転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1771話

 白い光と言えば、大抵は攻撃魔法というよりも補助魔法とか回復魔法を思い浮かべるだろう。

 実際、そんな俺の予想は間違っておらず、少なくても目の前の影に今の宝石が放った白い光が何らかのダメージを与えた様子はなかった。

 また、宝石そのものも白い光を発したのと同時に消滅している。

 ……なるほど。改めて魔法を封じるような事は出来ない、完全に使い捨てなのか。

 勿論この塔の2階に置かれている宝箱から出てきた宝石だから使い捨てであり、より高度なマジックアイテムならもしかしたら何度も使ったり出来るのかもしれないが。

 ともあれ、今使った宝石は攻撃ではなく……それを使われた影も、一瞬戸惑ったように動きを止めたが、すぐに俺を敵と認識してこちらに手を伸ばしてくる。

 いや、木の根のような部分なんだし、これは手と認識してもいいのか?

 

「これならどうだ!?」

 

 その言葉と共に使用したのは、気配遮断と共にこの世界では使い勝手が多そうに思えるスキル、鬼眼。

 ネギま世界で入手したスキルで、対象に対してランダムにバッドステータスを付与するといった物だ。

 

「ギ……」

 

 今回影に効果を発揮したのは、麻痺。

 床に転がり、そのまま影は動けなくなっていた。

 

「鬼眼も効果あり、か。……ゆかり、いいぞ」

 

 数歩下がりながら告げられたその言葉に、ゆかりはすぐに反応する。

 数秒後には、射られた矢が次々に影に突き刺さる。

 影の頭にあった王冠にも突き刺さり、地面に転げ落ち……やがてそのまま影は消え去っていく。

 

「やった?」

「ああ」

 

 背後から聞こえてくるゆかりの言葉に頷きを返す。

 俺の返事に、ゆかりは安堵した様子でホールの中に入ってくる。

 そんなゆかりを眺めつつ、俺は改めてホールを見回す。

 こうして見る限りでは、広い部屋ではあるが……ああ、俺達が入ってきたのとは別に、奥の方に別の道が続いているな。

 

「それにしても、何をしたの? 急にあの、えっと……そう、影だったわね。影が動かなくなったけど」

「俺の持っている特殊能力の1つに、鬼眼というのがある」

「鬼眼?」

「ああ。……そうだな、魔眼ってのは知ってるか?」

「えっと、以前順平が漫画か何かの話で言ってたのを聞いた覚えがあるけど」

「そうか。多分それだな。まぁ、簡単に言えば特殊な能力を持った眼の事だ。ほら、ヴァンパイアに見つめられると魅了されるとか、そういう話は聞いた事がないか?」

「ああ!」

 

 ヴァンパイアの例えは分かりやすかったのか、ゆかりは納得した様子で頷く。

 見た目通り、ゲームとか漫画とかアニメとか、そういうのにはあまり興味がないんだろうな。

 

「鬼眼ってのは、その魔眼の上位互換……と言いたいところだけど、正確には亜種ってところだな」

 

 基本的に魅了だったり麻痺だったりと、1つの状態異常しか使えない魔眼に比べると、複数の……それこそ10種類、20種類の状態異常を相手に付加出来る鬼眼は、そこだけを見れば魔眼の上位互換と表現してもいい。

 だが、実際に相手に付加出来る状態異常が何十種類あってもこっちで決める事は出来ず、完全にランダム。

 そうなると、状態異常が何十種類もあるというのが逆に足を引っ張る。

 また、基本的に一定以上の力量を持つ相手には効果がなく、完全に雑魚専門のスキルと化している。

 ……そういう意味では、W世界のMDと似たようなものか。

 ともあれ、マブラヴ世界のBETAのように、大量に雑魚がいるという場所では使い勝手がいいんだが……Fate世界のように英霊と呼ばれるような存在と戦わなければならない時は、基本的に役に立たないと思っていい。

 その辺りの説明をすると、ゆかりは納得したような……それでいて残念そうな表情を浮かべる。

 

「それってつまり、この影には効果があっても、塔の上の方に行ってより強い影と遭遇すれば効果はないかもしれないって事?」

「そうだな。ただ、実際にこの塔の上により強力な影がいればの話だが」

 

 そもそもこの現象がどういうものなのか、そしてこの塔がどのような場所なのか、まだはっきりと分かっている訳ではない。

 そうである以上、もしかしたら影の強さは全てここで遭遇したスライムもどきや木の根の王冠のような奴と同じという可能性も十分にある。

 ……もっとも、この世界が何らかの原作の世界である以上、そうなる可能性は非常に少ないと思ってはいるのだが。

 恐らく、上に行けば行く程に強力な影がこっちを待ち受けている事だろう。

 

「なるほど。でも、取りあえずこういう影が相手なら、その鬼眼だっけ? それも効果あるのよね?」

「……もう少し驚くと思ったんだけどな。予想外に驚いていないな」

「あのね、こんな異常事態に巻き込まれてるのよ? おまけに、私と一緒に行動しているアクセルは自称異世界からやってきた魔法使い。……その上、何度も魔法っぽいのを見せて貰ってるし。それだけ色々とあれば、当然慣れるわよ」

 

 慣れの問題か?

 まぁ、それでも騒がれたりするよりは断然いいんだが。

 

「そう言ってくれるのは、こっちとしても嬉しいな。……なら、そろそろ行くか。いつまでもこんなホールにいれば、また他の影がやってこないとも限らないし」

「ええ。……って、ちょっと待った。それよりもさっきの宝石の件は?」

 

 ゆかりのその言葉で、俺は先程の戦い――と呼ぶには一方的だったが――を思い出す。

 

「あー……あれな」

 

 あの宝石に魔法が封じられていたのは間違いないし、影に使用したのも間違いない。

 ただ……宝石に封じられている魔法が発動した時に感じたのは、柔らかな光だった。

 あくまでも俺のイメージ的なものだが、もし宝石の中に封じられていたのが攻撃魔法であれば、もっと攻撃的な色……赤だったり、黒だったりしてもいいような気がする。

 俺がそう思うのは、炎と影の魔法が得意だからか?

 ともあれ、あの柔らかな白い光を見て、攻撃魔法と思う者はそうはいないだろう。

 

「多分だけど、あの宝石に入ってたのは回復魔法だったんだろうな」

「……え? じゃあ、アクセルはわざわざ敵に回復魔法を使ってあげたって事?」

「そうなる」

「うわぁ……」

 

 信じられないといった様子で俺に視線を向けてくるゆかりだったが、勿論俺にだって言い分はある。

 

「そもそも、どんな魔法が宝石の中に封じ込められていたのか分からない以上、この結果は当然というか、仕方がない事だろ」

「それは……まぁ、そうでしょうね」

 

 実際問題、あの宝石の中に攻撃魔法が封じ込められていた可能性を考えれば、そう簡単に人に向かって使える筈もない。

 特に俺はともかく、ゆかりは普通の人間でしかないのだから。

 それを考えれば、やはりさっきの判断は間違っていなかった筈だ。

 

「もしまた宝石を入手しても、それに入っている魔法が分からないと使い物にならないわね」

「そうだな。その辺りについて詳しい奴がいれば、何とかなりそうな気もするけど……」

「私は元々魔法とかには詳しくないんだけど、アクセルはどうなの? 魔法を使えるんだし、その辺りの事は分からない?」

「あー……そうだな。今の宝石と同じ魔法が込められた宝石なら、分からないでもない。ただ、問題は……あの魔法がどんな効果なのか分からない事なんだよな」

 

 恐らく回復魔法、もしくは能力強化の補助魔法とか、そういう系統の魔法だとは思うが、あの影が使われても特に回復の類もしていなかった。

 いや、正確にはあの宝石を使った時、影は何もダメージを受けているような状況ではなかった。

 だからこそ、あの宝石に封じられていた魔法が回復魔法であっても、補助魔法の類であっても、分からない。

 

「まぁ、見た感じではダメージとかを与える魔法ではなかったし、手に入れたら敵に使わないで取っておいた方がいいだろうな。……ああ、そう言えばもし回復魔法なら、ゆかりにちょっとひっかき傷でもつけて、それで試してみるのか?」

「ちょっと、何で私が怪我をする役目なのよ?」

「いや、何となく? ……ってのは冗談として、俺の場合基本的に物理攻撃とかは効果がないしな」

 

 その気になれば物理攻撃で傷を付けたり、付けられたりといった真似が出来ないでもないのだが、それは今は言わないでおこう。

 

「ぐっ、それでも女の私を傷物にする気?」

「いや、その傷物って言い方は色々と誤解を生むような言葉だから、止めておこうな」

「……なっ!? わ、分かってるわよそんな事!」

 

 そう叫ぶゆかりだったが、傷物の意味は俺の言葉でようやく理解したと見てもいいだろう。

 ともあれ、急激に顔を真っ赤に染めるゆかりが、ホールの奥に続く通路へと進む。

 

「おい、待て」

「何よ」

「あのなぁ。お前だけで進んで、影に遭遇したらどうするつもりだ? お前の力だけで、影に勝てるのか?」

「それは……勝てないけど」

 

 ゆかりの弓道の技量は決して低くはない。

 だが、実践慣れしていないという事もあり、影に距離を詰められればどうしようもない。

 その辺り、もう少しどうにかした方がいいとは思うんだが……

 まぁ、実際この現象に巻き込まれたのは昨日……いや、もう日付が変わっていたし、一昨日か?

 ともあれ、そんな具合だ。

 そう考えれば、近接戦闘に対応出来なくても仕方がないだろう。

 

「今はいいけど、そのうちある程度影に接近されてもどうにか出来るようにした方がいいだろうな」

「……そうね」

 

 少し不満そうにしながらも、ゆかりは頷く。

 

「分かればいい。そんな訳で、今は俺を……ああ、そう言えばこの手段があったな」

「え?」

 

 俺の呟きに聞き返すゆかりだったが、それを無視して右手を白炎にし、その白炎で獣を……炎獣を生み出す。

 形は、取りあえずゆかりが動く邪魔にならないように……それでいてゆかりのイメージに合わせて、猫だ。

 

「ちょっ、何これ!?」

 

 猫の炎獣の姿に、ゆかりの口から驚きの声が上がる。

 その驚きの声の中に、どこか喜色が混じっているのは……まぁ、そういう事なのだろう。

 

「俺の持つ能力の1つ、炎獣だ。その名の通り、俺の炎で生み出された疑似生命体だな。……ああ、敵対する相手でなければ熱を感じるようなことはないから、安心しろ」

「本当?」

 

 そう言いながらも、ゆかりの視線は猫の炎獣に向けられたままだ。

 そして恐る恐る……といった様子でそっと手を伸ばし、炎獣に触れる。

 炎獣の方も、ゆかりに敵意はないというのは分かっているのだろう。特に何をするでもなく、大人しくしていた。

 

「わ、本当だ。熱くはない……わね。暖かいけど」

 

 そう呟きながら、嬉しそうに炎獣を撫でるゆかり。

 

「別に俺は可愛がらせるつもりで炎獣を生み出したんじゃないけどな」

「え? なら、何で?」

「お前の護衛の為だ。俺がずっとゆかりの護衛をしているってのも戦力的に無駄だろ?」

「それは分かるけど……じゃあ、この猫は戦えるの?」

「ああ。それこそ、ここに出てくる影程度なら余裕で倒せると思うぞ」

「……本当?」

 

 疑わしそうな視線を向けてくる。

 実際、猫より若干大きい程度の大きさなのだから、ゆかりの心配は分からないでもない。

 だが、普通の人間が本気で襲いかかってくる猫と戦った場合、猫の方に軍配が上がるというのは、結構聞く話だ。

 勿論その辺りは人によるだろうし、猫にもよるだろうから、絶対にそうだと言い切る事は出来ないだろうが。

 その点、俺が生み出した炎獣の猫は違う。

 こう見えて、相当の力を持っているのは間違いない。

 勿論、一流の戦闘力を持っている相手には負けるだろうが、少なくても俺が戦った影であれば、3種類のどれが相手でも問題なく勝てるだろう。

 そう説明しても、ゆかりが俺を見る目にはどこか不審がある。

 ゆかりから見て、本当にこの炎獣の猫が影を相手に勝てるとは思えないのだろう。

 説明しても、完全に納得する様子はない。

 となると、論より証拠、百聞は一見にしかず、だな。

 実際に炎獣の戦いを見せた方がいいだろう。

 

「よし、とにかく先に進むぞ。影が出てきたら、その力を見せてやる」

「え? ちょっと、本当に大丈夫なの?」

「間違いなくな」

 

 そう告げ、俺とゆかり、炎獣の猫は、そのままホールを出ていく。

 するとタイミングよくと言うべきか、それとも向こうにとってはタイミングが悪いと言うべきか、スライムもどきの影が姿を現す。

 

「行け」

 

 向こうが姿を現した瞬間にそう告げ、それを聞いた炎獣はすぐに走り出す。

 自分に向かってくる炎獣の猫を敵だと判断したのだろう。影は手を伸ばして攻撃をしようとするが……本物の猫のように俊敏に動きながら、仮面を被っている顔と思しき部分に体当たりし……次の瞬間、スライムもどきは炎に包まれて燃え尽きるのだった。 




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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