転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1883話

「……ふん」

 

 朝の通学路で、いつものように合流した俺とゆかりが歩いていると、ふと近くに順平の姿がある事に気が付いた。

 だが、その順平は俺達の姿を一瞥すると、特に話し掛けるような事もしないまま、鼻を鳴らして去っていく。

 俺が順平の増長した心をへし折ってから、それなりに時間が経つ。

 既に今日は4月30日となっているのだが、未だに俺と順平の関係は改善していなかった。

 もっとも、俺はこうなる事を承知の上だったので問題はなかったのだが……色んな意味で現在苦労しているのは、友近だ。

 俺と順平の2人と仲が良かっただけに、どうにか仲直りさせようと奮闘している。

 だが、俺はともかく順平がそんな友近の行動に苛立ちを見せ、友近は板挟み状態となっていた。

 有里も色々と順平に言ってはいるようだが、順平は聞く耳を持たないらしい。

 桐条からのメールによると、一応寮にいる時はピリピリした雰囲気を発してはいないらしいが。

 つまり、俺の近くにいればそんな風になるんだろう。

 

「全く、順平もちょっと意固地になりすぎじゃない? そもそも、今回の一件は順平が原因でしょ」

 

 最初はあまり順平に不満を持っていなかったゆかりだったが、それでもこうあからさまな態度を取られると、やはり面白くはないのだろう。

 結果として、最近はゆかりも順平に対して不満を募らせるようになっていた。

 まぁ、順平がここまで不満を募らせるのは、俺にとっても予想外の光景ではあったが。

 

「そのうち、怒りも自然に晴れるだろ。順平が自分できちんと理解するまで、待つしかないだろうし」

「……本当にいいの?」

「まぁ、俺の目的の楽しい高校生活という点では……正直ちょっと問題があると言ってもいいかもしれない」

 

 元々俺は友人を作るのが決して上手い訳じゃない。

 それだけに、現在他の友人はあまりいないんだよな。

 一応友近や有里とはそれなりに話すし、宮本とも幾らかは話すんだが。

 それ以外だと……

 

「おお。アルマー! 丁度いいところに来たな! どうだ、今日は放課後にでもスパーリングでもやらないか!」

 

 こんな風に、真田に声を掛けられる。

 そして真田は当然のように月光館学園では人気があり、その真田に以前勝っており、その結果として真田にスパーリングに誘われるようになった俺も、それなりに名前を知られ始めていた。

 いやまぁ、それ以前からゆかりとの関係で名前は知られていたんだが、その時はチャラい男って印象が強かったらしい。

 ……ゆかりとの仲を疑われて、俺の、正確にはアクセルの顔なんだから、その辺りは分からないでもないんだが。

 ともあれ、真田と仲がいい事もあって、月光館学園での俺の扱いはそれなりにいい。

 そんな俺を意図的に無視し、嫌っているのだから、順平の立場が悪くなるのはおかしくなかった。

 勿論真田が順平を嫌っているという訳ではないのだが……ただ、真田の場合、順平は模擬戦に誘っても自分の糧にならないと判断しているのが大きい。

 順平がボクシング部に顔を出して、真田にスパーリングをして欲しいと言えば、話は別なんだが。

 正直、この辺りも順平の行動に対して抱く不満の1つでもある。

 自分を特別な、選ばれた人間だと思っているからなのか、順平は殆ど訓練の類をしていない。

 大剣を使うのであれば、それこそ最近順平と一緒にいる事の多い宮本が所属している剣道部に顔を出すとか、すればいいと思うんだが。

 だが、放課後になれば街に遊びに出ているし、桐条や真田、有里から話を聞いている限りでは、寮で自主的に訓練をしている様子もない。

 ……まぁ、実戦で自分を磨くと言えば、それはそれで納得出来ない訳でもないんだが……何度も戦いを潜り抜けてきて、戦いの基礎が身についているならともかく、順平の今の状況で体力トレーニングの類もしていないというのは、どうかと思う。

 

「そうだな、順平でも誘ってみたらどうだ? 元々素人なのに、普段からトレーニングをしている様子もないんだろ? 遊び気分のままだと、どうなるか……それが分からない訳じゃないよな?」

 

 俺の口から出た言葉が予想外だったのか、真田は言葉に詰まる。

 ゆかりみたいに、部活で訓練をして、数日おきにタルタロスで戦いを行い……とまでは言わないが、それでももっと訓練をした方がいいのは間違いなかった。

 

「順平をか? ……ふむ、そうだな。アルマーがそう言うのであれば、それを考えてみてもいいか」

 

 俺の言葉に、真田は少し考え込む様子を見せる。

 うん、まぁ……取りあえず順平の一件は真田に任せておくとしよう。

 

「お人好しにも程があるんじゃない?」

 

 考え込んだ真田から離れると、ゆかりがどこか呆れたように言ってくる。

 その気持ちは分からないでもないんだけどな。

 ただ、順平や友近と一緒に遊んだ、高校生らしい放課後の時間というのは、俺にはかなり貴重な日々だったのだ。

 であれば、多少なりとも順平のフォローをしても問題はないだろう。

 勿論、この機会を生かすも殺すも順平次第ではあるのだが。

 そんな風に考えつつ、俺はゆかりと共に靴を履き替え、教室に向かう。

 やがて教室の中に入ると、いつものように席に着く。

 以前であれば、鳥海が来るまでは順平と話をしたりしていたのだが。

 今の俺達の関係では、そんな事が出来る筈もない。

 俺よりも前に教室に入っていた順平は、教室に入ってきた俺の方を一瞬見るが、すぐに視線を逸らして宮本との話を再開する。

 その宮本は順平の様子に俺の方へ申し訳なさそうな視線を向けるが、順平との話を続けていた。

 

「ちょっと、伊織のあの態度何よ。感じ悪いわね」

「そうね。何か理由があって喧嘩したんだろうけど……ちょっと、ねぇ」

 

 俺と順平のやり取りを見ていた他の生徒達がそんな風に話している声が聞こえてくるが……順平の態度は、他のクラスメイトにも悪影響を与えているらしい。

 有里のようにモテるって訳ではないが、順平はクラスのムードメーカー的な存在だ。

 それだけに、順平がこの調子だとクラスの雰囲気も悪くなりかねない。

 ……一体、どうしたものやら。

 そんな風に悩んでいる間にも時間は流れ、やがて鳥海がやってくる。

 

「はいはい、皆席についてちょうだい。朝のHRを始めるわよ」

 

 鳥海の登場で、一応クラスの雰囲気がこれ以上悪くなるのは止められ……そのまま朝のHRになるのだった。

 

 

 

 

 

 3時限目の体育の時間、今日は体育館でのバスケをやっていた。

 

「うおっ、またアルマーが抜いたぞ! 残りは1人だ!」

 

 素早くフェイントを仕掛け、男を抜いてそのままリングとの距離を縮めていく。

 そんな俺の前に現れたのは、順平。

 基本的に俺を無視している順平だったが、それでも体育の時間にバスケで対戦している中で、俺を無視するような真似は出来ない。

 俺への対抗心から、順平は鋭い視線をこちらに向けてくる。

 順平もそれなりにタルタロスには行ってるので、ある程度身体を動かす事が出来る。

 実際、俺のチームとやる前には、バスケ部を相手にしてもいい勝負をしていたし。

 バスケが本職のバスケ部を相手にいい勝負をするんだから、タルタロスでの経験がどれだけ濃密なものか、分かるだろう。

 まぁ、命懸けの戦いを行って、それでも何の成長もなかったら、それはそれで色々と問題はあるだろうが。

 ともあれ、そんな理由で順平の中にはある程度の自信があったんだろう。

 それは決して間違っていない。

 だが……唯一にして最大のミスは、タルタロスに行ってるのは順平だけではないし、そもそも俺はタルタロス以上の修羅場を幾つも潜り抜けてきているのだ。

 勿論俺の混沌精霊としての身体能力は使っておらず、一般的な高校生かそれよりちょっと上くらいの身体能力に抑えている。

 それでも、順平を相手にするには十分だった。

 順平の前で一旦ドリブルを止め、自分の足の間を通すようにドリブルする。

 レッグスルー……とかいう技の名前だったか。

 かつて俺がネギま世界にいた時、クラスメイトの明石から教えて貰った技だ。

 もっとも、そこまで高度な技ではないし、そもそも明石が……というか、明石の入っていたバスケ部がそこまで強い訳でもないので、この技もそこまで洗練されているという訳ではない。

 それこそ、バスケ部の部員であれば対処出来ても問題はなかっただろう。

 だが、順平は身体能力こそタルタロスで行われている戦闘で上がっているが、純粋にバスケという点では初心者でしかない。

 足の間を通されたドリブルに一瞬驚き、動きを止め……次の瞬間、俺は一気に順平を抜き去って、レイアップでゴールを決める。

 

「くっ!」

 

 悔しそうな順平の声が聞こえてくるが、別に俺は何か卑怯な真似をしてる訳じゃないしな。

 もっとも、俺の存在そのものが卑怯だと言われれば、言い返しようがなかったりするのだが。

 ともあれ、順平達のチームがボールを放ち、再び試合が再開される。

 ……が、ボールを持った男が近くにいた仲間にパスを出そうとした瞬間、その男の身体に隠れるようにしていた俺はあっさりとそのパスをカットし、そのままリングにボールを入れる。

 

『わああああああああああっ!』

 

 聞こえてくる歓声。

 これは、俺の背が高校生の平均よりも小さいからこそ、出来た事だったりする。

 

「嘘だろ!? いつの間に!」

 

 そんな声も聞こえてくるが、取りあえずこれで8-14とこっちの6点リード、と。

 次に試合が始まった時は、さすがに俺の事を注意してみているのか同じような事は出来なかったが……結局その後もそれなりに試合をこなし、最終的には12-30で俺達の勝利となった。

 順平がかなり悔しがっていたようだが、まぁ、順当な結果だと思う。

 最後に順平の頭の上からダンクを決めたのは、ちょっとやりすぎだったかもしれないが。

 ともあれ、そんな訳で体育の時間が終わるのだった。

 

 

 

 

 

「ねぇ、ねぇ。アルマー君。さっきの試合格好良かったわね。もしかして、バスケって前からやってたの?」

 

 昼食の時間、食事の途中でそんな風に声を掛けられる。

 声を掛けてきたのは、クラスの女だった。

 ちなみに今日の食事は、俺とゆかり、それと何人かの男女と共に食べている。

 声を掛けてきたのも、その中の1人だ。

 これは、俺が順平達以外に友人らしい友人がいないのを不安に思ったゆかりが、こういう場を整えてくれたのだが……

 

「あー、まぁ、以前から色々とやってたから」

 

 ちなみに俺達がバスケをやっている時、女子は体育館の半分を使ってバレーをやっていた。

 ……そして、当然ながらゆかりはそのバレーでも大活躍していた訳だ。

 まぁ、最強のペルソナ使いとして活動している以上、その結果は分かりきっていた事だけどな。

 元々人気のある人物だけに、そのうちお姉様と呼んでくる下級生とか出来るんじゃないだろうかと、少し楽しみにしていたりする。

 つまり、あのバスケの試合を女達も隣で見ていた訳で……凄いという感想を抱くのも、当然だった。

 ちなみに当然ながらそんな状況での試合だけに、バスケをやっていた男達は自分のいいところを見せようと、普段よりもかなり張り切っていた。

 何だかんだで、男ってのはやっぱり馬鹿なんだよなと思わないでもない出来事だったが。

 いや、思春期の男として考えれば、それは当然の行動なのかもしれないが。

 ともあれ、そういう理由で女達は俺の試合が凄かったと褒めてくれたのだろう。

 

「ふーん、色々か。じゃあ、バスケ部に入ってみない? そうすれば大会でも結構いいところまでいけると思うんだけど」

「それも面白そうだけど、放課後は色々と忙しいんだよ。残念だけど無理だな」

 

 女の方も、本気で俺に勧めてきた訳ではないのか、バスケ部の入部を断っても特に不満そうな様子はない。

 

「この前の小テストの成績も良かったし……アルマー君って、もしかして完璧超人?」

「あー、その気持ち分かる。運動だけなら俺もアルマー程じゃないにしろ自信はあるけど、テストで100点とか、どこの完璧超人だって話だよな」

 

 俺の近くでカツサンドを食べていた男が、羨ましそうに告げてくる。

 ちなみにこの男はバスケの試合で俺とチームを組んでいた男の1人で、バスケ部って訳じゃないけど、それなりに上手いところを見せていた。

 

「そう言ってもな。帰国子女の俺が英語の試験で満点を取るのは、そうおかしな話じゃないと思うぞ」

 

 実際、英語のテストは難しくはない。

 国語の方も問題はないし、科学や数学も問題はない。

 現状の俺の唯一の弱点は……やっぱり歴史だな。

 特に日本史。

 世界史も、この世界特有の事情とかで俺が知ってるのと細かく違っている場所があったりするので、完全に安心は出来ないのだが。

 そんな風に話していると……不意に携帯が着信を知らせる。

 誰だ、こんな昼休みに。

 そう思いながら携帯を取り出し、そこに表示されているのが桐条だと知ると、妙な騒ぎにならないよう、その場から一旦離れるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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