転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1986話

 草原に戻ってくると、そこでは当然のように荒垣が眠っているだけだった。

 ゴミに塗れていた時……あの身も蓋もない大声を上げていた時と比べると、間違いなく大人しい。

 今の荒垣だけを見れば、とてもではないがあのような大声を上げていた人物と同じだとは思えない。

 それこそ、今は素直に眠っているといった様子なのだから。

 

「さて、この様子を見る限り……最近連絡がなかったのは、多分さっきの一件が原因で間違いないだろうな。だが、何を考えて薬なんかに手を出した?」

 

 正確には薬ではなく、何らかの病気という可能性も決して否定出来ない。

 だが、そうであれば、大人しく病院に行けばいいだけの話だ。

 そうではなかった以上、何か別の理由がある……そう思わざるを得ない。

 

「取りあえず病気なら、イクシールもあるから何とかなると思うんだけどな。タルタロスで入手した魔法薬もあるし」

 

 ただ、薬の後遺症だった場合、下手にそういうのを使わない方がいいのも間違いなかった。

 そうなると、やっぱり美鶴の連絡待ちか。

 そう思った瞬間、携帯にメールが届く。

 そこには、荒垣を連れて辰巳記念病院まで転移してこいと、そう書かれている。

 電話じゃなくてメールなのは、話している時間も惜しいとということか。

 ともあれ、それならこっちも素早く行動する必要がある訳で……俺は先程同様、荒垣の身体諸共に辰巳記念病院の近くに転移するのだった。

 

 

 

 

 

「アクセル!」

 

 荒垣を連れて病院の前に到着すると、美鶴が何人もの医者や看護師を引き連れて病院の中から出てくる。

 考えるまでもなく明らかだったのだが、俺と荒垣だと、明らかに荒垣の方が背が高い。

 そうである以上、先程美鶴を転移させた場所から辰巳記念病院まで荒垣を運ぶのは、かなり大変な事になる。

 いや、俺の身体能力を考えれば、その辺りはどうとでも出来るのだが、傍目には色々な意味で目立つ。

 ……それでも結局こうして荒垣を背負って連れて来た訳だが。

 男をおんぶするような趣味、俺にはないんだが。

 溜息を吐くも、とにかく近づいてきた美鶴に……正確には美鶴が連れている医者と思しき者達に向かって口を開く。

 

「取りあえず安定はしてるけど、ついさっきかなり苦しそうにして大声を上げていた」

「分かりました。担架に乗せて下さい」

 

 医者……いや、看護師か? その女の言葉に頷き、担架に荒垣を乗せる。

 この担架は美鶴が用意させたものなのだろう。

 こっちとしては、俺が荒垣を運ばなくてもいいので、かなり楽だったが。

 そうして担架に運ばれていく荒垣を見送っていると、美鶴が俺に向かって話し掛けてくる。

 

「アクセル、私達も行こう。今はいいが、荒垣が下手に暴れて……ましてや、無意識にでもペルソナを召喚しようものなら、それを押さえる者が必要になる」

 

 普通なら考えられない事だが、荒垣の場合はペルソナの潜在能力が高すぎて暴走するという前例があるしな。

 そうなると、今がどのような状況なのかは分からないが、いざという時の為に備える必要があった。

 

「がああああああああああああああああああああああああああああああっ!」

 

 そうして、再び聞こえてきた荒垣の叫び。

 病院の中に入ってからの叫びだったが、その叫びが病院に来た者達の耳にも当然ながら入り、周囲の注目を集めていた。

 

「アクセル!」

「分かっている」

 

 美鶴の言葉に短く言葉を返し、荒垣のいる方に向かって進む。

 そこでは、担架の上で無意識にだろう。暴れている荒垣の姿があった。

 

「落ち着いて下さい! ここは病院です! 落ち着いて!」

 

 看護師が荒垣に向かって声を掛けているが、そもそも荒垣は意識を失っている状態だ。そんな状態で声を掛けられたところで、それに反応するかと言われれば……難しいだろう。

 勿論、人は極限状態の中だったり、眠っている状況で誰かに声を掛けられて、それに気が付く……といった事は、時々聞く。

 だが、それを今の荒垣に当て嵌めるのは、明確に無理がある筈だった。

 俺と美鶴は担架の上で暴れている荒垣の側までやってくると、その身体を押さえつける。

 

「落ち着け! 暴れるな! ここは危ない場所じゃない!」

 

 看護師に対してあんな風に思っていながら、荒垣にそう声を掛ける。

 ……ああ、なるほど。荒垣に声を掛けて、出来ればこっちの態度に反応して欲しいという思いもあるのだろうが、同時に周囲にいる者達に対して、パニックにならないようにしているという一面もあるのか。

 勿論、それを正直に口にするような真似はしないが。

 ともあれ、そんな状況の荒垣を運びながら、俺達は病院の奥、治療する為の部屋に向かい……

 

「すいません、お嬢様。ここまででお願いします」

 

 医者の1人が、美鶴に向かってそう告げてくる。

 そんな医者の言葉に、美鶴は少し考えてから頷く。

 

「分かった。だが、もし荒垣がペルソナを召喚しようとしたら、すぐに私とアクセルを呼ぶように。戦闘訓練を受けた者ならともかく、普通の医者がペルソナに……それも暴走したペルソナを相手にするというのは、半ば自殺行為だからな」

「分かりました! その時はすぐに呼ばせて貰います!」

 

 医者はそう言い、荒垣を運んでいく。

 ……今の会話から考えると、あの医者はペルソナについて知ってるのか。

 いやまぁ、この辰巳記念病院は桐条グループの資本で運営されている病院だ。

 そうである以上、当然影時間についても詳しい事を知っている者がいてもおかしくはないのだろう。

 

「取りあえず、これで安心か? ほら、これでも飲んで落ち着け」

 

 廊下にあった椅子に座る美鶴に、空間倉庫から取り出したペットボトルのお茶を渡す。

 この世界で買って空間倉庫に収納しておいたものなので、実は他の世界の代物です……といった訳ではない。

 もしこれを飲んでいるのを誰かに見られて、その人物がペットボトル飲料愛好家だったりしても、特に問題はない筈だ。……まぁ、そんな可能性がどれだけ低いのかは、それこそ考えるまでもないだろうが。

 

「ああ、ありがとう」

 

 美鶴はペットボトルのお茶を受け取ると、キャップを開けて口に運ぶ。

 何だかんだと、夏のこの状況で色々と動き回った為だろう。ましてや、美鶴の性格から考えて、俺が荒垣を連れてくるのにも色々と心配はしていただろう。

 かなり喉が渇いていたらしく、一口飲み、二口、三口、四口……といった風にお茶を飲んでいく。

 ……どうやら、俺の予想以上に喉が渇いていたらしい。

 

「まさか……って展開だったな」

 

 美鶴がペットボトルの半分程を飲み干し、ようやく落ち着いたのを見て、そう呟く。

 

「そうだな。散々な目に遭った。だが……」

 

 言葉とは裏腹に、美鶴は口元に小さな笑みを浮かべ、言葉を続ける。

 

「そのおかげで、荒垣を助ける事が出来たのは事実だ。……違うか?」

「それは否定しない」

 

 実際、もし俺達があの時にあの辺りにいなければ、荒垣を殴ったという男の自慢話を聞くような事もなかったのだ。

 そうなれば、ゴミに埋まっている荒垣の存在に気が付くような事もなく、あのまま……下手をすれば、街中で暴走したペルソナが暴れ回るような事にすらなっていただろう。

 そう考えれば、やはり俺達は色々な意味で運が良かったと言っても、間違いではないと思う。

 

「それでも、出来れば美鶴とのデートは、邪魔もなしにゆっくりと楽しみたかったところだな」

「……デ、デ、デ、デート!?」

 

 普段は凜々しいと表現するのが相応しい美鶴の顔が、急激に赤くなっていく。

 いや、本当に美鶴は男女関係に弱いな。

 

「まぁ、男と女が2人で一緒に遊びに行ったのは間違いないし、一応今日の行為はデートと表現しても間違ってはいないんじゃないか? 特に、俺達の場合は待ち合わせして、映画館で映画を見て、ファミレスで一緒に食事をして、ウィンドウショッピングをしたんだから。……それと、草原にも一緒に行ったか。まぁ、その時は荒垣もいたけど」

 

 世間一般でいう、あからさまなデート以外のなにものでもないだろう。

 寧ろ、典型的なデートと表現しても、決して間違いではない筈だ。

 もっとも、美鶴の性格を考えれば、デートと言っても素直に頷ける筈がないのは分かっていたが。

 そもそもの話、桐条グループ総帥の娘である美鶴は、そういう対象がしっかりと決まっている可能性もある。いわゆる、婚約者って奴だな。

 ……もっとも、親馬鹿気味の武治の性格を考えると、その辺の……それこそ桐条グループの財力や権力、影響力なんてものを目当てにしたいような奴は、とてもではないが美鶴との婚約を武治に認めさせるような真似は出来ないだろうが。

 

「う……その、そう言われてみれば、もしかしてデート……なのか? 正直、その、そういうつもりは全くなかった……とは言わないが……その……」

 

 ここまでテンパってる美鶴ってのも、珍しいな。

 荒垣を心配するあまり、気が張っている状態を少しは解消出来たか?

 荒垣が入った部屋の中からは、時々荒垣の呻き声……いや、雄叫びと表現した方がいいか? ともあれ、そんな声は聞こえてくるが、医者や看護師の悲鳴の類は聞こえてこない。

 つまり、ペルソナが召喚されるような事はない……んだろう。

 勿論、このままずっとペルソナが召喚されないとも限らない以上、それを警戒する必要はあるのだが。

 ただ、そうなると美鶴が気を張っている状態が続くのは、色々と不味い。

 短期間ならともかく、長期間となると集中力が続かない可能性がある。

 そんな訳で、現在俺は美鶴の気分転換も兼ねて話している訳だ。

 

「そう言えば、他の連中には荒垣の事を伝えたのか? 特に真田なんかは荒垣を心配していると思うが」

「ん? ……ああ。S.E.E.Sの者達と、岳羽には先程私がこちらの病院に残った時に連絡をしておいた。コロマルは……無理だったが」

「だろうな」

 

 基本的に長鳴神社の境内で暮らしているコロマルだけに、連絡を取るような真似をするのは難しい。

 影時間になれば、俺のアパートの前まで自分からやってくるんだが。

 

「コロマルの件は置いておくとして、恐らくゆかりと真田の2人……もしかしたら他の面々もこの病院にやって来るかもしれないな。そうなると、そっちにも説明をする必要がある訳だが……」

「その辺は私が説明しよう」

「頼む」

 

 こういう説明に関しては、俺よりも美鶴の口から出た方が色々と説得力はあるだろう。

 

「それに、理事長も可能な限り早く来ると言っていたから、そちらにも期待出来るだろうな」

 

 そう告げる美鶴の様子からは、幾月が自分を裏切っている可能性があるなどとは全く思っていないのは間違いない。

 武治辺りに、後でその辺を話す必要があるのではないか? と言っておいた方がいいような気もする。

 もっとも、武治には武治で色々と考えがあって話をしていないのだろうが。

 

「理事長は研究者としても高い能力を持っている。荒垣が、何が原因であのような状態になったのか、調べる事も可能だろう」

「そうか? そういうのは、どうせなら医者の方が詳しいと思うけど」

「うむ。それは否定しない。だが、理事長は影時間関係については最高峰の人材の1人なのは間違いない。もし荒垣の状態が影時間に関係するものであるのなら、それを見つける事が出来るのは、理事長だけだろう」

「……そうか」

 

 何年も前から幾月と一緒に影時間に対して活動してきただけに、美鶴の幾月に対する信頼は厚い。

 それだけに、もし幾月が美鶴を……桐条グループを裏切っている可能性が濃厚だと知れば、一体どうなるのやら。

 

「アクセル!」

 

 美鶴と幾月について考えていると、不意に廊下にそんな声が響く。

 声のした方を見ると、そこにいたのはゆかりだ。

 夏らしい……そしてゆかりらしい動きやすい服装に身を包んでいるが、その表情に浮かんでいるのは心配の色だ。

 まぁ、ゆかりも何だかんだと俺と荒垣と一緒にタルタロスで戦ってきたんだ。

 そんな荒垣が意識不明になっていると聞けば、それは当然こうなるだろう。

 

「荒垣先輩は!?」

「落ち着け。今は治療中だ」

 

 ゆかりの言葉に、視線を荒垣が治療を受けている部屋に向ける。

 そんな俺の視線を追い、ようやくゆかりは落ち着いたのだろう。少しだけ安堵したような息を吐く。

 

「それで……様子はどうなの?」

「どうだろうな。その辺はまだ分からない。部屋の中に運ばれてから、まだ誰も出て来ないからな」

 

 あの様子を見れば、多分何らかの問題があるのは確実だ。

 だが、それを口にすればゆかりを心配させてしまうのは間違いなく、そう考えれば適当に誤魔化すというのも、決して間違っている訳ではないだろう。

 そうこうしているうちに、真田を始めとしたS.E.E.Sのメンバーが来て……俺達は、部屋から医者が出てくるのをただ待つのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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