転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1773話

「えーっと……あれ? うん?」

 

 目の前にある装置……塔の中で使えるのだろう転移装置に触れるも、何故か動く様子はない。

 あれ? 何でだ?

 2階の奥からは、あっさりと転移する事が出来た。

 だが、何故か今俺の目の前にある転移装置に触れても、特に何も起きない。

 いや、本当に何でだ?

 首を傾げるも、いつまでもこのままという訳にもいかない。

 今、塔の2階の奥では、ゆかりが1人で待っている筈だ。

 正確には炎獣もいるから、身の安全は心配しなくてもいいだろうが……ゆかりの場合はつい数日前までは一般人だった人物だ。

 それがダンジョンで1人だけになるというのは、色々と不味い。

 塔の中に現れる影も、1度に現れるのが1匹だけという事はない。

 それを考えると、やっぱり早めに迎えに行った方がいいのは事実だ。

 足下に影を作ると、そのまま身体を沈めていき……そうして次の瞬間には、ゆかりのすぐ側から姿を現す。

 

「きゃっ! ちょ、ちょっとアクセル?」

「どうやら無事だったみたいだな」

「それはそうだけど……何、どうかしたの? まさか、本当にこの転移装置はどこか危険な場所に繋がってたとか?」

「いや、エントランスにある装置に繋がっていた。……ただし、向こうからこっちに転移することは出来ないらしい。完全に一方通行だな」

「何それ? じゃあ、もしこの塔の中に入ったら、またこの階層からやらないといけないって事?」

 

 不満そうに告げるゆかり。

 まぁ、その気持ちは分からないでもない。

 ここが塔の形をしたダンジョンである以上、現在俺達が関わっているこの現象について何か重要な情報があるとしたら、パターン的にはこの塔の最上階となる。

 だが、この塔の中は空間的な歪みが存在している以上、具体的にどこまで階層があるのかというのは分からない。

 そして今回は宝箱を探したり、ゆかりに戦闘経験を積ませたりといった事をしたのでそれなりに時間が掛かった。

 だが、そういうのをなしにしても、この現象が続いている時間で塔の1階……いや、ダンジョンになっている2階から最上階まで行けるかと言われれば……答えは否だろう。

 まぁ、この現象の時だけ存在しているこの塔だ。この現象が終わった時に中にいればどうなるのかというのは、全く分からない。

 もしかしたら、この塔の中にいる間はこの現象が終わらないという可能性も、なきにしもあらずという奴だし。ただ……

 

「恐らくだけど、そこまで心配する必要はないと思う」

「何で?」

「こういうダンジョンのパターン的に考えれば、大抵何階かおきには一方通行じゃない転移装置とかがあってもおかしくないからな」

「何でそんな事が分かるの?」

「まぁ、この塔の事は分からないから確実にとは言えないけど、俺が知ってる限りじゃそんな風になってる事が多い」

「……まぁ、アクセルの言いたい事は分かったけど、その辺りはしっかりと私の目で確認するしかないわね」

「ああ。けど、それを確認するにしても、そろそろこの塔から出た方がいいだろうな。何だかんだで、この塔に入ってから……いや、この現象に巻き込まれてから数時間経っている。昨日と同じなら、そろそろこの現象が終わっても不思議じゃない」

「え? もうそんなに時間が経ってるの?」

「ああ。ゆかりの場合は、初めての実戦って事で集中していてあまり実感がないかもしれないが、体力的にも結構消耗している筈だ」

 

 実際にそこまで動いてはいなくても、命を懸けた実戦というのは、かなりの体力を消耗させる。

 ましてや、ゆかりは普段から戦闘訓練を受けている訳でもない。

 一応弓道部で活動していたとしても、結局のところはそれだけでしかない。

 ……その辺りの事を考えれば、寧ろよくここまで体力が保ったと、そう言うべきなんだろう。

 勿論この塔に初めて挑戦したという事で、ゆかりが緊張して疲れを感じていないというのもあるのかもしれないが。

 それでも、このままだといずれ体力が尽きるのは間違いない。

 

「そう? うーん、私自身には全くそういうつもりはないんだけど」

「今は緊張とか興奮とか、そういうので疲れを認識出来てないだけだろ。……それに、昨日と今日この現象に巻き込まれたって事は、恐らく明日も明後日もこの現象が起きる可能性は高い」

 

 もっとも、この現象に巻き込まれてまだ2日だ。

 実はかなりランダムにこの現象が起きるとかであっても、不思議じゃないんだが。

 ともあれ、今日はこれ以上この塔に挑戦するのは止めておいた方がいいのは間違いない。

 

「ま、そうかもね。アクセルがそう言うのなら、今日のところはこの辺で止めておきましょ」

 

 意外な……と言えばゆかりに怒られるかもしれないが、塔の探索をそろそろ止めようという俺の提案に、ゆかりはあっさりと頷く。

 

「てっきりもうちょっと塔の探索をするって言うのかと思ったんだけどな」

「何で? この手の事に慣れているアクセルにとっても、撤退した方がいいんでしょ? なら、わざわざここで私が意地を張っても意味ないじゃない」

「まぁ、そうなんだけどな」

 

 初めてのダンジョン探索……ファンタジー経験だったが、ゆかりは予想外に冷静に判断出来ていた。

 この辺りの判断力が高いというのは、これからこの塔に挑んでいく上でかなり頼りになる。

 ……まぁ、影の転移魔法を使えば、塔を攻略しなくても毎回好きな場所に移動出来るんだから、そこまでゆかりに負担を掛けるつもりはないんだが。

 

「とにかく、そんな訳で……ゆかりも、転移装置……」

 

 そこまで考え、ふと気が付く。

 転移装置という名称はこの装置の性能を端的に現しているのは間違いない。

 だが、同時に俺の中で転移装置といえば、システムXNやゲートといった物を現している。

 ホワイトスターと繋がった時、この装置を転移装置と呼んでいれば、混乱する可能性もある。

 だとすれば、転移装置以外の呼び名……

 

「そうだな、これからこの装置は転移装置じゃなくて、駅を意味するターミナルって呼ぶ事にするか」

「ターミナル? まぁ、それらしいし、どうせこのシステムを使うのも私達だけだからいいと思うけど……何で?」

「いや、シャドウミラーには転移装置って言葉が普通に使われてるからな。もしこの世界とホワイトスターが繋がった時、混乱しないようにだ」

「ふーん。まぁ、アクセルがいいなら、いいんじゃない? 私は別に呼び名について拘りがある訳じゃないし」

 

 こうして、この転移装置の名前は以後ターミナルと呼称する事になる。

 

「そんな訳で、ゆかりの初体験だな」

「ちょっ! あんた、いきなり何を言ってるのよ! 馬鹿じゃないの!? てか、馬鹿でしょ!」

 

 俺の言葉に何を……いや、ナニを想像したのか、ゆかりの顔が赤く染まる。

 しかもいつもなら2回言う時と違って、馬鹿でしょと断言すらされていた。

 

「ああ、そう言えばゆかりは男慣れしてなかったんだよな」

「馬鹿!」

 

 そう告げると、真っ赤な顔で俺を睨み付けながら炎獣の猫を手にターミナルに入る。

 そして次の瞬間には、ゆかりの姿は消えていた。

 なるほど、端から見ると転移装置以外の何物でもないな。

 レモン辺りがこれを見れば、かなり興味深いと思うかもしれないが……何とか取り外し出来ないか?

 一応、本当に一応といった感じでターミナルに触れて空間倉庫に収納しようとするも、収納は出来ない。

 恐らくだが、ターミナルとこの塔が一体になっているというのが大きいんだろう。

 

「さて、ゆかりはエントランスに戻ったし、俺はもうちょっと先の様子でも……」

 

 そう思いながら、影にその身を沈め、3階、4階、5階といった場所にちょっと姿を現そうとするも……

 

「うん? ……何だ、これ」

 

 今まで、多くの世界でその猛威を振るってきた影のゲート。

 だが、その影のゲートを使って上層階に転移しようとしても、転移出来ないのだ。

 どうなってるんだ? エントランスからここには、特に問題なく転移出来た。

 実際……

 影に沈み、最初に2500円が入っていた宝箱にある場所にも、問題なく移動出来る。

 だが、それでも3階、4階、5階といった場所には転移出来ない。

 

「俺が行った事のある場所でなければ、転移出来ない?」

 

 そう呟くと同時に、今の答えが合っていることを理解する。

 普通であれば全く考えられない事だが、そもそも現在俺が巻き込まれている現象は色々な意味で謎が多い。

 ましてや、この塔はその現象の間だけ存在している場所だ。

 そう考えれば、3階以降に影で転移出来ないのは、そうおかしな話でもないのか?

 そんな風に考えつつ、取りあえず一度行った場所であれば影の転移が出来るという事に満足して、そのまま影のゲートではなくターミナルに入る。

 すると次の瞬間、俺の姿は2階にあるエントランスにあった。

 

「遅いわよ」

「ああ、悪い。ちょっと試してみたい事があってな」

 

 不満そうな様子のゆかりに、そう言葉を返す。

 

「試したい事?」

「ああ。知っての通り、俺には影を使った転移魔法がある」

「そうね、何度も驚かされたけど」

「それを使って、3階よりも上の階層に転移出来ないかどうか試してみたんだが、転移出来なかった。2階には好きな場所に転移出来たんだけどな」

「それって、1回行った場所じゃなきゃ転移出来ないって事?」

「そうらしい。俺としては、ちょっと予想外だったが……まぁ、こんなファンタジーな現象に巻き込まれているんだと考えれば、不思議じゃないけどな」

 

 そう告げると、ゆかりも微妙に納得したような、していないような……そんな微妙な表情を浮かべる。

 

「どうした?」

「ううん。……転移魔法とかそういうのを聞かされても、自分でも思ってもみなかった程に話を受け止められていると思って。正直、まさか自分がこういうのに巻き込まれるとは、思ってもいなかったから」

「あー……だろうな。俺から見ても、ゆかりは順応するのは早いと思う。けど、それは別に悪い事じゃないだろ? 寧ろ、こういう現象に巻き込まれたんだと考えれば、向いている。……ゆかりなら、魔法世界でもそれなりにやっていけそうだな」

「ちょっと、何よその魔法世界って」

「確か昨日ちょっと言ったと思うけど、シャドウミラーが関係を持っている世界にある異界の1つだ。表向きは普通の世界だが、実際には魔法が存在する世界で、その世界では火星に魔法世界という異界が存在する。ああ、ちなみにその火星では色々な世界から人がやって来て、テラフォーミングしているな」

「どんな世界よ、それ」

「ま、色々な世界で自分の世界にいられなくなった連中が集まっているんだよ」

 

 修羅やギアス世界の人間達、それに今は少ないながらもSEED世界からもコーディネイターがいるらしい。

 そういう連中や、シャドウミラーから貸し出しているメギロート、イルメヤといった代物を含め、大幅にテラフォーミングが行われている。

 

「……何だか、ちょっと興味深いような、怖いような、微妙な感じね」

「そうだな。それでも色々と賑やかな世界だってのは間違いないぞ。機会があったら、招待してやるよ」

「まぁ、考えておくわ。それより、そろそろ塔を出ない? 時間的にそろそろこの現象が終わってもおかしくはないし」

 

 そう告げるゆかりの言葉に頷き、俺とゆかりはエントランスを出る。

 周囲を見回しても、相変わらず謎の現象が起きたままだ。

 

「ねぇ、もしこのままどうにも出来なかったら……どうする?」

「そうだな、それはちょっと困るな」

「そうね、私も困るわ」

 

 困る、としか言えない。

 まぁ、この現象の中でも食い物とかは普通に食えるし、いざとなればその辺の店から勝手に持ってくる事も出来る。

 この現象の中では時間が止まっているのであれば、食べ物が腐るという可能性は考えなくてもいいだろう。

 だとすれば、世界中の食べ物を食い尽くすより、ゆかりが寿命で死ぬ方が早いだろう。

 俺の場合は……まぁ、何とでもなりそうだが。

 

「ああ、そうだ。いつまでも炎獣を連れて歩く訳にもいかないし、その炎獣を消すぞ」

「え? ちょっ、それ本気!?」

「ああ。……そもそも炎獣というのは、俺の炎、白炎から出来ている代物だ。そうである以上、時間が経てばそのうち消えるんだよ」

「……けど……」

 

 逡巡した様子のゆかり。

 どうやら、俺が思っていた以上に炎獣を気に入っていたらしい。

 まぁ、影から自分の命を守ってくれた相手だしな。

 そういう風に考えてもおかしくはない。

 

「安心しろ。……って言い方もどうかと思うけど、明日また塔に挑む時には同じ炎獣を作ってやるよ」

「……分かった」

 

 そう告げ、残念そうにしながらもゆかりは炎獣を地面に下ろす。

 それを確認し、俺は指を小さく鳴らすと、猫の炎獣は白炎となって空中に消えていくのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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