転生とらぶる1   作:青竹(移住)

2020 / 3408
1948話

 しん、と。

 巌戸台分寮のリビングルームに、そんな静寂が広がる。

 俺が何を言ってるのか、意味が分からない。

 そんな風に視線を向けてくる美鶴や、それ以外の面々。

 ……まぁ、それも無理はないか。

 実際にペルソナを召喚するのをこの目で見たからこそ、この犬がペルソナ使いだと認識出来る俺やゆかりと違って、他の面々はそれを理解出来ないのだから。

 

「えっと、それ……ギャグか? その犬、コロマルだろ?」

 

 沈黙を破り、最初にそう口を開いたのは順平だった。

 

「……コロマル? お前、そんな名前だったのか?」

 

 ゆかりに抱かれている犬……もとい、コロマルに視線を向け、そう尋ねる。

 すると、当然だ! とでも言いたげにコロマルは鳴き声を上げる。

 

「伊織、お前はこの犬を知ってるのか?」

 

 コロマルについて知らなかった美鶴が、順平にそう尋ねる。

 だが、尋ねられた順平の方は、美鶴の迫力に押されるかのようにしながら、頷きを返す。

 

「あ、はい。長鳴神社の辺りに住んでいる犬です。正確には、あそこの神主が飼ってた犬だったような……それでその人が事故だったかな? それで死んで、今は野良犬だったかと」

「……お前、あそこの神主に飼われてたのか」

 

 順平の口から出た言葉は、俺にとっても予想外だった。

 いやまぁ、コロマルの性格を考えれば、誰かに飼われていたというのは容易に想像出来た事だから、特に驚くべきところではない。

 だが、それでも……まさか長鳴神社の神主が飼っていたというのは、かなり予想外の事だった。

 考えてみれば、基本的にコロマルは長鳴神社にいたのだから、言われてみれば納得出来ない訳でもないけど。

 

「わん!」

 

 俺の言葉に同意するように、コロマルは鳴き声を上げる。

 

「……アクセルの言葉に反応しているように見えるな。もしかして、言葉を理解しているのか?」

「はっきりとは分からないが、大体は理解しているみたいだな」

 

 そう答えながら、もしかして影時間に適性があったり、ペルソナを使えるようになるのは、一定以上の知性とかが必要になるのか? と、ふと思った。

 だからこそ、人間以外の動物ではペルソナを使えたり、影時間に適性がなかったりする……のかもしれない。

 あくまでも、何となくそうなのではないかと思っただけで、何の確証もない戯れ言なのだが。

 

「へぇ、このワンちゃん、賢いね。それで、このワンちゃんがペルソナを使えるって話だけど、それは本当なのかい?」

 

 幾月が興味深そうにコロマルの方を見る。

 そんな視線が気にくわなかったのか、コロマルは幾月から視線を逸らす。

 

「あらら、これはちょっと嫌われちゃったかな。うーん、何でだろ?」

 

 首を傾げる幾月だったが、結局それはここで考えても意味はないと悟ったのか、再び口を開く。

 

「よければ、この子のペルソナを見せて貰えないかな?」

 

 月光館学園の理事長をしているが、幾月の本質はあくまでも研究者という事なのだろう。

 ゆかりが抱いているコロマルがペルソナを使う……というのを、どうしても見たいらしい。

 それを断ろうとし……だが、美鶴に視線を向ける。

 

「ペルソナを見せるのはいいけど、コロマルが使えるような召喚器を作って貰えるか?」

「む、その犬がか? しかし……」

 

 口籠もる美鶴だったが、その理由は大体理解出来る。

 召喚器というのは、ただの銃の模型という訳ではない。

 ……そもそも、銃の形をしていればいいのであれば、それこそモデルガンとかそういうのを使えばいいだけなのだから。

 そうである以上、やはり作ってくれ、はい分かった……という風に、簡単にはいかないのだろう。

 ましてや、今回俺が作って欲しいと言ってるのは、あくまでもコロマルが使う召喚器だ。

 つまり、今までのような銃の形をした召喚器では、どうしようもない。

 そうなると特別製の召喚器となり、コスト的にもかなり掛かる筈だ。

 

「大丈夫。もしここでペルソナを見せて貰えるのなら、その召喚器は責任を持って手配させて貰うよ」

「理事長、そんなに安請け合いしていいのですか?」

「ああ。美鶴君も知ってる通り、召喚器というのは死をイメージさせるものが必要となる。今の世の中では、拳銃が一番それらしいから、召喚器は拳銃の形をしているけど、別に死を感じさせるものであれば何でもいいんだよ。……それこそ、もっと昔であれば、刀型の召喚器とかもあったかもしれないね。だから、その辺は気にしなくても大丈夫」

「……理事長がそこまで言うのであれば、私は構いませんが……アクセル、どうだ?」

 

 美鶴が俺にそう聞いてくるが、正直なところ俺に聞かれてもな。

 

「ペルソナを召喚するのは、俺じゃなくてコロマルだ。聞くならそっちに聞いてみればいいんじゃないか?」

「わん!」

 

 俺の言葉に、即座に反応するコロマル。

 そんなコロマルに、やはり言葉を理解しているのかと真田が驚いた様子を見せていた。

 コロマルはそのままゆかりの腕の中から出ると、周囲に邪魔になる物がない場所まで移動すると、鳴き声を上げる。

 

「ワオオオオオオオオオオン!」

 

 そんな吠え声と共に、コロマルのすぐ側に先程神社の境内で見た3つの首を持つ犬のような……俺がケルベロスと取りあえず付けた名前に相応しい姿。

 

『おお』

 

 そんなケルベロスの姿を見て、その場にいた全員が――俺やゆかりも含めて――驚きの声を上げる。

 他の面々は異形……と呼ぶに相応しいケルベロスの形を含めての驚きといったところか。

 今まで俺達が見たペルソナは、基本的に人型のものだ。

 ……ペルソナチェンジという能力を持っている有里の場合は、人型以外のペルソナもあるらしいが、それは例外と考えていいだろう。

 つまり、ペルソナというのは召喚した者に近い形になるという事か。

 人間であれば、人型が……そしてコロマルのように人間以外の場合はそれ以外が、という風に。

 そして皆がケルベロスに視線を向けるが、次の瞬間にはケルベロスはその姿を消す。

 いきなり視線の先で消えたケルベロスに、再び皆が声を上げる。

 ただし、今回の声は驚きではなく残念そうな色が混ざっている声だったが。

 

「見ての通り、コロマルはペルソナを召喚出来るものの、すぐに消えてしまうんだ。これだと、戦闘で使うのは難しいだろ?」

「いや、おい。アクセル……もしかしてお前、コロマルを仲間に入れる気なのかよ!?」

 

 順平の口から驚きの声が上がり、一瞬俺も呆気にとられる。

 そして、すぐに順平の言葉の意味を理解した。

 

「ああ、別にそんなつもりはない。ただ、俺達がコロマルを見つけた時、コロマルは長鳴神社でシャドウと戦っていた。これが人間なら、それこそ影時間が終わるまで自分の家にいれば基本的に安全だろうけど……コロマルの状況を考えるとな」

 

 犬……それも、もう死んだという神主に飼われていた犬であれば、今のコロマルは野良犬という状況だ。

 ましてや、人間の言葉の意味を大体理解しているような行動を取るからといって、影時間にずっとどこかに隠れているなんて真似が出来るとも思えない。

 そうなると、やはり影時間に外でシャドウと遭遇した時に備えて、しっかりとペルソナを使えるようにしておいた方がいいのは間違いない。

 ……これで全く見知らぬ犬とかだったら、もしかしたらそこまで気を遣うような真似をしなかった可能性はあるが……コロマルとは、何だかんだと、かなり親密な付き合いをしてきた。

 そんなコロマルが、もしペルソナを使いこなせず、シャドウに殺されるなんて事になったら、後悔してもしたりないだろう。

 だからこそ、いざという時の為にコロマルにはペルソナを使えるようになっておいて欲しいのだ。

 それに、コロマルが影時間に街中をパトロールする……という事も、微妙に期待しているし。

 

「あ、そうか。いや、てっきり俺ッチ、コロマルを仲間に引き入れるんじゃないかと思ったんだけど……」

「わん!」

 

 順平の言葉を遮るように、コロマルは鳴き声を上げる。

 そのタイミングの良さから考えれば、コロマルが何を言いたいのか、俺にも十分に理解出来た。

 いや、今のタイミングだと、俺以外でも十分に理解出来ただろう。

 実際、他の連中もコロマルに視線を向けているのだから。

 

「今のは偶然か? それとも、本当にコロマルがアルマーと一緒に……」

「わん!」

 

 真田の言葉の途中で、再び鳴き声が上がる。

 こうなってしまえば、もうコロマルが何を考えているのかというのは、明白だった。

 

「コロマル、お前本気か? 俺達と一緒に行動するって事は、タルタロスの最前線で戦う事になるんだぞ? ……まぁ、お前にタルタロスって言っても、それが理解出来るかどうかは分からないが」

「わんわん!」

 

 分かってるとでも言いたげな、そんな鳴き声。

 

「どうする?」

「私に聞かれても。コロマルが懐いているのはアクセルなんだから、アクセルが決めた方がいいんじゃない?」

 

 ゆかりの言葉に、再びどうするべきかを考える。

 

「こっちの戦力が欲しいかどうかと言われれば、間違いなく欲しい。それは間違いない。けど……正直、今のコロマルの力で俺達と一緒に行動出来るかというのは、少し難しいような気がする」

 

 ゲーム的に言えば、いわゆるレベル不足といったところだ。

 俺達……正確には、ゆかりと荒垣の2人は、これまでずっとタルタロスでの戦いを繰り広げてきた。

 だが、コロマルは……召喚器がないからか、ペルソナを完全に使いこなせない状態ではあったが、それでも最弱のシャドウと呼ばれている臆病のマーヤを相手に苦戦していたのだ。

 今のゆかりであれば、それこそ臆病のマーヤはイオを使った攻撃……ではなくても、それこそ弓の一撃で倒せるだろう。

 その辺りの事情を考えれば、潜在能力はともかく、現時点の実力でコロマルが俺達と一緒に行動するのは危険だというのが、俺の判断だった。

 これがゲームであれば、途中から仲間になる奴は最初からある程度の強さを持っているのだろうが……生憎と、これは現実だ。

 コロマルがそのような強さを持っていないのは、それこそ臆病のマーヤとの戦いを見れば明らかだった。

 

「わん! わんわん!」

 

 それでも一緒に行きたい、と。

 多分そんな意思が込められているコロマルの鳴き声。

 

「……どうする?」

 

 困惑したような、ゆかりの視線がこちらに向けられる。

 タルタロスがどれだけ危険なのか、知っているからこその行動。

 だが、コロマルの可愛さを考えれば、出来れば話を聞いてやりたい。そんな思いもあるのだろう。

 ましてや、コロマルの性格を考えると、このまま放っておいても自分で勝手に判断して俺達と一緒に行動しかねないところ……はある、か?

 義理堅い性格をしているコロマルだったが、こっちに向かって視線を向けてくるその様子を見る限りでは、到底自分の意思を曲げるようには思えない。

 コロマルの安全確保に関しても、戦闘には基本的に参加していない俺がいれば、コロマルが妙な方に暴走しないよう、見ている事も可能だろう。

 他にも色々と考え……やがて、小さく溜息を吐く。

 

「分かった、分かった。その代わり、タルタロスの中では俺の指示にきちんと従うんだぞ?」

「わん!」

 

 嬉しそうに鳴くコロマルだったが、本当に俺の言う事を分かってるんだよな?

 

「なるほど、コロマルだったか。その犬は結局アルマー君達が引き取る……という事でいいのかな? 個人的には、少し研究してみたいんだけど。……ああ、勿論僕だってコロマルを酷い目に遭わせようなんて事は思ってないよ。……その、どうだろう。よければ、僕の研究に今度協力して貰うというのは……」

「わん」

 

 幾月の言葉を理解しているのかどうなのか……いや、これまでの流れから考えて、恐らく理解しているのだろうが、それでもコロマルは幾月から視線を逸らす。

 ……もしかして、俺が幾月を好んでないってのを、悟ったのか?

 まぁ、コロマルならその辺りを野生の勘って奴で察してもおかしくはないが。

 そう考え、野生? と一瞬疑問を抱く。

 だが、一応今のコロマルは誰かに飼われている訳でもないんだし、野生という言葉で表現してもおかしくはない筈だ。

 

「あー、駄目か。うーん、僕個人としては動物が好きなんだけど……なんでだろうね?」

「いや、それを私に言われても困るのですが」

 

 幾月の言葉に、美鶴は困ったように言う。

 もしかして、そのうち召喚器を作る代わりにコロマルで実験させろなんて事は言わないよな?

 言っても、美鶴辺りは即座に反対しそうに思えるのだが。

 そんな風に考えつつ、俺は少し怪しんだ視線を幾月に向ける。

 俺の視線に気が付いたのか、幾月は頭を掻きながら口を開く。

 

「どうしたのかな? 僕はこう見えて臆病なんだから、あまり睨み付けられると、オークになってびょーんと跳ねるよ? ……無理があるかな?」

 

 幾月の言葉に、俺達は全員揃って――コロマルも含めて――頷くのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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