転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1532話

 リーオーの胴体を切断する寸前で止まったビームサーベル。

 ……勿論俺が求めるのは連合軍に傭兵として雇って貰う事であり、連合軍を殲滅する事ではない。

 である以上、ビームサーベルの威力は最低限に設定されており、もし命中する直前で動きを止めなくても、リーオーのパイロットが死ぬような事はなかっただろう。

 だが、それが分かるのはあくまでも俺がそういう風に設定したからであり、何も知らない連合軍にとっては……そして俺の前にいたリーオーにとっては、正に九死に一生を得たといったところだ。

 完全に動きの止まったリーオーをそのままに、俺はビームサーベルのビームを消して盾に戻し、再びオープンチャンネルのスイッチを入れる。

 

「さて、ここで俺の動きを止めたという事は、連合軍は俺の技量を認めて傭兵として雇ってくれる……そう考えてもいいんだな?」

『……君が何を考えてこのような真似をしたのかは分からんが、取りあえず話を聞こう。雇うかどうかは、それからの話としたい。どうかな?』

 

 へぇ、思ったよりも物分かりがいい。

 俺がやったのは、正直なところ連合軍の面子をこれ以上ない形で潰すような行為だ。

 であれば、俺を恨んでもおかしくないんだが……

 

「分かった」

『そうか、私も君のような優秀な兵士と話をする事が出来るのは嬉しいよ。さて、アクセル・アルマー君。早速だが話をしたいので、こちらまで来て貰えるかな?』

『ノベンタ元帥!? 危険です!』

 

 オープンチャンネルの向こうで聞こえてきた声に、少し驚く。

 誰が話しているのかと思っていたんだが、まさか本命のノベンタだったのか。

 てっきりこういう場合はタカ派のセプテム辺りが出てくるかと思ってたんだが。

 いや、その辺はノベンタの考えか? 当然だが連合軍の面子を大事にするセプテムにとって、その面子を潰した俺は敵意を抱く事はあっても味方にするという考えはないだろうし。

 だが、今の状況でセプテムが俺に攻撃的な態度を取った場合、当然俺の態度も強硬的になる可能性がある。

 一応俺は連合軍に傭兵として雇われたいという事を言ってるのに、そんな真似をしたら、味方どころか敵になる可能性もある筈であり……この演習で俺の実力を確認したノベンタのような者達にとっては、絶対に避けるべきことだろう。

 自分で言うのも何だが、ガンダムに基地を襲撃されている連合軍にとって、腕の立つパイロットというのは1人でも多く欲しいのだろうから。

 ちなみに、何故かこの世界ではガンダムという言葉がそれなりに一般的だったりするのか、既にMSはガンダムと呼ばれているらしい。

 ともあれ、腕の立つパイロットが傭兵……悪く言えば使い捨てに出来るとなれば、今回の一件に目を瞑る事が出来るのなら美味しい出来事以外の何ものでもない。

 

「それで、俺はこれからそっちに行ってもいいのか? 話し合いをするんだろう?」

『うむ。そうして貰えると助かる。色々と話したい事はあるが、詳しくは会ってからでよいかな?』

「構わない。じゃあ、そっちに向かわせて貰うよ」

 

 通信機の向こう側ではまだ何か言ってるようだったが、そこはノベンタに任せておこう。

 何だかんだと、セプテムもタカ派だが上に逆らって暴走するような真似まではしなかった筈だし。

 それに向こうが何か妙な真似をした場合、それはこちらにとってはいい交渉材料にもなる。

 スーパーバーニアでゆっくりと空中に浮かび上がりながら、オープンチャンネルのスイッチを切って凛や綾子に持たせている通信機に連絡を入れる。

 

「こっちは予定通りに事が進んでいる。これからノベンタとの会談になるから、問題はない」

『問題しかないように感じるのは、あたしだけか?』

『アクセルの言動に一々戸惑ってたら、身体が保たないわよ』

 

 綾子の呆れたような言葉に、何かを悟ったかのような凛の言葉。

 ……いや、正直この2人にそう言われるのは微妙に心外なんだが。

 凛はこの世界でも恐らく唯一の魔術師で、綾子は間違いなくこの世界で唯一の半サーヴァントなのだから。

 かく言う俺も、この世界で唯一の混沌精霊……幻想種だが。

 3人が3人とも、このW世界では非常に希有な存在なのだから、俺だけがこうやって責められるのは何だか微妙だろう。

 それを言えば10倍にも20倍にもなって返ってくるので、反論はしないが。

 

「じゃあ、行ってくる。基本的にはそこで大人しくしててくれよ」

『分かってるよ。アクセルの事だし、何かあっても心配はしてないから』

『私は、寧ろアクセルに妙なちょっかいを出してきた相手に同情するけどね』

 

 そんな2人の言葉を聞きながらトールギスを移動させていくと、やがてこの演習場にある本部が見えてきた。

 本部の周辺にはリーオーとエアリーズがそれぞれ待機しており、武器こそこちらに向けていないものの、間違いなくこちらを警戒している。……いや、俺がやった事を思えば当然かもしれないが。

 ともあれ、警戒心を持っていても何か手を出してこない限りは、こちらも対処するつもりはない。

 ニーズヘッグと違って推進剤や武器の残弾の問題もあり、かなり消耗しているし。

 本部前にいたリーオーの案内に従い、少し離れた場所に着地する。

 そうしてトールギスのコックピットを開く。

 出来れば空間倉庫に入れたいところだが、まさかこんな人前で堂々と空間倉庫を使う訳にもいかないしな。

 それに、トールギスを使用していて空間倉庫のような能力を持っているとなれば、当然コルシカ基地でリーオーとエアリーズ、各種武器が皆の見ている前でいつの間にか消えていたという現象と結びつける者も出てくるだろう。

 ……いや、トールギスを使っている時点でそれを隠し通すのは無理か。

 話がコルシカ基地だけで止まっていれば、ガンダムによって破壊されたおかげでOZやロームフェラ財団にまで伝わっていない可能性もあるが……望み薄、だろうな。

 これが普通の、その辺に幾らでもいる自称エリートであれば自分の失態を隠そうとしてもおかしくはないんだが、今回の場合はOZだからな。

 勿論OZの全員が本当の意味でエリートかと言えば、そうではない。

 それは原作で力に酔い、キャンサーとエアリーズの2機だけで基地を陥落させたにも関わらず、虐殺を繰り広げた奴がいたのを思えば当然だろう。

 まぁ、結局次の戦闘でゼクスの逆鱗に触れて死んでしまったが。

 ともあれ、OZの全員が本当の意味でのエリートではないということはこの件を見ても明らかだ。……いや、この世界ではまだ起こっていない出来事だが。

 ともあれ、トールギスから降りると車が用意されており、その前で待っている軍人の姿があった。

 俺の案内役といったところか。

 

「本部の方へご案内します」

「悪いな、頼む」

 

 連合軍に思い切り恥を掻かせた筈なのに、軍人の俺への態度には反感の類はない。

 いや、視線とかに多少ではあるが反感を抱いているようには見えるのだが、それを表に出さないようにしているといったところか。

 本部に直接俺を連れていくように言われているだけに、期待の新人とかそういう感じなんだろう。

 そのまま車……演習場に似つかわしくない、黒塗りの高級車へと乗り込むよりも前に一旦動きを止め、改めて軍人へと視線を向けて口を開く。

 

「言うまでもないが、俺の機体には決して妙な真似をしないようにな。もしそんな真似をすれば、俺の仲間がまたさっきと同じ事を……それも、今度はペイント弾や威力を最低にまで落としたビームじゃなく、実弾とMSを撃破出来るだけの威力を持ったビームが襲ってくる事になるぞ」

 

 その言葉に、俺を案内しにきた軍人の頬が引き攣る。

 

「分かりました。くれぐれも貴方の機体に手を出さないように言っておきます」

 

 そう告げ、トールギスの周囲を固めているMSの方へと走っていく。

 それを見ながら、俺は車の中へと乗り込む。

 尚、当然ながらもしトールギスに何かをしようものなら俺の仲間が反撃に出るというのは真っ赤な嘘だ。

 凛と綾子という仲間はいるが、機械と壊滅的に相性が悪い凛に科学技術の結晶であるMSを操縦させるというのはそもそも有り得ないし、綾子はMSの操縦訓練を始めたばかりで、とてもMSでの戦闘を行うのは不可能だ。

 普通なら、とてもではないが俺の話を信用したりはしないだろう。

 だが、ここで俺という存在が……たった1機でこの場にいた連合軍の精鋭全てを敵に回して圧倒したことが効いてくる。

 今回俺が本気ではなかったというのは、俺がペイント弾やビームの威力を最低限にしていた事で明らかだろう。

 そんな演習用の装備だったからこそ、ライフルで撃たれたり、ドーバーガンのビームに飲み込まれても戦闘を続行出来たのだから。

 もし俺の装備が本当に殺傷力のあるものであれば、間違いなく連合軍は莫大な被害を受けていた筈だ。

 文字通り一騎当千、万夫不当と呼べるだけの実力を持っている俺の仲間なのだから、当然同じような実力の持ち主……そう誤解しても、おかしくはない。

 実際には生身でならともかく、MSの操縦に関してはまだまだ素人なんだが。

 ともあれ、向こうがそんな風に誤解をしてくれるというのであれば、こちらとしても無理にそれを正す必要はない。

 リーオーの周囲にいるMSのパイロットに連絡をしているのを眺めつつ、俺は車の中へと入る。

 本来なら、こういう場合はあの運転手がドアを開けてくれるまで待つのがいいんだろうが……まぁ、今の俺は傭兵だし、お偉いさんの礼儀には詳しくないって事で。

 いや、シャドウミラーとしても普通にそんな感じなんだが。

 ともあれ、決してトールギスに手を出さないように連絡が終わると、運転手は俺がもう車の後部座席に乗り込んでいるのを見て、慌てて運転席へと乗り込む。

 

「遅れてすいません。誰かがあの機体に何かをしにきても決して手を出させないように言ってきました」

「そうか、ご苦労さん。お互いの為にも、いらない騒動はない事を祈ってるよ」

 

 もしそうなれば、どうなるかというのを想像したのだろう。

 運転手は唾を飲み込んでから口を開く。

 

「はい。……では、ご案内します」

 

 そう告げ、車は出発する。

 運転手も、俺に対して何かを口にするような事はない。

 今は少しでもこっちの情報を欲してると思うんだが。

 いや、向こうにとってはあんな風に無茶苦茶な行動をするのだから、下手に俺に話し掛けて逆鱗に触れるのを防いでいる……ってところか?

 まぁ、それはそれで結構賢い選択だとは思うが。

 そんな風に考えている間にも車は進み、やがて基地……と呼ぶには少し小さいな。どちらかと言えば指揮所とでも呼ぶべき建物の前で車が停まる。

 

「到着しました」

 

 どうやらここが会談を行う場所らしい。

 さて、ノベンタ以外にはどんな奴が出てくるのやら。

 楽しみに思いながら、運転手が開けてくれたドアから降りる。

 ここにノベンタがいるのだから、当然のように建物の周囲には護衛の兵士達の姿があった。

 少し離れた場所には、こちらもリーオーの姿がある。

 これは別にこっちをどうこうしようとしているのではなく、警備の一環だろう。

 それこそ、俺のようにMSでここに奇襲を仕掛けてくるような奴がいた場合、MSがいなければどうにもならないのだろうから。

 当然連合軍上層部の警備をMSで任されているのだから、このパイロット達は相応のエリートで上層部からも信頼されている奴等の筈だ。

 リーオーの頭部カメラが俺の方を見ているのも、俺が何かしないかどうかを疑っている為か。

 ……まぁ、あれだけやらかしてしまった以上、向こうがこっちを疑っても文句は言えない。

 案内の軍人に従って、建物の中に入っていく。

 ……そして中にいたのは、護衛と思しき多くの軍人。

 勿論こっちに拳銃の銃口を向けたりして、敵対的な態度を取っている訳ではない。

 だがそれでも、こうして軍人が大勢揃っていれば普通は気圧されるだろう。

 俺は普通とは言えないんだが。

 拳銃を手にしている者はいないが、それでもこっちに向けられる視線の中には警戒や敵意、不満……そんな色が多い。

 何を間違ったのか、中には尊敬の視線を向けてくる奴もいるんだが……何でだ?

 連合軍に大恥を掻かせたんだから、敵意を向けられて警戒される事はあっても、尊敬とかプラス方向の感情を向けられるとは思ってなかったんだが。

 内心で首を傾げながらも、色々な視線を一身に受けつつ建物の中を進んでいく。

 そうして建物の奥に進むにつれて、やがて警備の軍人も精鋭揃いとなっていた。

 精鋭といっても、あくまでこのW世界の軍人としての精鋭であり、魔法先生どころか、下手をすれば魔法生徒辺りには絶対に勝てないような強さだが。

 そんな連中の間を通り……やがて俺の姿は、一つの部屋の扉の前に到着する。

 ……さて、いよいよノベンタとの会談だ。どうなる事やら。

 案内の軍人が扉を開けるのを見ながら、そんな風に考えるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:555
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1213

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