転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1781話

「……は? 何だ、これ?」

 

 それが、塔の2階に上がった俺の口から、思わず出た言葉だった。

 エントランスとなっている塔の1階は、別に昨日とは変わっていない普通の状態だった。

 その事に若干安堵しながら、それでもこの現象の中では何があるか分からないと考えつつ階段を上った。

 そして2階に上がり……いきなり目の前にあったのが十字路だった事で、俺は明らかに困惑してしまう。

 まさか、場所を間違った……何てことはあり得ない。

 そもそも、この塔と他の場所を間違うような事がある筈もないし、エントランスの階段も1つしか存在していない。

 そう考えると、やはりここにあるのは俺達が昨日来た場所に間違いはない。

 

「どうなってるの、これ」

 

 目の前の光景に困惑しているのは、俺だけではない。

 いや、寧ろこういう非常識な体験をするゆかりこそ俺よりも混乱しているのだろう。

 

「どうなっているって言われてもな。……どうなってるんだと思う?」

「だから、そこでまた私に聞かないでよ。……本当にどうなってるのかしら、これ」

 

 ゆかりと、愚にもつかない会話をしながら、この塔について考える。

 まず分かっているのは、この塔は恐らく1度外に出るか、もしくは次の日になると塔の中身が全く違うものになるという事だ。

恐らく、本当に恐らくだが、次の日になると塔の中身が全く違うものになるというのが正しいだろう。

 そもそも、考えてみればこの塔は毎日あの現象になると姿を現す。

 他の建物は変わっていないのに、だ。

 そう考えれば、毎日のように塔の中身が変わるというのは、納得出来ないでもない。

 エントランスの方が特に変わっていないのは、正直疑問だが。

 

「どうなっているのかは分からないが、とにかく上に向かうしかないだろ。多分……本当に多分だが、今までの俺の経験から考えると、ランダムに階層が変化するような場所だと、それが変わらないような場所がある筈だ」

 

 正確には、ここが何らかの原作の世界であればという前提条件の中での話だが。

 そうでもなければ、この世界が原作となっている物語で、塔を攻略出来ないだろう。

 かなりの高さを持つ塔だけに、上層部まで……いや、待て。もしかして。

 

「ゆかり、悪い。ちょっと試してみたいことが出来た」

「え? 何よ、急に」

「いいから、一旦この塔の外に出るぞ。勿論ゆかりがここに残っていたいのなら、それはそれでいいけど……どうする?」

「行くわよ。こんな場所に私1人で残されても、どうしようもないじゃない」

 

 そんな訳で、俺とゆかりは一旦影のゲートに身を沈め、塔の外に出る。

 そうして改めて間近で塔を見上げると……うん、やっぱり高いな。

 勿論巨大人型兵器とかを見慣れている俺にとっては、高い事は高いが、そこまでのものではないのだが。

 

「それで、どうするのよ? 今日はもう帰るの?」

「違う。ちょっと試してみたい事があってな」

「……試してみたい事?」

「ああ。ちょっと待ってくれ」

 

 そう告げ、ゆかりをその場に残して俺は混沌精霊としての力を使って浮き上がる。

 俺が空を飛べるというのは既に知っているゆかりは、特に驚いた様子もなく、俺が何をするのかといった様子でこっちに視線を向けていた。

 

「ちょっとこのまま塔の天辺まで行ってくる。もしかしたら、わざわざ塔を1階ずつ攻略しなくてもあっさりと秘密が解決出来るかもしれない」

 

 俺の言葉を聞いたゆかりは、納得した様子で頷くも……少しだけ不満そうに口を開く。

 

「私も連れて行ってもいいんじゃない?」

「いや、上で何が起きるか分からないからな。俺の場合は何かあっても自分で対処出来るが、ゆかりの場合だと高い場所から落ちれば、どうしようもないだろ?」

「それは……そうね」

 

 結局のところ、ゆかりは……少なくても今のゆかりは、ただこの現象の中でも動けるだけの女子高生にすぎない。

 もし空を飛んでいる時に何か不測の事態があった場合、下手をすればゆかりは高度百m以上の位置から地上に落下してしまうだろう。

 俺の場合はその程度の高さから落ちても何とでも出来るが、ゆかりはこの現象の中でも動けるだけの女子高生であって、魔法的な能力だったり、ネギま世界の人間のようなびっくり身体能力を持っている訳でもない。

 高所から落ちてしまったら、どうしようもないのは事実だった。

 ゆかりも俺の言葉でそれを理解しているのか、特に文句らしい文句は口にせず、大人しく引き下がった。

 それを確認すると俺は早速空を飛びながら塔に向かって近づいていく。

 ……こうして見ると、やっぱり階層が微妙に分かりにくい。

 内部で空間が弄られているというのは、決して俺の気のせいではないのだろう。

 そのまま空を上がっていくが、ある程度の距離を上ったところで、不意にそれ以上は上に移動出来なくなる。

 何らかの魔法的な力が働いているのは間違いない。魔法障壁のような何か。

 どうする? 本気で全力を出せば何とかなるような気がしないでもない。

 だが、ここでそんな無理をして塔によって生み出されているだろう魔法障壁っぽい何かを破壊してもいいのか?

 もしここで無理をして魔法障壁を破壊した場合、塔の方に何らかの悪影響が出るという可能性は十分にある。

 それがこちらにとっては利益になるような悪影響ならいいが、下手をすれば魔法障壁が壊された事によって塔そのものが崩壊する……そんな可能性だって十分にあるのは間違いない。

 そしてこの塔は、現在俺達が巻き込まれている現象において何か重要な意味を持っている可能性があった。

 下手にこの塔を壊そうものなら、この世界の未来そのものを破壊してしまう可能性すらあった。

 そう考えれば、やっぱり無理は出来ない。

 なら……と、これ以上は上に向かう事を諦め、外側から塔に入れるかどうかを試す。

 そもそも、影の巣窟となっている塔の中をわざわざ移動するより、外から回り込んで直接塔の中に入れれば、極端なショートカットが可能だ。

 そう考えての行為だったのだが……残念ながら、塔に触れる事すら出来ない。

 いや、正確には塔の周辺には先程俺の行動を阻害した魔法障壁に似たような何かが展開されている、という方が正しいか。

 塔の全ての場所にこの魔法障壁が展開されているのかどうかは分からないが、それを全て試そうとは思えない。

 結局実験は全て失敗ということで、俺は地上に降りていく。

 

「どうだったの?」

「駄目だな。外側からこの塔の頂上に向かえないかと思ったが、魔法障壁に近いものが張られている。……それなりの高さまでは、普通に移動出来たんだけどな。おまけに、塔の表面にも似たようなものがあって、外側からどうにかは出来ない。……残念だが」

「そう」

 

 一応、無理をすれば突破出来そうだというのは、隠しておく。

 もしそれを知ったゆかりが魔法障壁を強引に突破してみようと言ったら、色々と困る為だ。

 この塔を下手に破壊してしまえばどうなるか、分からないし。

 

「じゃあ、結局は普通に上っていくしかないって事ね」

「そうなるな」

「……残念だけど、しょうがないわ。じゃ、行きましょ。アクセルの勘と経験にあったように、出来ればこの塔の途中には変わらない場所がある事を祈るしかないし」

 

 そう告げ、俺とゆかりは再び影のゲートを使って先程までいた2階に戻り……

 

「ああ、やっぱり」

 

 俺達が出た場所は、通路。

 それ自体は特に問題ないのだが、そこで問題になるのは目の前に広がっている光景だ。

 十字路。

 それはつまり、俺達が一旦外に出る前に見ていたものと同じ光景だった。

 やっぱりこの塔は外に出るとかじゃなく、この現象が起きる度に塔の内部が変わっていくという事なのだろう。

 そう説明すると、ゆかりも周囲の様子を眺めながら納得したように頷く。

 

「そうみたいね。となると、一晩でアクセルが言う、あるかもしれない変わらない場所まで行く必要があるという事ね」

「そうなるな」

 

 非常に面倒。

 それが、俺の正直な気持ちだった。

 だが、それでもやるしかないのは事実だ。

 ……一瞬、原作の主人公が出てくるまで待ってみては? と思わないでもなかったが、そもそも主人公が出てくるという確約もない。

 そうである以上、こちらとしてはそれを待つだけという選択肢はない。

 大体、主人公が出てくるのが数年後、十年後といった感じだったらちょっと洒落にならないし。

 そういう場合、ゆかりは学生ではなく大学生とか教師とか、そういう地位で出てくる可能性が高いな。

 主人公が高校生の場合、実際に戦闘に参加しないフォロー役とか?

 何だか、普通にありそうなのが怖い。

 そう考えれば、やっぱり俺がここで足踏みをする訳にはいかない。

 

「アクセル? どうしたの?」

「いや、なるべく早くこの塔を攻略して、この妙な現象を解決したいと思ってな」

「……そうね。出来ればそうなってくれると、こっちとしても助かるわ」

 

 こうして俺とゆかりは、改めて塔の攻略に専念する。

 ちなみに、当然のように猫の炎獣を生み出し、ゆかりの護衛につけてある。

 こうして俺とゆかりは塔の攻略を開始した。

 今回は出来るだけ先に進むことを考えているので、階段を見つけたらすぐに上に上がる事にする。

 宝箱とかはちょっと惜しいが、まだ低い階層のここでは、宝箱があってもそうそう希少品はないだろうという認識だった。

 ……まぁ、魔法が封じ込められている宝石には多少なりとも興味はあるのだが。

 そんな風に考えながら進んでいると、やがて影が姿を現す。

 火の魔法のアギを使う、仮面舞踏会で使うような目元だけを隠すスライムもどき。

 そのスライムもどきとの戦いを、ゆかりに任せる。

 

「はっ!」

 

 だが、昨日も体験した事で慣れたのか、ゆかりの射った矢は真っ直ぐに影の顔に何本も突き刺さり、倒す事に成功する。

 影もアギを使って攻撃してきたのだが、俺の白炎から生み出された炎獣が、その程度でダメージを受ける筈もない。

 結果として、無傷で影を倒す事に成功する。

 そうして塔の2階を動き回っていると、やがて上に続く階段を見つける。

 また、当然のように階段の近くにはエントランスに続く転移装置もあった。

 

「影はあまりいなかったわね」

「そうだな」

 

 最初にゆかりが倒した影以降は、何匹か出てきただけだ。

 だが、ゲイ・ボルクを持っている俺にとっては、それこそ触れるだけで倒してしまう程度の敵でしかない。

 そんな訳で、俺が一掃したり、ゆかりに戦闘経験を積ませる為に任せたりといった感じで何匹かの影を倒して、ここに到着した。

 

「何はともあれ、ここまでそれなりに早くこれたし……次も出来るだけ早く階段を見つけたいところだな」

 

 そう告げ、俺とゆかりは階段を上っていく。

 3階に上がって目の前にあるのは、真っ直ぐに進む通路。

 その通路には敵の姿はなく、ただひたすらに歩くだけだった。

 そうして歩き始めてから10分程――あくまでも感覚的にだが――が経ち、やげて通路が2つに別れているY字路に到着する。

 

「さて、どっちに行く?」

「どっちに行くって聞かれても、何か手掛かりがある訳じゃないんでしょ? なら、どっちでも変わらないんじゃない?」

「そうだな。だから、女の勘で決めてくれ」

 

 女の勘が鋭いというのは、俺がこれまで生きてきた中で心の底から感じている事だ。

 それこそ、俺が何を考えているのかすら、女の勘は察知する事が何度もあった。

 だからこそ、ゆかりの女の勘で正解を引いて欲しかった。

 

「ちょっと、アクセル。あんた女なら、誰でも超能力者だとでも思ってるんじゃないの?」

「似たようなものだろ。……ちなみに、超能力者って意味なら、俺も似たようなものだ」

「え?」

 

 俺の口から出た説明に、何を言ってるんだといった様子でゆかりが視線を向けてくる。

 

「アクセルは魔法使いなんでしょ?」

「ああ。……ただ、俺の場合は元々は超能力者だったんだよ。そして超能力者のまま、魔法を習得した感じだ。正確には念動力って奴なんだが……まぁ、ぶっちゃけ俺も超能力と念動力の違いはよく分からない。……ほら」

 

 そう告げ、念動力を使ってゆかりの身体を軽く持ち上げる。

 

「きゃっ!」

 

 何の音沙汰もないままに身体を持ち上げられた為だろう。ゆかりの口から小さな悲鳴が上がった。

 

「こんな訳だ」

「ちょっと、やるならやるって言ってよね!」

 

 不満そうに叫ぶゆかりに軽く謝罪する。

 その謝罪でひとまず怒りは収まったのか、ゆかりはどこか感心したような……それでいて呆れたように口を開く。

 

「魔法だけじゃなくて、超能力も使えるのって凄いわね」

「そうでもない」

 

 ぶっちゃけ今の俺にとっては念動力よりも魔法の方が色々な意味で便利だ。

 勿論、T-LINKシステムを使うには念動力が必須なんだが。

 ともあれ、そんな風に話しながらゆかりに道を選んで貰ったんだが……そちらにあったのは、宝箱が1つ、それも500円硬貨1枚だけしか入っていなかった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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