転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1879話

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……」

 

 荒い息を吐きながら、順平がエントランスの床に大の字になって倒れている。

 ペルソナを召喚するにも、精神力とかMP的なものが必要なのかもしれない。

 ともあれ、俺はゲイ・ボルクを手に順平を見下ろしつつ口を開く。

 

「さて、これで俺の30連勝だな。どうする? まだやるか? 俺の方はまだまだ余裕だが」

「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ……」

 

 俺の言葉に答えず、順平は息を整えるのに必死になっていた。

 どうやらもう戦えるだけの体力も精神力もないと判断する。

 

「この程度の実力で死神に挑むってのは、良く言って自殺行為だな。自殺をしたいんなら、そんな遠回しな手段を取らないで、普通に首吊りでもしたらどうだ? もしくはコンクリートを抱えて海に飛び込むとか。ああ、ただ飛び降りとか電車に飛び込むとかは他人の迷惑になるから止めておけよ」

 

 飛び降りとか飛び込みとか、そういう真似をした場合、遺族に大量の金額が請求されるというのを、聞いた事がある。

 順平の家族関係とかは分からないが、それでもそんな真似はしない方がいいだろう。

 

「だ、誰が……自殺なんかするか……」

 

 息も絶え絶えになりつつ、それでも何とかそれだけは口に出す。

 

「いや、自殺だろ? その程度の強さしかないのに死神に挑むとか。正直に言おうか? 順平、お前は弱い。この中では最弱と言ってもいい」

 

 ぐっ、と順平の口から奇妙な声が聞こえてくる。

 実際それは間違いではなく、厳然たる事実だ。

 桐条や真田は何年も前から影時間に挑み、シャドウと戦ってきた。

 有里は、類い希なセンスを持っており、ペルソナに覚醒した直後に特殊なシャドウを倒した。……まぁ、その後1週間近く入院したけど。

 ゆかりにいたっては、強敵との戦いを続けたおかげで、現在最強のペルソナ使いと呼ぶに相応しい実力を持っている。

 つまり、順平が最弱のペルソナ使いというのは間違いなく事実なのだ。

 ましてや、順平の調子に乗りやすい性格、大剣を野球のバットのようにして使う戦闘方法……どこをどう見ても、正直なところセンスというものはそこまでないように思える。

 勿論センスがなくても、訓練をすればある程度の戦力にはなるだろうが……

 

「はっきり言おう。順平。お前はとてもじゃないが主役にはなれない。もし自分が主役になろうと思っているのなら、ペルソナ使いとして戦うのは止めた方がいい」

「ふざけんなよ! 何でお前にそこまで言われなきゃいけねえんだよ!」

 

 先程まで呼吸を整えるのが精一杯だったとは思えないような、そんな叫びが周囲に響く。

 まぁ、正直なところその気持ちは分からないでもない。

 俺だってもし順平と同じ立場になれば、そんな風に言うだろうし。

 ただ……それでもここは言っておかなければならない場所なのは、間違いなかった。

 ここで下手に順平をいい気にさせて、結果として他の奴等に被害を出すような真似をさせる事だけは、避けたかった。

 ……そう、例え俺がここで順平に嫌われたとしても、だ。

 

「はっ、アクセルさんは強いからって人の気持ちを踏み躙ってもいいんですかね!」

 

 ふてくされたようにそう言う順平。

 取りあえず、自分が選ばれた存在であるという優越感をへし折る事は出来たから、これでいいか。

 俺はそんな風に思ったのだが……

 

「ちょっと、順平! あんたいい加減にしなさいよ!」

「伊織、貴様少しはアルマーの事を考えろ!」

 

 ゆかりと桐条の2人が、殆ど同時に床で寝ている順平に向かって叫んでいた。

 

「な、何だよゆかりッチも桐条先輩も……いきなり」

 

 順平も、俺に何か言われるのは分かっていたのだろうが、まさかゆかりと桐条の2人に何か言われるというのは、完全に予想外だったのだろう。

 自分が限界近くまで体力を使い果たしたというのを忘れたかのように、2人に視線を向けていた。

 そしてゆかりと桐条の2人は、自分達が同時に口を開いたという事に驚き、同時に顔を見合わせ……照れたように、2人揃って視線を逸らす。

 そんな2人の為にどこか微妙な空気になったが、その空気をどうにかするように、真田が口を開く。

 

「アルマーは少し言いすぎたかもしれないが、言ってる内容そのものには間違いない。順平、下手に自分を選ばれた存在だと思っていれば……死ぬぞ」

 

 真田の口から出たのは、淡々とした言葉に近かった。

 だが、それだけに順平には真に迫った言葉として聞こえたのだろう。

 やがて、不承不承とではあったが口を開く。

 

「……すいません」

 

 その謝罪の言葉が何に対する謝罪なのか、それは分からない。

 だが、それでもこの場に流れていたギスギスとした雰囲気を一時なりともどうにかするには十分だった。

 もっとも、順平の様子を見た限りでは、本当に自分が悪かったと思っている様子はないのだが。

 恐らく……いや、間違いなく、俺に対する不満を内に秘めたままだろう。

 取りあえず、それでも自分が選ばれた存在だとか、もしくはどこかゲーム染みた感覚でいるのを止めて貰えば、こっちとしては助かるんだが。

 後のフォローは……有里にでも任せておけばいいだろう。

 そう思って有里に視線を向けると、そこではどこを見ているのか分からないような、ぼーっとした様子の有里の姿があった。

 ……任せて大丈夫、だよな?

 惚けているような有里の姿を見て、そう不安に思った俺は決して悪くないだろう。

 ともあれ、その日はこれ以上タルタロスにいても意味はないだろうと、帰る事になった。

 そして帰るのは、当然のように俺の影のゲートを使って帰る訳だが……順平はそれすらも不満なようだった。

 まぁ、瞬動や気配遮断を使った以外にも、正面からヘルメスを叩き伏せられたりしたんだから、俺の能力に苦手意識を持ってもおかしくはないか。

 ちなみにペルソナ戦で便利なのは、ペルソナが倒されてもそれを召喚している者にはそのダメージがフィードバッグしないところだよな。

 魔術的に言う、返りの風的な意味の。

 勿論ペルソナを撃破されても何もない訳ではなく、ある程度の精神的なダメージはある。

 だからこそ、俺も何度かヘルメスを倒しはしたが、そこまで徹底的にヘルメスに攻撃するような真似はしなかったのだから。

 ともあれ、幾ら順平が俺に対して色々と思うところはあれど、まさか順平だけでタルタロスから寮まで徒歩で帰る訳にもいかないだろう。

 いや、やろうと思えば可能だろうが……途中で影時間が終われば、抜き身の大剣を手にした高校生が真夜中に歩いている事になり、間違いなく職務質問を受けるだろう。

 一応模造刀だから、銃刀法違反にはならないのか?

 ともあれ、そんな事になってしまうのは順平としても願い下げだろう。

 そんな訳で、結局順平は不承不承ながらも俺の影のゲートを使って帰る事にした。

 影に沈み……そして次の瞬間には、既に俺達の姿は桐条達が暮らす寮の前にあった。

 そして寮の前に戻ってくると、順平は俺を睨み付けると真っ直ぐに寮の中に入っていく。

 それを見ていたのか、桐条が申し訳なさそうな表情を浮かべつつ俺の方に近づいてくる。

 

「アルマー、その、今回は色々と迷惑を掛けてしまったな。すまない。そして、ありがとう」

 

 謝罪はともかく、感謝の気持ちはやはり順平に対してのものだろう。

 恐らく……いや、間違いなく桐条も、順平がペルソナ使いという事に優越感を持ち、その上でタルタロスへの挑戦にゲーム的な感覚を持っているというのは理解していたのだろう。

 だが、それを注意する事は出来なかった。

 ……まぁ、考えてみれば、順平がタルタロスに挑んだのは今日で、桐条はその場にいた訳ではなく、エントランスからバックアップしていたのだから、そうなってもおかしくはないのだが。

 

「いや、別に気にするな。それにこれから順平と桐条達はパーティを組むんだろう? なら、憎まれ役は俺がやった方がいい」

「だが……その、彼は君の友人だろう?」

 

 ああ、何か妙に気にしていると思ったら、そっちか。

 

「そうだな。けど、友人が無茶な事をして死ぬような危険を潰せたんだ。それでいいさ」

「……けど、あの順平よ? 今日の件だけで懲りると思う? 下手をすれば、余計に意固地になるような気がするんだけど」

 

 俺と桐条の話を聞いていたゆかりが、そう話に割り込んでくる。

 その可能性は……出来ればないと思いたいところだが……

 影時間前に屋上の模擬戦で軽く増長を折ったにも関わらず、タルタロスではあの有様だった。

 結果としてエントランスでこれ以上ない程に増長した心をへし折ったが、屋上での一件の立ち直りの早さから考えれば、ゆかりの言葉にも一理……いや、二理も三理もあると思っていい。

 

「一応こっちでも順平の様子は見ておく。アルマーだけに負担を掛ける訳にはいかないからな。湊も、それでいいか?」

「……はい」

 

 真田の言葉に、有里が頷く。

 何かにつけ面倒臭そうな態度を崩さない有里だが、それでも友人の事となると話は違ってくるのだろう。

 

「じゃあ、僕は順平とちょっと話してくるので。……アルマー、岳羽さんもまたね」

「ああ」

 

 そう言い、有里は寮の中に入っていった。

 

「……戦力が増えたのはいいかもしれないが、一気に増やしすぎたんじゃないか?」

「そうかもしれん。だが、私もここまで順調にペルソナ使いが増えるとは思っていなかったからな」

 

 苦笑を浮かべる桐条。

 だが……もし俺がこの世界に干渉せずに原作通りに進んでいたとすれば、恐らく桐条パーティの中にはゆかりも入っていた筈なのだ。

 今の、最強のペルソナ使いと呼ぶべきゆかりならともかく、もし俺がいなければ、恐らくゆかりも順平……とまではいかないが、有里と同程度、もしくはそれよりも弱い可能性は十分にある。

 それに比べると、まだ手を煩わせないという意味で今の方が楽だったのか?

 もしくは、ゆかりが桐条達と一緒に行動しているのであれば、上手い具合に潤滑油になっていたのだろうか。

 

「とにかく、あの2人は私が望んで迎え入れたのだ。そうである以上、手間が掛かるだなんだと言っている訳にはいかん。何とかして、普通に行動出来るようにしてみせるさ」

「頑張ってくれ」

 

 軽くそれだけを言うが、実際俺が順平に対してこれ以上何が出来る訳でもない。

 俺に出来る事は、桐条と電話やメールで話をしたり、何か食べに連れて行ってやったりとか、そういう事くらいだろう。

 

「ああ、任せろ。……では、そろそろ影時間も終わるし、戻ることにしよう。岳羽もアルマーも、寄り道をせずに帰るようにな」

「またな」

 

 そう言い、桐条と真田も寮の中に入っていく。

 そうして残ったのは、俺とゆかり。

 

「寄り道って言ってもな。……この時間だと、ファミレスとかか?」

「あのね、桐条先輩は寄り道をしないで帰れって言ったのに、それで寄り道してどうするのよ」

 

 俺の言葉に、呆れたようにゆかりが告げてくる。

 

「ま、それもそうか。どうする? 俺の部屋に寄っていくなら、何か飲み物とデザートくらいなら出すが」

 

 デザートは専門店で買ったケーキ……とかではなく、ドッグフードを買う時にいつも使っているスーパーで買ったシュークリームとかだが、個人的にはそれ程悪くないと思う。

 実際、日本のコンビニやスーパーで売ってるスイーツってのは、海外に比べると非常にレベルが高く、この値段でこの味!? と驚かれる事も多いと、以前四葉から聞いた覚えがあった。

 ……まぁ、それはあくまでもネギま世界での話かもしれないが……このペルソナ世界だって日本は日本だ。恐らくその辺りはそう差がない……と思う。

 

「あー……うーん、デザートか。興味を惹かれるんだけど……この時間に食べるのは……あー……や、止めておくわ」

 

 まさに血を吐くような思いとでも言うべきか、ゆかりは心の底から苦悩した様子で、そう告げてきた。

 いや、まさかここまで苦悩するとは思わなかった。

 

「身体は十分に動かしてるんだし、少しくらい食べてもいいと思うけどな」

「あのね、やっと誘惑を断ち切ったんだから、あまり変な事を言わないでくれる?」

 

 恨めしげに俺に視線を向けて言ってくるゆかり。

 

「それに普段ならともかく、今日はエントランスで桐条先輩と一緒にいたのよ? いつものようにタルタロスで戦っていた訳ではないんだから、ここで甘い物を食べたら後が怖いでしょ」

「……そこまで心配する必要はないと思うんだけどな」

 

 俺から見た感じ、ゆかりはとてもではないが太っているといった風には見えない。

 勿論本当の意味でそれを確認するには、それこそ裸を見るしかない訳だが。

 ああ、でも以前下着姿を見た時はそういう風には見えなかったな。

 

「……ちょっと、アクセル。今何か妙なことを考えていなかった?」

「いや、何でもない。じゃあ、取りあえずこのまま真っ直ぐ寮に向かうって事でいいか?

 

 女らしい勘の鋭さを発揮するゆかりに、動揺を表情に出さないように気をつけながらそう告げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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