転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1675話

 一度改修作業と新規製造の件が決まると、事態は俺が予想していたよりも遙かに早く進んでいった。

 元々ピースミリオンには各種資材……今まで連合軍の依頼を引き受けて得たガンダニュウム合金といった物が多数運び込まれていた。

 また、ハワードを呼び寄せた時に、当然のように各種機器もシャトルで持ち込まれており、ドクトルSとその部下達が持ってきた資材や機器もある。

 こうも早く設計が終わるとは思わなかったが、それでも改修やウイングゼロの建造はピースミリオンの中でやるつもりだったので、特に問題なく作業は進んでいた。

 ピースミリオンの中には連合軍の整備員達もそれなりの数がいたが、そちらも貴重な人手として使われている。……まぁ、俺が提案した通り、重要な技術情報の類には殆ど触らせていないみたいだが。

 ただ……当然そうなれば問題も出てくる訳で。

 

「ねぇ、アクセル。デスサイズとシェンロンガンダムが改修作業に入って使えなくなったけど、防衛戦力的に問題はないのかって何人かに聞かれたんだけど……どう?」

 

 ピースミリオンの食堂で料理をしながら、凛が俺にそう尋ねてくる。

 一応ピースミリオンでも食事は出来るようになっている。なってはいるのだが……人手不足である以上、当然のように食事はハンバーガーのようなファーストフードがメインとなってしまう。

 だが、それでも美味い料理を食いたいのならどうするのか。

 簡単だ。出来る相手に作って貰えばいいのだ。

 そんな訳で、現在俺と綾子の視線の先では凛が中華鍋を振るっていた。

 

「問題ないかって……一応トールギスとトーラスは両方使えるままだぞ? どこかに攻め込むのならともかく、防衛するって意味なら十分だと思うんだけどな。ピースミリオンのビーム砲も使えるようになってるし」

 

 そう言いながら、何を危惧してるのかというのは、分かってしまう。

 実際には攻撃をするのなら今の状況でも何とかなるのだが、防衛するには手数が足りないのだ。

 幾らトールギスの性能が高くても、四方八方から攻撃されれば、ピースミリオンが巨大なだけに守るのが難しい。

 それでも防御をどうにかするには……先手必勝で襲ってきた相手に対して最初に俺が突っ込むのが一番手っ取り早い。

 ただ、現在はMDが主力になっている。

 もし俺が真っ先に突っ込んで敵指揮官機を撃破しても、MDはAIだけにその動きを止めはしない。

 どうしても止めるのなら、撃破ではなく鹵獲して脅してMDを止める……といった方法か。

 勿論そうなれば向こうもこっちに対する攻撃手段を握っている訳で、そう簡単に手打ちという訳にはいかないだろうが。

 

「ふーん。でも、大丈夫だと思うけどね。そもそもピースミリオンを見つけるのがまず難しいし」

 

 羨ましそうに料理をしている凛を見ながら、綾子が呟く。

 綾子も料理は出来ない訳ではないのだが、それでもやっぱり純粋に料理の腕となれば凛に劣る。

 特に凛が得意としている中華料理に限っていえば、綾子は全面降伏だろう。

 ……ちなみに、当然俺も料理で凛に勝てるとは思っていない。

 俺に出来る中華料理なんて、それこそ麻婆豆腐の素とかそういう半分くらい出来てるような奴を買ってきて作るくらいなのだから。

 

「ステルスね。けど、このピースミリオンはかなり昔の艦なんでしょ? なら、そこに使われているステルスも、当然かなり古い技術になるんじゃない?」

「ああ、その心配はいらないぞ。プロフェッサーGが色々と手を加えてたみたいだから」

 

 漂ってくる香りに空腹を覚えながら言葉を返す。

 デスサイズを開発したのを見れば分かるように、元々プロフェッサーGはステルスの権威だ。

 原作ではプロフェッサーGはリーブラに捕らえられていたが、今はピースミリオンにいるんだから、その能力を活かさないという手段はなかった。

 まぁ、それでも完全にピースミリオンに集中していた訳ではないのだが。

 やっぱり一番力を入れていたのはデスサイズの改修であり、ウイングゼロの設計だ。

 その合間に……もしくは息抜きにピースミリオンのステルス性能を上げ、今のピースミリオンはステルス性能に限って言えば、原作よりも明らかに上になっている。

 ドクトルSの火器管制でビーム砲とか武装も強化して欲しかったが……残念ながらそっちは手つかずだ。

 

「ふーん。なら、そのステルス性能で敵に見つかる可能性は少ないって訳?」

「ああ。勿論絶対に見つからないって訳じゃないけど……」

「ここかぁっ!」

 

 俺と凛の会話に、唐突に誰かが割り込んでくる。

 視線を食堂の入り口に向けると、そこにはデュオと五飛の姿があった。

 

「どうしたんだ、2人で。機体の改修作業の方はいいのか?」

「ああ。俺達がやるべきところは、今のところそう多くないからな。……じゃねーよ! 何だってこんなにいい匂いをさせてるんだよ! アクセル達だけ羨ましいだろ!」

 

 あー……なるほど。匂いに釣られてやってきたのか。

 一応換気扇を使ってはいるんだろうが、元々中華料理ってのは匂いの強い料理が多い。

 それを嗅ぎつけてもおかしくはない。

 

「……はいはい、あんた達の分くらいならあるわよ」

「嘘だろ? 凛が料理をしてる……だと……」

「あら、何を言いたいの? ふふっ、何だかとっても興味あるわね」

 

 料理の匂いに釣られて食堂に突入してきたデュオだったが、まさか凛が料理をしているとは思わなかったのか、驚愕の声で叫ぶ。

 せめて口の中だけで言っておけばよかったものを……しっかりとその叫びは凛の耳にも届いていた。

 ……うん、哀れだな。

 

「あっ、いや、別に俺はそんなつもりは……」

「はいはい、もうそろそろ出来るから、あんた達も席に着きなさい」

「え? あ、うん」

 

 てっきり何かされるかと思ったのだろう。怯えた様子のデュオだったが、凛が予想外にあっさりと自分を許した事に驚きながらも、席に着く。

 ……一緒に食堂に突入してきた五飛の方は、凛の姿を見て驚いた様子だったがそれでもデュオのように直接驚きを口にしたりはしなかった。

 この辺がデュオと五飛の性格の違いといったところか。

 そうして俺達が席に着くと……うん? 料理が出来たと思ってたけど、また凛が中華鍋を振り始めた?

 多少疑問に思ったが、それでもすぐに料理は完成し……やがてテーブルに何皿も並べられていく。

 水餃子、酢豚、青椒肉絲、エビチリ、回鍋肉、八宝菜、麻婆豆腐。

 典型的な中華料理の数々だが、この短時間で出来たとは思えない程の量。

 どれも湯気を立てており、食欲を刺激する香りを周囲に漂わせていた。

 

「はい、それとこれ」

 

 最後に出されたのは、白米……もしくは銀シャリと呼ばれているものだ。

 中華料理に白米というのはジャンル的にはどうかと思うのだが……それでも日本では普通のことだし、何より美味そうなのは間違いない。

 そうして凛が俺の隣に座る……前に、何故かデュオの前にだけ麻婆豆腐の入った皿を置く。

 

「え? 何だよこれ?」

「デュオの麻婆豆腐よ。デュオはこれを食べてからでないと、他の料理を食べちゃ駄目ね」

「ちょっ、待てよ、おい! 何かこれ麻婆豆腐っていうか、溶岩の中に豆腐が浮いてるんだけど! しかも痛っ! 何だか湯気が目に入っただけで痛いぞ!?」

「デュオの麻婆豆腐よ。デュオはこれを食べてからでないと、他の料理を食べちゃ駄目ね」

「おい、ちょっと待て! 本気か!?」

「デュオの麻婆豆腐よ。デュオはこれを食べてからでないと、他の料理を食べちゃ駄目ね」

 

 ……まるでRPGで出てくる村人が何度話し掛けてもここはどこどこの村ですとしか言わないように、凛は同じ台詞を繰り返す。

 

「食えるのか、あれ?」

 

 麻婆豆腐を見ながら思わず呟くと、凛は俺の隣で笑みを浮かべる。

 

「綺礼は喜んで食べてたわよ。だから大丈夫」

「……そうなのか」

 

 いぢめっ子の笑みを全開にしている凛を見れば、俺はそれ以上の言葉を口には出来ない。

 というか、もしここで下手に凛の機嫌を損ねるような真似をすれば、あの地獄麻婆豆腐が俺にも振る舞われる可能性があるのだ。

 その危険を考えれば、ここは大人しくデュオを生贄に捧げた方がいいだろう。

 実際、綾子と五飛の2人も俺と同じ意見なのか、デュオの方は見ないまま料理に手を伸ばしている。

 うん、まぁ……凛を相手に口を滑らせたんだし、仕方がないか。

 自分を無理矢理そう納得させると、俺は大皿から回鍋肉を取り分ける。

 

「相変わらず凛の料理は美味いな……特にこの水餃子はつるんとした食感と、食べた時に口に広がる具の肉汁が……」

 

 水餃子を食べている綾子が、幸せそうに……それでいて、やはり少し羨ましそうに呟く。

 五飛は特に口を開かず、ただ無言で料理を口に運ぶ。

 だが、その口に運ぶ速度を考えれば、不味いとは思ってないのだろう。

 俺もまた回鍋肉と白米で幸せに浸る。そしてデュオは……

 

「辛ぁっ! あ、でも美味い!? 辛い美味い辛い美味い!?」

 

 デュオが悲鳴を上げながら……それでいながら、美味そうに真っ赤な麻婆豆腐を口に運ぶ。

 一口食べると顔が真っ赤になり、白くなり、青くなり、再び赤くなる。

 そして口の中の麻婆豆腐を呑み込むと、殆ど条件反射のように新たにレンゲで皿の中の麻婆豆腐をすくって口に運ぶ。

 その麻婆豆腐に、やはりまた顔を赤くし……といった事を繰り返しているのだ。

 本人はそこまで気にしている余裕はないんだろうが、傍から見ると物凄い不気味な感じだな。

 まるで……そう、まるで麻婆教のような宗教に嵌まっているような……

 

「ふふっ、喜んで貰えて何よりね。もしよかったら、アクセルも食べる? まだあるわよ?」

「いや、いい」

 

 凛の言葉に、即座にそう返す。

 取りあえず俺はああいう麻婆豆腐を食べたいとは思わない。

 普通の……人間が食えるような麻婆豆腐で十分だ。

 何だか今のデュオを見ていると、混沌精霊の俺でもノックアウトしそうな麻婆豆腐に見えてくる。

 勿論、実際には全く問題なく……いや、もしかしてあの麻婆豆腐って実は魔力を使って何か細工されているのか?

 そう考えれば、こうしてデュオがレンゲを止めないの理解出来るけど。

 凛に聞けば答えてくれるかもしれないが、逆に藪蛇になりそうな気もするので、俺は大人しく目の前にある大皿から麻婆豆腐を取る。

 

「あら、そう? 綺礼も好きだったし、衛宮君なんかこの麻婆豆腐を食べたら嬉しくて身体を震わせてたわよ?」

 

 それって、別の意味で身体を震わせてたんじゃないか?

 そう思ったものの、どことなく怖くて聞くに聞けない。

 もっとも、それだけの威力があるのはあくまでもデュオが食べている麻婆豆腐だけだ。

 他の中華料理は、普通に美味い中華料理でしかない。

 

「あー……そうだな。向こうの世界に戻る事があったら、また作ってやればいいんじゃないか?」

「桜が許してくれるかしらね」

 

 分かっててやってないか?

 いや、ここで余計な事に口を挟めば、それこそ地雷になってしまう。

 地雷は、見えないからこそ地雷なのだから。

 

「うん、青椒肉絲も美味いな。何だか牛肉がしっとりしてるけど……」

「それは下準備に手間を掛けてるのよ。中華料理は、その多くが火の芸術と呼ばれる程、一気に強く炒めるけど……下準備もそれなり以上に重要なのよ。……うん、美味しい」

 

 水餃子を口に運んだ凛は、その味に満足そうに頷く。

 こうして見ると、普通に料理の上手い恋人なんだけどな。

 必死に麻婆豆腐を貪っているデュオから目を逸らしながら、そう考える。

 

「何だかいい香りが……」

 

 不意にそんな声が聞こえ、そちらに視線を向けるとそこにはサリィとシルビアの姿があった。

 デュオや五飛と同じく、香りに誘われてやってきたらしい。

 

「あら、2人共。よかったら食べていく?」

「お姉様? そう言うって事は、もしかしてこのお料理は……」

「ええ。私が作ったものよ。どう?」

「是非!」

 

 案の定と言うべきか、凛の手料理と聞いてシルビアが真っ先にそう告げる。

 相変わらず、シルビアは凛が好きだな。

 まぁ、元々お嬢様……というか、純粋な性格の持ち主のシルビアだ。

 凛というのは、そんなシルビアにとってまさに憧れの存在なのだろう。

 ……確か、俺が聖杯戦争に参加していた時、凛のクラスにも同じような奴がいたな。

 三人組の女の、一番小さい奴。

 何だかんだと、俺とはそんなに関わり合いがなかったけど。

 

「……凛。その、お料理をご馳走になるのはいいんだけど……デュオは……」

 

 顔色を変えながら麻婆豆腐に熱中しているデュオの様子に、サリィは何かを言いそうになるも、それ以上は口にしない。

 この辺り、賢明な判断と言えるだろう。

 うん、本当に懸命な判断と言ってもいい。

 もしここで何かサリィが口にしていれば、恐らく色々と酷い目に遭っただろうし。

 ともあれ、こうして俺達は凛の手料理を楽しむのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1130
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1328

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