転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1887話

「……俺達は、あのシャドウを相手にかなり苦戦していた訳なんだが……」

 

 まさか自分達が苦戦していたシャドウを、俺が一撃で倒すとは思っていなかったのだろう。

 消えたシャドウがさっきまでいた場所を見ながら、真田が呆然と呟く。

 

「苦戦したって言っても、お前達の場合は順平を庇いながら戦ってたんだろ? だとすれば、苦戦してもおかしくはないさ」

「それはそうだが……むぅ、微妙に納得がいかん」

 

 まだ不満そうにしている真田だったが、今の俺にとってはそれ以上に大事な事がある。

 

「有里、俺の見間違えじゃなければ、お前はさっき妖精みたいなペルソナを召喚してなかったか?」

「え? あ、うん。してたけど」

「……俺が知ってる限りだと、ペルソナは1人につき1種類だけの筈なんだが」

「ああ、僕はペルソナチェンジが使えるから」

 

 明らかに、特別なスキルっぽいものの名前を口にする有里。

 ペルソナチェンジ。

 その名の通り、使うペルソナを変えるというものだろう。

 これで、ますます有里のこの世界の主人公説が高まったな。

 

「随分と便利そうだな」

「そうだね。ペルソナによって習得出来るスキルとか魔法に違いがあるから、そういう意味だとかなり便利だよ」

「だろうな」

 

 それは実質的に、1人で幾つものペルソナを使えるという事だ。

 随分と反則的な能力だと思ってしまうのは、俺だけではないだろう。

 もっとも、便利なだけの能力というのは有り得ないだろうし、恐らく何らかのデメリット的なものもあるのだろうが。

 ともあれ、今はその辺りを聞くよりも他にやるべき事がある。

 

「とにかく、一度モノレールから降りないか? 桐条も心配で待ってるだろうし。それに、順平もきちんと手当した方がいいだろ」

「……ああ。全く、突っ走りやがって」

 

 俺の言葉に、真田が溜息を吐きながらそう告げる。

 真田が順平をおぶりながら説明したところによると、このモノレールに乗り込む前から有里に対して色々不満を抱いていたらしい。

 ……俺だけじゃなくて、有里にも不満を抱いていたのか。

 ともあれ、有里がリーダーだというのが面白くなかった順平は、活躍すれば自分がリーダーになると判断したのか、モノレールに乗り込み、シャドウを見つけるとすぐさま突っ込んでいったらしい。

 そうして、シャドウに囲まれそうになっているところを、有里と真田に助けられ……恐らく、それがまた順平のプライドを刺激したのだろう。

 助けられたにも関わらず、有里に礼も言わず、それどころか余計な真似をするなとすら言ったらしい。

 有里はそんな順平を相手にしても特に気にしていなかったのだが、真田は別だ。

 きちんとリーダーの命令には従えと言ったらしいが……ペルソナ使いとして自分は選ばれた存在だと思っており、更には自分と殆ど同じくらいにペルソナ使いとして覚醒した有里がリーダーとして、そしてペルソナチェンジとかいう特殊な能力まで持っている事で不満が溜まっていたのだろう。

 いつもであれば真田の言葉には大抵従う順平が、それに反発したらしい。

 そんな訳で全くチームプレイが出来ないままこの先頭車両に到達し……俺が来た時に戦っていたシャドウと戦闘になった訳だ。

 だが、自分が、自分がという思いの強い順平は案の定暴走。

 結果としてあのシャドウに大きなダメージを負わせられ、意識を失ってしまった。

 ただでさえ、今の有里達にとっては戦うのに難しいシャドウだ。

 そんなシャドウを相手に、順平を庇いながら戦って勝てる訳もなく、出来るのは敗北までの時間を何とか延ばしながら、逆転を狙うだけ。

 だが、逆転の一手などというものがそう簡単に見つかる筈もなく……

 ポートアイランド駅に向かっていたモノレールの動きが止まり、俺が中に入ってきたのはそんな時だったらしい。

 

「何て言えばいいのか分からないが、色んな意味で悲惨な戦いだったな」

「ああ。正直なところ、俺も順平が湊を相手にあそこまで敵対心を剥き出しにするとは思ってなかった」

 

 真田の場合、自分が強くなれればそれでいい。寧ろリーダーとかは面倒だと感じるタイプだ。

 それに対し、順平は自分が選ばれた存在であるが故に、目立ちたいと思ったのだろう。

 特に、俺に一度徹底的に自尊心をへし折られてしまったのが、ここでは影響しているのかもしれないな。

 シャドウが消えて、俺が入ってきた扉の前まで移動すると、強引に扉を開ける。

 俺が入ってくる時に半ば壊して入ってきたから、色々と歪んでるんだよな。

 こういうのの場合、少し歪んでしまえばかなり開きにくくなるんだよな。

 ……いや、本当にこれって影時間が終わったらどうなるんだ?

 一応影時間が終われば問題ないように、ある程度は修正されるって話は聞いてるが、ここまで破壊されたのでも大丈夫なのか?

 この辺、ちょっと心配があるが……まぁ、それは桐条グループに任せるとしよう。

 桐条グループにとっては、こういうのこそ手腕を発揮するべき場所だろうし。

 いやまぁ、マジックアイテムの解析とかでも手腕は発揮してるんだが。

 ともあれ、モノレールから降りた俺達を待っていたのは、桐条……だけではなく、ゆかりと荒垣の2人も一緒だった。

 どうやら俺が瞬動で、桐条がバイクで移動した後で、こっちを追ってきたらしい。

 まぁ、影時間の中でポートアイランド駅に残されたままってのは、ゆかり達にとっても面白い出来事ではなかったのだろうが。

 

「アクセル、無事!?」

「ああ。……ただ、他の3人が多かれ少なかれ怪我をしてるから、治療を頼む」

 

 一応有里のピクシーだったか? そのペルソナで回復はしたが、重ねて回復しておいた方がいいのは間違いないだろう。

 

「そう……良かった。有里君も真田先輩もこっちに来て下さい。……それとついでに真田先輩に背負われてるのも」

 

 ゆかりの順平に対する感情は、日に日に悪化している。

 俺と一緒に行動することが多いだけに、やはり俺に対する順平の態度に思うところがあるのだろう。

 そして月光館学園で人気のあるゆかりに嫌われるという事は、当然ゆかりに好意的な感情を持っている者にとっても、順平の態度は目に余るものと映る訳で……まぁ、その辺は自業自得としか言えないんだけどな。

 ともあれ、そんな具合な訳だ。

 ゆかりの言葉に従い、有里と真田はモノレールを降りるとゆかりに近づいていく。

 

「イオ、ディア」

 

 そんな2人と1人に向かい、ディアを発動するイオ。

 いつも通り牛の頭蓋骨に乗って姿を現した、鎖で縛られた女は……ゆかりの意思を受けてか、1人……順平に対する回復魔法を使うのを不満そうなようにすら思える。

 取り合えず有里達にはそのまま任せ、俺は桐条の方に近づいていく。

 

「戦闘でモノレールの内部が結構壊れて、線路の方も俺がモノレールを強引に停める為にかなり被害を受けたが……大丈夫か?」

 

 そう尋ね、てっきり戻ってくるのは眉を顰めたような顔だと思っていたのだが、桐条が浮かべたのは嬉しそうな笑みだった。

 

「構わん。明彦達が無事で、アルマーも無事だったのだ。それに線路やモノレールも、大破したのならともかく、多少壊れたくらいであればこちらでどうにかしよう」

 

 おお、さすが桐条グループ。普通であればどうしようもない事だが、桐条グループの実力があれば、このくらいは問題なくどうとでもなるらしい。

 

「そうか、じゃあ任せる」

「ああ。……それにしても、本当に助かった。アルマーがいなければ、どうなっていた事か。明彦達を失っていた可能性が高い」

「だろうな。……そして、今日このような事になった原因は、言うまでもなく分かるな?」

 

 俺の言葉に、桐条は数秒前とは打って変わって苦い表情を浮かべて頷く。

 

「分かっている。伊織だな」

「そうだ。順平が俺を嫌っているのは、以前の件で明らかだった。だから俺も何も口を出さなかったが……そこでお前達が何も手を打たなかったのは不味かったな」

「すまない。一応こちらでも色々と声を掛けてはみたのだが、伊織にとっては聞く価値もないと判断したらしい」

 

 はぁ、と。

 小さく溜息を吐く桐条。

 なるほど。何も言ってないのかと思いきや、一応前もって言ってはいたのか。

 ただ、順平がそれを聞き入れなかっただけで。

 俺に負けて意固地になってたんだろうな。

 

「そうか。けど、ならこれからどうするんだ? 正直なところ、タルタロスでならともかく、今日みたいにイレギュラーシャドウが現れた時、順平と一緒に行動するのは危険でしかないぞ?」

「それは……」

 

 桐条も、俺の言いたい事は分かっているのだろう。

 悔しそうに唇を噛む。

 

「サポート型のペルソナを使う者がいれば、私が明彦達と一緒にタルタロスに挑む事が出来るし、伊織の手綱を握る事も可能だろう。だが、今の私達ではそれも不可能だ。元々戦闘向けの私のペンテシレアでようやくどうにかなっているのだしな。……そういう意味ではサポート型のペルソナがないまま、タルタロスに挑んでいるアルマー達を羨ましく思うよ」

「まぁ、俺の場合はペルソナとかがなくてもシャドウとかの気配を察知したり、自前で出来るからな」

「……本当に羨ましい」

 

 しみじみと俺の方を見ながら告げてくる桐条。けど、気配察知だけを考えれば俺を羨ましく感じるかもしれないが、桐条の方が有利な事もある。

 

「シャドウをサーチして、どの属性に弱いかとか、そういうのを知る事が出来るんだろ? 俺達の場合は基本的に強引に勝ってる感じだが、シャドウの弱点が分かるのなら、そっちは戦略的に行動出来るんじゃないか?」

 

 そう、今のところ俺達のパーティで戦闘しているのは、基本的にゆかりだけだ。

 そしてゆかりの攻撃手段は、ショートボウを使った攻撃に、ペルソナのイオが使う風の攻撃魔法ガル、そしてペルソナの重量を活かした突撃といったところか。

 勿論どうしようもなくなれば、俺が攻撃をするという方法もあるが、幸い今のところそういう事にはなっていない。……死神は例外として、だが。

 そんな俺達に対し、相手の弱点を見抜く事が出来るのであれば、真田と順平という2人の使い手に、何よりペルソナチェンジを使って様々なペルソナを使える有里がいる桐条達は、かなり有利なのだ。

 シャドウは……いや、ペルソナもだが、弱点の属性による攻撃が命中すると、大きくバランスを崩す。

 それこそ、残っている全員が一気に総攻撃出来るように。

 しかも、何故かシャドウがバランスを崩した時は、他のシャドウも意表を突かれるのか、それともそういう性質だからか、非常に動きが鈍くなる。

 そういう意味で、人数の多い桐条達はシャドウを相手にしても有利に戦えるのは間違いなかった。

 

「それはそうなのだが、どうしても純粋な実力がな。私もそうだが、岳羽に比べると劣ってしまう」

 

 ディアを使って有里達を回復しているゆかりを見て、桐条がしみじみと呟く。

 そんなゆかり達の側では、もう傷が完全に回復したのだろう。

 背負っていた順平も地面に下ろした真田が、荒垣に何やら言われている様子が見える。

 数秒前まではゆかりを見ていた桐条だったが、今はそんなやり取りをしている真田と荒垣の2人を見て、どこか懐かしそうな表情を浮かべていた。

 荒垣は元々桐条達の仲間……特別課外活動部だったか? その一員だっただけに、桐条がそう思う気持ちは分からないでもない。

 

「ま、今は無理でもまたいつかは一緒に行動出来る日が来るかもな」

「っ!? ……そうだな、そうなってくれるといいのだが」

 

 一瞬、俺に考えを読まれたのだろう事に驚きの表情を浮かべる桐条だったが、すぐにその驚きを消し、笑みを浮かべつつそう告げる。

 ……まぁ、一緒に行動するのはともかく、正式に合流するというのは今のままだと色々と難しいかもしれないが。

 特に痛いのは、やはり幾月の存在だろう。

 生理的に受け付ける事が出来ないあの男がいる限り、桐条達と正式に合流というのは難しいだろう。

 

「それにしても……」

 

 幾月の事を考え、少し気分を害した事もあり、俺は話題を変えるべく空を見上げる。

 影時間となっている為に、普通の時間帯の夜空とは違うのだろう。

 だが、それでも……いや、だからこそ、俺達だけが見られる光景でもある。

 影時間の空には、丸く輝いている月の姿がある。

 太陽の光を反射してるらしいが、この様子を見る限りだと月が独自に輝いていると言われても不思議ではない程の、素晴らしい満月だ。

 

「いい月夜だな」

「……そうだな。こうして見ているだけでも素晴らしい満月だ」

「月見団子でも食うか? 満月につきものなのは、やっぱり団子だろ? 以前スーパーで買った団子が空間倉庫の中に……」

「ふふっ、月見団子か。……待て、満月? 満月だと? そう言えば先月も……」

 

 ふと、何かに気が付いたかのように、桐条は呟くのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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