転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1767話

「ん、もうこんな時間か。……昨日の件を考えれば、そろそろあの妙な現象が起きてもいい頃合いなんだが」

 

 ファミレスの中にある時計に視線を向け、午後11時45分くらいになっているのを確認すると、読んでいた本から視線を上げる。

 結局ゆかりにも協力して貰ったのだが、狙いのカプセルホテルの類はなく……夕方になったという事もあり、一旦その場で解散したのだ。

 まぁ、ファミレスがあるというのは分かっていたので、そう心配する事はなかったんだが。

 ともあれ、夕食、おやつ、夜食……と、本を読みながら時間を潰していた俺は、会計を済ませて店を出る。

 このファミレス、味はそこそこ程度の店なのだが、長時間いても迷惑がられないところがいいな。

 勿論、ジュースの一杯や二杯を頼んで長時間いるのであれば、店員の方でも注意してくる可能性は皆無ではないだろうが。

 俺の場合は、何だかんだで1万円以上使っている事もあっていい客だと思われたのだろう。

 ともあれ、そろそろ時間だという事もあってファミレスの外に出て空を見上げる。

 ……昨日ファミレスを出たのも、確かこれくらいの時間だったよな。

 正確に何時だったのかは、ちょっと覚えてないが。

 空にあるのは、冬らしい澄んだ空気と星と月。

 一応ここは都会の筈だから、普段なら星とかはそんなに見えないんだろうが……まぁ、景色がいいのに越した事はないだろう。

 そうして周囲の様子を眺めたり、携帯の時間を見ながら周囲を歩いていると、やがて時間は徐々に進んでいき、11:59分となり……やがて日付が変わる。

 日付が変わった瞬間、身体を妙な感覚が襲ってきた。

 この感覚には覚えがある。丁度昨日……それとも、もう一昨日と呼ぶべきか? ともあれ、あの妙な現象に引っ掛かった時に感じたのと同じものだ。

 つまり……

 

「やっぱりな」

 

 周囲を見回すと、先程まで俺の近くを歩いていた何人かがいた場所に、棺桶が存在している。

 

「今日がたまたまこの時間帯だったのか……それとも、日付が変わった瞬間にこの現象が起きるのか」

 

 呟くも、昨日の件を考えると恐らく毎日日付が変わった瞬間にこの現象が起きるのは間違いないと思われた。

 視線を月光館学園のある方に向けると、そこではこちらも昨日と同様に塔のような物が生み出されている。

 ……今更だけど、この現象になると生き物は棺桶になるのはともかく、機械の類も動かないんだな。

 周囲の建物全てから電気の類は消えており、信号も点いていない。ましてや、念の為にと携帯に視線を向けると、そちらも動きは止まっていた。

 

「これで決まり、か。……さて、そろそろゆかりを迎えにいった方がいいな。向こうでかなり焦れてるだろうし」

 

 呟き、影のゲートを生み出してそこに身体を沈めていくのだった。

 

 

 

 

 

「アクセル、来たわね。……どうやら、これで昨日偶然この現象に巻き込まれたって線は消えたと考えてもいいみたいね」

「らしいな」

 

 影から出てきた俺の姿に驚きながら、ゆかりはそう告げる。

 既にその手には弓を持っており、矢筒も背負っている。

 ……靴も持っているのは、何でなんだろうな。まぁ、この場合は靴を取りに行ったりしなくてもいいので助かるけど。

 ともあれ、戦う準備は万端……といったころか。

 ただし、着ている服が弓道をやる時の弓道着っていうのか? 袴っぽいのと、肩から鎧っぽいのを付けているのが、ちょっとどうかと思うが。

 

「あのな。これから戦いに行くんだから、せめてもう少し動きやすい服装をしたらどうだ?」

「え? そんなに変? これって結構動きやすいんだけど」

「……少なくても、その袴とかだと、いざって時に自分で裾とかを踏みそうだし、あのスライムもどきとかだとその辺りの隙間から這い上がってきたりしそうじゃないか?」

「う゛っ!」

 

 それは嫌だったのだろう。ゆかりは少し考えると、俺を一旦部屋の外に追い出してから、再び姿を現す。

 するとそこには、弓と矢筒はさっきまでと同じだったが、学校の体育で使うのだろうジャージを身につけたゆかりの姿があった。

 

「どう? これなら文句はないでしょ?」

「あー……そうだな。取りあえず今日のところはそれでいいとして、後で何か考える必要はあるな」

 

 出来れば軍人が使っているようなプロテクターの類があればいいんだが……ただ、ああいうのって、慣れないと動きにくいんだよな。

 見た目からしてそんなに打たれ強くないように見える以上、まずは敵の攻撃に当たらないようにしておいた方がいいか?

 それでも、やっぱり何らかの防御方法は考えておいた方がいい。

 どうせなら、今日の日中にその辺りを考えておけばよかったな。

 ただまぁ、どのみち今日あの塔に行くのは、あくまでも様子見でしかない。

 もし本当に危険なようなら、明日にでも日中に俺がゆかりの防具になりそうなものを探せばいいだろう。

 

「じゃ、行くか」

「分かった。……でも、どうやって行くの?」

「どうやってって……決まってるだろ?」

 

 そう告げ、俺は足下の影を広げていく。

 

「え? ちょっ!? きゃあっ! ちょっと、アクセル! 一体何をしてるのよ!」

 

 いきなり足下から影に沈んでいく感触に、ゆかりの口から悲鳴が上がる。

 

「何って、お前も俺が影を使って転移魔法を使えるのは知ってるだろ? ここから一気にあの塔のある場所……月光館学園に向かうんだよ」

「べ、別にこんなのを使わなくても、普通に歩いて行けば……」

「昨日もこの現象に遭遇したゆかりなら、時間制限があるのは分かってるだろ。まさか、街中で弓を持っている状態になりたいのか? 間違いなく警察を呼ばれるぞ」

 

 実際には、それこそいざとなったら弓や矢筒は空間倉庫に収納してしまえばいいんだが……その辺りは、言わぬが花といったところか。

 そうして、俺の言葉に反論を封じられたゆかりは、俺と共に影に沈んでいき……やがて気が付けば、俺とゆかりの姿は月光館学園の前にあった。

 まぁ、視線の先にあるのは学校の校舎ではなく、あの妙な塔なのだが。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

 

 改めて間近で塔を見上げていた俺は、隣で息を荒くしているゆかりに視線を向ける。

 

「どうした? これからこの塔の中に入るんだから、今からそこまで息を切らせてちゃ、いざって時にはどうにもならないぞ?」

「あ、あのねぇ!? 言う!? そういう事を言う!? いきなりあんな妙な体験させておいて!」

 

 がーっといった感じのゆかり。

 ……何だかこういうところを見ると、凛を思い出すな。

 レモン達との関係がどうなるかと思ったが、結局凛とレモンはあっという間に仲良くなった。

 文字通りの意味で裸の付き合いってのは大事なんだよな。

 しみじみとそう思った出来事だった。

 けど、その凛やレモン達を放っておいて、俺はこの世界に転移させられてきた。

 おまけに、W世界に続いてゲートがまた使えないときているのを考えると、またレモン達から迎えに来て貰う必要がある訳だ。

 ……まぁ、W世界で一度やった事だし、次は以前程に時間が掛からないと思う。

 思うんだが……ここでも問題になってくるのは、やはり時差だよな。

 W世界の時は半年強と1ヶ月半くらいの時差だったのを考えると、こっちではどうなる事やら。

 

「ちょっと、アクセル? どうかしたの?」

「いや、何でもない。それより準備はいいのか? なら行くぞ」

「あのねぇ……私の言葉は全部聞き流してそれって……まぁ、いいけど」

 

 溜息を吐いたゆかりを引き連れ、俺は塔の中に入っていく。

 そうして真っ先に目に入ってきたのは、エントランスとでも呼ぶべき場所だった。

 かなりの広さがあるが、そこは無人だ。

 いやまぁ、俺が知ってる限りだとこの現象の中で動けるのは俺とゆかりだけだ。

 だとすれば、このエントランスに他の誰かがいる可能性というのは当然ないのかもしれないが。

 

「けど、他に誰もいないってのは……正直どう思う?」

「誰もって、あのスライムもどきとかか?」

 

 ゆかりの問いに、そう言葉を返す。

 

「そう。てっきり、昨日のスライムもどきとかがいるんだとばかり思ってたけど……」

「なるほど」

 

 実際問題、もしこの塔があのスライムもどきの巣となっているのであれば、あのスライムもどきが街中に出る時にはここを通ってきたという事になる。

 だが、こうして周囲を見渡しても、どこにもあのスライムもどきや、その仲間と思しき姿はない。

 

「だとすれば、あのスライムもどきは偶然街中に出たんだろうな」

「偶然街中に出て、偶然あの現象の中でも動ける私と遭遇して襲ってきたって事? それだと、ちょっと信じられなくない?」

「偶然が3つ重ねれば、それは必然だって話があるけど……今回の場合、重なった偶然は2つだろ? なら、まだ偶然で済ませてもいいんじゃないか?」

「それは……そうかもしれないけど」

 

 不服そうなゆかりだったが、それでも俺の言葉にそれ以上反論はしてこなかった。

 あのスライムもどきには、この現象の中でも動ける人間を襲うような本能がある……という可能性も否定は出来ないが。

 

「とにかく、少なくても今のところはここにあのスライムもどきは出てこないんだ。なら、ここを拠点として使えば、特に問題なく行動出来る……と、思う。まぁ、拠点にするにしても、ここでテントとかを使って寝泊まりはする必要がないだろうけど」

 

 時計とかが動かないので、実際にこの現象がどのくらいの時間続いているのかは分からない。

 だがそれでも、昨日体感で感じた限りでは数時間………3時間以上、5時間未満ってところの筈だ。

 時計の類も動かないから、明確には分からないが。

 ともあれ、そんな時間であればここでテントを使って一晩睡眠を取るなんて事はする必要がない。

 だとすれば、結局のところこのエントランスで行うのは装備の最終チェックをしたり、作戦の最終確認をしたり……といったことくらいだろう。

 いっそソファ辺りを持ってくれば休める場所としても使えるかもしれないが、この塔はこの現象にならないと姿を現さないんだよな。

 だとすれば、もしここにソファを置いたままあの現象が終わればどうなるのやら。

 最終手段としては、俺の空間倉庫に収納するという手段がない訳でもないんだが。

 まぁ、今のところはそこまでする必要はないだろう。

 

「うーん、まぁ、この現象の時間の中で使う事があるかどうかは……微妙でしょうね」

 

 ゆかりも俺の意見には賛成だったのか、そう呟く。

 それから2人で周囲の様子を探してはみたのだが、生憎と特に何かおかしな事がある訳ではない。

 スライムもどきの姿もどこにもないのを考えると、やはりここには特になにもないと判断せざるを得ない。

 それとも、この塔を攻略していけば、その内ここに何か新しい施設なり、どこかに続く何かが……

 

「あ」

 

 改めて周囲を見回してみると、このエントランスの隅の方に何かがあるのに気が付く。

 このエントランスで、唯一何か意味がありそうな代物。

 

「ゆかり、あれ」

「え? ……あ。へぇ、あんな場所に何かあるわね」

 

 2人で話しつつ、そこにある妙な物を確認する為に向かう。

 機械っぽい感じの中に、どこか魔力を感じる。

 ……こうして見ると、やっぱりこの世界にも魔法とかがあるんだろうな。

 いやまぁ、あのスライムもどきを見てしまえば、今更実は魔法がありませんでしたとか言っても、ちょっと信じられないというのが正直なところだが。

 

「ともあれ……今のところは使い物にならないらしいが」

 

 そう、俺の言葉通り現在その機械は稼働しているようには見えない。

 それが、この機械に気が付くのが遅れた理由だろう。

 この機械を稼働させるには、何らかのトリガーのようなものが必要……だと思う。

 もっとも、そのトリガー……条件が何なのか分からない以上、現状ではどうしようもないのだが。

 

「ここにある以上、恐らく俺達にとっては有益な存在だと思うが……使えないんじゃな」

「そうね。それで、どうするの? あの階段を使う?」

 

 ゆかりが見ているのは、エントランスから上に続いている階段。

 それこそ、見て分かる程にこっちを待ち受けている……そんな印象すら受ける階段だ。

 

「このエントランスに何の手掛かりもない以上、あの階段を使うしかないだろうな。行くか?」

「そうね。私がこうしてアクセルと一緒に来ているのは、自分の力でこの妙な現象の正体を突き止めたいからだもの。それに、もしかしたら……おと……」

 

 何かを言いかけたゆかりだったが、その言葉は最後まで口に出さず、途中で止められる。

 何かあるのは分かっているが、ここで突っ込む必要は……ないか。

 

「まぁ、何度も言ってるように、今回はあくまでもこの塔がどんな場所なのかを確認する為の行動だ。ちょっと中の様子を確認出来て、少しあのスライムもどきとの戦いを体験したら戻ることになると思うぞ」

「……分かってる」

 

 真剣な……ただし若干力が入りすぎているような表情で頷いたゆかりは、握っている弓に力を入れる。

 大丈夫かね、本当。

 まぁ、何かあったら俺がどうにかするか。

 そう考え、空間倉庫から取り出したゲイ・ボルクを手に、階段へ向かって歩き出すのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1435
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1389

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