転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1628話

「うわぁ。何だか懐かしい……って、気はあまりしないわね」

 

 MS輸送機の窓からニューエドワーズ基地を見て、凛がそう告げる。

 

「だろうな。そもそも、俺達がこの基地を拠点にしてたのなんか、ほとんどないし。どちらかと言えば、ルクセンブルク基地の方がずっとそういう風に感じると思う」

「アクセルの言う通りだな。あたしも、この基地を見ても特にそういう感じは覚えないし」

「あら、そう? ……デュオと五飛はこのニューエドワーズ基地に対して色々と思うところがあるみたいよ?」

 

 小さく笑いながら呟く凛に、デュオはソファに座りながらそっと視線を逸らし、五飛はただ黙って目を閉じる。

 まぁ、その気持ちは分からないでもない。

 何しろ、OZの情報操作に踊らされて襲撃してしまったのだから。

 もしあの戦いで俺が出なければ、恐らくノベンタを含めた連合軍のトップ達はガンダムに殺されていただろう。

 そして原作のようにOZのオペレーション・デイブレイクが成功し……結果として、この歴史は原作と同じ流れを辿っていた筈だ。

 いや、前もってOZに対する不審から各基地の戦力が増強されていたのを考えると、原作よりも激しい戦いになっていたか?

 ともあれ、その辺はあまり面白くない事態になっていたのは確実だ。

 それを分かっているからこそ、デュオと五飛は居心地を悪そうにしているのだろう。

 笑みを浮かべる凛に、そっと視線を逸らすデュオと、目を閉じて瞑想に逃げる五飛。

 そんなやり取りを、綾子とサリィは口元に笑みを浮かべながら見守り……やがて、MS輸送機はニューエドワーズ基地に着陸する。

 そしてMS輸送機から降りると、真っ先に何人かの軍人がこっちに近寄ってきた。

 何回か見た事があるその人物は、確かベンティの直轄か何かだったと思う。

 

「お久しぶりです、アクセル代表。その、早速ですがノベンタ元帥、ベンティ将軍がお待ちしてますので、案内してもよろしいでしょうか?」

「俺だけか?」

「はい。取りあえずアクセル代表と話を纏めておきたいと。ただ、他にも何人かは別に用事があると聞いています」

 

 そう告げた軍人が視線を向けたのは、サリィと凛。

 なるほど。サリィは連合軍の軍人として色々と打ち合わせをする必要があって、凛の方は報酬……ガンダニュウム合金に関しての交渉か。

 

「分かった。じゃあ、綾子達は……どうする?」

「うーん、特にやるべきことがないのなら、機体の改修作業でもちょっと見てるよ。五飛とデュオもそれで構わない?」

「あー、うん。俺はどのみちこの基地だと知り合いとかもいないし、それでいいのなら構わねーよ」

「俺もそれで構わん」

「って、事で」

 

 俺と凛とサリィ以外は機体の様子を見る事になった。

 まぁ、特に何か不具合の類がある訳でもないんだが、俺達がいたのは海岸沿いの基地だ。

 海中での戦いが終わった後で一応洗ってはいるが、念には念を入れて機体のチェックをしておいた方がいいのは間違いない。

 それに綾子が言ってるように、今まで使ってた機体を宇宙でも使えるように改修する必要がある。

 もっとも、原作でサンドロックやヘビーアームズにしたような強化改修ではなく、純粋に宇宙で使用出来るようにするだけなので、そう時間は掛からないのだが。

 特にこのニューエドワーズ基地は、現在連合軍の本拠地となっているだけあって腕利きの整備員も多い。

 純粋に整備員としての腕となると、シャドウミラーと行動を共にしている面々も決して負けてはいないのだが。

 ともあれ、どっちの腕が立つのかは分からないが、それでも整備員同士の交流は決して損にはならない筈だ。

 こうして、俺達は二手に分かれて行動を開始するのだった。

 

 

 

 

 

「あなたが……アクセル代表ですか?」

 

 そう声を掛けてきたのは、金髪の女。

 年齢としては、恐らくまだ10代後半といったところだろう。

 凛は既に今回の報酬について連合軍の担当と交渉をする為に呼び出されており、サリィの方も今までの行動の詳細な報告の為に現在ここにはいない。

 その一方、ノベンタ直轄の俺ではあっても、連合軍の元帥のノベンタや地上の軍を纏めているベンティは色々と忙しく、会いに来たからといってすぐに会える訳ではない。

 勿論向こうからこっちを呼んだ以上、最優先で会えるようにスケジュールの調整はしているのだろうが……それでも、すぐにというのは無理だった。

 そんな訳で、俺は通された部屋で紅茶を飲みながら各種ケーキを食べ、TVを見ながらゆっくりするという……とてもではないが現在連合軍が置かれている状況を忘れ去るかのような優雅な時間を過ごしていた。

 そんな俺に話し掛けてきたのが、目の前にいる金髪の女だったのだが……うん? この女、どこかで見た記憶があるな。

 

「えーっと……悪いけど、初対面だよな?」

「はい。ですが、お爺様からアクセル代表の話はいつも聞かされていましたから、こうして会うと初対面だとは思えませんね」

「お爺様って……」

 

 その言葉で、俺は目の前にいるのが誰なのかを理解した。

 金髪のストレート、広めのおでこ、おっとりとしている顔付き……そして何より見覚えのある人物で、お爺様。そこまで考えれば、目の前にいるのがノベンタの孫娘、シルビア・ノベンタであるというのが分からない筈がない。

 ただ、俺がシルビアを見てシルビア・ノベンタと判断出来なかったのは、その服装にある。

 俺の知っている……正確には原作知識にあるシルビア・ノベンタという人物は、スカートを始めとして女らしい私服を着ていた。

 原作ではヒイロが間違って殺してしまったノベンタの仇討ちに、自分の命を委ねるという行為をする為に拳銃を受け取り、構えるも……結局その優しい性格から撃つ事が出来なかった人物。

 そんな優しい筈の人物が今身につけているのは、連合軍の軍服。

 ……それで印象が違ってしまい、俺は目の前の人物をシルビア・ノベンタだとは認識出来なかったのだろう。

 

「シルビア・ノベンタといいます。お爺様から、アクセル代表のお相手をしろと、そう言われまして。その、座ってもいいですか?」

「ああ。……言い忘れてたな。俺はアクセル。アクセル・アルマーだ」

「ええ。先程も言いましたが、お爺様から色々と聞かせて貰ってますから」

 

 笑みを浮かべ、シルビアは俺の向かいに座る。

 ノベンタの孫娘でお嬢様だからなのか、紅茶を淹れるのは得意らしい。

 テーブルの上にある器具を使って、座ったままでありながら素早く自分の分の紅茶を淹れる。

 

「ふぅ……いい茶葉ですね」

「そうか? ……まぁ、そうなんだろうな」

 

 連合軍にとって最重要人物の俺に出す茶葉だ。少しでも気分良く雇われる為に、最高級の物を出してもおかしくはない。

 ……俺の舌では、粗茶と最高級の紅茶の差は大して分からないんだが。

 そうして数分の間、俺とシルビアの間には紅茶を飲む時間だけが過ぎていく。

 

「で、何だって元帥の孫娘がここにいるんだ?」

「え? あ、はい。実は私、今度サリィ少佐と一緒にシャドウミラーと行動を共にする事になりまして」

「……は?」

 

 シルビアの口から出て来たのは、俺にとっても完全に予想外の言葉だった。

 いや、それも当然だろう。俺の認識だと、シルビアはあくまでも一般人でしかない。

 軍服を着ている以上、軍人だというのは間違いないんだろうが……それでも、意表を突かれたのを隠す事はできない。

 ましてや、サリィと一緒に俺達と行動を共にするとなれば、それは一体どういう事だ、と。そう思ってしまっても、おかしくはないだろう。

 

「本気か? 俺達はシャドウミラー……連合軍に雇われている傭兵だぞ? それもただの傭兵じゃなくて、現状連合軍では最強の部隊だ。つまり、俺達が行く場所は例外なく激戦区となる」

 

 ルクセンブルク基地の攻略しかり、OZの水中用MS部隊の対応しかり、そして今度の宇宙におけるバートン財団しかり、だ。

 ノベンタも、何を考えて自分の孫娘を好んで死地に送るような真似をする?

 勿論シャドウミラーは精鋭だ。

 ガンダムが2機に、半サーヴァントの能力でガンダムのパイロットに近い操縦技術を持つ綾子、そして俺という風に、戦力的に見れば全く問題はない。

 だが、だからと言って、シャドウミラーに自分の孫娘を送るか?

 シルビアはその動き方を見れば、軍人として鍛えられている訳ではないのは明らかだ。

 軍人という訳ではなく、一般人が軍服を着ているだけ……というのが正しいだろう。

 

「アクセル代表……いえ、アクセルさんが言いたいことは分かります。私がこのまま一緒に行っても、役に立つとは限りません。ですが、お爺様……ノベンタ元帥はそれでも私にシャドウミラーと同行するように言いましたし、私もそれは望むところです」

「……なるほど」

 

 その言葉で、何となく今回の件の裏が見えてきた。

 OZとの戦いが続いている中でバートン財団という勢力まで出て来た以上、連合軍にとって絶対に避けたいのは俺達シャドウミラーが連合軍から離れていく事だろう。

 その理由の幾つかに、事態をきちんと把握していない、もしくは中途半端にしか把握していない軍人の余計な行動がある。

 あるいは把握していても、外様のシャドウミラーに頼りたくはないと、そう思う者も決して少なくはないだろう。

 そんな中で、シルビアというノベンタの孫娘がシャドウミラーと一緒に行動していればどうなるのか。

 権威主義の軍人であれば、その存在が邪魔となってシャドウミラーに余計なちょっかいを掛ける事は出来ない。

 下手にシャドウミラーにちょっかいを出し、その結果としてシルビアが怪我をし……ましてや死んでしまったりしたら、まさに身の破滅だろう。

 それ以外にも、ノベンタとしてはハニートラップ的な意味が……うーん、あの温厚なノベンタが孫娘の身体を使って俺を籠絡しようとするハニートラップを仕掛けてくるか?

 こう言うのもなんだが、シルビアはとてもではないが男女間の駆け引きに長けているようには見えない。

 ミイラ取りがミイラになる……というパターンしか思いつかないんだが。

 だとすれば、ハニートラップの件は、俺の穿ち過ぎか?

 

「ノベンタも、随分と大胆な決定をしたものだな」

「そうですか? 私はお爺様のお役に立てて嬉しいです。今までシャドウミラーに派遣されていたサリィ少佐は、非常に有能で連合軍に対する高い忠誠心を持っていると聞いています。ですが、あくまでもサリィ少佐はただの軍人。お爺様の孫娘の私がシャドウミラーと行動を共にする事で、連合軍がシャドウミラーをどれだけ頼っているのかを内外に示す事が出来ます」

 

 そう告げるシルビアは、決して他人から言われて嫌々俺達と行動を共にしようとしているのではなく、自分の意志でそう決めたのだと……そう態度で示していた。

 

「それに、私は一度アクセルさんに会ってみたいと思っていました」

「……俺に?」

「はい。お爺様から、アクセル代表がいなければ、恐らく連合軍はOZに負けていただろうと、そして自分は死んでいただろうと、そう聞かされています」

「そうだな」

 

 シルビアの言葉は、決して間違っていない。

 事実、原作でノベンタはヒイロによって殺されていたのだから。

 この歴史でも、俺達が介入していなければ同じ結果になった可能性は非常に高い。

 

「ふふっ、自信家なんですね。……ですから、一度アクセルさんにこうして直接お目に掛かってお礼を言いたかったんです。アクセルさん、お爺様を守って下さり、ありがとうございました」

 

 深々と一礼するその様子は、決して表向きのものだけという訳ではなく、心からの態度のように思えた。

 

「あー……うん。まぁ、何て言えばいいんだろうな。雇われの身としては、雇い主を守っただけだ。そもそもの話、あそこに俺がいなくてもノベンタが死ななかった可能性もあるだろ」

「それでも、死んだ可能性が高いのは事実です。アクセルさんはお爺様を助けてくれた恩人なのは間違いありません」

 

 何なんだろうな、このやりにくさ。

 根っからの善人というか、そんな感じ。

 利己主義とも言える俺とは確定的に合わない性格をしている筈だが、それでいてこうして話していても嫌悪感の類がある訳じゃない。

 不思議な魅力の持ち主と言ってもいいだろう。

 

「まぁ、お前がそう思うのならそれでいいさ。好きにしろ。こっちと友好的に接するのなら、悪い気はしないし。ただ……俺達を勝手に正義の味方だとでも思って、後で失望しても知らないぞ?」

「勿論です。私もお爺様の孫として、この世が綺麗なものだけで出来ている訳でないのは知っていますから」

 

 そう言って笑みを浮かべるシルビアは、正直本当にそれを理解しているのか? という疑問を覚える。

 だが同時に、本当にそれを理解した上で友好的な態度を取ってくれるのであれば、それに越した事がないというのも事実だ。

 

「失礼します、ノベンタ元帥の用意が出来ました」

 

 シルビアと話していると、ここまで俺を案内してきてくれた軍人がノックをしてから、そう告げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1120
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1326

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