転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1984話

「何で俺はここにいるんだろうな」

 

 目の前の光景を見て、しみじみと呟く。

 数日前にゆかりと来たばかりの場所……そう、映画祭り。

 その映画祭りをやっている映画館の前で、現在俺は人を待っていた。

 誰を待っているのかと言えば……

 

「うおっ、いい女。なぁ、あの女に声を掛けようぜ」

「馬鹿、あんな女がナンパに引っ掛かる訳ないだろ。どうせ断られるっての」

 

 少し離れた場所からそんな声が聞こえてきて、それを話している男達に視線を向け……続いて、その男達が見ている方に視線を向ける。

 そこにいたのは、私服姿の美鶴。

 いつもの制服でもなく、この前の夏祭りの時のように浴衣を着ている訳でもない。

 動きやすさを重視してか、パンツスーツを着ているのだが……その大人びた顔と着ている服の関係から、どう見ても社長秘書とかにしか見えない美鶴がそこにいた。

 今の美鶴を見て高校生だと思えと言われても……うん、多分無理だろうな。

 その美鶴が、俺の方を見ると笑みを浮かべて近づいてくる。

 そうなれば当然この周辺にいて美鶴に見惚れていた者達の視線も俺に向けられる訳で……男からは、場合によっては女からも嫉妬の視線を向けられる。

 

「すまない、アクセル。待たせたか?」

「いや、俺も今来たところだよ」

 

 うん? これって、ゆかりに言われたデートの時の台詞じゃないか?

 一瞬そう思ったが、まぁ、俺達自身がどう思ってるのかはともかくとして、俺と美鶴のことを知らない奴が見れば、デートに見えない事もない。

 

「それで、何の映画を見るんだ?」

「ふむ、そうだな。……このSF映画はどうだろう? 悪の帝国を相手に、気を使う特殊能力者がビームサーベルを使って戦いを挑むという作品なんだが」

「あー……ちょっと前にTVで見た。確か、前作で主人公の父親が敵に洗脳されて出て来た奴だよな」

「うむ。実はこの作品に出てくる1人と少し前にパーティで会うことがあってな。自信作だから、是非見て欲しいと言われたのだ」

「へぇ」

 

 この辺り、さすが世界の桐条グループといったところか。

 この作品は世界的に人気のある作品で、それだけに出演している俳優も一流の俳優が多い。

 そういう人物とあっさり会うというのは、その辺のちょっとした金持ちで出来る事ではない。

 まぁ、特殊なコネとかがあれば、可能かもしれないが。

 

「そうか。なら、それを見るか」

 

 特に何か見たい映画があった訳ではない俺は、美鶴の言葉にそう返す。

 ……少し不安なのは、これから見るのがいわゆる続き物だという事だ。

 前作を見ていない以上、内容に分からないところが出てくる可能性がある。

 もっとも、映画は基本的にその作品だけで意味が分かるようになっているので、本当の意味で理解出来ない……という事はないと思うが。

 

「そうだな。では、そうしよう」

 

 その映画を勧めてきた美鶴も、当然のようにSF映画を見るのを否定はせず、チケットを買う為に移動するのだった。……周囲の男達から、嫉妬の視線を受けつつ。

 

 

 

 

 

「なかなか面白かったな」

「そうだな。続きが気になる終わり方だったから、出来るだけ早く続編を見たいものだ」

 

 駅から少し離れた場所にあるファミレスで、俺は美鶴と共に映画の感想をそれぞれ口にしていた。

 テーブルの上には、チキングラタン、サンドイッチ、フライドポテト、ピザ、エビフライ……といった料理が並んでいる。

 美鶴の前には、イチゴパフェのみだが。

 まぁ、俺と違って美鶴は食べたものが全て魔力として吸収される訳じゃないしな。

 ゆかりと同じように、タルタロスで戦っている以上は運動不足になるなんて事はないだろうが、それでもやはりその辺を気にするのは女だからこそだろう。

 

「続編って……ああいうハリウッドの超大作ってのは、それこそ1作品作るのに何年も掛かるんだろ? それこそ、下手をすれば10年とか」

「それは……うーむ、以前そんな事を聞いたことがあったな」

 

 まぁ、中には以前に誰かが書いたシナリオを発掘して、それから映画を作ったにも関わらず、シナリオが埃を被っていた時間も合わせて構想10年! とか表示される事もあるらしいが。

 ただ、ああいうシリーズ化している映画でそのような真似はしない、と思いたい。

 実際のところは分からないから、何とも言えないが。

 ともあれ、そんな感じで話をしながら軽食を済ませると、俺と美鶴は少し2人でポートアイランド駅の周辺を歩いてみる事にした。

 正直なところ、今の美鶴を連れて歩くというのは色々と問題があるんだが。

 夏休み中という事もあり、半ばはっちゃけたような奴が出て来て、こっちに妙に絡んでくる……なんて事がないのを、祈っておくか。

 

「そう言えば……何でまた、急に俺を映画祭りに誘おうなんて考えたんだ?」

 

 駅前にある店を何軒か見ながら、ふと気になって美鶴にそう尋ねる。

 

「なっ!?」

 

 だが、何故か美鶴の口から出たのは、驚きの叫び。

 何か聞いちゃ不味い事だったのか?

 一瞬そんな風に思うも、美鶴はすぐに口を開く。

 

「その、だな。お父様から、せっかくだからお前も骨休めをしろと言われたのだが……」

 

 そう告げる美鶴は、どこか恥ずかしそうに振る舞う。

 だが、そんな美鶴の様子を見て、何となく俺を誘った理由が分かってしまった。

 

「普段は色々と忙しくて、他の生徒と遊びに行くような暇は殆どないからな」

「うむ。その……恥ずかしながら、そうなのだ」

 

 生徒会長、S.E.E.S、桐条グループの令嬢と簡単に思いつくだけでも普通に考えれば1つこなすだけで難しい役職を3つも兼任しているのだ。……桐条グループ令嬢というのは役職とは言えないかもしれないが。

 ともあれ、そんな美鶴だけに友人と言えばそこまで多くはない。

 ましてや、美鶴の性格や容姿から憧れの視線を向けられる事も多く、それこそ同学年の生徒や……場合によっては大学生からもお姉様呼ばわりされているというのを聞いた事がある。

 いや、美鶴の容姿を考えれば、そんな風になってもおかしくはないんだけどな。

 そんな美鶴だけに、他人を誘うというのは難しい。

 特に今は3年の連中にとっては、受験における最大の山場だ。こんな時期に映画祭りに誘われても、殆どが迷惑にしか思われない筈だ。

 ……受験生という意味では美鶴も同じなのだが、美鶴の場合は推薦を狙っているのか、それとも受験をするのか分からないが、それでもどうとでもなるだけの実績の成績があるから、その辺は気にしなくてもいいんだろう。

 大学に行って対シャドウ機関とでも言うべきものを作るという目的を持っている今の美鶴は、心身共に充実しているといえる。

 影時間をどうにかする為に、残るイレギュラーシャドウが残り4匹というのも大きいだろう。

 そんな美鶴だったが……まぁ、だからこそと言ってもいいが、息抜きをするにも気軽に誘える友人がいないというのは、結構問題な気がする。

 もっとも、美鶴に友人が全くいないという訳ではない。

 

「真田はどうしたんだ?」

 

 美鶴の長年の友人たる真田の名前を出すが、それに返ってきたのは苦笑。

 

「あの明彦が、2時間も黙っていられると思うか?」

「あー……うん、そうだな。聞いた俺が馬鹿だった」

 

 真田の性格を考えれば、とてもではないがそんな真似が出来るとは思えない。

 それどころか、映画を見ている途中で身体を動かしたくなったと言って、映画館から飛び出すような真似をしても、驚く事はないと思う。

 

「その……もしかして、迷惑だったか?」

「いや、そんな事はない」

 

 少しだけ申し訳なさそうにして尋ねてくる美鶴に対し、俺は即座に首を横に振って否定する。

 事実、美鶴の誘いを迷惑と思っている訳ではない。

 ……それ以前に、美鶴に誘われて映画祭りに行ったのを迷惑だと言えば、嫉妬の視線をこっちに向けている男達にどんな目に遭わされるのやら。

 勿論直接的な被害をどうこうって訳ではないが、そう思う気持ちも分からないではないし。

 

「今までにも何度か美鶴と遊びに行った事はあっただろ。誘うのを躊躇うような真似、今更いらないと思うぞ」

 

 出来れば、次は映画祭りではなく他のにして欲しいところだが。

 映画はレンタルで見る派の俺としては、そうつけ加えたくなったが、取りあえずそれはそれ、これはこれという事にしておく。

 美鶴の、俺を見る視線が喜びに満ちていたというのも大きいだろうし。

 

「そうか! いや、この時期にアクセルを誘うのもどうかと思っていたのだが……喜んで貰えて何よりだ。ん? すまない、ちょっとあの店を見てもいいか?」

 

 そう言いながら、美鶴は少し離れた場所にある服屋に向かう。

 女が服屋に向かうというのは、男にとっては非常に退屈な時間になる……のが普通なのだが、そこは美鶴。

 本人が口にした通り、ちょっと店の前に飾られている服を見るとこちらに戻ってくる。

 その表情が少し残念そうな様子なのを見て、疑問に思う。

 

「どうした? 何か買いたい服でもあったんじゃないのか?」

「……いや、ああいう系統の服は私には似合わないからな」

 

 そう言っている美鶴の視線の先にあるのは、いわゆる清楚系と表現されるべき服。

 いやまぁ、元々ファッションとかに詳しくない俺だけに、もしかしたら違うのかもしれないが、取りあえずそんな風に見える服。

 その服を着ているマネキンを見て、続けて美鶴を見て、再度マネキンを見る。

 

「そうか? こうして見ると、あの服は美鶴にも十分似合うと思うけど。……ハイレグアーマーを勧める俺が言うのもなんだけど」

「ありがとう、と言うべきか。最後の一言がなければ、もっと素直に喜べたのだがな」

 

 憮然とした様子で……それでいながら、どこか嬉しさを隠すことが出来ないような感じで告げる美鶴の様子に、俺は笑みを浮かべる。

 実際、年齢以上に見られる美鶴の容姿だが、だからといって、それでああいう清楚系の服が似合わないという事はない。

 寧ろ、美鶴だからこそ、そういう服が似合う……と、そう思うのは、俺だけではないだろう。

 マネキンが被っている麦わら帽子とか、そういうのも美鶴には似合ってると思うし。

 そう告げると、何故か美鶴の顔が赤く染まる。……照れたか?

 

「ば、ば、馬鹿を言うな! 私にああいうのが、似合う筈がないだろう!」

「そうか? 美鶴にもああいう服装は似合うと思うけどな」

 

 照れる美鶴ってのも、かなり珍しいな。

 そう思いつつ、別に俺が口にしているのはお世辞でも何でもない。

 実際大人っぽい容姿をしている美鶴だが、だからといって清楚系の服装が似合わないという事もないだろう。……同時に、大人っぽいからこそハイレグアーマーとかも似合うと思うんだが、それはそれってことにしておいた方がいいらしい。

 

「……本当にそう思うか?」

「ああ」

 

 恐る恐るといった様子で尋ねてくる美鶴に、一切の躊躇なく頷く。

 今までの経験から考えると、こういう時、下手に誤魔化すような仕草をした場合、それは相手にとって本当に俺がそう思っているのか? と疑問に思ってしまう事になる。

 レモンを始めとした恋人達と付き合っていく上で俺が手にした、幾つかの真実の1つだ。

 そして、今回もそれは正しかったらしい。

 俺が躊躇なく頷いた事により、美鶴は笑みを浮かべ……

 

「けっ、何でえ。あの荒垣とかいう奴、ポートアイランド駅の裏で顔役っぽい奴だって言ってた割に、大したことないじゃねえか」

「マサさんの殺人パンチを食らえば、そのくらいは当然っすよ。マサさんの拳は最強の拳なんすから」

「へっ、任せろ。この夏の間に俺がこの辺りの天下を取ってやるよ」

 

 そんな声が聞こえ、俺と美鶴の動きがその場で止まる。

 聞き間違いか? いや、確かに荒垣という名前が出ていた。聞き間違いなんて筈はない。

 

「美鶴」

「うむ」

 

 数秒前に浮かべていた照れた表情とは違う、戦士としての顔。

 そんな美鶴と視線を合わせるとお互いに頷き、そのまま今の話をしていた者達の方に近づいていく。

 幸い……という言い方もどうかと思うが、向こうも2人。

 1人は身長180cmオーバーで、自分が言うだけあって腕にはそれなりに筋肉がついている。モヒカンをしているので、非常に目立つ。

 もう1人の男はかなり小柄で、モヒカンの男の取り巻きといった感じか。

 

「すまないが、ちょっといいか?」

「あ? ……おう……」

 

 美鶴に声を掛けられたモヒカンの男は、最初声を掛けてきた相手を睨み付けようとするも、それが美鶴のような美人であると知ると、すぐに目尻を下げる。

 

「何だ?」

「ちょっと話がある。一緒に来て貰えないだろうか」

 

 そう告げる美鶴にモヒカンの男は頷き、俺と取り巻きも連れて建物の間の方に移動し……素早く話を聞き出すと、すぐに情報の場所に向かう。

 そうして向かった先で見たのは……

 

「荒垣!?」

 

 ゴミ箱に埋まるようにして倒れている、荒垣の姿だった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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