「ちょっ、ねぇ、あれ見て……あれって、生徒会長よね? 男と一緒にいるわよ?」
「は? 気のせいじゃないの? そんな訳……あったわ……」
「くそ、誰だよあの男……桐条と仲良くしやがって」
「あー……あいつは留学生? 帰国子女? まぁ、そんな感じでちょっと前に転校してきたアクセル・アルマーだろ? 2年の」
「え? 2年なの? てっきり1年かと思ってた」
「それより、それより、それより……何であの人はお姉様と一緒にいるのよ!」
「そう言えば、以前にも生徒会長と一緒にいるところを見られて話題になってなかったっけ?」
「嘘よ、嘘! お姉様が汚されるなんて、そんなの嘘に違いないわ!」
「ん? でもアクセルって、同じクラスの岳羽ゆかりと付き合ってるって話だったような?」
「うげ、マジか。岳羽と桐条先輩を二股とか、どんな度胸してるんだよ」
「取りあえず爆発しろ」
「掲示板の方に書いておかないとな」
何かモノレールの中で色々な声が聞こえてくるんだが……
不幸中の幸いなのか、話してる声は小声なので、桐条に聞こえている様子はない。
俺の耳が特別だからこそ、聞こえてきた内容だ。
……出来れば聞きたくなかったのは、間違いないんだが。
「うん? どうした、アルマー? 何だか微妙に顔が引き攣っているように見えるが」
「あー……うん。ちょっとな」
モノレールから外の景色を見ていた桐条が、俺の方を不思議そうに見てくる。
まぁ、桐条にとっては人から噂されるというのは、もう慣れた事なんだろう。
そもそも、桐条グループの令嬢という事で、話題性は非常に高いし。
「それにしても……こうしてアルマーと一緒に登校するというのも、楽しいものだな」
「そうか? まぁ、そうかもな」
「一緒にお好み焼きを食べに行ったのも楽しかったが、こういう何気ない出来事を一緒にというのも悪くはない」
そう告げる桐条。
桐条にとっては、正直に思った事を口にしただけなのだろうが……少し離れた場所で、少しでも俺と桐条の会話を聞き取ろうとしている者達にとっては、大きな餌を与えた事になる。
恐らくこの件も、既に掲示板に書かれてしまっているのだろう。
学校の掲示板、見たいような見たくないような……正直、微妙なところだ。
ともあれ、巌戸台駅からポートアイランド駅まではそんなに時間が掛からない。
すぐにポートアイランド駅に到着し、俺達は車両から降りる。
そうして駅から出ると……
「あら、アクセル? 桐条先輩も」
どうやら車両は違うが、同じモノレールに乗っていたらしいゆかりが姿を現す。
……うん、どこからともなく『キター!』『修羅場、修羅場、修羅場』『ざまあみろ』といった声が聞こえてくるんだが、取りあえずそれは無視していいよな。
ただし、友近。お前は駄目だ。
周囲にある事ない事を吹き込んでいるのは、こっちでしっかりとチェックしてるからな。
後でしっかりと落とし前を付けてやろう。
「岳羽か。昨日は色々と大変だったらしいな」
「ええ。アクセルが色々と頑張ってくれたおかげで何とかなりましたけど、家に帰った時はかなり疲れ切ってました」
「ああ、その話は聞いている。岳羽も体力の限界はあるのだろうが、アルマーと一緒に頑張ってくれ」
「はい。元々私がアクセルに頼んで一緒にいて貰ってるんですから、頑張らないと」
「ふふっ、そうだな。そうしてくれれば私も嬉しい」
そんな言葉を交わすゆかりと桐条だが、話の内容が色々と危ない事になっているのは、気が付いているのか?
俺にしてみれば、タルタロスの件だと分かるのだが、何も知らない者達にしてみれば……
「え? 嘘だろ? 桐条が二股を認めてるのか?」
「3人でなんて……不潔よ!」
「待て、決定的な言葉は口にしてないんだ。もしかして、何かの間違いの可能性も……」
「あの様子でか? ないない」
「ゆかりって気が強いと思ってたけど……惚れた男には尽くすタイプなのか?」
モノレールに乗った時と同様、色々と言われているのだが……取りあえずそれは気にしない方向で。
ゆかりと桐条の2人も、小声だから聞こえている様子はないし。
「ああ、そうだ。荒垣に渡した代わりの奴、桐条から受け取ったぞ」
「そう? ……桐条先輩、ありがとうございます」
「いや、気にするな。君達は十分な戦力となっているのだ。お互いに協力出来る事があれば協力すればいい。それに……昨日はこちらにとっても色々と悪い事をしたからな」
その色々というのが何を意味しているのかは、考えるまでもない。
間違いなく順平の事だろう。
ゆかりにとっては、最近の順平の態度はあまり気に入らないようだったので、その件について謝られても微妙なところのようだが。
「荒垣にはあのまま昨日の奴を使わせておけばいい。新しいのはゆかりが使え」
「え? うーん……それもいいんだけど、やっぱりずっと使ってきたから少しは愛着があるのよね。出来れば昨日荒垣さんに渡した方を使いたいんだけど……駄目?」
「どうだろうな。荒垣がいいって言うなら、それでもいいんだろうが……元々は荒垣のだぞ?」
そう、昨日までゆかりが使っていた召喚器は、元々荒垣が使っていたものだ。
勿論ゆかりがペルソナを召喚してから、最初にそれを使うようになったのも間違いないので、あの召喚器に愛着があってもおかしくはないのだが……
「そうね。取りあえずどうするかは荒垣さんと話してから決めるわ」
そうして会話をしながら、俺達は月光館学園に向かうのだった。
三時限目の休み時間、俺は友近と共にトイレに行っていた。
混沌精霊の俺は、口の中に入れた物は全てを魔力として吸収しているので、トイレにはいかなくてもいいのだが、そんな事を言える筈もなく、こうしてカモフラージュする必要がある。
そんな訳で何時間かに1回はトイレに行く必要があった。
「次の授業は数学か。うわぁ……面倒だな」
「そうか? 慣れれば、数学とかも結構楽しいんだけどな」
「アルマーは頭がいいから問題ないだろうけど、俺は結構危ないんだよ。何だよ、あの呪文みたいなのは」
「呪文、ね」
実際、ネギま世界の呪文とかは計算とかも使われている面もあるので、友近の言葉は決して間違いって訳じゃないな。
勿論友近は俺が魔法を使えるとか、そんな風に思ってこう言ってるのではなく、単なる愚痴でしかないのは分かっている。
そう言いたくなる程に、友近にとっては数学というのは強敵なのだろう。
そんな風に話しながら教室に向かっていると……
「うん?」
ふと、近くにあった空き教室から怒鳴り声が聞こえてきた。
それは友近にも聞こえたのか、こっちに視線を向けてくる。
少し興味深そうにしているのを見ると、覗いてみないかと、そう言っているらしい。
小さく笑みを浮かべ、その空き教室に向かう友近。
俺も怒鳴り声に多少興味を惹かれ、その後に続く。
痴話喧嘩か何かか?
そんな風に思っていたのだが、扉の隙間から教室の中を覗いた俺が見たのは、女だった。
正確には女だけが4人。
そのうちの3人はまだ春だというのに既に肌を焼いている、ギャル系って言うんだったか? ヤマンバギャル? いや、それはちょっと違う気がするが、ともあれ不良みたいな感じの女達だ。
ああ、ポートアイランド駅の裏側に集まっているような、そんな感じの女達。
そしてもう1人は、そういう連中とは付き合いがあるとは思えないような、大人しそうな……内気と呼ぶのが相応しいだろう女。
教室の中にいるのが、ヤンキー系の女3人か、それとも内気な女1人だけであれば、特に気にするような事はなかっただろう。
だが、この4人が一緒になっているとなれば、話は別だった。
正確には3人と1人か。
3人の女が、1人の女に対して何やら強引に迫っているように感じられる。
それを1人の方は俯いて抵抗もせずに聞いているといった感じか。
「うわ、いじめか。……うちの学校にもあるんだな」
中の様子を覗いていた友近が呟く声が聞こえてくるが……さて、どうしたものか。
個人的にいじめ云々は気にくわないが、別に俺は正義の味方って訳じゃない。
いじめられてる方が反抗しようとしているのなら、こちらも協力しても構わないと思うが……別に自分から口を突っ込むようなつもりはない。
そしてこうして見ている限りでは、苛められている女は特に何か言い返す様子もなく、ただ黙っているだけだ。
本人がそれで十分だと満足しているのであれば、俺がここで手を出すのは寧ろ余計な手出しでしかない。
そう思った瞬間、いきなり俺の横で扉が揺れる音がする。
何の音だ? と視線を向ければ、そこでは友近がやってしまった……といった表情を浮かべている。
どうやら中の様子を覗き見るのに集中してしまった結果、扉に触れてしまったのだろう。
そして当然のようにそのような音が響けば、教室の中にいた者達に聞こえるのは間違いなく……
「誰よ!」
3人組の1人が、素早く音の聞こえた方……つまり俺の方に向かって近づいてきた。
どうする? と友近に視線を向けてはみたものの、友近の方はあまりに予想外の行動だったせいか、完全に動きを止めていた。
まぁ、タルタロスに挑むといったような経験をしている訳じゃないんだし、咄嗟に行動出来なくてもしょうがないか。
とはいえ、ここで友近だけを置いてこの場から立ち去る事が出来る筈もなく、結局俺は向こうがこっちにやって来るのを大人しく待つ。
そして次の瞬間、扉が強引に開けられ……俺達の前に、日焼けした女が姿を現した。
「あんた達、何見てんのよ!」
喧嘩腰の言葉だが、自分達がいじめをしている現場を見られたのだから、そうなってもおかしくはないか。
ともあれ、友近はいきなりの事で動けないようなので、代わりに俺が口を開く。
「何を見てるって? 下らない、低レベルのいじめの現場だが?」
「っ!? あんたねぇ、あたしにそんな口を利いてもいいと思ってるの?」
まさか堂々と下らないとか言われるとは思わなかったのか、女は一瞬戸惑うものの……やがて、次の瞬間には俺を睨み付けてくる。
「そんな口? どんな口だ? 俺は正直に思った事を口にしただけだが? どうせお前達のような低脳はそんな事くらいでしか自己主張出来ないんだろ? なら、その下らない行動でゴキブリ程度の自尊心でも満たしてろよ」
「っ!?」
俺の言葉を聞いた瞬間、反射的な行動だろう。女は俺の顔に向けてビンタを放ってきた。
だが、シャドウの攻撃よりも鈍いそんな攻撃で俺をどうにか出来る筈もなく、1歩後ろに下がれば、あっさりとその攻撃を回避する事が出来た。
カウンターを使っても構わなかったんだが、男女平等が叫ばれていても、何だかんだで男が女に手を上げるのは不味い。
そんな訳で手を出すような真似をしなかったが、今のビンタは女にとっても思い切り放ったものだったのか、回避されるとバランスが取れず、そのままよろける。
「どうした? 運動神経もないのに、そこまで頑張って大丈夫か? もうちょっと自分というのをきちんと見直した方がいいぞ?」
「うるせえなっ!」
俺の言葉が余程気にくわなかったのか、女は俺を睨み付ける。
いや、俺を睨み付けているのはその女だけではなく、教室の中にいた他の2人も同様だ。
いじめられていた女は気弱そうな視線をこちらに向けてくるが、そちらはどうでもいい。
「何だ、幾ら本当の事を言われたからって、そう怒る事はないだろう? そもそも、お前達がいじめなんて低俗な事をしてたのが悪いんだからな」
「はっ、正義の味方のつもりかよ?」
「別に? 苛められてる方が助けを求めてきたのならともかく、自分の境遇に納得してその立場に甘んじてるのなら、俺が関わる必要はないだろうし。ただ、そうだな。見世物としてはもう少し面白い事をやって欲しかったけどな。お前達に大道芸人の才能はないぞ。まぁ、努力すれば笑われるようにはなると思うから、頑張れ」
「このクソ野郎! ふざけんな!」
女とは思えないような叫びだが……まぁ、性格を考えればおかしくもないか。
「ふざけるなって言われてもな。この場に教師を呼ばないだけマシだと思うが? 何なら、桐条……生徒会長でも呼んでやろうか?」
「おい、こいつ……」
「ああ、アクセルだか何とかいう……」
そこでようやく俺が誰なのかを理解したのか、女達は面倒臭そうな視線をこっちに向けてくる。
まぁ、桐条や真田、ゆかり、有里といったように、月光館学園の中でも有名人達と仲がいいからな。
「掲示板の方に、その辺りを書いてみても面白そうだな。お前達の名前は少し調べれば分かるだろうし。桐条や真田、有里がお前達を気に入らないと言っていたと書いた場合……さて、ファンクラブの連中はどう反応するだろうな?」
「……覚えておきなよ。私の知り合いには強い男も一杯いるんだからね」
自分達が不利だと判断したのだろう。
女の1人はそう言うと、そのまま去っていくのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.10
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1389