転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1826話

 神社でゆかりや舞子、犬と一緒にピクニックを楽しんだ日から、数日。

 3月もそろそろ下旬に入り、ゆかり達もそろそろ春休みに入るのではないかという頃合い……その日、俺、ゆかり、荒垣の3人は、影時間になる直前、午後11時50分過ぎに1つの建物の近くにあった。

 

「ここがそうなのか?」

「ああ。アキや桐条達が住んでいる学生寮、巌戸台分寮だ」

「……エリートしか住めない寮があるって聞いた事はあったけど、そういう事なのね」

 

 荒垣の説明に、ゆかりがしみじみと呟きながら目の前にある寮を見る。

 そこにあるのは、寮というイメージで思い浮かべる建物ではない。

 例えば、ゆかりが住んでいる女子寮はマンションとかアパートとか、そんな感じの建物だ。

 だが、目の前にある建物は、寮という名前ではあるがどちらかと言えばホテルと表現する方が正しい。

 

「まるで、ホテルだな」

「ああ。それは間違ってねえ。実際、この建物は元ホテルだったらしいしな。そこを桐条グループが買い取って、寮として使っているんだ」

 

 なるほど、と。

 荒垣の言葉には納得せざるを得ないものがある。

 そもそもの話、影時間という存在に対して対抗するという事は、当然今のような時間に外に出る必要がある。

 いや、俺達の場合は影時間になってから俺の影のゲートを使って直接タルタロスに転移しているが、それはあくまでも俺の、影のゲートがあるからにすぎない。

 基本的に影時間は3時間から4時間程。

 そうなれば、出来るだけ影時間が始まる前にはタルタロスの前にいた方がいい。

 ……そもそも、影時間になれば機械を使えないのだ。

 であれば、この寮からタルタロスのある場所……月光館学園まで歩いて移動するのは、相当に距離がある筈だ。

 車とかでもあれば話は別かもしれないが。

 いや、桐条グループは影時間の中でも機械を動かす事が出来るって荒垣が言ってたな。そう考えれば、もしかしてそういうので送り迎えされてるのか?

 それでも結局移動時間は多少なりとも掛かる訳で、日付が変わる前に出掛けても寮の管理人とかに見つかって説教されたりしないようにする為には、やはり影時間に適応している人物……ペルソナ使いだけで固まっていた方がいい。

 そう考えれば、このような寮を別途作るというのはそんなに不自然は話ではない。

 もっとも、それは事情を知っている俺だからこそ言える事なのだが。

 ペルソナとか影時間とかシャドウとか、何それ? といった一般人にとっては、ゆかりが言ったようにエリートだけが住める寮だと認識されてもおかしくはない。

 ただ……荒垣も以前はこの寮に住んでいたらしいが、今は既に出ている。

 そうなると、現在この寮に住んでいるのは桐条美鶴と真田明彦の2人だけ。

 月光館学園でも有名人の男と女が2人だけとなると、色々と勘ぐる奴とかが出てきそうだが。

 ただ、どちらも学校内では一定の影響力を持っているらしいし、そう考えれば迂闊な事も言えないのだろう。

 ともあれ、そんな寮を見ていると、やがて荒垣が口を開く。

 

「よし、じゃあ行くけど構わねえか?」

 

 既に時刻は11時55分を回っている。

 このままうかうかしていれば、影時間になってしまうだろう。

 いやまぁ、俺達が影時間の中でも普通に動けるという事を示すには、別に影時間になってから寮を訪ねても構わないんだけどな。

 ともあれ、荒垣は俺達を率いてそのまま寮の前に行く。

 そしてチャイムを鳴らし、数秒。

 

「誰だ、こんな時間に」

 

 不機嫌そうにしながら扉を開けたのは、真田。

 いや、日付が変わる時間にこうして寮に尋ねてきたのだから、常識外れだと不機嫌になるのは分かる。

 だが、そんな風に不機嫌だった真田は、扉を開けた先にいたのが荒垣だと知ると目を大きく開く。

 

「シンジ!? お前、戻ってきたのか!?」

 

 あー……なるほど。元々荒垣はこの寮に住んでいたのを、何らかの理由で出ていったのだ。

 であれば、こうして荒垣がやって来たのを見て、そう勘違いしてもおかしくはない。

 

「アキ、残念だが違う。ちょっとお前と桐条に会わせたい奴がいてな。それでやって来た」

「……会わせたい奴? その2人か?」

「ああ。……悪いが、中に入ってもいいか? 春が近くても、夜だとそれなりに寒い」

 

 そう告げる荒垣だが、2月の日中にポートアイランド駅の近くにいるのを思えば、そんなに寒さに差はないと思うんだが。

 

「は? いや、けど……分かるだろ? お前、一体何を考えてるんだよ?」

「その辺りの説明は、後でする」

「……ちっ、分かった。けど、事情はきちんと説明して貰うからな」

 

 そう告げ、真田は扉を開けて寮の中に俺達を案内する。

 そうして寮の中に入ると……

 

「なんともはやまぁ」

 

 思わずといった感じで、俺の口からそんな呟きが出る。

 元々、この寮はホテルだったという話は聞いている。

 それを考えれば、入ってすぐの場所にリビングと言ってもいい場所があっても、そんなにおかしくはないのだろう。

 ただ、普通に寮というイメージを持ってる限りでは、とてもではないがこの光景を目にすれば驚くだろう。

 

「明彦、どうした? ……うん? 荒垣と……そっちは、岳羽だったか。もう1人は見たことがない相手だが」

 

 リビングに置かれているソファに座りながら紅茶を飲んでいた女……桐条美鶴が、俺達の方を見て最初は嬉しそうに、そして訝しそうに……最後に不審そうにと表情を変えていく。

 言うまでもなく、荒垣、ゆかり、俺の順番だ。

 いやまぁ、知り合いの荒垣と、月光館学園でも人気のあるゆかりはともかく、俺の場合は桐条にとって全く見知らぬ人物だ。

 一応俺が以前気配遮断を使って月光館学園の中に入った時に、桐条や真田の姿は見ているが、あくまでもそれは俺が向こうから見えない状況であっての事だ。

 

「ああ、こいつ等をお前達に紹介したくてな」

「……紹介? それは一体……とにかく、今は理事長もまだ帰ってきてないし、それからでも……」

 

 そう言った瞬間、世界は変わる。

 日付が変わり、影時間になったのだ。

 1日と1日の隙間にある、そんな時間に。

 そして……俺とゆかりの方を見ている桐条と真田の2人は、驚愕に目を見開いていた。

 当然だろう。向こうにとって、俺達はあくまでも普通の人間という認識なのだ。

 そうである以上、影時間になった瞬間に俺達は棺になっていなければおかしい。

 にも関わらず、影時間になっても俺達はこうして普通に人間のままだ。

 そうなれば、俺達がどんな存在なのかを知るのは、桐条や真田達にとっても難しい話ではない。

 

『なっ!?』

 

 そして当然のように、桐条と真田は俺とゆかりの姿を見て驚愕の声を上げる。

 それでも敵と判断して攻撃体勢を取らなかったのは、俺達2人を連れてきたのが荒垣だった為か。

 

「荒垣……もしかして、この2人は……」

 

 ペルソナ使いなのか。

 そう言おうとした桐条だったが、荒垣は困ったように帽子の上から頭を掻く。

 

「桐条の言いたい事は分かるが、半分だけ正解だ。そっちの岳羽は、ペルソナを出せる。だが、そっちのアルマーは影時間の中でも動けるが、ペルソナは出せない」

「それは、まだペルソナを出せるところまで覚醒していないという事か?」

 

 俺の方を見ながらそう告げる桐条が若干残念そうに見えるのは、桐条の中では戦力=ペルソナ使いという認識があるからだろう。

 それは、決して間違っている訳ではない。

 実際、あくまで俺がイレギュラーなだけであって、実際にはこの影時間の中では桐条の認識で間違いないのだから。

 

「そうかもしれねえが……」

 

 そこで一旦言葉を止めた荒垣は、俺の方に視線を向けてくる。

 それに俺は頷くと、次の瞬間俺は空間倉庫からゲイ・ボルクを取り出す。

 

「うおっ!」

「なっ!?」

「……やっぱりそうなるよな」

 

 俺が何もない場所からいきなりゲイ・ボルクを取り出したのを見て、桐条と真田の2人は驚愕の声を発し、それを見ていた荒垣はどこか呆れたようにそう言い、ゆかりはそんな荒垣の様子を見て頷いていた。

 

「俺は基本的にペルソナを使わないで、生身で戦っている。主な武器はこの槍と、魔法だ。ただし、この場合の魔法というのはペルソナやシャドウが使う魔法ではなく、全く別系統の魔法だけどな」

「……別系統の魔法?」

 

 おお、真っ先に我に返った辺り、桐条は切り替えが早いらしい。

 そんな桐条の様子を見て、真田も同じように我に返る。

 ただし、桐条とは違ってどこか興味深い視線を俺に向けていた。

 いや、桐条の視線にも好奇心はあるんだが、この場合は真田とは違う意味での好奇心だ。多少警戒が混ざっているが、この辺りは純粋に個人としてシャドウと戦っている真田と、桐条グループの一員として戦っている桐条とのスタンスの違いか。

 

「ああ。例えばこんなのだ」

 

 小さく指を鳴らし、いつもの子猫の炎獣を作り出す。

 

『なっ!?』

 

 うん、やっぱり炎獣ってのは影の槍と同様に思い切り分かりやすい魔法だよな。

 特にこの世界の魔法には、炎獣のように使い魔を作る魔法とか存在しないし。

 いや、実際にはあっても、まだペルソナが習得しておらず、シャドウが使ってこないだけというのもあるか。

 それに、使い魔というならペルソナとかが炎獣と似ていなくもない気がするし。

 ともあれ、桐条と真田は炎獣の姿を見て驚いているが、いつも炎獣に護衛されているゆかりや、それを見ている荒垣は特に驚いている様子はない。

 いや、当然か。

 

「ま、こんな訳で、俺は生身で戦っている」

 

 再び指を鳴らし、炎獣を消す。

 白炎となり、周囲に霧散していく様子に、桐条と真田は再び驚きの表情を浮かべていた。

 

「生身で?」

 

 そんな中で沈黙を破ったのは、意外な事に真田だった。

 

「ああ、生身で。けど、別にそこまで驚く事はないだろ? お前達……の戦闘はどうか分からないが、ゆかりはシャドウと戦う時、ペルソナも使ってるけど生身でも戦ってるぞ?」

「それは……」

 

 真田の視線がゆかりに向けられる。

 そのゆかりは、色々と思うところのある桐条と会っている為だろう。まだ微妙に緊張している様子を見せていた。

 実際、ゆかりはシャドウに対してペルソナ以外にも弓を使って攻撃している。

 その威力は、一撃必殺とはいかないものの、それでも数本の矢が刺されば弱いシャドウであれば倒すのは難しくはない。

 そう考えれば、生身でシャドウと戦うのはおかしくない筈だ。

 真田がボクシング部である事を考えれば、恐らくシャドウとの戦いでは殴ったりといった真似をしていてもおかしくはない。

 まぁ、シャドウは触れる肉体があるから、殴っても効果はあるんだろうが。

 

「素晴らしい槍だ……まるで、見る者の目を奪うかのような赤……いや、深紅の槍」

 

 真田の方は俺が生身で戦うという事に驚いていたようだったが、桐条の方は俺が持つゲイ・ボルクに完全に視線を奪われていた。

 いやまぁ、それも無理はない。

 そもそもの話、桐条……桐条美鶴は桐条グループの1人娘だ。

 そうなれば当然芸術品とかを見る目も子供の頃から養われていてもおかしくはない。

 そんな桐条にとって、ゲイ・ボルクという本物の宝具は、この世界では見た事がないだろう極上の芸術品のように見えてもおかしくはない。

 

「俺の槍を見て喜んで貰えたようで何よりだ。ただ、槍に見惚れるのはいいが、話を戻してもいいか?」

「……っ!? す、すまない。少しその槍に見惚れていたようだ」

 

 照れで薄らと頬を赤くしながら、桐条がそう言ってくる。

 

「珍しいな、美鶴がそんなに我を忘れるなんて」

「う、うるさいな。明彦にはこの槍の素晴らしさが分からないのか?」

 

 小声でそんなやり取りをしているのが聞こえてくる。

 うん。まぁ、この展開を考えれば不思議な話じゃないけどな。

 ただ、桐条財閥に対して思うところのあるゆかりの前でそんな行動を取ると……と、ゆかりの方に視線を向けると、何故かそこには同情した視線を桐条に向けるゆかりの姿があった。うん、その気持ちは分かる……的な意味で。

 お前、桐条に対して思うところがあったんじゃねーの?

 そんな風に思った俺は、決して悪くはないだろう。

 荒垣は……と視線を向けると、そこでは表情を特に変えた様子はないが、それでも桐条の様子に同意するように頷いている。

 ゲイ・ボルクと空間倉庫、炎獣を見せた程度でこれだとなると、俺の正体とかを知ったら、一体どうなる事やら。

 それ以外にも、混沌精霊としての俺の姿を見たりしたら……うん、その辺りはあまり考えない方がいいだろう。

 下手をすれば、俺がシャドウのような化け物として攻撃されかねないし。

 そう考え、取りあえず桐条が落ち着くのを待つ。

 幸い……と言うべきか、今は影時間。

 まだ3時間から4時間程度の猶予はあるのだから。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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