転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1706話

 海中の中、真っ先にウイングゼロが近付いていったキャンサーは、当然のように距離を開けようとする。

 元々が水中用として造られているだけあって、その動きは素早い。

 だが……それでも所詮は量産機。

 W世界の中でも最高性能を誇るMS、ウイングゼロを前にしては、キャンサーの動きは決して追いつけないものではなかった。

 見る間に近付いてくるキャンサーに対し、左手の外側に装備されているシールドをそのまま突き出す。

 シールドの切っ先、バードモードになった時はクチバシになる場所? いや、クチバシか?

 ともあれ、シールドの切っ先はMDのコックピットを見事に貫く。

 無人機のMDであっても、その制御システムはコックピットにある。

 そうなれば当然コックピットを破壊すればそれで撃破となるのは当然だろう。

 この辺、あくまでもMSをベースとして開発された機体故の弱点といったところか。

 シールドがめり込んだこともあり、一瞬ウイングゼロの動きが止まる。

 当然MDはそんな隙を見逃す筈もなく、魚雷をこちらに向けて発射してくる。

 だが、俺もそんな攻撃をみすみす食らう筈がない。

 強引にシールドを動かし、シールドに突き刺さったままのキャンサーを盾代わりに……いや、寧ろバット代わりにして魚雷を叩く。

 直後、キャンサーの身体が爆発する。

 それは俺に被害がなかったので問題はなかったが、魚雷を撃ったMDにとってもこの程度の攻撃は意味がなかっただろう。

 こちらに向け、次の瞬間再び魚雷がやってくる。

 その一撃を、ウイングバインダーを使って回避する。……前に出ながら。

 距離を縮めつつ魚雷を回避している俺に向け、再び攻撃を行ってくるキャンサー。

 これで、俺の機体がトールギスであれば……もしかしたら、MD側にデータがあったかもしれない。

 ああ、でも今日の戦闘でのデータが渡っている可能性はあるのか?

 ともあれ、こちらに向かって攻撃を仕掛けてくるキャンサーは、ウイングゼロを警戒はしているものの、そこまでの脅威と感じている様子はない。

 ツインバスターライフルを持っている右手はそのままに、左手でビームサーベルを抜き放ち……まだビームを展開しないまま一気に距離を縮め、そのままキャンサーの間近でビームサーベルを展開する。

 こちらもまたコックピットを一瞬で消滅させられ、海中に落下していく。

 ウイングゼロの能力なら海中でも普通にビームを展開出来るのだが……ビームサーベルのエネルギーを無駄に消耗する必要もないだろう。

 そんな風に考えながら、次々に近くのキャンサーに向かって攻撃を仕掛け、撃破していく。

 そんなこちらの攻撃に対処仕切れないのか、キャンサーは次第にその数を減らしていった。

 こちらから距離を取ろうとしているのかもしれないが……その動きは、稚拙と呼ぶに相応しい。

 これは?

 MDにしては、動きが悪いような……

 ここが水中だというのが、影響しているのか?

 いや、けどそれでも今のキャンサーの動きには違和感がある。

 ……そう、まるで水中での行動に最適化されていない……いや、されきっていない?

 そんな感じだ。

 

『アクセル、キャンサーの様子がおかしくない?』

 

 俺と同じ疑問を抱いたのだろう。綾子からの通信が入る。

 

「ああ、それは俺も感じていた。……恐らく、このキャンサーのMDシステム……AIは完全じゃないんだろうな」

 

 そう言いながら、ツバロフがトレーズ派に捕らえられていた事を思い出す。

 MDシステムはツバロフが中心になって進めていたものだ。

 勿論、ツバロフ1人でMDシステムを完成させた訳ではないのだろうが、それでもツバロフがMDシステムに対して一番深く理解していたのは間違いない。

 そうである以上、ツバロフがトレーズ派に捕まってしまえば、財団派にはMDシステムを開発する上で中心人物となるべき頭脳がいなかった……という事になる。

 この世界のツバロフとは会っていないので、あくまでも原作の描写で思い出すしかないが、それでもツバロフは偏執狂的なまでにMDシステムについて入れ込んでいた。

 だとすれば、そのツバロフがいなくなった状況でMDシステムを上手く扱えるのかという疑問もある。

 いや、現在の状況のままで運用する程度であれば、全く問題はないだろう。

 だが水中用MSのMDのプログラムという、今までは全く想定していなかったプログラムを組む事が出来るのかというのは……

 まぁ、MDの開発に人生を捧げてきたツバロフだけに、水中用MSに使うMDのプログラムの雛形とかがあっても不思議ではないが。

 そんな風に考えている間も、次々にキャンサー、パイシーズのMDは撃破されていく。

 

「こっちはMDだけだが、有人機に当たった奴はいるか?」

『何機かそれっぽいのはいたけど、MDを盾にしているのか前に出てこねえな』

『こちらは人形だけだ』

 

 デュオと五飛の通信は、ある意味予想通りのものだったが……

 

『アクセル、こっちに有人機が何機かいる。それも、あたしを執拗に狙ってくるんだけど!』

 

 悲鳴……いや、より正確には驚きの色を伴って通信がトールギスから送られてくる。

 一瞬何故有人機がトールギスに集中攻撃を? と思ったが……その理由はすぐに思いついた。

 トールギスがつい先日まで俺が乗っていたMSなのだから、今でも俺が乗っていると、そう思う者がいてもおかしくはないだろう。

 そして有人機ということは、恐らく前回俺達が戦った水中用MS部隊の生き残りがいる筈なのだから。

 あー……でも、原作だとアレックスもミュラーもトレーズにのみ忠誠を誓うとか何とか言ってたよな?

 もしかして、アレックスはトレーズ派にいたりする可能性もあるのか?

 もっとも、原作でそう言ったのは単純にゼクスに対する対抗心や反発心からっぽかった。

 だとすれば、財団派にいてもおかしくはないか。

 ……それに、ゼクスがトレーズ派に協力しているという可能性は十分にあるし。

 ともあれ、今俺がやるべき事は1つだけ。

 

「すぐにそっちに向かう。その有人機部隊の中にこの水中用MS部隊の指揮官がいると思うから、ここで逃さずに仕留めるぞ。……デュオと五飛も、MD部隊を片付けたら綾子に合流してくれ」

『ああ』

『了解』

 

 そんな2人の返事を聞きながら、俺は近くにいたMDの最後の1機をビームサーベルで左右に両断し、片付ける。

 よし、後は向こうだな。

 そのままウイングバインダーを使いながら、真っ直ぐに綾子の方へ……トールギスのいる方へと向かって進む。

 ちっ、戦っている間に大分離れたみたいだな。

 いや、寧ろ水中用MS部隊の方は最初からこれを狙っていたのか?

 俺達が援軍として到着するよりも前に、人数を集めてトールギスを集中攻撃して撃破する為に。

 まぁ、トールギスに対する作戦としては、決して悪いものじゃない。

 いや寧ろ最善に近いだろう。

 ……本当の最善は、どうにかして戦わなくても済むようにする事なのだろうが。

 っと、見えてきたな。

 トールギスを戦場から離そうとはしてたんだろうが、それでもこの短時間で本当の意味でトールギスだけを孤立させるような真似は出来なかったのだろう。

 それは、向こうにとっても誤算だったのか、それとも本当ならこの短時間でトールギスを撃破出来るつもりだったのか……その理由の有無は分からずとも、結果としてその狙いが外れたのは間違いない。

 キャンサーやパイシーズ、その数合計30機が、何とかトールギスを倒そうとして……うん? 確か俺達が最初に海中に潜った時、そこにいたのは全部で50機程だった。

 で、俺、デュオ、五飛がそれぞれ倒して数を減らしていったのだから、ここにこれだけの数がいるのはおかしい。

 だとすれば、俺達の存在を知り、慌てて援軍を派遣したといったところか。

 まぁ、俺が言うのもなんだが、シャドウミラーがやって来たのだ。向こうにとっても、今あるだけの戦力ではどうしようもないと判断したのだろう。

 だとすれば……当然これだけのMDやMSを運用する為には、拠点が必要となる。

 そしてこのような状況で拠点とするには……普通の船ではなく、潜水艦の可能性が高い。

 もし普通の船……いわゆる海上艦だったら、トーラスと戦っているカトルやトロワがそれを見逃す筈もないだろうし。

 なら……これは絶好の好機でもあるな。

 

「綾子、聞こえているな? 俺はこれからこのMS部隊を運用している潜水艦の方を始末する。母艦がなくなれば、こいつらは逃げる足や補給する場所を失うだろうし」

 

 勿論ここは宇宙ではないので、母艦の消滅が死と同義語という事にはならない。

 だがそれでも、MSにしろMDにしろ、あくまでも補給するような場所がなければ、戦力として役には立たないだろう。

 ましてやこの海はアラブ海。

 つまり、中東連合のお膝元と言ってもいいのだから。

 

『潜水艦? ……分かった。デュオと五飛もそのうち来てくれるだろうし、あたしの方はそれまで持ち堪えるくらいは出来ると思う。アクセルの好きにやってくれ』

「おう。……ただ、本当にどうしようもなくなったら連絡を寄越せよ。こっちもすぐにそっちに援軍に向かうから」

『ふんっ、このくらいの相手にアクセルの力は必要ないよ。あたしだけでも十分にやれるさ』

 

 そう告げる辺り、綾子も自分の実力に自信を持ってはいるのだろう。

 これが行きすぎになれば自信過剰になってしまうんだが……聖杯戦争を戦い抜き、サーヴァントといった存在を知っている綾子は、自分の実力を過剰に見積もるような真似はしないだろう。

 そこには綾子の性格的なものもあるだろうが。

 勝って兜の緒を締めよって奴だな。

 

「分かった。じゃあ、ここは任せる」

 

 それだけを告げ、俺はその場を後にして戦場から離れていく。

 MDかMSか分からないが、そんな俺の様子に気が付いた機体も何機かあったようだった。

 だが、すぐにトールギスがそんな機体に攻撃を行い、注意を引き付けていく。

 それを見ながら海中を進んでいくと……やがて五分くらいでレーダーに反応があった。

 

「いたな」

 

 その反応は、間違いなく潜水艦のものだった。

 OZで使用されている機体のデータはウイングゼロに登録されているので、間違う筈もない。

 潜水艦の数は、10……いや、13隻。

 財団派は大分戦力が減ってきていると思ってたんだが、それでもこれだけの数を出せるだけの余裕はあったのか。

 腐ってもロームフェラ財団の下部組織だけの事はある。

 潜水艦もそうだが、海上艦であれ、宇宙船であれ、この手の類は1人や2人で運用は出来ない。

 数十人規模の人数が必要になるし、何より熟練の技術者も必要になる。

 海上艦であればともかく、潜水艦で技術の足りない者を使えばどうなるか……下手をすれば、いや下手をしなくても海の藻屑と化してしまうだろう。

 それだけ潜水艦には熟練の技術者が必要になるのに、まさか今の財団派でこれだけの潜水艦を運用出来るというのは……素直に驚きだ。

 恐らくだが、それだけ今日の昼間の戦いで中東連合とシャドウミラーによって負けたのが堪えたのだろう。

 財団派の権威が失墜しそうなのが、向こうは我慢出来ず……出せるだけの戦力を出して来たといったところか。

 勿論これが財団派の……ロームフェラ財団に出せる全ての戦力という事ではないだろう。

 だが、それでもここで潜水艦が全滅すれば、それは財団派にとって大きな……それこそちょっとやそっとでは取り返しの付かないダメージとなるのは間違いなかった。

 

「さて、なら……そろそろ消えて貰おうか。この海に住んでいる魚たちにとって、これ以上ない住処となるだろうし」

 

 実際、何で見たのかは忘れたが、古くて使い物にならなくなった船を海に沈めて魚を集める為の魚礁にするという方法があるらしい。

 勿論そうやって沈める際には、害になるような物は全て取り除いているのだろうが。

 そう考えると、この潜水艦を沈めるのはこの海にとって決していい事ではないのかもしれない。

 もっとも、向こうは海に沈められたくないのだろう。

 潜水艦13隻が、一斉にウイングゼロの方に艦首を向けると、魚雷を放つ。

 その数、優に100を超えているだろう。

 MDであっても、普通なら攻撃を回避するのは難しいだろう集中攻撃。

 だが……残念ながら俺が乗っているのはウイングゼロで、俺はシャドウミラーを率いるアクセル・アルマーだ。

 

「食らえ」

 

 ウイングバインダーを使って急制動し、そのまま右手のツインバスターライフルを構え……一瞬にして狙いを付け、トリガーを引く。

 威力を大分落としているとはいえ、本来ならコロニーを一撃で破壊するだけの威力を持つビームだ。

 水中で威力を弱めつつも、魚雷を呑み込み……潜水艦8隻を呑み込み、爆発と共に消滅させるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1195
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1341

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