転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1791話

 影時間が始まる、少し前……PM11時くらいに、ゆかりの部屋まで影のゲートで移動すると、準備万端といった様子のゆかりを連れて、俺の部屋に戻ってくる。

 いつもより早い時間に合流するという事に不思議そうな様子のゆかりだったが、今回は色々と話しておくべき事があった。

 

「で? 話って何よ?」

 

 俺が空間倉庫から取り出した暖かいミルクティーを飲みながらそう告げてくるゆかりに、俺も同じミルクティーを飲みながら口を開く。

 

「まず、俺達が毎日のように取り込まれている、あの現象。あれは正確には影時間と言うらしい」

「え?」

「それで、俺達が塔と呼んでいる場所。あそこは正確にはタルタロスと言うらしい」

「ちょっ、ちょっと……」

「で、最後に俺達が影と呼んでいる存在。それはシャドウというのが正式名称らしいな」

「ちょっと待ってってば!」

 

 我慢出来なくなったとでも言いたげに、ゆかりが叫ぶ。

 まぁ、その気持ちは分からないでもないが。

 

「何で? 何で急にそんなに正式名称とかが出てくるのよ? ……もしかして、影のゲートで変な場所に侵入したりしてないでしょうね?」

「本当はそれも考えたんだけどな。……けど、そもそもの話、どこに行けば影時間について研究しているのかってのが分からなかったし」

「……ちょっと、犯罪とかはごめんよ?」

「普通にタルタロスに挑む時に銃刀法違反はしてるんだけどな。ああ、でも弓だと別に問題はないのか? 俺のゲイ・ボルクも普段は空間倉庫の中に入ってたし」

 

 そう言った時、ゆかりが何かを思い出したように俺の方に視線を向けてくる。

 

「そう言えば、アクセルの持っている槍って、ゲイ・ボルクって言うのよね。ちょっと図書館で調べてみたけど、それってアイルランドの英雄、クー・フーリンが使ってた槍の名前よね? レプリカか何か?」

「いや、本物だ。クー・フーリン本人から貰った」

「……え?」

 

 俺の口から出た言葉が理解出来ないといった様子で、口を大きく開けるゆかり。

 顔立ちが整っているゆかりだが、口を大きく開けている状況を見れば若干間の抜けた顔に見えるな。

 そんな事を考えていると、やがてゆかりは再起動する。

 

「ちょっ、どういう事よそれ! 伝承とかに出てくる英雄よ!?」

「俺が他の世界に行ってるって話を忘れたのか? まぁ、聖杯戦争の時は半ば強引に引っ張られた形だったが。……とにかく、過去の英霊……簡単に言えば英雄の幽霊を使役して戦う魔術儀式に参加したんだよ。その時、クー・フーリン、佐々木小次郎、ヘラクレスとかと戦ってな。後、金ぴか。それで、クー・フーリンに勝ったら、ゲイ・ボルクを貰ったんだよ」

「ゆっ! ……金ぴか?」

 

 何故かクー・フーリンやゲイ・ボルクという単語ではなく、金ぴかという単語に反応するゆかり。

 いや、その前に幽霊という単語に嫌そうな顔していたような気もするが。

 まぁ、有名どころの名前の中に金ぴかなんて妙な名前が混ざっていれば、それは気になっても仕方がないが。

 

「金ぴかは気にするな。英霊と呼ぶにはちょっと微妙な奴だよ」

 

 勿論英霊の格としては、金ぴかは申し分ないのだろう。

 だが、本来なら絶大な威力を持つ様々な宝具を飛ばすという点で、宝具を使いこなす英霊に劣る。

 最古の王とか言われてるが、実際には都市国家の長……市長と似たようなもんだったしな。

 俺的にはサーヴァントの肉体や様々な宝具を提供してくれたりと、いいカモ以外の何者でもなかったが。

 

「ともあれ、俺は聖杯戦争でそういう英霊と実際に戦って、クー・フーリンからゲイ・ボルクを貰った訳だ」

「……何だか、アクセルが今まで経験してきた事とか、詳しく聞いてみたい気もするわね」

「その話はまた後でな。……話を戻すぞ。影時間についてとかだ」

 

 そう告げると、ゆかりはまだ若干不満そうではあったが、とにかく話を戻すことには賛成した。

 英霊云々という事には幾らか興味があっても、それよりもこれから挑む影時間についての話題の方を重視するのは当然だろう。

 

「それで、その……影時間とかシャドウ、タルタロスについては分かったけど、結局それは誰から聞いたの?」

「ゆかりと別れて行動している時に知り合いになった、荒垣って奴だ。そいつを始めとして、何人か妙な違和感がある奴がいてな。その中で知り合いだったのが荒垣だけだったから、話を聞いてみたんだよ」

「……違和感?」

「ああ。話を聞いてみたところ、ペルソナ使い。そう呼ばれている能力者の事らしい。何でも影時間の中で動ける奴には適性があるとか何とか。……俺にもそのペルソナ使いとしての適性があるかどうかは分からないけどな」

 

 俺がこの世界の人間だったら、もしかしたらペルソナ使いの適性もあったかもしれない。

 だが……残念ながら、俺はこの世界の人間ではない。

 恐らくだが、この世界特有のペルソナという能力に、俺が覚醒する事はないだろう。

 ともあれ、そんな俺とは違って、この世界の人間で影時間に適性のあるゆかりは、恐らくペルソナ使いとして覚醒すると思う。

 

「本当!? ……って、そのペルソナってのがどんな能力なのかは分からないんだけど」

「あー……俺もそのペルソナって能力をきちんと見た訳じゃないから、何とも言えないんだが」

 

 荒垣がペルソナ使いであるのなら、それこそ一度見せて貰えば良かったのかもしれないが……ペルソナという単語を口にする荒垣の表情を見る限り、とてもではないが言える事ではなかった。

 

「ちょっと、それだとどうしようもないじゃない」

「大体のところは聞いてるんだけどな。何でも、その人物の本質に近いような外見の存在……それも普通の人には見えないような存在が、少しの間だけ姿を現して戦ってくれるらしい」

「……少しの間、ね。それで、どうすればそのペルソナってのが覚醒するの?」

「恐らく死ぬような目に遭うのが一番早いって話だ」

 

 そう告げた瞬間、ゆかりの表情が心底嫌そうなものになる。

 まぁ、その気持ちは分からないでもない。

 普通なら、死ぬとか言われて納得出来る訳がないのだから。

 

「一応他にペルソナ使いが誰なのかというのは聞いてるし、もし何ならそっちの方に話を聞きに行ってみるか? 影時間についても、俺達が関わるよりずっと前から関わっていたって話だし、俺達が持ってないような情報を持っている可能性は高いぞ」

 

 もっとも戦力不足という事で、タルタロスには殆ど手を出していなかったらしいから、そういう点で考えれば、俺達の方が重要な情報を持っている可能性は高いんだが。

 特に小ボスとか、ターミナルとか、その辺の情報は多分向こうも知らないだろう。

 

「……私とアクセルが巻き込まれた、あの日が影時間の最初の日って訳じゃなかったのね」

「らしいな。で、どうする? 正直なところ、俺はペルソナって能力に結構興味あるんだが……」

 

 そう言いつつ、以前ゆかりが桐条グループの名前を聞いた時に見せた反応を考えると、ちょっと難しいだろうな、という予想は出来ていた。

 なので、まずは桐条グループとは関係ない方の名前を出す。

 

「片方は、ボクシング部に所属している、真田明彦」

 

 その名前を告げた瞬間、ゆかりの表情が驚愕に変わる。

 

「どうやら知ってるらしいな。まぁ、あんなにファンが多いんだから、そうであっても不思議じゃないけど」

「……ええ、知ってるわ。真田先輩は学校でも有名人だもの。けど、あの真田先輩が? もしかして、そのペルソナ使いっていうのになったから強いのかしら?」

「違うと思うぞ」

 

 ゆかりの疑問に、俺はそう言葉を発する。

 以前月光館学園に気配遮断を使って忍び込んだ時に見た感じだと、特にペルソナで身体能力が上がっているといった様子はなかった。

 勿論、影時間でシャドウと戦ったりした経験があり、その実戦経験から他の者達と比べて高い身体能力を持っているという可能性は十分にあったが。

 部活中の練習に対する熱中具合を見る限り、かなりストイックに身体を鍛えているように見えた。

 ……さすがに、ムラタ程ではないが。

 だが、真田を見て恐らくホワイトスターで現在も訓練をしているだろうムラタを思い浮かべても、決しておかしくはないだろう。

 

「どちらかと言えば、あの真田って男は自分を鍛えるのを楽しんでいる……そんな感じだな」

「ふーん……うん? ちょっと、アクセル。あんた何で真田先輩を知ってるの?」

「以前ちょっと月光館学園に行った時にな」

「……妙な真似をしてないでしょうね?」

 

 何故かジト目でこちらを見てくるゆかり。

 信用ないな。

 

「別に何も妙な事はしてないから、気にするな。ただ、ちょっとボクシング部の練習場の近くに行ったら、2月なのに建物の外に何人も人がいてな。それでちょっと興味深いと思っただけだ」

「なら、いいけど。……けど、真田先輩か。色々と難しいわね」

「難しい?」

「ええ。アクセルも見たでしょうけど、真田先輩にはファンが多いのよ。そんな中で、影時間一緒に行動するという関係から、私と真田先輩が話しているのを他の人が見れば、どうなると思う?」

「あー……なるほど」

 

 ボクシング部の練習を見ていた者達の中には、女も多かった。

 つまり、真田という人物は一種のアイドル……という言い方はちょっと違っているかもしれないが、憧れの存在なのだろう。

 そんな人物と特定の女が仲良く話しているのを見れば、そのファンにゆかりは陰険な攻撃をされる可能性すらある。

 

「ただでさえ、今の私は誰かさんのせいでいらない注目を浴びてるのよ? そこに真田先輩が加わったら、手が付けられなくなるわ」

「……そんなものか?」

「はぁ。そんなものなのよ、誰かさん。それに……」

「それに?」

「いえ、何でもないわ。それで、もう1人は誰なの? そっちが有名な人でなければ、仲間に引き込んでもいいと思うけど」

 

 一縷の望みといった様子で告げてくるゆかりだったが、俺がゆかりに返したのは首を横に振るという行為だ。

 

「残念ながら、そっちも有名人だな。いや、寧ろ真田とかいう男より、そっちの方がよっぽど有名人だと言ってもいい」

「……誰?」

 

 一瞬の沈黙の後、ゆかりが言葉を続ける。

 あー……これは……

 そう思わないでもなかったが、ここまで口にしてしまった以上、ここで話を誤魔化すような真似が出来る筈もないか。

 

「桐条美鶴」

 

 ヒクリ、と。

 ゆかり本人はその名前を聞いても表情を変えないように頑張っているのだと分かったが、それでも今の様子を見る限り、完全に成功しているとは言えない。

 

「で、そっちも当然駄目なのか?」

「そうね。桐条先輩は色々と有名人だもの。それこそ、ファンの数では真田先輩よりも上なんじゃないかしら。そんな人と一緒にいるところを見られるのは、絶対に避けたいわね」

「お前本人も、桐条美鶴という女に対して何か思うところがあるんじゃないのか?」

「……」

 

 俺のその疑問に、ゆかりは返事をしない。

 ただ、無言を返してくるだけだ。

 ゆかりの性格を考えれば、それこそこれ以上何を聞いても意味がないだろうというのは、容易に想像出来る。

 小さく溜息を吐く。

 

「ゆかりの事は荒垣に教えてないが、俺の事は当然知っている。で、その荒垣は真田、桐条の2人ともそれなりに関係が深いらしい。更に言えば、俺がタルタロスを攻略しているというのを荒垣も知ってる。そうなると……間違いなくそう遠くない内に、こっちに接触してくるぞ」

 

 その接触の方法が、タルタロスで俺達を待ち受けるのか、それともこの部屋の位置を荒垣が知っている以上、直接ここを尋ねてくるのか、その辺りがどうなるのかは分からないが、向こうから接触してくるのはもはや避けられないだろう。

 何しろ、現状でペルソナ使いは3人……しかもそのうちの1人は、他の2人と距離をとって何故か不良の溜まり場で活動しているという有様だ。

 俺とゆかりであっても、タルタロスを攻略するのがそう簡単にいっていない以上、向こうが戦力を欲するのは当然だった。

 

「……そう、かもしれないわね」

「で、ゆかりが俺と行動してるってのは……まぁ、調べればすぐに分かるだろうな」

 

 桐条グループはここでかなりの力をもっているらしい。

 そうであれば、当然のように俺とゆかりが噂されている事についても、調べがつくだろう。

 そうなると、嫌でも桐条はゆかりの前に姿を現す筈だ。

 

「……」

 

 心の底から嫌そうな表情を浮かべているゆかり。

 何があったのかを聞きたいとは思うが、それを聞いても答えないだろうというのも理解出来……結局のところ、それ以上は話をせず、そのままやがて影時間に突入してタルタロスに向かう事になるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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