳ではないので、何も分からない訳じゃないんだけどな。

 ともあれ、こうしてやって来た俺達4人――面倒なのでアイギスも1人と数える事にした――だったが、ここでどう分かれるかという事で問題が起きた。

 アイギスは絶対に有里の側からは離れないと主張し、そうなれば俺と山岸という事になるのだが、俺達はそこまで親しくはない。また、山岸と付き合っている有里にとっても、俺と一緒に山岸を行動させるのはあまり面白くない。

 そんな訳で、俺は1人で……そして有里、アイギス、山岸の3人で行動する事になった訳だ。

 いやまぁ、それはそれで別にいいんだけどな。有里達も満足してるようだし。

 ともあれ、雰囲気を出している有里と山岸に軽く声を掛け、その場から離れる。

 ……あの2人、いつまであんな風にイチャついてるんだろうな。

 アイギスはアイギスで、そんな2人の様子を特に邪魔するでもなく、じっと見てるし。

 最初はアイギスに対して若干思うところがあった見たいな山岸だったが、別に女として有里を慕っている訳ではないと知り、今はそれなりに受け入れているらしい。

 そっちはそっちで勝手にやってくれって感じだな。

 そんな訳で有里達をその場に残し、路地裏のような場所に……いわゆる、不良が集まっているような場所に向かう。

 結局のところ、情報網として一番使えるのはそういう連中なんだよな。

 力を見せれば、あっさりとこっちの指示に従ってくれるし。

 そして、今の俺の外見は10代半ばという、絡みやすい相手としてはこれ以上ないだけのものがある。

 そうして自分自身を餌にして路地裏辺りを歩いていると……

 

「よう、坊主。悪いけど、ちょっと金を寄越せ。俺の拳を食らいたくないだろ?」

 

 そう言ってきたのは、結構な筋肉が付いているモヒカンの男。

 その男の近くには何人か仲間と思しき者達がおり、背後では俺の逃走経路を塞ぐように、こちらも何人かの姿がある。

 よし、掛かった……と思ったが、獲物を見るような目で俺を見ている男は、どこか見覚えのある人物だった。

 このペルソナ世界でも、モヒカンという髪型の男は滅多に見る事が出来ない。

 そうなれば、ジンの時とは違って、俺の勘違い……という訳でもないだろう。

 どこだ? そう考えながらモヒカン男を見ていると、モヒカンの仲間の1人が得意そうに笑って口を開く。

 

「ほら、マサさん。マサさんみたいな大物が出てくれば、こういうチビは怖がって言葉も話せなくなるんですよ。それくらいは分かってたでしょう?」

「……マサ?」

 

 マサと呼ばれたモヒカンの男を見て、俺はこの男をどこで見たことがあったのかを、思い出す。

 そうだ、荒垣が制御剤の副作用で弱ってるところを襲って意識不明にした原因の奴か。

 ……ポートアイランド駅で天下を取るとか言ってた筈だが、何でポロニアンモールにいるんだ?

 まぁ、いい。俺の仲間に手を出した礼はしないといけないと思ってたんだ。

 わざわざ俺から探すような真似をしてまで復讐するつもりはなかったが、こうして向こうから姿を現してくれたのなら、それを遠慮する必要はない。

 

「何だ、俺の名前を知ってるのか? ふん、ならさっさと金を出せ、そうすれば俺のこの拳を味わうような真似はしないですむぜ?」

 

 そう言い、マサは拳をこちらに向けてくる。

 その拳は強力無比なのだ、と、そう自信に満ちている台詞。

 実際その拳は中々に強力そうに見えない事もないが……それは、あくまでも不良の喧嘩に限っての話でしかない。

 シャドウを相手に文字通りの意味で命懸けの戦いをしており、それ以外にも様々な戦いを潜り抜けてきた俺にしてみれば、子犬が必死に虚勢を張って吠えているようにしか見えない。

 

「タイミングよく出て来てくれたな。一石二鳥ってのはこの事か」

「……は? 何を言ってるんだ、お前? 俺が誰なのか分かってそんな事を言ってるのか?」

 

 マサは俺の言葉が理解出来ないといった様子で、不審そうな視線をこちらに向けてくる。

 だが、俺はそんなマサの様子を気にせず、掛かってこいと指で示す。

 そんな俺の態度が我慢出来なかったのだろう。マサは、コメカミに血管の筋を浮かび上がらせながら、俺に向かって殴りかかってきた。

 

「うおおおおおおおおおおっ!」

 

 こんなに容易く挑発に乗るとはな。

 いや、寧ろ今のは挑発とも呼べない行為じゃないか?

 そう思いながら、俺は殴りかかってきたマサの拳をしっかりと見る。

 何らかの格闘技の経験はあるらしく、拳の振るわれる速度はそれなりに速い。

 マサが自慢げに語るのも、理解出来ないではないが……

 

「ぐっ!」

 

 拳を回避し、マサの横を通り抜けざまに腹にカウンターとして拳を突き入れ、すれ違う。

 マサは、そのまま短い呻き声を上げながら、地面に膝を突く。

 

「……え?」

 

 マサの仲間の1人が、何が起きたのか理解出来ない様子で、間の抜けた声を上げる。

 今の一連の動きが分からなかったのだろうから、それも理解出来ない訳ではない。

 

「うげえええええ」

 

 腹を殴った衝撃で、胃の中のものをその場に吐き出すマサ。

 やっぱり荒垣がこいつにやられたのは、制御剤の副作用以外のなにものでもないな。

 

「マ、マサさん!?」

 

 吐いているマサを見て、取り巻きの1人がそう叫ぶ。

 この連中にとって、マサというのは力の象徴だったのだろう。

 実際、ある程度の実力を持っていたのは間違いない。

 ポートアイランド駅の裏側でも、それなりに地位を確立する事は出来ただろう。

 ただ、あそこは不良の溜まり場ではあるが、同時に何故か格闘技をやっている不良も多い。

 それこそ、最強の不良を目指しているというか、文字通りの意味でのバーリトゥード……何でもありの戦いを求めているような奴が集まっている。

 もっとも、何でもありってのはあくまでも格闘技としての何でもありって奴で、ナイフとかの刃物を使うのは当然駄目だし、拳銃なんかも当然却下だ。

 色々と制限の多い何でもありというのは、正直どうかと思うんだが……まぁ、それはそれで良しとしておく。別に俺がそれに関わる訳ではないし。

 ただ、大魔王とか何とかで、何気に俺はあの辺りの隠しボスとか、そういう扱いになってるらしいんだよな。

 今年の冬にあの辺りで暴れたのが、ここまで尾を引くとは正直思わなかった。

 

「さて……そろそろいいか?」

 

 ようやく吐くのが終わったマサと、俺が実はマサよりも圧倒的な強さを持っているという事を知り、出来るだけ早くこの場から逃げ出したいと思っているその取り巻き達を一瞥する。

 俺と視線が合った取り巻き達は、一気にその場から逃げようとするが……

 

「ここで逃げたら、どこまでも追っていくぞ。安心しろ、少し情報を聞きたいだけだ」

 

 そう言うと、逃げようとした動きをピタリと止める。

 もしかしたら、俺が本気でどこまでも追ってくるのかもしれないと考えたのか、それとも情報を教えれば俺が本当に何もしないと考えたのか……その理由はともあれ、わざわざ追うような真似をせずに情報を得られるというのは大きい。

 

「ここ何日かで、こいつを見た事はないか?」

 

 そう告げ、携帯に順平の写真を表示する。

 不良達はその写真をじっと見るが……誰も見た、という者はいない。

 

「言っておくが、ここで隠しておいて、後でそれが分かったら……」

 

 そこで意味ありげに言葉を止め、マサに視線を向ける。

 吐き終わって立ち上がったマサは、俺と視線が合うと畏怖とも呼ぶべき視線を向けてきた。

 さっきの一撃で、俺が絶対に自分の勝てない相手だと、そう理解したらしい。

 それは間違ってる訳ではない。

 いや、寧ろさっきの短いやり取りでそれを理解した辺り、やっぱり色々と才能はあるんだろうと思う。

 大人しく格闘家か何かになれば、大成功……とまではいかないが、そこそこの成功はするかもしれない。

 

「いや……俺はこんな奴見た事ねえぞ」

「俺もだ」

 

 その言葉を皮切りに、その場にいた者達はそれぞれそう言葉を返すが……生憎と誰も見た覚えのある奴はいなかった。

 ちっ、時間の無駄だったか。

 

「分かった。もう行っていいぞ。けど、カツアゲなんて馬鹿な真似はもうするなよ。お前達の顔は覚えたから、今度同じような事をしてるのを見た時は……」

 

 笑みを浮かべ、地面に落ちている石を手に取る。

 そうしてゆっくりと握りしめていくと……俺の手の中で、石は音を立てながら細かく砕けていく。

 そうして最終的には砂……とまではいかないが、粉々になった石が地面に落ちる。

 その気になれば、それこそ粉にするどころか、それを燃やすような真似も容易に出来たのだが……それをやると、少しやりすぎという事になりそうだったので、取りあえず止めておいた。

 

「この握力で、お前達の身体を思い切り握ったらどうなるのか……それを自分で楽しみたい奴がいたら、同じような真似をするといい」

 

 笑みを浮かべてそう告げると、その場にいた全員が蒼白な顔色になりながら首を横に振る。

 

「それと、この写真の男の情報をしっかりと頼むな? 誰かが何かの情報を持ってくればよし、何の情報もない場合は……そうだな、またお前達の前に俺が現れる可能性が高いかもしれないな。それこそ、今度俺が握るのは……さて、どうなるだろうな? もしかしたら、お前達の身体かもしれないぞ?」

「ひぃっ!?」

 

 男の1人の口から、悲鳴が上がる。

 今の状況を考えれば無理もないと思うが、出来ればもう少し根性を見せて欲しい。

 そう思うのは高望みしすぎか?

 ともあれ、こうして情報を得るようにした以上、もうこいつらに用はない。

 後は、他にも何か情報を……

 

「ま、待て。待ってくれ!」

 

 その場を立ち去ろうとした俺に声を掛けてきたのは、マサ。

 へぇ……今の状況で俺に声を掛けてくるとか、結構度胸があるな。

 

「何だ? 俺の命令に従うのが嫌なのか? なら、こっちも……」

「違う! あんたの命令に従うのは、別に構わない!」

 

 俺の言葉を遮るように、マサが叫ぶ。

 言葉を遮って怒らせるよりも、俺に逆らう気だと、そう俺に思われたくなかったといったところか。

 

「……なら、何だ?」

「その、さっきの男の写真をくれないか? それに、もし情報を得ても、どうやってあんたに教えればいい?」

 

 そう言われ、少し考える。

 確かに情報を知っても、こいつらには俺と連絡を取る手段がない。

 普通ならポートアイランド駅周辺で待ってれば、俺と遭遇出来る……と言いたいところなんだが、残念ながら俺は学校から帰る時にはモノレールじゃなくて影のゲートを使ってるしな。

 

「そうか、分かった。なら携帯を貸せ」

 

 その言葉に従い、マサは大人しく俺に携帯を渡す。

 それを使い、携帯のメールアドレスを交換してから、マサのメールに順平の写真を送り。その携帯をマサに返す。

 

「これでいい。見つかったら、そのアドレスにメールを送れ。言っておくが、妙なメールを送ってきたら……分かってるな?」

 

 必死に頷くマサを見て、取りあえずこれで妙な真似……ウィルス付きのメールを送られたり、ハッキングされたりとか、そういう事はされないだろうと判断する。

 いや、このペルソナ世界で携帯にハッキング出来る奴がいるのかどうかというのは分からないし、もしいてもマサに連絡が出来るような相手だとは限らないが。

 まぁ、そういう奴がいたら、それこそ順平を探して貰うのに役立つだろうが。

 

「よし、じゃあ行け。お前達全員の顔は覚えたから、情報収集に手を抜くような真似をしたら……どうなるか、分かってるな?」

 

 笑みを浮かべつつ、俺は男達にそう言うのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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