転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1614話

 トールギスの改修が完了し、それに異常がないのを確認した翌日……俺達シャドウミラーはルクセンブルク基地を発ち、現在は海岸線にある基地へと向かうべくMS輸送機で移動していた。

 

「何だろな。これ、本当にMS輸送機か?」

 

 どこか呆れたように呟きながら、客室の中を見渡すのはデュオ。

 まぁ、連合軍のMS輸送機の客室と比べると、全くの別物と言ってもいいような光景だしな。

 

「あら、過ごしやすいんだからいいじゃない?」

 

 笑みと共に凛がデュオに言うが、凛の瞳の中にあるのは何かあったらいぢめてやろうと、そういう光だ。

 デュオもそれは理解しているのだろう。口を開こうとし……やがて不満を口にせず、ソファへと体重を預ける。

 

「俺はどうもこういう上品なのって苦手なんだよ。何だか、背中がムズムズしてくらぁ」

 

 文句の代わりに、何かを誤魔化すようにそう告げる。

 そう言えば、原作でもデュオは宇宙でカトルに会いに行った時に同じような事を言ってたな。

 元々がジャンク屋とかで育ってきたデュオだけに、その言葉は決して嘘じゃないんだろう。

 比べて五飛の方は……特に気にした様子もなく、ソファではなく地面に直接座って胡座を掻き、目を瞑っている。

 別に寝ている訳ではなく、瞑想の類だろう。

 凛、綾子、サリィの3人は俺と同様にソファに座って紅茶を楽しんでいた。

 ……ふと思ったんだが、五飛もいるし中国茶も用意した方がいいのか?

 ウーロン茶とか、プーアル茶とか。

 ああ、でも原作だと五飛はトロワからコーヒーを貰って飲んでいたか。ここにも隠れコーヒー派が1人、か。

 それはともあれ、こうして移動しているだけだと暇だな。

 

「何か面白い番組でもやってないか?」

「この内乱の最中に、何を言ってるのよ」

 

 凛が呆れながらも、TVのスイッチを入れる。

 すると、次の瞬間にはOZの広報担当と思われる女が映し出された。

 

『我々は連合軍に対して多大な戦果を上げています。現状でこそ、半ば膠着状態になっていますが、それでも我々が行ってきた攻撃で連合軍が疲弊しているのは間違いありません』

『では、OZが有利なのは間違いないと?』

『はい。私はそう思っていますし、OZの者達も全員がそう思っています』

『宇宙におけるOZの本拠地、バルジが消滅した結果、宇宙での天秤は連合軍側に大きく傾いたというのが世間の見方なのですが』

『そうですね。宇宙でOZが連合軍の未知の非人道的な兵器によって苦戦しているのは間違いありません』

「おいおい、バルジが消えた現象を連合軍の兵器だって言い切ったぞ? 本気かよ?」

 

 呆れたようなデュオの声。

 デュオの故郷ともいえるコロニーのある宇宙で起きた出来事だ。当然デュオもバルジ消滅については色々と情報を集めたのだろう。

 組織的なバックがある訳でもないデュオが得られる情報というのは、そんなに多くはないだろうが。

 それでも、バルジを消滅させたのが連合軍の兵器だというのは無理があると判断するのは……普通に考えれば当然だった。

 

『連合軍の兵器ですか? その、こう言ってはなんですが、連合軍がそれだけの兵器を持っているとは思えないのですが』

 

 当然記者もデュオと同じような疑問を感じたのか、そう尋ねる。

 だが、その記者に向かって広報担当の女は冷笑を浮かべて口を開く。

 

『それは貴方の感想でしょう? 自分の感想を事実と思うのは、正直どうかと思いますが』

『ぐっ、そ、それは……』

 

 まぁ、言い方や表情は挑発的だったが、言ってる事は決して間違いではない。

 連合軍にバルジを即座に消滅させる兵器がないとは限らないのだ。……普通に考えればその通りなのだが。

 OZは天変地異やら何やらという事ではなく、今回の件を連合軍の仕業という事にして、少しでも現在の状況を覆したい……といったところか。

 

『で、では別の質問ですが、今回のバルジの件に際してOZのレディ・アン二級特佐が連合軍の基地だけではなく、全く何の関係もないコロニーに対しても攻撃を示唆する恫喝を行っています。これはどういう事なのでしょうか?』

 

 これはあれだ。レディ・アンがルクセンブルク基地に送ってきた映像の件だろう。

 本来ならバルジという存在によって、どうとでも強権的に言い逃れが出来る筈だった。

 だが、その自信の根拠であったバルジがなくなってしまった今、この映像だけが残ってしまっている。

 勿論連合軍も、この映像については色々と使い道があり、コロニーに流したり、連合軍系のTV局で流したりとしていた。

 それはOZにとって非常に都合の悪い事なのは事実な訳で、現在この映像のおかげで連合軍寄りになっている者も少なくないらしい。

 視線を五飛とデュオに向けると、こっちでも当然のように不愉快そうな表情を浮かべていた。

 

『その点は今回の件には関係ありませんので、コメントを差し控えさせて貰います』

 

 あー、そう誤魔化したか。

 まぁ、普通なら捏造だとか、映像に手を加えてるとか、そういう風に言い張りたいところなんだろうが……あの映像に手が加えられているのかどうかというのは、それこそ専門家が調べればすぐに分かる。

 だからこそ、あの映像についての話は口に出来なかったのだろうが……それは、暗にレディ・アンの発言が事実だったと認めたという事を意味している。

 

「あーあ」

 

 デュオが呆れたような笑いと共に呟く。

 ただ、そこに若干のざまあみろといった感情があるのは、否定出来ない事実だった。

 まぁ、自分の故郷をバルジ砲で攻撃しかねなかった危険人物が表に出てこられなくなったというのは、デュオにとっては幸運と言えるだろう。

 ……もっとも、裏で何かを画策しないとも限らないのだが。

 トレーズ教の狂信者なだけに、トレーズの為になると思えば何をしでかすか分かったものではない。

 

『何も言わないという事は、あの映像が真実だったと証明する事になると思いますが、構わないのですか?』

『先程も言った通り、今回の記者会見とは関係のない質問にはお答えしかねます』

 

 OZも苦しいところだというのは、この受け答えが証明している。

 だが、これで表に出てこないようになれば、それこそOZの評判が加速度的に落ちていくのも事実だ。

 OZの女は、それ以上の記者の質問を躱すように、次の話題へと移る。

 

『連合軍には、無関係の人間を攻撃しないようにと、改めてこの場で要請させて貰います』

『無関係の人間、というのはどういう事でしょう? こちらに入っている情報には、連合軍がそのような行為をしたという話が全くないのですが』

『この戦いはOZが圧政をしていた連合軍からの解放を目的として行われているものです。ですが、連合軍はOZとは全く関係のない一般人の屋敷を攻撃しています』

『一般人……というのは、具体的にどのような方々でしょう?』

「これって……」

 

 TVの中でのやり取りに、綾子が俺へと視線を向けてくる。

 いや、綾子だけではない、凛、サリィ、デュオ……更には瞑想をしていた五飛までもが俺の方へと視線を向けていた。

 OZの報道官が何に関して言ってるのかは、明らかだったからだ。

 

『以前にもその話をしていたと思いますが、狙われたのはOZの上位組織ロームフェラ財団の構成員だと聞いていますが?』

『ロームフェラ財団の人間ではあります。ですが先程も言いましたように、今回の戦いはあくまでもOZと連合軍との戦いであり、ロームフェラ財団は関係ありません』

 

 そんな言葉が通用する筈がないだろうに。

 実際、会見の中でもその辺を突っ込まれている様子が見える。

 

「OZの上位組織というか、OZがロームフェラ財団の手足、実行部隊といったところでしょ?」

 

 凛の言葉に、皆が頷く。

 これ以上はOZの記者会見を見ていても特に何も目新しい内容はないと判断し、チャンネルを変えていく。

 

「へぇ……」

 

 感心の声を上げたのは、TVに映し出されたのが音楽番組だったからだ。

 勿論TV番組として考えれば、音楽番組というのは特に珍しくもなんともないだろう。

 だが、今はOZと連合軍の内乱中だ。

 殆どのTV番組は、殆ど1日中内乱のニュースをやっている。

 いやまぁ、自分達の生活に直結してくるんだから、その辺は当然なんだろうが。

 

「あら、この歌手……」

「サリィ? どうしたの?」

「何でもないわ。ちょっと驚いただけよ。この歌手、少し前に……ちょうどこの戦いが始まるくらいにデビューした歌手なのよ。それでちょっと気になっただけ」

 

 頑張って歌手としてデビューしたんだろうが、色々な意味でタイミングが悪かったな。

 もう少し前か、それとも内乱が終わった後でならもっと目立っただろうに。

 ……歌手、か。

 シェリルがこの世界にいれば、歌で戦いをどうにか出来たか? ……無理か。相手はゼントラーディじゃあるまいし。

 

「いい声してるじゃない。……まだ10代よね?」

「ええ。13歳らしいわ」

「……若いわね」

「そういう風に言うのは……」

 

 何かを言おうと口を開き掛けたデュオだったが、凛が視線を……笑みを含んだ視線をデュオに向けると、それ以上口は開けなくなってしまう。

 いや、デュオを見ているのは凛だけではない。綾子も、そしてサリィまでもがデュオへと視線を向けていた。

 

「あら、デュオ。何か色々と面白そうな……気になることを言おうとしたみたいだけど、最後まで聞かせて貰えないかしら? 凄く興味があるわ」

 

 そう言いながら、凛は人差し指をデュオの方へと向けている。

 ……おい。それってガンドの準備じゃないか?

 まだ20代前半なんだし、年齢を気にする必要はないと思うんだが。

 しかし、それを口にすると矛先が俺に向かってきそうな気がする。

 時の指輪、渡した方がいいのか?

 もしそうなっても、不老になるのは凛と綾子だけで、サリィは年齢を重ねていくことになるんだが。

 

「い、いやいや。何でもない。何でもないって。……なぁ、アクセル?」

 

 こいつ、自分だけだと不味いと判断したのか、俺に話を振ってきやがった。

 

「何でそこで俺に話を振ってくるのかは分からないが、俺の年齢も凛達とそう変わらないぞ?」

 

 寧ろ純粋な年齢という意味では、凛達よりも上だろう。

 魔法球の中で過ごしてきた時間……そして何より、様々な世界で過ごしてきた時間を考えると、純粋な年齢という意味ではかなりのものになっているのは間違いない。

 ……まぁ、俺は混沌精霊で、普通に不老なんだが。

 それどころか、10歳、10代半ば、20代半ばといった具合に、ある程度外見年齢を変える事すら出来る。

 

「あ、えっと……五飛?」

 

 俺の言葉にしくじったと判断したのだろう。デュオの視線は五飛へと向けられるが、ここで下手に何かを言えば、自分もこの騒動に巻き込まれるというのは理解している五飛は、瞑想をしたまま口を開く様子はない。

 まさに絶対絶命。

 慌てたようにキョロキョロと周囲を見回すデュオに、凛は満面の笑みを浮かべて口を開く。

 

「ねぇ、どうしたのかしら? さっきの話をもう少し詳しく教えてくれると、私は嬉しいんだけど」

 

 あかいあくま……赤い悪魔ではなく、あかいあくまと呼ばれる存在がそこにはいた。

 ここで何かを言えば、確実に被害を受ける事になる。

 それが分かっているからこそ、デュオはここで何も言う事は出来ない。

 だが、何も言わない事により、余計に凛の口元に浮かんでいる笑みは強くなっていく。

 

「あ、い、いや。何でもない。気にするなって。ほら、ちょっと口が滑っただけだから」

「あら、口が滑ったという事は、当然ながら普段からそう思ってたからでしょう? なら、余計に聞かせて欲しいわね」

 

 満面の笑みを浮かべている凛だったが、相変わらずその人差し指はデュオに向いている。

 その人差し指がどのような意味を持っているのかは分からないデュオだったが、それでも何かあるというのは分かっているのだろう。

 何とか話を誤魔化そうとするが、その度に凛が逃げ道を塞いでいく。

 それどころか、綾子とサリィがそっと立ち上がってデュオの両隣に腰を下ろす。

 ……完全に逃げられなくなったデュオが視線で助けを求めてくるが、俺だって今の凛や綾子に逆らうような真似はしたくない。

 そんな真似をすれば、色々な意味で後悔する事になるだろう。

 勿論純粋な戦闘力という意味では、凛や綾子と俺はかなりの力量差がある。

 だが……女に年齢についての話をして怒らせてしまった場合、容易にその差が引っ繰り返されるような気がするのは、俺だけじゃない筈だ。

 それこそ体重とかその辺の話をした時と同様に。

 だが、幸いと言うべきかそんなデュオは神に見捨てられてはいなかったらしい。

 

『アクセル代表、そろそろ目的の基地に到着します』

 

 MS輸送機の操縦室から、そんな通信が入ったのだ。

 それを聞いて、何とか誤魔化せた……と安堵の息を吐くデュオ。

 だが……

 

「デュオ、この件は着陸してからゆっくりとお話ししましょうね?」

 

 満面の笑みを浮かべた凛に、念を押すように告げられるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1035
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1309

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