転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1874話

「うおおおおおお……げふっ」

 

 真っ直ぐに突っ込んできた順平が、そのまま俺に攻撃を回避されつつ足を引っかけられて転ぶ。

 現在俺が……俺達がいるのは、寮の屋上。

 ある程度の広さがあるので、本格的な戦いは無理でも、多少の模擬戦……いや、模擬戦の真似事くらいであれば、やるのは問題ない。

 そこで模擬戦の真似事をしているのが、俺と順平な訳だ。

 模擬戦の真似事をするようになった理由が、順平の口から出た、俺が強いのはゲイ・ボルクのおかげという言葉。

 いや、それは決して間違っているとは思えない。

 実際、ゲイ・ボルクは宝具と呼ばれるだけあって非常に強力な槍なのだから。

 そして俺がゲイ・ボルクをメインの武器にしている以上、順平の指摘はある意味で正しいのだ。

 もっとも、それはある意味であって全面的ではない。

 ともあれ、そんな俺達の会話を聞いていた真田が提案したのが、この模擬戦の真似事だった。

 今日は影時間になったらタルタロスに行く予定なんだから、出来れば体力を使わせない方がいいと思うんだが……そう言っても、真田の薦めに順平もやる気になっており……その結果がごらんの有様となっている。

 順平は別に喧嘩慣れをしている訳でもなければ、武道系の部活をやっている訳でもない。

 いたって普通の……それこそ、どこにでもいる高校生の男でしかない。

 ポートアイランド駅の裏側にいるような不良とかなら、多少喧嘩慣れをしていたりもするんだろうが……残念ながら順平は喧嘩をした事も殆どないだろう。

 結果として、こうして思い通りに身体が動かずにいるのだが。

 これで順平が有里のように冷静に己の現状を確認出来るのであれば、また違った展開もあったかもしれない。

 だが、順平は頭に血が上りやすく、猪突猛進になりやすい。

 

「まぁ、こんな感じだな。他にもペルソナは使えないけど魔法とか使えるぞ。見るか?」

「……いや、いい」

 

 少し落ち込んだ様子を見せる順平だが、それを見た真田は俺に向かって小さく頭を下げた。

 あの真田が頭を下げるというのは珍しいが、テンションが高まっていたままの順平をタルタロスに連れて行くというのは、かなり危険だったのは間違いない。

 順平は言わば、自分は選ばれし者であると、そう思っていたのだ。

 いや、それは別に間違っている訳ではない。

 実際影時間に適性のある人物というのはかなり少なく、選ばれし者という表現はそれに合っているのだ。

 だが、選ばれたからといって、イコールその人物がヒーローという訳ではない。

 ……いや、この世界に何らかの原作があるのは間違いないのだが。

 ただ、順平の性格を考えると……恐らく原作ではヒーローではなく、己の我を通そうとして周囲に当たり散らしていたりして、桐条達の足を引っ張っていた可能性が高い……と、そう思うのは俺の気のせいか?

 何だか今日の順平を見ている辺り、それは決して間違いじゃないような気がするんだが。

 

「言っておくが、アルマーは全然本気を出していないぞ」

 

 俺達の様子を見ていた真田が、短くそう呟く。

 いや、実際それは間違っていないんだが、落ち込んでいる順平にそう言うのもどうかと思う。

 

「もう1回……もう1回だ」

「止めておけって。影時間になったらタルタロスに行くんだろ? その前に怪我をしたり、体力を使い果たしたりしたらどうするんだよ」

「ぐっ、そ、それは! ……分かったよ」

 

 まだ完全に納得した様子ではなかったが、それでも順平は俺の言葉に不承不承頷く。

 実際、体力勝負という事であれば特に何か鍛えていた訳でもない順平に勝ち目はない。

 いや、多少鍛えていたところで、俺にどうにか出来る筈もないのは間違いないだろう。

 であれば、ここで無意味に体力の消耗をさせないようにするのが最善の選択肢で間違いない筈だ。

 

「取りあえず今はそのくらいでも、タルタロスの中で実戦を繰り返し続ければそのうち嫌でも腕は上がっていく。ゆかりとかもそうだったしな」

「……そこで私を数に入れるのは、止めて欲しいんだけど」

 

 若干不満そうに言ってくるゆかりだったが、実際にゆかりは戦闘の素人だったにも関わらず、今では俺が知る限り最強のペルソナ使いと言ってもいい。

 弓道部として磨いてきた腕もより一層洗練され、弓道部の中で最強の人物と言ってもいいらしいし。

 その辺りの事情を考えれば、ここでゆかりの名前を上げる事は決して間違ってはいない筈だ。

 勿論、ゆかりは自分がそこまで強くなるのを望んでいる訳ではないというのは、俺にも十分に理解出来るのだが。

 

「さて、順平が終わったのなら、次は俺だな」

 

 そう言いながら、真田が1歩前に出る。

 なるほど、何で真田がここにいるのかは分からなかったが、それが目的だったのか。

 ん? 順平?

 真田は順平と会ったのは昨日だった筈だよな?

 なのに、もう名前で呼んでいるのか。

 まぁ、自分が助けた後輩だと考えれば、そこまでおかしな話ではないのかもしれないが。

 ともあれ、こうして待っていた以上、付き合うのもしょうがないか。

 真田がいたおかげで、順平が妙な風に暴走しなかったという可能性は十分にあるし。

 

「分かった。けど、今日もタルタロスに行くんだろ? なら、あまりここで体力を消耗させたりはするなよ」

「分かってる。行くぞ!」

 

 その言葉と共に、一気にこっちとの距離を縮めてくる真田。

 始め、とか。そういう掛け声もなしで行われたその模擬戦は、当然のように真田の負けで終わった。

 いやまぁ、真田も本気でやるって訳じゃなく、身体を動かしたいという思いの方が強かったらしいし。

 その辺は特におかしくはないと思う。

 そうしてそろそろ夕食の時間になり……俺に取ってはかなり意外な事に、今日の夕食は有里が作ることになった。

 出来た料理も豚肉の生姜焼きと、たっぷりのキャベツの千切り。それとワカメと大根の味噌汁に漬け物というかなり簡単な料理だったが……味の面ではかなり美味かった。

 それを見て、桐条は複雑な表情を……そしてゆかりは、少しだけ悔しそうにしていた。

 桐条の場合は、桐条グループの令嬢ということもあり、料理が出来ない……いや、やらせて貰えなくてもそこまでおかしいとは思えないが、ゆかりの場合はそうではない。

 いや、聞いた話だとゆかりの家も桐条グループに連なる家らしく、相応の金持ちだったらしいが……ともあれ、それでも桐条のようにお嬢様って訳ではなかったのだろう。

 だからこそ、有里に料理の腕で負けたのが悔しかったらしい。

 いや、本当にゆかりに料理が出来るのかどうかは、俺にも分からないけどな。

 ただ、何となくそう思っただけだ。

 ともあれ、そんな複雑な夕食も終わり、やがて影時間が近くなる。

 

「……うん? 出ないな」

 

 そろそろタルタロスに行くという事で、荒垣を呼ぼうと思ったんだが、電話には出ない。

 喧嘩でもしてるのか?

 そんな風に思ってしまうのは、やはり荒垣の外見が関係しているからだろう。

 勿論、実は誰かの世話を焼いていて、携帯に出られないだけという可能性も否定は出来ないが。

 

「ん? どうしたのだ?」

 

 携帯を掛けている俺を見て、桐条が尋ねてくる。

 紅茶を楽しんでいたのだろう。これからタルタロスに行くというのに、緊張している様子は全くない。

 この辺り、何だかんだともう何年も影時間やタルタロスを経験してきたが故の余裕といったところか。

 ……向こうで、まだ影時間にもなっていないのに、ガチガチに身体が固くなっている順平とは、大きな違いだ。

 ちなみに順平の武器は、有里が持っているのよりも一回りくらい大きな長剣だ。

 両手剣という奴だな。

 その重量で、手数では有里の持っている片手剣に負けるが、逆に一撃の重さでは勝る。

 そんな武器だが、順平の性格には合ってるのかもしれないな。

 有里に自分の両手剣を自慢している順平を見ながら、口を開く。

 

「いや、何でもない……って訳じゃないけどな。今日はタルタロスに挑むって荒垣に連絡しようと思ったんだが、電話に出ないんだよ」

「ふむ、なるほど。……荒垣の事だから、誰かの手伝いをしている最中なのではないか?」

「だろうな。俺もそう思うよ」

 

 桐条も俺と同じ考えに至ったらしく、そう言ってきた。

 

「取りあえず、ちょっと荒垣を探してくる。影時間まではまだ時間があるけど、それまでに連絡が取れないと面倒だからな」

 

 もっとも、そう言ったところで……実際には荒垣が戦うといったことはないのだから、戦力的には問題ないとも言える。

 だが、冷静に意見を口に出来る荒垣は、俺達のパーティにとっては結構重要な存在でもある。

 元々荒垣と一緒に行動していた桐条も、それが分かっているからこそ、俺の言葉に素直に頷いたのだろう。

 

「分かった。荒垣がいれば、こちらとしても助かる。ただ……問題は起こしてくれるなよ?」

 

 どこか悪戯っぽい笑みを浮かべつつ告げてくる桐条に、小さく頷きを返してから俺は影のゲートを展開して、そこに沈んでいく。

 

「……え? ちょっ、おい! アクセル?!」

 

 何だか順平の驚愕した声がしてたが、取りあえずそれはスルーしておこう。

 あ、でも順平が影のゲートを見たのは初めてなんだから、そんなにおかしな事ではない、のか?

 まぁ、恐らく誰かが説明してくれるだろうから、その誰かさんに任せておくとしよう。

 ともあれ、そんな訳で俺はポートアイランド駅の近くに姿を現す。

 春ではあっても、既に午後7時すぎだ。

 当然のように空は暗くなっているが、ポートアイランド駅前には街灯やらまだ開いている店やらが幾つもあるので、明かりに困る事はない。

 そうして建物の陰から出てくると、不良が集まっている駅の裏側に向かう。

 途中で何人かの不良が俺に絡もうとしている様子を見せていたが、幸いな事に俺を知っている者はそれなりにいるので、無謀な奴を止めてくれていた。

 そんなやり取りを見ながら……何となく目に付いた不良に近づいていく。

 その不良は以前俺と揉めた事がある不良なのだろう。

 無言で俺が近づいてくるのを見ると、緊張した様子で待ち受けていた。

 自分から俺に絡むような事はしないが、俺が近づいてくるのを見て逃げるのはプライドが許さないといったところか。

 ……意外に立派なところがあるんだな。

 

「荒垣は今日来ているか、知らないか?」

「え? は? 荒垣? ……あ、ああ。ちょっと前に見たけど……」

 

 俺が喧嘩を売ると思っていたのか、予想外の言葉に不良は少し焦った様子でそう答えてくる。

 やはり荒垣はここに来ていたらしい。

 まぁ、ここが荒垣のホームグラウンドだしな。

 

「どこにいるか分かるか?」

「あー……そう言えば眼鏡を掛けた関西弁を喋ってた奴と、向こうの方に向かって歩いて行ったな」

「……関西弁?」

 

 その言葉に、少し疑問を抱く。

 勿論ここに関西弁を喋る奴がいても、おかしくはない。だが……何か微妙に違和感がある。

 まぁ、違和感があったら、直接話して確認してみればいいだけか。

 そう判断し、不良に小さく声を掛けると、そのまま荒垣が関西弁の男と一緒に歩いていったという方に直接行ってみればいいだろう。

 

「助かった。じゃあな」

「え? あ、お、おう」

 

 短く言葉を交わし、不良をその場に残して荒垣が向かった方へと歩き出す。

 歩き出してから数分……建物の陰となり、裏通りからも見えにくい場所に、目的の人物を見つける。

 そして荒垣の近くには、先程の不良が口にしたように眼鏡を掛けた男の姿があった。

 

「ほな、また用事が出来たら呼んでくれや」

「……ああ、分かっている」

 

 どうやら既に用件とやらは終わっていたらしい。

 もう少し早く来ればよかったな。

 そんな風に思いながら、俺は2人の方に近づいてく。

 特に気配を隠したり、足音を消したりといったこともしていなかっただけあり、向こうはすぐにこちらに気が付いた。

 

「誰や」

 

 眼鏡の男が、俺を見て鋭く告げてくる。

 ……へぇ。眼鏡の男は荒事に慣れているような感じだな。

 

「っ!? ま、待て。俺の知り合いだ」

「……そか」

 

 荒垣が俺の姿に気が付き、眼鏡の男の殺気だった雰囲気が静まる。

 

「アルマー、どうしたんだ?」

「どうしたも何も、電話をしても出なかったから、ちょっと様子を見に来ただけだ。……今日は行くぞ」

 

 どこに、と言わなくても、荒垣は俺の言いたい事は分かっている筈だ。

 ……だが、荒垣は俺を見て首を横に振る。

 

「悪いが、今日はちょっと用事があってな。お前にはつきあえねえ」

「用事?」

 

 タルタロスに挑むのは、当然影時間だ。

 であれば、用事とかがあっても、どうしようもないと思うのだが……

 

「あんさんも色々あるようやし、ワイはこのまま行くわ。またな」

「ああ」

 

 眼鏡の男は俺を一瞥すると、そのまま俺とは反対の方向に向かって去っていく。

 なるほど、向こうからも出入り出来るようになってるのか。

 そんな風に思いながら、俺は荒垣に視線を向けるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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