転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1793話

 危険、危険、危険。

 タルタロスの階段を上がった次の瞬間、念動力がその危険を俺に伝えてくる。

 基本的に念動力は、俺の身に危険が及びそうになった時、初めてその危険を伝える。

 逆に言えば、俺の身にとって危険でなければ念動力が危険を教える事はない。

 例えば、今まで戦ってきたシャドウ。

 ゆかりにとってはそれなりに強敵だったが、俺にとっては雑魚でしかない。

 そのようなシャドウを相手にしている時、何らかの理由で攻撃を食らいそうになっても、念動力が危険を教える事はないのだ。

 

「ゆかりっ!」

「え? ちょっ、何!?」

 

 階段を上がったと思った瞬間、いきなり俺の口から出た鋭い声に、ゆかりは混乱したように問い返す。

 もしこれがレモン達であれば……いや、シャドウミラーのメンバーであれば、俺の持つ念動力がどのような効果を持つのかというの分かっている以上、即座に周囲を警戒するだろう。

 だが、ゆかりと俺はまだ知り合ってからそれ程時間が経っておらず、またゆかりも俺の念動力が具体的にどのような効果を持っているのかというのは分かっていない。

 だからこそ、戸惑ってしまったのだろうが……今は、その戸惑いが大きな隙となってしまう。

 

「ちぃっ!」

 

 咄嗟に腕を大きく振るい、白炎による壁を作る。

 瞬間、飛んできた何かが、白炎によって消滅……いや、燃滅させられたのを理解する。

 

「きゃあっ!」

 

 白炎の壁にか、それとも突然の攻撃にか、ゆかりが悲鳴を上げる声が聞こえてくるが……今はそれに構っていられるような状況ではない。

 そもそも、念動力が危険を知らせてくるという事は、その危険は明確に俺を傷つける事が出来る相手なのだから。

 俺がゆかりの前に出るのと、白炎の壁が消えるのは同時だった。

 いや、正確には俺がゆかりの前に出てきたから白炎の壁を消したと表現するのが正しい。

 そして、白炎の壁が消えた後……そこに姿を現したのは、1匹のシャドウ。……いや、シャドウなのか?

 このタルタロスで出てきた以上、シャドウなのは間違いないと思うが……どちらかと言えば、シャドウというよりは亡霊とか死神と呼ぶのが相応しいような存在だった。

 左右両方の手に持っているのは、いわゆるリボルバーと呼ばれる種類の拳銃。

 ……ただし、銃身が冗談のように長く、大袈裟でも何でもなく1m以上あるのではないだろうか。

 また、身体には鎖が巻かれており、身体を揺らす度にその鎖が音を立てている。

 その鎖の下にはコートのような物を身につけているが、そこから足は伸びていない。

 顔は白い仮面を被っているが、その白い仮面も頭部の辺りが幾らが壊れ、眼球がむき出しになって、シャドウの不気味さをより一掃際立たせている。

 敵……そう、敵だ。

 それも今まで戦ってきたのとは違う、圧倒的な強さを持つシャドウ。

 まだ直接戦った訳ではないから、はっきりとは分からないが……ネギま世界のフェイトと同程度の強さは持っているような気がする。

 あくまでも最低限であっても、だ。

 実際にはそれ以上の力を持っている可能性は十分にあった。

 まさに死神そのものと呼べるシャドウは、俺の方にその仮面を向ける。

 どうやら、ゆかりよりも俺の方が獲物としては相応しいと、そう判断したらしい。

 

「ア、アクセル……」

 

 ゆかりも、この死神が今まで戦ってきた相手とは大きく違う……比べるのも馬鹿らしくなる相手だというのは、理解したらしい。

 掠れた声でそう言ってくるのを聞く。

 

「……逃げろ。階段を降りろ」

 

 短く、それだけを告げる。

 この死神を前にして、とてもではないが影のゲートを展開しているような余裕はない。影のゲートは、影がある場所ならどこにでも転移が可能という素晴らしい性能を持った転移魔法だが、身体が影に沈むという行動をする必要がある。

 普通であれば、その程度は何でもないのだろう。

 だが……最低でもフェイト級の強さを持つこの死神を相手に、そんな悠長な真似をしている余裕はない。

 まだ、ここが階段を上がってすぐの場所だったことを幸運と思うべきだろう。

 少なくても、ゆかりを俺と死神の戦闘に巻き込むような事にはならないで済むのだから。

 ……もっとも、今の状況でゆかりが大人しく階段まで下がれるか……という点があるが。

 幾多もの戦いを経験してきた俺であっても、緊張するだけの強さを持つ敵だ。

 普通の……それこそ少し前までは普通の女子高生で、戦いの経験も弱い雑魚シャドウとのものしかないとなれば、この死神のような圧倒的な存在を前にして怖じ気づくなという方が無理だった。

 だが……それでも、このまま俺たちの戦いに巻き込むというのは、致命的だ。

 幸い、今は死神も俺の様子を窺うかのように、じっとこちらを見ている。

 もし何か行動に出た場合、恐らく……いや、間違いなくゆかりも巻き込まれる事になるだろう。

 そうなれば、炎獣がいる今のゆかりであっても、生き延びるのは難しい。

 

「行け! ここは俺が食い止める!」

 

 そう叫んだ瞬間、俺は一気に前に出る。

 とにかく、この死神の注意をゆかりに向ける訳にはいかないからだ。

 この死神の注意がゆかりに向けば、ゆかりはまず生き延びる事は不可能だろう。

 そうならない為には、俺が死神を引きつけるしかない。

 死神もその辺りの事情全てを察している訳ではないのだろうが、急速に近づく俺の姿に反応を示す。

 圧倒的な銃身の長さを持つ拳銃の銃口を、あっさりと俺の方に向けてきたのだ。

 その素早さは、明らかに取り扱いがしにくい拳銃を持っているとは思えない程。

 斜め方向に向かっていた為、俺の背後にゆかりの姿はない。

 だが、いきなり出てきたボス級……それも、5階で戦った鳥のような小ボスとは違う、ラスボス、もしくは隠しボスとでも呼ぶべき死神を前にしたせいか、動くことが出来ていない。

 これは、こっちが動いて死神を誘導した方が早そうだな。

 そう判断しつつ、死神との間合いを詰めながら空間倉庫からゲイ・ボルクを取り出す。

 死神がこちらに向かって拳銃のトリガーを引こうとした瞬間、念動力を使って強引に拳銃の銃口を逸らす。

 幸い……という言い方はどうかと思うが、銃身が長い為に念動力を使った妨害行為は上手くいく。

 だが、それはあくまでも最初だけだ。

 死神は、すぐに自分の拳銃が強引に逸らされたというのを理解したのだろう。

 再度俺に銃口を向けた時には、念動力を使っても殆ど銃口を動かす事は出来なかった。

 俺の念動力は高レベルで、それこそ普通であればこんな真似はとてもではないが出来ない。

 逆に、こんな事が出来るという時点で死神がただものではないという事の証でもある。

 向こうの攻撃を逸らす事が出来ないのであれば、こちらが動くしかない。

 瞬動を使い、一気に死神との間合いを詰める。

 普通であれば、俺に物理攻撃は効かない。

 だが……果たして、死神の持っている拳銃の銃弾は物理攻撃なのか?

 シャドウ……それも本来ならこの階層に姿を現さないような強さを持つ存在だ。

 それだけに、銃弾は銃弾でも、何らかの魔法的な効果があると言われても、驚きはしない。

 いや、寧ろその類の効果がなく、本当に単純な物理攻撃であれば、それこそ意外だろう。

 そして死神との間合いを詰め、一気にゲイ・ボルクを放とうとした瞬間……不意に身体の中から何かが……いや、魔力が抜けていく感覚があった。

 見れば、俺の身体から赤い何かが強制的に取り出され、それが死神の身体に吸収されていく。

 敵対する相手の魔力を吸収するのか!?

 

 一連の動きからそう判断し、非序に厄介な存在だという事を理解しながら……それでも、俺の突き出すゲイ・ボルクの動きは止まらない。

 そんな動きに対する死神の動きは、口を開くというものだった。

 いや、本当に口があるのかどうかは分からないが。

 

「マハガルダイン」

 

 その呟きを聞いた瞬間、俺はゲイ・ボルクを突き出すのではなく、投擲する方向に切り替える。

 

「ゲイ・ボルク!」

 

 このゲイ・ボルクは、普通に槍として使っても非常に強力だが、同時に投擲用の槍として使ってもかなり強力な効果を持つ。

 後ろに跳躍し、死神から距離を取りながら放たれたゲイ・ボルクは、死神の放った魔法……マハガルダインが発動する直前に、その魔法を破壊する事に成功した。

 だが……それでも、タルタロスの中には強力な風が吹き荒れる。

 それこそ、まさに間近でトルネードに触れてしまったかのような……そんな風の乱舞。

 

「ちぃっ!」

 

 この死神、一体どんな魔法を使うつもりだったんだ?

 ガルというのは風の魔法。そして今までタルタロスでシャドウと戦ってきた経験から考えると、マハとつくのは広範囲魔法だ。

 そうなると、恐らくダインというのが魔法の威力とか規模といったものを表しているのだろう。

 今の様子を見ると、ダインというのはかなり強力な規模だと見て間違いない筈だ。

 

「きゃあっ!」

 

 その風の乱舞に、ゆかりは立っていられなかったのだろう。悲鳴を上げながら床に倒れ込んでしまう。

 そして……最悪な事に、死神はその声を聞き漏らすような事はしなかった。

 俺の方に向けて左手に持つ拳銃の銃口を向けながら、右手に持つ拳銃の銃口はゆかりの方に向けられる。

 

「ゆかり、逃げろ!」

 

 そう叫びながら、俺は死神が持つ拳銃の銃口を向けられるままにゆかりとの距離を縮める。

 混沌精霊としての能力に、瞬動、更に……

 

「加速」

 

 精神コマンドの加速を使い、それでもまた足りないと判断すると精神コマンドを重ねる。

 

「覚醒、加速」

 

 覚醒を使い、更に加速。

 そうして距離を詰め……

 

「イ……オ……」

 

 俺が間に合うか間に合わないか、そんな極限状態の中で、ゆかりが小さく呟く声が聞こえてくる。

 同時に、何かが砕けたような……そんな音が、耳ではなく脳裏で聞こえたような気がした。

 そしてゆかりが呟き終わった瞬間、その前に何かが姿を現す。

 それは、牛の頭蓋骨に鎖で縛られた女がいるような、そんな不思議な何か。

 だが、その何かがゆかりの能力だというのは、現れた存在が死神と向かい合うように対峙しているのを見れば明らかだった。

 いや、それは死神と対峙しているというより、正確にはゆかりを守っていると表現した方がいい。

 その何かに向け、死神は銃弾を撃つ。

 何らかの行動をするでもなく、その何かは銃弾を受け……そのまま霧散していく。

 

「きゃあっ!」

 

 そしてゆかりの口から出る悲鳴。

 ちっ、ゆかりの能力……恐らくあれが荒垣の言っていたペルソナなのだろうが、そのペルソナに覚醒したのはいいものの、覚醒したばかりでは当然のようにペルソナを使いこなす事は出来ない。

 結果として、何も出来ずにペルソナは死んだのだろう。

 あの死んだ……いや、消滅したペルソナは、もう生き返る事が出来ないのか、それとも出てきたのを破壊されただけで、またすぐに姿を現せるのか……その辺りは分からないが、そんな中でも分かっている事が1つだけある。

 それは……ペルソナと思しき存在を見て、死神も一瞬ではあっても動きを止めた事だ。

 

「うおおおおおおおおおおっ!」

 

 白炎を発生させ、次々に死神に向かって放つ。

 そんな行動は死神にとっても予想外だったのか、次々に死神の身体が白炎に焼かれているように見えた。

 だが……白炎を放ちながら、実際に死神には殆どダメージがない事は、その姿を見れば分かる。

 ちっ、どうやら炎に対して強い耐性を持っているらしい。

 取りあえずこのままここで戦った場合、間違いなく意識を失ってるゆかりは死んでしまう。

 それを許容する訳にはいかない以上、俺に出来るのはゆかりを連れてこの場から離れるだけだった。

 幸い……という言い方は若干どうかと思うが、それでも死神は白炎によって視界が塞がれている。

 逃げ出すだけであれば、特に問題はないだろう。

 ついでとばかりに、二十匹近い狼、虎、獅子といった炎獣を生み出し、そのまま死神に向かって攻撃するように命じる。

 炎に強い耐性を持っていようと、それでも俺の白炎から生み出された炎獣だ。

 時間稼ぎくらいは容易に出来るだろう。

 炎獣達が一斉に死神に襲いかかるのを横目に、その内の1匹が持ってきたゲイ・ボルクを空間倉庫に収納し、俺は床に倒れているゆかりをそのまま強引に抱き上げる。

 その際に色々と触れてはいけないだろう微妙な場所に触れもしたが、この緊急事態だからゆかりには泣き寝入りして貰うとしよう。

 ともあれ、俺はそのままゆかりを抱き上げると、近くにある階段に向かって突っ込んでいく。

 

「メギドラオン」

 

 背後から聞こえてきたその言葉と共に、周囲に巨大な爆発のようなものが起きているのを感じながらも、俺は何とかゆかりと共に階段を降りる事に成功するのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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