転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1897話

「……さて、倒したのはいいけど、これからどうしたものかな」

 

 俺の前には、ニット帽を含めて何人もの男達が倒れている。

 軽く口から血を流しているような奴はいるが、重傷と呼ぶに相応しいだけの傷を負った者はいない。

 その辺りは、しっかりと手加減をしておいたので間違いない。

 もし俺が本気で拳を振るおうものなら、ニット帽の男は鳩尾を殴られるどころか、鳩尾を貫通されて死んでいただろう。

 もしくは、貫通以前に身体が爆散していたか。

 ともあれ、十分に手加減には成功したと思っていい。

 問題なのはこれからどうするか、だったが……すぐにその結論は出る。

 

「放っておくか」

 

 もしも今が冬なら、どうにか対処もしただろう。

 だが、今は生憎と春だ。

 それも今日はそれなりに暖かいので、このまま放っておいても風邪を引くという事はないだろう。

 勿論夜になっても意識が戻らなければ話は別だったが、この様子だと1時間もしないうちに目を覚ますのは間違いない。

 であれば、わざわざ俺がここで起こしてやるような真似をする必要もない筈だった。

 そう判断し、倒れている男達の懐から財布を取り出し、札だけを抜き取って、財布を纏めて目の前に置いておく。

 全員合わせて1万円ちょっとの稼ぎにしかならなかったが、こいつらの態度を見る限りではカツアゲとかそういうのを日常的にやってるみたいだったし……であれば、自分がやられる事も覚悟している筈だ。

 そのまま男達をその場に残し、コンビニに行くような気分でもなくなったので、近くにあった建物の陰から影のゲートを使って自分の部屋に帰る。

 

「さて、取りあえずこうして戻ってきた訳だが……これから何をするか、だな。夜までは暇だし」

 

 一応体調の事も考えて、連続してタルタロスには行かないようにしてはいる。

 だが、結局昨日は17階を軽く探索しただけで、身体の疲れという意味では全く問題なかった。

 勿論疲れがないのが俺だけなら、休む必要もあっただろうが……今日の学校でのゆかりの様子を見る限りでは、その辺りも特に心配はいらなさそうだったし。

 恐らく今頃は、弓道部でその腕の冴えをこれでもかと言わんばかりに見せつけているだろう。

 荒垣は……どうだろうな。自分が戦うという事に対し、答えが出たのかどうか。

 何か切っ掛けの1つでもあれば、もう少しどうにかなると思うんだが。

 取りあえず今俺が出来るのは、様子見程度しかない。

 

「うん、本当に暇だな。何か趣味でも作るべきか」

 

 一応趣味といえば、美味い料理を食べる事だが……今からどこかに何か食べにいくのも、面倒臭いしな。

 そんな訳で、空間倉庫の中から取りだしたパスタを食べる。

 ボロネーゼとかいうパスタらしいが、正直俺にとってはミートソースとどう違うのかはよく分からない。

 まぁ、四葉辺りに聞けば、その辺りも分かるのかもしれないが……ともあれ、専門店のパスタをフォークで巻いて口に運ぶ。

 しっかりとした肉の食感と味、トマトソース、オリーブオイルやタマネギ、ニンジン、セロリといった野菜が十分ソースの味を美味くしている。

 ペルソナ世界でも最近は冷凍食品の味がかなり上がってきてるって話だったが……それでもやっぱり、専門店で作られたパスタには劣るよな。

 そんな風に思いながら、おやつ代わりのパスタを食い終わる。

 ……それにしても、このパスタもそうだけど、パスタを注文して出てくる量ってかなり少ないよな。

 とても1人前とは思えない。

 それこそ、0.5……下手をしたら0.3人前くらいじゃないかと思う程に。

 何だってそんな事になってるのかは疑問だが……多分、値段とかカロリーの問題なんだろうな。

 ともあれパスタを食べて一段落すると、特にやる事がなくなってしまう。

 何気なくTVを付け、それを眺める。

 そこでやっていたのは、ポロニアンモールの特集。

 うん。いや、まぁ……ポロニアンモールは都心からそんなに遠く離れている訳でもないし、桐条グループが積極的に投資しているだけあって、かなり有名な店もそれなりにある。

 そんなポロニアンモールに、芸人がやってきて色々な店に寄っていく……といった、旅番組になっている。

 いや、別に旅はしていないし、旅番組ではないのか?

 ともあれ、そんな感じでポロニアンモールの店に寄っていくのだが、当然ポロニアンモールである以上、俺の知ってる店も紹介されていたりする。

 うん、なかなか面白いな。

 そして俺も分からなかったような店の紹介とかもあり、結構集中して見てしまった。

 そうこうしている内に時間も経ち、やがてTV番組がニュースに変わっていく。

 ニュースか。……まぁ、特に見て困る訳でもないし、いいか。

 そんな風に考えながらニュースを見ていると、無気力症についての特集が行われる。

 これ、影時間が関係しているらしいんだよな。

 以前少しだけ桐条から聞いた覚えがある。

 もっとも、影時間が関係しているというのが分かっても、治すのは難しいらしいが。

 ……イクシール辺りを使えば治せるか? と一瞬思ったものの、そんな真似をすれば色々と騒動になってしまうのは間違いないし、そもそもイクシールがかなり希少なマジックアイテムだ。

 とてもではないが、無気力症の全員に使うだけの量は持っていない。

 桐条財閥でイクシールを解析して、同じような物を作り出す事が出来ればいいんだが……難しいだろうな。

 あー、でも1瓶は渡せないが、1滴2滴くらいなら渡してもいいか?

 それで、全く同じ……とまではいかずとも、幾らか効果が低くなったような回復薬を手に入れる事が出来れば、この先色々と便利になるし。

 特にタルタロスがどこまで続いているのか……そして死神との戦闘を考えると、やはり回復手段は多い方がいいのは間違いないのだ。

 そんな事を考えている間にも、無気力症の特集は終わって全国ニュースになる。

 殺人、交通事故、詐欺……世の中には色々な犯罪がはびこっているな。

 これを異邦人の俺が自分で解決しようとは思わないが、桐条グループ辺りには頑張って欲しいところだ。

 

「ん?」

 

 ニュースを見ていると、不意に携帯の着信音が鳴る。

 この時間に一体誰だ?

 まぁ、まだ午後6時前なんだから、そこまで気にする時間帯って訳じゃないが。

 携帯に表示されているのは、桐条。

 

「もしもし、どうしたんだ?」

『すまないな、アルマー。ちょっといいか?』

「ああ。丁度今は暇してたから問題はないぞ」

『そうか、助かった。……実は、タルタロスに挑む時、伊織を連れて行って欲しいんだ』

「順平を? また、随分と強引な真似をするんだな。現在の俺と順平の関係は知ってるだろ?」

『当然知っている。これは、それを知った上での頼みだ。正直、今の伊織は恐らくだが自分が悪いと、そう理解している。それでも納得出来ていないのだろう。だからこそ、アルマーが現実というものを見せてやる事で、それをどうにか出来ないかと思ってな』

「……なるほど」

 

 結局順平が自分は選ばれた存在であると優越感に浸っているのは、他の者にない力があるからだ。

 であれば、その力を持っていない俺の力を見せつける事で現実を知らしめるというのは、そこまで悪い話ではない。ないのだが……

 

「結局それは、以前俺が順平とやった模擬戦の繰り返しにならないか?」

 

 そう、俺の力を見せるという意味では、タルタロスのエントランスで以前行った模擬戦で、これ以上ない程に俺の力を見せつけているのだ。

 俺の力を見せるという意味では、戦う相手こそ違えど、本質的には同じ事のような気がするんだが……

 その結果、順平は俺に対して嫉妬というか、強烈な対抗心、もしくは絶対に認めたくないという思いを抱くようになったのだ。

 今更桐条が考えているような真似をしても、そう意味はないと思うんだが。

 

『ああ。これは一種の賭けになるのかもしれない。だが……私としては、そこまで分の悪い賭けではないと思っている。伊織が昨日一時的に行方不明になったって話はしたな? その時、伊織も色々と思うところがあったのだろう』

「まぁ、それは……」

 

 分からないでもない。

 1人になって冷静に考えてみれば、順平が色々とやってきた事は客観的に見た場合、非常に恥ずかしい行為だと、そう理解出来るのだから。

 もっとも、実際にそれを順平が認めるかどうかといえば……これもまた、話は別なのだが。

 だが、桐条の言葉を聞く限りでは、どうやら順平はその辺りを考えたらしい。

 ……その割に、今日も学校では同じような感じだったが。

 その辺りを話すと、桐条は小さく溜息を吐く。

 

『伊織も、既に自分が悪いというのは分かっているのだろう。だが……分かっていても、今までの自分の行為を考えると、アルマーにあっさりと謝るような真似は出来ない。恐らくそういう事だと思う』

「そうか? 順平の性格を考えれば、意外とあっさりと謝ってきそうな感じがしないでもないんだが……まぁ、順平とパーティを組んでる桐条が言うのなら、そうなのかもしれないな」

『伊織も、アルマーを認めようとは思っている筈だ。だが、今までの事がある以上、容易にそれを認める事は出来ない。……だから、アルマーの力を改めて見せてやって欲しい。そうすれば、伊織もアルマーの事を認めるようになると思うのだ』

 

 桐条も、順平を含めて何人もを率いている以上、色々と大変なのだろう。

 そんな桐条に対して思うところがない訳ではない以上、俺もその提案を引き受けない訳ではない。

 

「そこまで言うのなら、引き受けてもいいが……最悪の場合、順平の態度はより頑ななものになるぞ? それでもいいのか?」

『ああ。正直なところ、今の伊織をそのままにしておくのは、色々と危険だ。もし今回の一件でも伊織がどうにもならないようなら……こちらとしても、考える必要がある』

 

 この場合の考えるというのは、恐らく……いや、間違いなく順平という戦力を桐条グループとしてどうするかという事になるだろう。

 さすがに命を奪うような真似まではしないと思うが、それでも桐条グループであればペルソナをどうにかする手段を持っていてもおかしくはないし。

 

「つまり、順平に対する最終判断という訳か」

『そうだ。勿論、私としては伊織が私達の仲間として活動してくれる事を祈っているが、な』

 

 いきなり最終判断? と思わないでもなかったが、考えてみれば俺が順平に敵視されるようになってから、何だかんだとそれなりの時間が立っている。

 にも関わらず、順平の方で態度が変わらない以上、桐条の反応は当然でもあるのだろう。

 勿論、その言葉通り桐条が順平を仲間としておきたいと思っているのは、間違いないだろうが。

 

「分かった。そっちがそこまで覚悟を決めてるのなら、こっちもそれに応えよう。……ただ、そうなると順平には今回の一件が最終判断を兼ねていると、そう言わない方がいいのか?」

『そうして欲しい』

 

 桐条が若干苦々しそうに言ってくる。

 まぁ、最終判断だと分かっていれば、順平も今のままだと不味いと判断して、本心ではない行動を取る可能性もあるだろうしな。

 本当の意味で順平の考えを変えるのではなく、場当たり的な行動を……というのは、桐条にとっても面白くないのだろう。

 いや、面白い面白くないで判断するのもどうかと思うが。

 

「そっちの要望は分かった。じゃあ、今日のタルタロスでだな。……ただ、言っておくが俺達が攻略するのはタルタロスの17階だぞ? 順平の能力だと厳しい可能性もあるが……」

 

 これは、当然の事だった。

 既に16階の封印が解けているというのを知らせてある以上、わざわざ15階で行動する必要はない。

 17階を……そしてより上層階を探索するのは当然だった。

 それに、16階の封印が本当に満月の時に出るイレギュラーシャドウを倒す事によって解けたのかどうか……それを確認する為には、やっぱり16階と同じような封印のある場所に行く必要がある。

 勿論、そういう封印があるという前提での話だが。

 そして封印があるとすれば、怪しいのは30階前後といったところか?

 最初の封印が16階だったのを考えれば、妥当な選択だと思う。

 ただ、小ボスがいるのが5階ずつかと思ったら、実際には結構ランダムだったりした事もあって、封印があるとしても本当にその通りかどうかは……微妙なところなんだよな。

 ともあれ、俺に出来るのはタルタロスを攻略する事だけなんだが。

 順平が17階でどのような反応をするのか……個人的には、そろそろ自分の立場をきちんと把握し、選ばれた存在だとかでのぼせ上がるのを止めて欲しいとは思う。

 それがどういう結末を迎えるのかは、今日のタルタロス次第、か。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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