転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1733話

 光の繭が消えたかと思えば、次の瞬間ニーズヘッグの映像モニタに映し出されていたのは、サンクキングダムの首都、ニューポートシティだった。

 幸いにも、まだ首都は戦火に包まれている様子はない。

 勿論サンクキングダムの中にもトレーズに内応している者はいたのだろうが、それでも首都近郊では殆どいなかったか、いてもすぐに鎮圧されたか。

 ともあれ、こうして見る限りでは平和な光景と言ってもいい。

 

「サンクキングダムに到着だ」

 

 外部スピーカーのスイッチを入れてそう告げると、ドーリアンとヒイロ、それと他にも何人かのサンクキングダムの人間が、恐る恐るといった様子で離れていく。

 まぁ、まだ2度目の転移だからな。……いや、システムXNだけじゃなく、影の転移も含めれば3度目か。

 ともあれ、普段からシステムXNによる転移を多用しているシャドウミラーの面々や、フォールドという自前の転移システムを持つマクロス世界の人間と違い、このW世界で転移というのはまだ実用化されていない。

 そう考えれば、こうして心配性になるのも分からない事じゃない……のか?

 

『済まない、助かった。……また会おう』

 

 ドーリアンがニーズヘッグに向けて頭を下げているのを見ながら、俺は次の場所に転移するべくシステムXNを起動する。

 

「カトル、次は中東連合だ。以前俺達が行った場所でいいな?」

『え? あ、はい。そうですね。それでお願いします』

 

 トロワに聞いても良かったのだが、人当たりの良さという一面で考えればどう考えてもカトルの方が上だろう。

 

「なら、転移するぞ。……システムXN、起動。転移座標入力……OK、転移フィールド生成開始」

 

 ドーリアンとヒイロ、それ以外のサンクキングダムの面々が十分に離れたのを確認し、システムXNを起動する。

 これからサンクキングダムも色々と忙しくなるだろうが、それは向こうに頑張って貰うしかない。

 こっちはこっちで、色々とやるべき事があるのだから。

 ……まぁ、中東連合と同じく、いざとなったら連合軍経由で依頼を受けるという契約はしたので、本当に危なくなったらシャドウミラーに依頼をしてくるだろう。

 こちらに向かって深々と一礼してくるドーリアンを見ていると、やがて光の繭のような転移フィールドの生成が完了する。

 

「転移フィールド生成完了。……転移」

 

 その言葉と共に転移は完了し、次の瞬間ニーズヘッグの映像モニタに映し出されたのは……多くのMSが戦闘を行っている光景だった。

 一瞬出る場所を間違えたか? とも思ったが、周囲の状況を見る限り、ここは以前俺達が中東連合に協力した際にパーティを行った街で間違いない。

 しかも戦っているのはマグアナックとマグアナック。

 中にはトーラスやリーオーといったMSもいるが、その多くはマグアナックだ。

 

「……なるほど。まぁ、トレーズ派にとって中東連合の軍事基地は邪魔でしかないしな」

 

 リーオーよりも性能が高く、空を飛べないという難点はあれども純粋な性能ではトーラスに勝るとも劣らないマグアナック。

 また、中東連合という場所柄か、連携行動も上手い。

 今ではOZに追い抜かれたが、それでもコロニーの建設に大きな役割を果たしたというだけあって、高い技術力を持っているのは否定出来ない。

 影響力という意味でも、他の有象無象の勢力に比べればかなり高いのは事実だ。

 そしてこの世界で再び覇権を手に入れようとしている連合国に対しての友好な勢力でもある。

 そう考えれば、トレーズ派が連合軍との間に行われる戦いの邪魔になると判断し、中東連合をどうにかしておきたい……倒しはしなくても、連合軍との戦いに参戦出来ないようにしておきたいと考えるのは、寧ろ当然だろう。

 その結果が、これだった訳だ。

 

『そんな! 皆、何で……』

『カトル、俺達も行くぞ。俺達のガンダムを使えば、この戦いは終わらせられる。無駄な戦いにキャサリンを……皆を巻き込まなくて済むんだ』

『トロワ……うん。アクセル代表、僕達は行きます』

 

 映像モニタの向こう側でそう言ってきたカトルの言葉に、俺は口を開く。

 

「そうか、分かった。……ただ、そうだな。俺という存在を中東連合の連中にも見せつける必要があるからな。少しだけ手伝ってやるよ。……ファントム!」

 

 その言葉と共に、T-LINKシステムが俺の意志に従ってヒュドラからファントムを放つ。

 ……まぁ、俺の力を中東連合の連中にしっかりと見せておくというのが狙いの1つでもあるのは事実だが、より大きな理由としてはカトルを暴走させないようにするというのがある。

 原作でもそうだったけど、カトルは精神的に脆いところがあるからな。

 ここでそれを発揮されれば、こっちとしても色々と困るというのが正直なところだ。

 地球にいる以上、ウイングゼロを作るような事は出来ないだろうが……シャドウミラーとしても、友好勢力の軍事のトップが暴走するなんて真似は絶対に避けたい事態なのだから。

 折角敵がトレーズ派だけになったのに、そこに更に中東連合も加わるような真似は絶対に止めて欲しい。

 カトルが暴走したからといって、中東連合が確実にこちらと敵対するとは限らないのだが。

 それでも、カトル暴走の可能性は作らないに越した事はない。

 それに、シャドウミラーへの恩を押しつけるという意味でも決してこれは悪くない。

 T-LINKシステムによって俺の意思のままに動くファントムは、次々にトーラスやエアリーズ、リーオーといったMSの手足を破壊して動けなくしていく。

 マグアナックを攻撃しないのは、単純にどちらが敵なのか分からない為だ。

 中東連合は、その成り立ちから基本的にマグアナックを使用している。

 リーオーとかに比べても高性能な機体をこれだけ量産出来たのは、純粋にそれだけ中東連合が裕福だった事を意味しているのだろう。

 ともあれ、そんな理由でマグアナックについては俺は手出ししない方がいい。

 下手に手を出して、実は裏切り者ではなく中東連合側の機体でしたなんて事になったりしたら、ちょっと洒落にならないし。

 そんな危険を冒すくらいなら、それこそ確実に敵だと判明しているOZのMSを撃破した方がいい。

 

「……今更だが、一応聞いておくけど……リーオー、エアリーズ、トーラスといったOZのMSは中東連合を襲っている機体という認識でいいんだよな? 中東連合側がああいうMSを使わないという認識でOKか?」

『はい! 僕が知ってる限り、OZのMSは使ってない筈です。勿論研究用とか練習用にある程度購入はしていましたが……』

 

 カトルのお墨付きを貰ったと考えて、いいのだろう。

 

『ただ!』

 

 早速OZ製MSを撃破しよう。

 そう考えた俺がT-LINKシステムに意識を集中しようとした瞬間、再びニーズヘッグがカトルの声を拾う。

 

「どうした?」

『その、出来れば彼等を殺さないでくれませんか?』

「……本気か?」

 

 そう言いながらも、カトルの性格を考えればそれはしょうがないと判断してしまう。

 元々が非常に優しい……甘いと言ってもいい程に優しい性格をしているカトルだ。

 自分達を裏切ったとはいえ、それでも仲間を殺したくないと思うのは当然だろう。

 また、俺とカトルは緩やかな協力関係にはあっても、同じ勢力下ではないという事も、今回は影響している。

 その上、カトルは中東連合の中でも象徴的な存在であり、そのカトルの意志に反するような行動を俺がとった場合、後々悪影響が出てくる可能性は十分にある。

 これが、以前俺がSEED世界にいた時のように、同じ軍艦に乗っているキラだとかが、そんな事を言っているのなら、それこそ冗談じゃねえと切り捨てる事も可能だ。

 だが、今回の場合はこいつらを生かして捕らえても、結局のところその負債を払うのは中東連合だ。

 であれば、多少面倒であっても、カトルの要望を聞いておく方がいいだろう。

 

「仕方がないな。貸し1だぞ」

『……ありがとうございます!』

 

 俺があっさりと要望を受け入れたのが信じられなかったのか、一瞬の沈黙の後でカトルは嬉しそうに礼を言ってくる。

 中東連合の軍部を率いる立場にいるカトルに貸しを作ることが出来た。

 そう考えれば、寧ろこの取引は俺にとって大きな利益と言えるだろう。

 今の状況でカトルに何かをさせようという考えはまだないが、それでもいずれは何かを頼むような事があるかもしれない。

 そんなカトルに対し、俺がやるのは軽い手加減だ。

 T-LINKシステムを使い、ファントムはコックピットを狙うのではなく、四肢を、頭部を、武器を破壊していく。

 放たれるビームやレーザーは、次々にOZの戦力を無力化していった。

 実際に戦っているパイロット達は、何が起きているのかが全く理解出来ないのだろう。

 反乱を起こした者達どころか、中東連合側のMSまでもが戸惑ったように動きを止めているのが分かる。

 まぁ、気が付けば自分と戦っていたMSが突然四肢を切断されたり、頭部を切断されたり、武器を切断されてたりといった具合に動けなくなるのだから、それも当然だろう。

 MSを撃破するだけなら、それこそコックピットを狙えば一発で勝負が決まるのに対し、生かしたまま捕獲となるとかなりの面倒がある。

 手数が4倍……いや5倍、6倍と必要になるのだから。

 もっとも、やると決めた以上はこちらも妥協しない。

 T-LINKシステムにより、合計48基のファントムが戦場を縦横無尽に動き回る。

 すると、見る間にトレーズ派のMSは撃破されていく。

 勿論予定通りマグアナックには攻撃を仕掛けていないのだが、リーオー、エアリーズ、トーラスといったMSが戦闘不能になれば、当然のように中東連合のMS部隊には余裕が出来る。

 そして中東連合のパイロットであれば、敵がトレーズ派か、それとも自分の仲間かといったことを見抜くのは難しい話ではない。

 結果として、トレーズ派のマグアナックに対して数機で攻撃を仕掛ける事が出来るようになり、戦局はあっという間に中東連合有利になっていく。

 こうして見る限り、中東連合のMSパイロットの腕は決して悪くない。

 それを知る事が出来たというだけでも、こっちにとっては中々に興味深い戦場だった。

 最終的にここで起こっていた戦闘が終わるまでに、20分も掛かっていない。

 自慢するようだが、俺がいなければこの戦いは数時間単位のものになっていただろう。

 まぁ、カトルとトロワがいるし、ガンダムが戦場に姿を現せばそこまで時間は掛からなかったかもしれないが。

 ともあれ、戦闘が終われば……当然のように、中東連合のMSは今まで見た事がない異形のMSニーズヘッグに視線を向けてくる。

 正確にはMSではないのだが、このW世界にはMS以外の人型機動兵器のジャンルはないしな。

 戦場を縦横無尽に動き回っていたファントムがヒュドラの周囲に浮かんでいるのを見て、余程脅威に思ったのだろう。中東連合のマグアナックの何機かは、こっちにビームライフルの銃口を向けていた。

 こっちも大人しくやられる訳にはいかない以上、向こうが何か行動に出たら対応しないといけない。

 そんな訳で、ファントムの準備を整える。

 ……まぁ、マグアナックが使えるビームライフル程度では、ニーズヘッグに何重にも存在しているバリアを破れるとは思えないんだけどな。

 そうして、半ば一触即発の状態になった時……不意に周囲に声が響く。

 

『待って下さい! 彼は敵ではありません!』

『この声……カトル様!?』

『間違いない、カトル様だ!』

『カトル様ぁっ!』

 

 ……うん、そんな一触即発の状態がカトルの一声であっという間に消えてしまった。

 何なんだろうな、これ。物凄いというか……うん、俺が予想していた以上のカリスマ性だ。

 トレーズ教のレディ・アン程ではないにしろ、そのうちカトル教とか出来るんじゃないだろうな?

 もしそうなったら、中東連合との付き合いも考えなければいけなくなるな。

 

『あの機体に乗っているのは、皆も知っているシャドウミラーの代表、アクセル・アルマーさんです! 決して敵対しないようにして下さい!』

 

 そう叫ぶカトルの声に、周囲がざわめく声が聞こえてくる。

 まぁ、ここで行われたパーティには俺も参加してるしな。

 俺の顔を知っている奴がいてもおかしくはない。

 ……トールギスでもなく、ウイングゼロでもなく、このニーズヘッグに乗っているのが向こうにとって色々と理解出来ない事も多いだろうけど。

 ともあれ、それでもカトルの言葉は強い説得力を持っていたのか、やがてこちらにビームライフルの銃口を向けてきたマグアナック達も、それを下ろしていく。

 

「さて、じゃあここでやるべき事もやったし、俺は帰らせて貰うぞ」

 

 そう告げ、カトルから感謝の言葉を聞かされ、その場を後にする。

 ……ここでシステムXNを使っても良かったんだが、それだと中東連合の連中が過剰反応しそうだったしな。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1330
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1368

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