転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1535話

「ば……馬鹿な!?」

 

 そう叫んだのは、セプテム。

 だが、同じ思いを抱いたのはセプテムだけではなかったらしく、俺と凛、そして模擬戦を行った綾子以外の全員が唖然とした表情を浮かべている。

 これにはノベンタも驚きを声に出来なかったのか、大きく口を開けたまま試合場へと視線を向けていた。

 俺達以外の誰もが唖然としているのを考えれば、セプテムは声が出せただけ他の連中よりもマシだったのか?

 

「さて、勝敗はまだ決まってないようだけど……あたしはここからどうすればいいのかな?」

 

 綾子の言葉に我に返ったのだろう。審判の兵士が慌てたように口を開く。

 

「そ、そこまで!」

 

 そんな審判の声で、今の模擬戦を見ていた者達の多くがようやく我に返る。

 

「お、おい。今のって……俺の目がおかしくなったのか? 何だか、あの綾子って女がサブマシンガンの弾丸を刀で防いだように見えたんだが」

「俺にもそう見えた。……嘘だろ? そんな真似が出来るのか?」

「ああ。一度だけなら偶然で何とかなるかもしれないけど、自分に向かってきた弾丸の全てを刀で防ぐなんて……あの女、人間か?」

 

 最後の奴、惜しい。正確には半サーヴァントだから、半分だけ人間って意味では正解だったな。

 

「アクセル・アルマー! 今のは一体何だ!?」

 

 セプテムが俺の方に近づいてきながら、叫ぶ。

 まぁ、サブマシンガンを刀で……それも物干し竿なんて刀身の長い刀で防いだんだから、それも当然か。

 

「何って、見ての通りとしか言えないが? お前も見てたんだろ?」

「見ていた。いや、見ていたからこそ、こうしてお前に聞いてるんだ! 一体、あれはどうなっている!」

 

 理解出来ないといった様子のセプテム。

 それはセプテムだけではない。ノベンタを含め、多くの視線が俺に向けられていた。

 説明をして欲しいと、そういう事なのだろう。 

 だが、まさかここで聖杯戦争だとか、英霊だとか、そんな事を口に出来る訳がない。

 

「世の中には、お前の想像もつかないような出来事が幾らでもあるって事だ」

 

 例えば、高層ビルから飛び降りて本来なら間に合わない高度でパラシュートを使って地上に着地しても、骨が外れるくらいで済むとか。自爆の中心部にいたのに、大怪我はしたものの後遺症もなしであっさり目が覚めるとか。

 ……どちらも、シャドウミラーのメンバーならそんなに驚くべき事じゃないかもしれないが、このW世界の人間にとってはとても信じられるべき事ではない。

 

「何だと?」

「それはともあれ、綾子の強さは理解して貰えたか? まだ理解していないのなら、もう一度模擬戦をやってもいいが」

「ぐぐぐ……」

 

 俺の言葉に、セプテムは悔しそうに歯噛みする。

 実際問題、サブマシンガンすら容易に防ぐようだと、人間に勝ち目はない。

 まぁ、霊体化出来ない以上、囲んでサブマシンガンを撃つとかすれば命中するだろうが……それにしたって、綾子がそのまま大人しく囲まれるのを待ってる筈がない。

 先程も見せた速度を使えば、包囲網を抜けるのは難しくないだろう。

 それこそ、綾子をどうにかするのであれば物干し竿が役に立たないビーム兵器を持ったMSで攻撃するのが最善だろう。……それでも命中させるのは非常に難しいだろうが。

 

「綾子の力はこれで証明してみせた。それでいいな?」

「……ええいっ、次だ、次! そっちの女も模擬戦を行うと言ったのだから、やって貰うぞ!」

 

 フェミニストっぽい言動もあったのだが、自分達に余裕がある時のみか。

 いや、寧ろそれがセプテムらしいと言えばらしい。

 

「……大丈夫か?」

 

 俺の言葉に、凛は自信に満ちた笑みを浮かべて頷く。

 

「任せておきなさい。私だって何もアクセルと別れてから遊んでいた訳じゃないんだから」

 

 俺と別れたというところで、軍人の何人かが反応していたが……いや、それは別にいいか。

 ともあれ、こっちに戻ってきた綾子と入れ替わるように凛は前に出る。

 

「心配いらないって。凛も十分に強いってのはあたしが保証するからさ」

 

 俺の隣に立った綾子の言葉に、少しだけ落ち着く。

 

「けど、凛は……その、綾子程近接戦闘に秀でてはいないだろ?」

 

 凛の本職は魔術師だ。

 勿論八極拳を使いこなしているように、必ずしも近接戦闘が苦手という訳ではない。

 だが、今回は大っぴらに魔術を使う訳にもいかない以上、かなり厳しくなると思うんだが。

 

「大丈夫だよ。安心してなって。……ほら、始まる」

 

 綾子の言葉に、視線を凛の方へと向ける。

 凛と向かい合っているのは、綾子と戦ったのとは別の兵士だ。

 ……まぁ、サブマシンガンの銃弾を取り回しが難しい物干し竿で全て防がれたんだし、自信がなくなってもおかしくはない。

 凛と向かい合った兵士の装備も、さっきの男と同じだ。

 ただし、凛を見る目には油断の類は一切ない。

 綾子の同類だと思えば、油断のしようがないか。

 ただし、綾子が物干し竿を持っていたのに対して、凛は武器を持っていない。

 それでも兵士が凛を見る目に侮りはなかった。

 

「ルールは先程と同じだ。では……始め!」

 

 その言葉と同時に、模擬戦が始まる。

 だが、相手の兵士は先程の綾子の強さを理解している為か、先に行動には出ないで凛の出方をじっと見守っていた。

 そうして向かってくる凛を待ち受ける兵士を前に、凛は小さく笑みを浮かべると前に足を踏み出す。

 それに対して兵士はサブマシンガンの銃口を凛に向けるが……次の瞬間、一気に凛は兵士との間合いを詰める。

 へぇ……今の速度は随分と鋭いものだ。

 向こう側は自分のすぐ近く……サブマシンガンの間合いの内側にいきなり姿を現した凛の姿に、驚き……それでも精鋭と言われるだけあって、サブマシンガンではなく腰の拳銃へと手を伸ばすが、次の瞬間には轟音と共に兵士が吹き飛ぶ。

 兵士が吹き飛んだ後に残っているのは、拳を突き出した凛の姿。

 八極拳の使い手の面目躍如といったところか。

 にしても、今の踏み込みは……そう考え、すぐに納得した。

 そうか、魔力による身体強化か。

 そう言えば凛もその辺の強化は使えた筈だよな。

 原作でもキャスターを相手に身体強化した八極拳で戦っていたし、そう思えばこの戦い方は不思議でも何でもない訳か。

 

「……馬鹿な……」

 

 再びセプテムの唖然とした呟きが聞こえてくる。

 まぁ、この世界で人間が真横に吹き飛んで壁にぶつかるなんて光景は、そうそう見る事は出来ないだろうし無理もない。

 

「ちなみに凛は色々と事情があって、MSには乗らないで秘書や事務官的な役割になると思う。それでも生身であれだけの強さを持っているのは見て貰った通りだ。実際に戦闘になった場合、並大抵の相手であれば容易に倒すことが出来る。……さて、これで満足出来たと思うが? もしまだ不満だって言うなら、今度は俺の生身の戦闘力を見せようか?」

「馬鹿、アクセル。お前が生身で戦ったら、こんな基地くらいあっさりと壊滅してしまうだろ」

 

 セプテムと俺の会話を聞いていた綾子が、焦ったように言う。

 いや、別に本気で俺が戦うつもりなんかなかったんだけどな。

 それでも、セプテムは綾子と凛の戦いを見た限り、今の言葉を決して冗談か何かだとは思わなかったのだろう。若干頬を引き攣らせながら俺から距離を取る。

 今の言葉を信じるようになったとなると、この短時間で随分と頭が柔らかくなったな。

 ノベンタ直轄の部隊として動く以上、セプテムとも色々と関わる事になるのは避けられない。

 そう考えると、頭が柔らかくなって俺達に敵対的な態度を取らなくなるというのは助かる。

 いや、意地でもこっちに敵対してくる可能性はあるが。

 そうなったらそうなった時の事だ。不幸な事故が起きてしまっても仕方がないだろう。

 その点で言えば影のゲートを使って移動が可能だったり、気配遮断のスキルを使える俺は最高の暗殺者として働くことも出来るのだが。

 こう考えると、俺のサーヴァントとしてのクラスってアークエネミーとかじゃなくてアサシンとかにも適性があったよな。

 いや、気配遮断のスキルを得たのは聖杯戦争中だけど。

 

「生身で戦っただけで、小さいとはいえこの基地が壊滅するだと?」

 

 戦慄きながら呟くセプテムから視線を逸らし、今回の本命、俺達が雇われる相手のノベンタへと視線を向ける。

 

「さて、これで俺達シャドウミラーの実力はしっかりと確認して貰えたと思うが」

「MSを操っては、1機で連合軍の精鋭数十機を相手に手加減をしながらでも無傷で圧倒するだけの力を持ち、生身で戦っても弾丸を長い刀で防ぎ、近接戦闘にも強い。更にアクセルはそんな力を持っている者より、更に高い実力を持っている……か。傭兵としての数が少ないというのは若干不満だが、純粋な実力ではスペシャルズをも上回っている」

 

 呟くノベンタの視線が、じっと俺の方へと向けられる。

 

「いいだろう。改めてアクセルの傭兵団シャドウミラーを雇おう」

 

 最初に会談した時、既に雇うという話は聞いていたと思うんだが……まぁ、その辺は向こうも改めてと言ってるくらいなんだから、理解出来る。

 トールギスでの能力は見せたが、生身での戦いにも向こうは興味を持った……といったところか。

 

「凛」

「ええ」

 

 俺の言葉に、凛が進み出る。

 生身での戦闘力を見せつけた凛だったが、それでもこのW世界の戦いはMSが主流なのだというのは変わらない。

 である以上、凛がMSのパイロットとして働けない以上、交渉や事務の類をやって貰う事になるのは当然だった。

 ……凛の場合、元々交渉とかが得意だという理由もあるんだが。

 

「では、詳しい契約についての交渉をしたいのですが、どなたと交渉をすればいいのでしょう?」

 

 猫を被った満面の笑みを浮かべる凛だが、それ自体は別におかしな話ではない。

 Fate世界にいる時も、この猫を被った状態で他の生徒達に物凄く人気があったのは事実なのだから。

 あの聖杯戦争の時から数年が経過し、今の凛が被っている猫の皮は以前よりも厚く、数が多くなっている。

 そんな凛だけに、普通であれば今の笑みを見て鼻の下を伸ばす者が多いだろう。

 ……そう。普通であれば、だ。

 たった今、凛の殴った軍人が空中を飛んで壁に叩きつけられる……それもサブマシンガンや拳銃、ナイフを装備して、決して侮ったりせず本気で向かっていたにも関わらず、だ。

 漫画か何かかといった事をやってのけられては、美人の笑みを見ても素直に鼻の下を伸ばす事は出来ないだろう。

 まぁ、漫画じゃなくてアニメの世界なのは間違いのない事実なのだが。

 

「ふむ、そうだな。ではこの者と交渉をして貰いたい」

 

 ノベンタの視線が、近くにいた軍人へと向けられる。

 その視線を向けられた軍人は、若干頬を引き攣らせながらもノベンタと凛の方へと近づいてきた。

 へぇ、怖がりつつもきちんと凛に近づいてくるというのは、自分の職務に責任を持っているという事か、

 その辺は少し好印象だ。

 

「ああ、そうだ。今回の契約に際してだが……多分スペシャルズやOZといったところから、トールギスを返却するようにと言ってくる可能性がある。その場合もきっちりと拒否して欲しい。少なくても、俺を売るような真似はしないでくれると助かるな」

「……ふむ、分かった」

 

 ノベンタが数秒何かを考えるように沈黙したが、すぐに頷きを返す。

 よし、取りあえずこれでOZからの手出しはある程度防ぐ事が出来るだろう。……あくまでもある程度は、だが。

 当然OZも腕利きの傭兵として特別扱いされる俺がトールギスに乗っているようであれば、どういう事かと聞いてくるだろう。

 もしくは、トールギスは自分達の機体だから返せとでも言ってくるか?

 ともあれ、何らかの行動を見せるのはまず間違いない。

 その時、もしノベンタの後ろ盾がなければ色々と面倒な事になるのは確実だ。

 いや、それでも向こうが強硬的な手段に打って出る可能性は十分にある。

 トレーズならそんな真似はしないと思う。エレガントじゃないし。

 だが、トレーズ命のレディ・アンや、自分達の利益の為であれば何をしても問題ないと考えるデルマイユ辺りであれば、こっちに何か妙な手を出してこないとも限らない。

 向こうにとってトールギスというのは、現在唯一ガンダムに単機で立ち向かえるだけの能力を持ったMSなのだから、5機のガンダムに狙われてしまう以上、どうしても欲しい戦力だろう。

 

「それでは、多少安すぎませんか? 先程のアクセルの技量を見たでしょう? 単機であれだけのMSを圧倒出来る戦力ですよ? もう少しその実力にあった値段を付けて貰いたいですわね」

「いや、しかし……幾ら何でもそちらの値段は……それに整備と補給についてはこちらで用意するのですから、その分は……」

「でしたら……」

「もう少し……」

 

 凛と連合軍の軍人が交渉しているのを尻目に、取りあえず目的の第一段階は達成したと安堵の息を吐くのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:555
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1213

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