転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1885話

 桐条とお好み焼きを食べに行った日から1週間程が経ち……今日も俺とゆかり、荒垣の3人はタルタロスの15階に来ていた。

 来ていたのだが……

 

「ちょっ、これ! 何で今日に限って……!」

 

 ゆかりが苛立たしげに、自分に向かって真っ直ぐに突っ込んでくる2匹の死甲蟲目がけ、連続して矢を射る。

 次々に放たれた矢は、真っ直ぐに死甲蟲に向かうのだが、死甲蟲は身体に矢が刺さっても全く気にした様子がなく、ゆかりに向かって突き進む。

 

「ちっ、またシャドウが凶暴な日か」

 

 苛立たしげに吐き捨てる荒垣の言葉を聞きながら、俺は瞬動を使って一気にゆかりの前に移動すると、真っ直ぐ向かってくる死甲蟲2匹を相手に、素早くゲイ・ボルクを突き出す。

 一瞬にして放たれた2回の突き。

 その威力は凄まじく、強靱な防御力を誇る筈の死甲蟲ですら、あっという間に死んで、崩れていく。

 

「あ、ありがと」

 

 ゆかりが感謝の言葉を述べてくるが、俺はそれに首を横に振る。

 ……俺と桐条が一緒にお好み焼きを食べに行ったのが面白くなかったとして、この頃少し機嫌が悪かったのだが、その辺りはこれで解決してくれれば、こちらとしても嬉しい。

 

「気にするな。……ただ、今日はタルタロスの探索は止めた方がいいだろうな」

「そうだな。以前もそうだったが、凶暴になったシャドウを倒しても特に何かある訳でもないし」

 

 荒垣の言葉に、頷きを返す。

 凶暴になったシャドウのいる日でも、置かれている宝箱の中に入っているのは、特にいつもと変わらない。

 ゆかりのステータスを見る事が出来ないので、確実にとは言わないが、経験値的な意味でもそう変わらないと思われる。

 だとすれば、凶暴になっているシャドウと戦うのは色々な意味で損でしかない。

 

「え? じゃあもうタルタロスを出るの? まだ来たばかりなのに」

 

 少し意外そうな様子で呟くゆかりに、頷きを返す。

 

「残念ながら、そうなるな。理由は分からないが、この凶暴なシャドウを相手にするには、危険しかない。勿論、それはそれである程度ゆかりの為にもなるんだろうが……」

 

 どうする? と視線を向けると、ゆかりは少し考えてから口を開く。

 

「分かった。アクセルがそう言うなら、外に出ましょう」

 

 こうして1度の戦闘だけで今日のタルタロス探索は終わり、影のゲートを使ってエントランスに移動する。

 もしかしたら桐条達が来てるかも? と思わないでもなかったが、その姿はどこにもない。

 まぁ、桐条達と遭遇しても、未だに順平と俺の仲違いは続いているので、微妙な空気になると思うのだが。

 ともあれ、取りあえず今日はもう家に帰って影時間が終わるまでゆっくりしていよう……と、そう思っていたのだが。

 

「え?」

 

 タルタロスを出て、そのまま荒垣とゆかりを影のゲートで送って帰ろう。

 そう思っていたのだが、影時間にも関わらず何故か聞こえてきた音があった。

 

「どうしたの?」

「アルマー?」

 

 混沌精霊の聴覚だからこそ聞こえたのだろう。

 その為、ゆかりと荒垣の2人は特に聞こえている様子はなく、唐突に声を漏らした俺の方に不思議そうな表情を向けてくるだけだ。

 

「いや、何か近づいてくる。しかも機械音。……となると、恐らく桐条の関係だろうが」

 

 影時間の中で機械を動かす技術は、桐条グループの保有技術だ。

 ……まぁ、俺のニーズヘッグも動かせはするが、それは色々な意味で例外だろう。

 そもそもニーズヘッグは宝具化してるし。

 

「え? ……あ、本当だ」

「そうだな」

 

 やがて近づいてきたのか、ゆかりと荒垣の2人にも聞き取れるようになったのだろう。こちらの方に視線を向け、そう呟く。

 

「そういやぁ、影時間に動くバイクがどうとか以前アキに聞いた事があったが、それか?」

 

 なるほど、真田がバイクに乗っているのか。

 バイクに乗っているボクサー。

 これで真田が不良だったら、完璧だな。

 ともあれ、考えてみれば影時間ならバイクで暴走しても、突然飛び出してくるような相手はいない。

 いや、俺達がいるが、俺達の場合は基本的に影のゲートを使って移動してるし。

 ああ、タルタロスの外に出たシャドウがいるか?

 もっとも、そういうシャドウが相手であれば、それこそ幾ら轢いても構わないと思うが。

 そんな風に考えていたのだが……やがて姿を現したバイクを見て、俺の目は大きく見開かれる。

 何故なら、その人物の身体が明らかに女らしい曲線を描いていたからだ。

 つまりそれは、当然のようにバイクに乗っているのが女であるということを表しており、そして影時間の中で動ける女は、ゆかり以外だと桐条しかいなかったからだ。

 

「桐条、か?」

「……え?」

 

 思わず口から出た呟きに、ゆかりが反応する。

 そして遠くの方に見えたバイクを見ていたゆかりが、改めて俺の方に視線を向けてくる。

 何も言わずとも、明らかに目で尋ねていた。

 

「間違いなく桐条だ」

 

 決定的な一言に、ゆかりの口から驚きの声が上がる。

 その気持ちは分からないでもないが……何気に活発的な桐条の性格を考えれば、この結果は必然ですらあったのだろう。

 ちなみに荒垣の方は、最初から相手が桐条だと気が付いていたのか、特に驚いている様子はない。

 ともあれ、そのバイクは俺達の前までやってくると、そのまま強引にスピンさせる……って表現でいいのかどうかは分からないが、とにかく停まった。

 そうしてヘルメットを取ると、やはりそこにあったのは桐条の顔。

 いやまぁ、ヘルメットから出ている髪の色を見れば、考えるまでもなく桐条だったのだが。

 ともあれ、そんな理由で俺達の前にやってきた桐条だったが、その表情は突然バイクで現れた事を驚かそうとか、そういう表情ではなく……

 

「アルマー、力を貸してくれ!」

 

 切羽詰まった様子で、そう叫ぶ。

 

「何があった?」

 

 色々と聞きたい事はあったが、それよりも今は桐条に何があったのかを聞く方が先だろう。

 桐条もそれは理解しているのか、端的に現状を口にする。

 

「モノレールがシャドウに乗っ取られて、動いている。このままではモノレールが止まらず、駅に入ってぶつかってしまう! しかも現在モノレールの中には明彦達がいるんだ!」

「何?」

 

 その言葉だけで、現在の状況の危うさを理解する。

 シャドウに乗っ取られたモノレールが動いているという時点で、それこそ脅威しか存在しない。

 しかもその中に真田達……達とつくからには、恐らく有里と順平もそこにはいるのだろう。

 動いているモノレールの中にいるのであれば、速度にもよるが脱出するのは難しい。

 もし駅にモノレールがぶつかろうものなら、3人がどうなるのか。

 考えるまでもないだろう。

 ペルソナの能力を使って脱出出来ればいいのだろうが、脱出していないという事は何かがある筈だ。

 

「他に分かってる事は?」

「モノレールの中にはシャドウが1匹いる。以前有里が倒したような、イレギュラーのシャドウだ。そのシャドウがモノレールを操っているらしく、完全に閉じ込められている」

 

 なるほど。脱出しようにも、そもそも脱出出来なかったのか。

 その上でモノレールが走っているとなると……特攻か?

 シャドウにどこまで自我があるのかは分からないが、それでも多少なりとも知能があるのは間違いない。

 であれば、自殺までするか? とも思うが……そもそも、シャドウの死生観といったものが俺達と同じだとは限らない訳で。

 

「分かった。とにかく、まず最優先にすべきなのはモノレールを止める事だな?」

「ああ、そうだ。だが……モノレールに乗り込もうにも、モノレールはさっきも言った通り、シャドウによって完全に乗っ取られている。とてもではないが……」

「心配するな」

 

 不安そうな表情で呟く桐条の言葉を、即座に断ち切る。

 

「え?」

「俺に任せておけ。真田達とは色々と付き合いもあるんだ。ここで見捨てるような真似は出来ない。……じゃあ、行くぞ」

「え? ちょっ!」

 

 桐条が戸惑っている間に、ゆかりと荒垣の2人は俺の側にやってくる。

 最後まで言わずとも、こっちの考えを察してくれるのは、非常に助かる。

 まだ戸惑った様子の桐条だったが、不意にバランスを崩し……近くにいた俺の方に倒れ込みそうになる。

 バイクの前輪と後輪が影に沈んだ影響でだ。

 

「っと」

 

 バイク諸共に倒れそうになっていた桐条を受け止める。

 

「きゃっ!」

 

 桐条のような女が上げるにしては、珍しい程の可愛らしい悲鳴。

 だが同時にライダースーツを着ている桐条は、その豊かな曲線を描くボディラインをこれでもかと強調していた。

 ゆかりも年齢の割にはかなり女らしい身体だが、桐条はその上をいく。

 ……まぁ、私服で俺とお好み焼きを食べに行った時は、高校生ではなく大人に見られていたし。

 客の何人かが、社長秘書に見えるとか何とか言ってたのを、俺の耳は聞き逃していない。

 ともあれ、そんな成熟した大人の身体を持つ桐条だけに、バランスを崩したところを受け止めた俺はその柔らかさを思い切り堪能することになった。

 

「あ……そ、その……」

 

 桐条にとっても、まさかバランスを崩して俺に寄り掛かる事になるとは思っていなかったのだろう。

 戸惑ったように声を上げ、何故か信じられないといった表情を浮かべて俺の方を見てくる。

 

「コホン」

 

 そんな咳払いが聞こえ、それを契機にして桐条は我に返ったように顔を背ける。

 

「す、すまない。いきなり……って、これは!?」

「アクセルの影のゲートですよ。移動するから当然だと思いますけど?」

 

 普段はそれなりに桐条との関係も修復してきた筈のゆかりだったのだが、今に限ってはどこか冷たい色があった。

 

「わ、分かっている。その、いきなりだから驚いていたのだ。それより、影のゲートでどこに出るのだ?」

 

 誤魔化すように告げてくる桐条に、いつもの冷静な様子はない。

 そんな様子に笑みを浮かべながら、俺は口を開く。

 

「取り合えずポートアイランド駅に転移する。モノレールが今どれくらいの速度で進んでいるのかは分からないが、それでもポートアイランド駅に向かってるんだろ? それとも、ポートアイランドから巌戸台の方に向かってるのか?」

「いや、巌戸台からポートアイランド方面に向かっている。……つくづく便利だな」

 

 影に沈む感覚にも大分慣れてきたのか、桐条はそう言ってくる。

 タルタロスからなら、それこそ瞬動を使って移動してもポートアイランド駅まではそう遠くはないのだが……それで移動出来るのは俺だけだしな。

 そんな訳で全員が影に沈んでいき、やがて次に姿を現したのはポートアイランド駅の前。

 ……ここ、何だかんだで俺は滅多に使わないんだよな。

 そもそも俺の場合、家から学校の近くまではこの影で転移してるし。

 タルタロスが終わった後で荒垣を送ってくるとか、そんな時くらいしか用事はない。

 そんな訳で、何だか久しぶりにやってきたようなこの場所で、俺は周囲の様子を見る。

 影時間だけに、当然周囲にいるのは棺桶と化した者達だけだ。

 この中に俺の知り合いがいるのか……ふと、そう思う。

 荒垣なら、ここがホームグラウンドなだけに、知り合いとか多そうだが。

 

「どうやら、まだモノレールが突っ込んできてはいないみたいだな。……じゃあ、俺は取りあえずモノレールを抑えに行ってくる」

「いや、抑えると言っても、どうやってだ!?」

 

 桐条の口から出る驚愕の声。

 ……そもそもこの状況をどうにかして欲しくて、わざわざタルタロスまで俺を迎えに来たんだろうに。

 

「まぁ、心配するな。俺を誰だと思ってる?」

 

 そう言いつつも、そう言えば俺はこの世界だと何のバッグボーンもなかったんだよなと思い出す。

 他の世界とかだと、それこそシャドウミラーという名前を出していたのだが……この世界では完全に個人として動いていたしな。

 しかも戸籍とかも存在せず、現在の戸籍は桐条グループに用意して貰ったものだ。

 そんな訳で、現状で俺のバッグボーンは実は桐条グループだったりする。

 

「アルマー……分かった。なら、私がお前についていこう」

「は?」

 

 桐条の口から出たその言葉は、完全に俺の予想外だった。

 勿論一緒に来るというのは、そのバイクで俺についてくるという事だろう。

 モノレールの線路の両脇は一応歩いたり出来るようになっているし、普段はいつモノレールが走るか分からない以上、そのような真似をするのも難しい。

 だが……幸いにも、今は影時間だ。

 つまり、こっちに向かって走ってくるモノレール以外の別のモノレールは存在しない。

 そう説明されれば、まさしくその通りであり……これ以上ここで説得をしても時間の無駄だと知り、小さく溜息を吐く。

 

「分かった、けどどうなっても知らないぞ。自分の面倒は自分で見ろよ!」

 

 それだけを告げ、俺は巌戸台方面に向かって走り出すのだった。……それこそ、桐条のバイクでも追いつけない速度で。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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