転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1789話

 照り焼きダブルチーズバーガーを半分程食べ終わった俺は、改めて荒垣に視線を向ける。

 すると、何故かそこには呆れの視線を俺に向けている荒垣の姿があった。

 

「どうした?」

「……いや、どうしたって、本気で言ってるのか? 何か大事な話があるって言うから来てみれば、アルマーはいきなり食う事に集中するしよ。……はぁ、いや。もういい。アルマーに常識を期待した俺が悪かった」

「おい、失礼な奴だな。常日頃から皆に常識的な人間と言えば俺の事だと、そう言われてるのに」

 

 ふと、どこか他の場所……他の世界にいる連中から総突っ込みが入ったような感覚があったが、恐らく気のせいだろう。

 

「お前が常識的、ね。……一体どんな常識なんだろうな」

 

 少なからず俺の異常なところを見ている為か、荒垣は飲み物……コーラを飲みながら、再度呆れの視線を向けてくる。

 まぁ、身分証がなかったり、かなりの大きさの宝石を簡単に渡したりと、色々とやらかしてるからな。

 荒垣のそんな態度を取るのが分からないでもない。

 

「ま、ともあれだ。荒垣を呼んだ理由なんだが……」

 

 ようやく本題に入ると思ったのか、荒垣の視線が呆れの混ざったものから真剣な物に変わる。

 ……普通の状態で強面な荒垣だけに、こうして真剣な様子になると余計に威圧感があるな。

 ともあれ……さて、こうして呼んでおいて何だが、どうやって話を聞くべきか。

 まず大前提として、あの現象についてとか、俺の能力についてとか、異世界から来たとか、その辺りは教えない方がいいだろう。

 けど、そうなると何をどう聞けばいいのか……いや、ここは能力があるとかそういう風に言わなくても……

 

「俺が最初に荒垣に会った時、妙な違和感があった」

「ああ? 違和感だぁ?」

「ああ。俺は人より感覚が鋭いみたいでな。いわゆる第六感とか、その手の感覚が発達している」

 

 これは、決して嘘という訳ではない。

 実際、俺には念動力という能力があり、その念動力は俺に危険が及ぶ時とかに教えてくれるのだから。

 

「はぁ? 第六感だぁ? ったく、こうしてわざわざ呼び出すから、何かと思えば……アルマー、お前はそんな話を聞かせる為にわざわざ俺を呼び出したのか?」

「そうだな、荒垣にだけそんな違和感があれば、もしかしたら俺の気のせいだという事で終わったかもしれない。だが……お前と同じ……いや、似ているようで微妙に違う違和感を持つ相手を他に何人か見つけたとなれば、話は別だ」

「……あ?」

 

 俺の言ってる事が理解出来ないといった様子でそう告げてくる荒垣。

 チキンナゲットに伸ばしかけていた手を止め、改めてこっちに視線を向けてくる。

 

「違和感?」

「ああ。お前が馬鹿にしている第六感でな」

「……はぁ、それで、どんな奴にその違和感があったんだ?」

 

 荒垣が俺に向けてくる視線は、取りあえず話を終わらせようと……そうしているような感じだった。

 話に付き合うのが面倒だと、そう思っているのだろう。

 無理もないか。普通ならその手の話を聞いても面倒だと思うのが当然だろうし。

 

「2人だ。2人とも月光館学園の生徒だった」

「……何?」

 

 ピクリ、と。

 始めて荒垣の表情が真剣なものに変わる。

 ……何か心当たりでもあるのか?

 ともあれ、こうして真面目に聞くつもりになったというのは、こっちとしてもありがたい。

 

「続けろ」

 

 そして真面目な表情で話の先を促す荒垣に、俺はアイスウーロン茶を一口飲んでから、口を開く。

 

「1人は、ボクシング部の……名字しか知らないが、真田って男。もう1人は女で、赤い髪と……そうだな、ゴージャスな美人って感じか」

「っ!?」

 

 2人の特徴を口にした瞬間、荒垣の顔が明らかに何かの衝撃を受けたような感じになり、動きも止まった。

 それを見れば、俺にもその2人と荒垣が何らかの関係を持っているのだというのは理解出来る。

 

「どうやら、その2人……知ってるみたいだな」

「……」

 

 そう告げる俺の言葉に、荒垣は何も言わず無言でじっと俺の顔を見てくる。

 男にじっと見つめられてても、嬉しくも何ともないんだけどな。

 そんな風に誤魔化す事は出来ないような、そんな視線。

 それこそ、真剣という言葉がこれ以上ないくらい似合うような……もし視線に物理的な圧力があれば、俺の顔に穴が空くのではないかと、そんな風にすら思ってしまう。

 荒垣が沈黙してから、数分。

 やがて、いつまでもこうして沈黙のままでは話が進まないと、俺は口を開く。

 

「で? 黙ったままだと、話が進まないんだけどな。その2人、心当たりがあるのか?」

「……ある」

 

 やがて沈黙を破るように、荒垣はそう言葉を発した。

 俺を見る視線の圧力が、かなり強い。

 その2人は、荒垣にとって重要な人物なのだろう。

 

「それで、お前達3人だけに違和感がある理由について、何か心当たりはあるのか?」

「その前に聞かせろ。……お前が違和感があるって言ってたのは、本当に俺を入れて3人だけか? 他には……いないんだな?」

「今のところは、だけどな」

 

 そもそも、俺がこの世界に来てから、まだ1週間と経っていない。

 そうである以上、まだそこまで大勢に会ったという訳でもないのだ。

 他に同じような相手がいたとしても、俺が把握していない可能性の方が高い。

 

「……そうか。となると、アルマーも目覚め始めてるのか?」

 

 小さく口の中だけで呟くその言葉は、当然ながら俺にも聞こえていた。

 そして『覚醒』という、あからさまにこの世界で何らかの意味を持っているだろう単語を知り、そのまま聞き逃す訳にもいかない。

 

「覚醒? それはどういう意味だ?」

「っ!?」

 

 口の中だけで呟かれた言葉が、俺に聞こえているとは思いもしなかったのだろう。

 あからさまにしまった……といった様子を示す荒垣に、俺は重ねるようにして言葉を紡ぐ。

 

「どうやら、荒垣は俺が知らない事を色々と知ってるようだな。……きちんとその辺、全てを話して貰うぞ? 言っておくが、話さないという選択肢はないから、そのつもりでな」

「……話を聞いた結果、厄介事に巻き込まれてもいいのか」

「生憎と、今の状況で既に俺は厄介事には巻き込まれてるんだよ。それこそ、現在進行形でな。だからこそ、少しでも情報が欲しい」

「厄介事に、巻き込まれている? ……具体的にどんな事にだ」

 

 真剣な視線。

 今までも荒垣から俺に向けられていた視線は真剣だったが、その中でも一番強い視線が俺に向けられていた。

 この様子だと……もしかして、荒垣もあの現象の事を知ってるのか? ついでに塔についても。

 普通であれば、とてもではないが信じられないような話。

 だが、色々と人に言っても信じられないような経験をしてきた俺にとっては、それこそ特に違和感のない、そんな話。

 

「夜の12時になると、妙な現象が起こるってのは……信じられるか? 人が……いや、生き物が棺桶になるっていう」

「……影時間……アルマー、お前はペルソナ使いなのか?」

「……ペルソナ使い? 何だそれ?」

 

 今の荒垣の様子から考えて、影時間ってのは恐らくあの現象の正式な名称だろう。

 いや、正式って言っても、別に何が正式なのかは分からないが。

 ともあれ、現象とかそういうのだと呼びにくいので、俺もこれからは影時間と呼ぶ事にしよう。

 それはいい。それはいいんだが……ペルソナ使い? 使うってことは、恐らく武器とか超能力とか、そんな感じの代物なのだろう。

 そして、荒垣の様子から見て、この世界で大きな力を持つ何か。

 

「何だ、まだペルソナには覚醒してないのか? ……まぁ、そっちの方がいいのかもしれないがな」

「だから、そのペルソナってのは何だよ?」

 

 何故か罪悪感に満ちた表情を浮かべる荒垣に、改めてそう尋ねる。

 

「本当に知らないのか? 世の中には、知らない方がいい事もあるんだぞ」

「それくらい分かってる。けど、生憎と俺はその知らない方がいい事を知る必要があるんだよ」

 

 まぁ、この世界でレモン達が迎えに来てくれるのをただ待っているだけであれば、それこそ影時間やペルソナ? とかいうのについても知る必要は特にないだろう。

 だが……シャドウミラーの代表として、未知の技術を集めるという事を考えれば、この世界には今まで俺が触れた事もないようなマジックアイテムの類がある。

 まぁ、基本的に宝石に魔法が封じ込められているし、凛辺りにとってはそこまで目新しい技術ではないのかもしれないが。

 他にもあの影が使う魔法。

 アギ、ブフ、ガル……今のところ知っているのはそれくらいでしかないが、それはまだ塔の序盤だからこそだろう。

 恐らく塔を進めばより強力なこの世界特有の魔法を使う敵も現れてくる筈だ。

 現在シャドウミラーで一般的に使われている魔法は、基本的にネギま世界の魔法だ。

 凛が加わった事でFate世界の魔法……いや、魔術の情報についても多少は知られるかもしれないが、基本的にFate世界の魔術は魔術回路がなければ使用不能だ。

 勿論技術的な蓄積という意味では、シャドウミラーの面子が使えなくても問題はない。

 また、凛の持つ魔術は使えないが、俺が聖杯戦争に参加した時に得た代物……金ぴかの腕や各種宝具というのは、技術班にとっては非常に興味深い代物なのは間違いなかった。

 門世界にも魔法はあったけど、シャドウミラーが取り込めたのはエルフ族だけで、そのエルフ族が使う魔法も俺を精霊や神として崇める事によって使う魔法で、シャドウミラーでは一般的ではない。

 ともあれ、基本的にシャドウミラーが繋がる世界は魔法とかがある世界より、人型機動兵器のような科学的発展をした世界の方が多い。

 というか、Fate世界は向こうに強引に引っ張り込まれたといった感じで、門世界もまた同様にゲートを使っての転移ではない。

 そう考えれば、やっぱり魔法がある世界というのは非常に希少なのは間違いなかった。

 その辺りの事情を話す訳にはいかないが、ともあれ今の俺にとって荒垣はこの世界の魔法とかの事情について詳しい話を知っている唯一の情報源だ。

 それこそ、あらゆる手段を使ってでも、情報は聞き出したい。

 

「情報を言え」

 

 荒垣が俺に向けてきたのと同じくらい……いや、それよりも強烈な視線を込めて、荒垣を見る。

 その視線に押されたのか、荒垣が小さく息を呑む音が聞こえてくる。

 

「お前……一体……」

「俺か? そうだな、あの現象……影時間だったか? その影時間には関わっていないが、世の中にはお前が知らない事も色々とあるんだよ」

 

 正確には、この世界に影時間やそれ以外にファンタジー要素があるとは限らないが……他の世界にはあるんだから、決して間違いではない。

 いや、異世界という存在があるのを考えれば、それ以前の問題か?

 だが、荒垣は俺の視線を受け止めても、それにじっと耐える。

 荒垣の胆力は、こう考えると何気に凄いんだな。

 ともあれ、そうしてじっと荒垣と無言で睨み合っていると、やがて近くの席に座っていた客が1人、また1人といった具合で立ち去っていく。

 そうして俺と荒垣の周囲から客の姿が消え、聞こえてくるのは店の中に響いている音楽だけとなり……やがて荒垣が口を開く。

 

「どうやら、ただの興味本位って訳じゃなさそうだな」

 

 そう告げ、俺を見ていた視線から圧力が消える。

 ……いや、実際にはシャドウミラーとしての実益もあるが、興味本位の面がない訳じゃないんだけどな。

 ともあれ、折角情報を話してくれるって言うんだから、今迂闊な言葉を口にするような真似は出来ない。

 

「本来なら、この説明については俺じゃなくて桐条にさせるのが一番いいと思うんだがな」

「……桐条?」

「お前が見たっていう、俺と同じ違和感があったって奴だ。正確には桐条美鶴だな」

「女の方か」

 

 ボクシング部の男の方は、真田とかいう名前だった筈だ。

 勿論それは名字で、美鶴というのは名前だという可能性は十分にあるが……普通に考えれば、やはり美鶴というのは言葉の響きから考えて女の名前だろう。

 ああ、でも充とか満とかだと、同じ発音でも男の方って可能性もあるのか。

 だが、そんな俺の予想とは裏腹に、荒垣は頷きを返す。

 

「そうだ。桐条グループの1人娘にして、影時間をどうにかする為に頑張っている奴だ」

「……桐条グループ、ね」

 

 それについては、特に驚くような事もない。

 そもそもの話、この辺り一帯を開発しているのは桐条グループの力が大きいのだから、その辺りに何らかの事情があっても不思議ではなかった。

 もっとも、その桐条グループの1人娘がわざわざ行動しているというのは、ちょっと驚きだったが。

 

「ああ。そして俺とアキ……いや、明彦、桐条の3人が、ペルソナ使いだ」

 

 そう、告げたのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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