転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1903話

 番人シャドウを倒し、荒垣のカストールの暴走問題も片付き……そしてついでに順平との仲も改善した俺達は、双方向ターミナルでエントランスに戻ってきた。

 

「アルマー! それに岳羽と荒垣、伊織も。無事だったのか。遅かったから、てっきり何かあったのかと思ったぞ」

 

 エントランスに姿を現した俺達を見て、桐条が早足で近づいてくる。

 エントランスには、桐条以外にも真田と有里の姿もある。

 真田の方は荒垣の様子を見ると何か思うところがあったのか、無言で近づいていく。

 有里は……何だかぼーっとしていて、俺達の事にもまだ気が付いている様子がない。

 時々エントランスで、有里はこんな風になるよな。

 一体、何がどうなってこうなっているのかは分からないが、それでもいつもは問題がないし、気にする必要もないんだろう。

 

「怪我は?」

「ああ、その辺りは全員無事だ。ちょっと25階で番人シャドウと戦ってな」

「……昨日の今日でもうか? 随分と進んだものだな」

「そうだな」

 

 17階から25階までを一気に踏破したのだ。桐条が驚きの表情を浮かべるのも、無理はないだろう。

 まぁ、桐条は25階が番人シャドウのいる場所だとは、思ってもいないだろうが。

 

「とにかく、無事で何よりだ。……伊織との件も……問題はないようだな」

 

 俺と順平の間にある雰囲気を感じ取ったのか、桐条は安堵の息を吐く。

 今日俺と一緒に行動して、それでもどうにもならないようであれば、最悪順平をどうにかするってところまで考えていたらしいからな。

 そんな訳で、桐条にとっても今回の結果はこれ以上ない程に最高のものだった訳だ。

 

「まぁ、そんなところだ。そっちは……どうだったんだ? 今日は無理しなかったんだろ?」

 

 こうして見る限り、エントランスからサポートしていた桐条はともかく、有里と真田に怪我があるようには見えなかった。

 

「ああ。今回は伊織もいなかったから、かなり安全策でいったからな」

「それで、今は何階だ?」

「14階。……もうすぐアルマー達に追いつけると思っていたのだがな。まさか、一気に25階まで攻略するとは思わなかった」

 

 唖然とした様子で告げてくる桐条だったが、正直俺もそこまで行けるとは思っていなかったんだよな。

 いや、勿論俺が全力で戦ってもいいのであれば、その辺はどうとでもなっただろうが……生憎と、俺の戦闘よりもゆかり達に戦いをさせる方を優先させてたし。

 だが、いつもはゆかりだけが戦っているのだが、今回からは荒垣も戦いに参加し始めた。

 そして今日だけだが、順平も戦力として数える事が出来たのだ。

 ……もっとも、順平はまだ1人前の戦力として見る事は出来ず、0.5人前……いや、0.7人前くらいか?

 何だかんだで、今回の8階を攻略した事により、それなりに戦闘の回数は多かった。

 勿論ゆかりや荒垣にはまだ全く敵わない程度の力しかないのだが、それでもテーブルのシャドウと戦っている時は、ある程度ゆかりと連携も出来ていたようだしな。

 そんな訳で、少しは成長した……と言ってもいいと思う。

 それでも、現在の最前線たる俺達のいる場所で戦うには、まだ戦力が足りないけどな。

 

「それと……」

 

 一旦言葉を切り、俺は改めて順平に視線を向ける。

 ゆかりと何か話している様子だが、ゆかりもちょっと前までのように、順平の態度に苛立ちを覚えている様子はない。

 

「順平だが、これから先もタルタロスで戦わせるつもりなら、きちんと訓練はさせた方がいいと思うぞ。折角の大剣も、我流……という表現ですらちょっと難しい程度の技量だと、死ぬ可能性が高い」

「……そうか。一応素振りとかはしているのだが、やはりしっかりした訓練は必要か。有里が特に何の訓練もしていなかったが、普通に戦えているのを見ていたから、そちらには気が回らなかったな」

「あー……有里はな」

 

 俺から見ても、有里は戦闘について高いセンスを持つ。

 それでいて、ペルソナチェンジという有里だけの特殊技能も持っている事もあり、桐条達にとっては非常に希少な戦力となっている。

 俺が有里をこの世界の主人公だと考えている理由の1つだな。

 そんな高い戦闘センスを持つ有里がいるだけに、順平への対応が疎かになったのは間違いないだろう。

 ……もっとも、順平の性格から考えると、戦闘訓練をやれと言っても、きちんとやるかどうかは、微妙なところだろうが。

 今の順平なら、どうなるかは分からないが。

 

「取りあえず、順平の場合は要戦闘訓練だ。桐条グループの方で大剣専門の訓練プログラムを作るなり、してもいいんじゃないか?」

「うむ。出来るだけ早くそうなるように、こちらでも手を回そう。他に何か気が付いたところはなかったか?」

 

 そう尋ねてくる桐条の言葉に、何かあったか……と首を傾げる。

 だが、すぐにあのテーブルのシャドウとの戦いを思い出す。

 

「番人シャドウとの戦いで、敵が毒っぽい魔法を使ってきた。一応解毒はしたけど、念の為にしっかりと病院かどこかで見て貰った方がいい」

 

 多分大丈夫だとは思うんだが、それでも念には念を入れた方がいいのは間違いない。

 特に、今は大丈夫でも、後で何らかの悪影響が出るという可能性もある以上、そう簡単に完全に信じるという訳にはいかないのだ。

 

「分かった。病院の方で検査の手配をしよう。……伊織!」

 

 そう呼ぶ桐条の言葉に、順平が顔を向けてこっちにやってくる。

 桐条の隣にいる俺にも視線を向けてくるが、カストールの件を含めて今回の一件で俺に対して思うところはなくなったのだろう。

 つい昨日までのように、俺に対して険悪な視線を向けてくるような事はない。

 

「何ですか、桐条先輩」

「アルマーから、伊織が相手の使う毒の魔法を食らったという話を聞いた。念の為、影時間が終わったら病院で検査をしたいのだが、構わないか?」

「え? 検査って……大丈夫っすよ? ほら、今は何ともないし」

 

 検査は大袈裟だと、そう言いたいように軽くジャンプをしてみせる順平だったが、桐条はそれに対しても首を横に振る。

 

「駄目だ。もし今大丈夫でも、後で何か起こったら大変だろう。それに……こう言っては何だが、今回はシャドウが使う毒がどのくらいの威力を持つのかを調べるにもいい機会だしな。まぁ、本当に解毒が完全に済んでいるのであれば、意味はないだろうが」

「あー……なるほど。そういう面もあるのか。うん、分かった。じゃあ、世話になります」

 

 順平にとっても、別にどうしても検査が嫌だとか、そういう事ではなかったのだろう。

 実は何か重病を患っているとか、そういう事でもないだろうし。

 だが、その検査を受ける事でシャドウの毒が多少なりとも解析され、これからの戦いで楽になるかもしれないと言われれれば、断る訳にもいかなかった。

 もっとも、検査が面倒臭いというのはあるのだろうが。

 そもそもの話、どれくらい綿密な検査をするのかは分からないが、シャドウの毒の痕跡を探す為の検査だ。

 恐らく、かなり細かい検査までやるのだろうというのは、俺にも予想出来る。

 今の俺にとっては、ホワイトスター以外でそのような検査を受ける訳にはいかないんだが……それも善し悪しといったところか?

 そもそも、俺を詳細に検査すれば、恐らく……いや、間違いなく俺が人間ではないという事が露見する筈だ。

 技術が遅れている世界でならともかく、ペルソナ世界のように一定以上の技術を持っている世界であれば、俺が人外の存在であるというのは容易に分かってもおかしくはない。

 ……もっとも、それでも俺が人間ではないというのを理解しても、俺が異世界の人間だというのは分からないだろうが。

 この世界だと、シャドウと何らかの関係があるのではないか? と疑われるのが精々といったところか。

 そんな風に俺が考えている間にも話は進んでおり、順平も大人しく病院で検査を受ける事になったらしい。

 元々順平もそこまで検査を嫌っていた訳じゃないんだし、特におかしくはないが。

 ともあれ、そんな感じで話は終わり……タルタロスを出る事になった。

 

「おい、有里! 有里!」

 

 だが、何故か有里はタルタロスから移動する様子がない。

 相変わらず、ボーッとした感じで周囲を見回している。

 いや、本当に何をしてるんだ?

 そんな疑問を抱くが、それでも何度か呼んでいるうちに、ようやく我に返る。

 

「え? えっと……アルマー、何?」

「何じゃなくてだな。……さっきから呼んでたのが聞こえなかったのか? 前にも何度か同じ事があったが、本当に大丈夫なのか? 順平と一緒に、有里も検査を受けた方がよくないか?」

「いいよ、問題ないし。……それに、退院してからまだそんなに経ってないから」

 

 そう告げる有里だが、桐条達にとって、有里というのは非常に貴重な人材だ。

 リーダーとして見る目が広く、ペルソナチェンジという類い希な能力を持っている。

 それでいながら、ペルソナだけではなく武器を使った戦闘でも順平と違ってそつなくこなす。

 それだけに、有里に何かあれば大変だ。

 ……桐条がそう判断しても、おかしくはなかった。

 

「何? それは大変だ。やはり有里もしっかり検査をした方がいいな」

「え? ちょ……だから僕は……もう、エリザベスのせいで……」

 

 有里が最後に口の中だけで呟くが、幸か不幸か桐条にはその言葉は聞こえてなかったらしい。

 にしても、エリザベス? 名前から考えれば女っぽいけど……何でそんな名前を口に出す必要がある?

 考えられるとすれば、有里が何らかの理由でそのエリザベスという女と親しくなっており、その女の事を考えてボーッとしていた……とかか?

 エリザベスって名前から考えると、多分外人の女だろう。

 もしくは、ペンネームやハンドルネームじゃなくて……源氏名だったか。

 そんな感じの名前で、本名と違う名前を名乗っている可能性もある。

 ……うん、もし本当にそうだとすれば、色々と有里が大変な事になるかもしれない。

 見ての通り、桐条は外見では大人っぽいが、かなり初心だ。ゆかりもそれは同様で、男女関係にはかなり疎い。

 そんな2人が、実は有里が源氏名を必要とする店――風俗なのか、キャバクラなのか、そういうのは分からないが――に通って、エリザベスとかいう女に入れあげているのを知れば、どんな反応をするのやら。

 それはそれで見てみたい気もするが、せっかく順平の問題が片付いたのに、その場でいきなり新しい問題を……というのもちょっとどうかと思う。

 

「とにかく、伊織も検査を受けるのだから、有里もしっかりと検査を受けるように。いいな?」

 

 ぐっと鋭い視線を向けられてそう言われると、普段は面倒臭そうにしている有里であっても、それに頷かない訳にはいかなかったのだろう。

 渋々……本当に渋々といった様子ではあったが、有里も検査を受ける事に同意する。

 まぁ、風俗とかキャバクラとかに通ってる事が桐条達に知られなかっただけでも、運が良かったのだろう。……多分。

 

「さて、じゃあ有里の検査の件も決まった事だし、そろそろ帰るか」

 

 何故か有里からジト目を向けられていたが、物思いに耽っていて俺の言葉を無視した自分が悪いと思って貰おう。

 そんな感じでタルタロスから外に出る。

 空を見上げると、そこにあるのは月だ。

 前回の満月からまだそれ程経っている訳でもないので、まだ丸い……と言っても問題ないような形をしている。

 

「次の満月まで1ヶ月くらいか。……さて、どんな事になるのやら」

「そうね。でも、満月の度にイレギュラーシャドウが現れるとなると、これからは毎月面倒な事に巻き込まれそうだけど」

 

 俺の隣にやってきたゆかりが、月を見ながらそう呟く。

 それでも実感のようなものが殆どなかったのは、ゆかりが直接イレギュラーシャドウと戦った事がないからだろう。

 先月のイレギュラーシャドウは有里が1人で倒したし、今回のイレギュラーシャドウはゆかりが到着するよりも前に俺が倒した。

 勿論満月になるとシャドウの凶暴さが増すというのは経験してるだろうから、大きな実感を持ってはいるだろうが。

 

「それでも、いつ起きるのかが分かってるだけマシなんじゃねえか? 何も知らない状況でいきなりそんな事が起きると考えれば、緊張感が持続しねえだろうし」

 

 荒垣も俺の隣にやってきて、そんな風に言う。

 まぁ、それは間違っていない。

 幾つもの戦場を経験した俺はともかく、他の面々……特にゆかりを始めとして、つい最近まで一般人だった者も多い。

 そう考えれば、やはりいつイレギュラーシャドウが出現するのか分かっているというのは、非常に大きい出来事なのは間違いなかった。

 

「アルマー? どうした? そろそろ帰るのだろう?」

 

 後ろから聞こえてきた桐条の言葉に頷き、俺はそちらに歩き出すのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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