転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1504話

 ブルーフラッグの隠しボス戦が終わり、現在俺達はパーティ会場へとやってきていた。

 勿論ここで行われているのは、ブルーフラッグが無事終了した祝いの宴なのだが……

 

「ちょっとアクセル。あんたちょっとやり過ぎたんじゃない? 見なさいよ、皆とてもじゃないけど喜んでなんかいないわよ?」

 

 髪の色と合わせたのか、紫のパーティドレスを身につけた夕呼がどこか呆れたように呟く。

 実際問題、その言葉は決して間違っている訳ではない。

 こうして見る限りだと、パーティに参加している多くの者達が決して心の底から喜んでるようには見えないからだ。

 

「そうは言ってもな。こっちもかなり妥協したんだぞ? ビームの出力とかはともかく、バリアの類も展開しなかったし」

 

 ニーズヘッグは基本的に回避重視の機体だが、何重ものバリアが備わっている。

 それこそ、装甲の薄さをバリアで補っていると言ってもいい。

 模擬戦でペイント弾の関係からバリアを展開不可だったのだから、ニーズヘッグの防御力は大幅に落ちていたのは事実だ。

 ……まぁ、おかげでというか、代わりにというか、こっちはいつも以上に回避に専念するようになったのだが。

 

「あのね、アクセル。今回のブルーフラッグで優勝したアルゴス小隊の戦意をへし折るような真似をしたら、向こうにとっても色々と面白くないんじゃない?」

「夕呼の言う事も分かるが……アクセルとの戦いというのは、今回の戦いに参加した者にとっては、掛け替えのない経験になった筈だぞ?」

 

 俺を擁護するというよりは、心の底からそう思ったといった様子で告げるスレイ。

 ちなみにスレイが着ているのは、珍しく赤いドレス。

 スレイは青い服を好んで着るんだが、どういう風の吹き回しなんだろうな。

 

「ふーん、そういうものなの? 私には理解出来ないわね。……あ」

 

 話の途中で、夕呼が何かを見つけたのかニヤリとした笑みを浮かべ……そうして、俺の腕を取ると、そちらの方へと向かって歩き出す。

 俺の腕が夕呼の豊かな双丘に挟まれ、柔らかな感触が伝わってくる。

 そんな俺の様子を、スレイが少しだけ溜息を吐いた後は何も言わず、パーティの料理へと手を伸ばしていた。

 そして、俺と夕呼のすぐ後を霞がチョコチョコとついてくる。

 ちなみに、霞もパーティドレスに身を包んではいるのだが、頭部にあるウサギの耳は標準装備されたままだ。

 パーティという意味では多少不味いのかもしれないが、このパーティはそこまでフォーマルなものではない。

 どちらかと言えば、慰労会に近い。

 だからこそ、こうして皆がそれぞれ楽しんでいるのだろうが……いやまぁ、このパーティの主役の小隊員達はあまり楽しんではいないようだが。

 それでも小隊員以外の者達……各国のVIPや指揮官、技術者といった連中はニーズヘッグや、何よりも最新鋭のファブニールを見る事が出来たのは嬉しかったのか、結構嬉しそうにしている。

 そんなパーティの中で、当然のように皆は俺やスレイに話し掛けようとしているのだが、お互いがお互いを牽制しているせいか話し掛ける事が出来ていない。

 いや、お偉いさんとの会話は別に嬉しくないから、いいんだが。

 この中で俺達と気楽に話せるのは、それこそ夕呼や霞以外だと、それこそ日本から来ている崇継や恭子、悠陽といった面子か。……月詠もいたな。

 だが、そんな者達も他の国とのお偉いさんと話をするのに忙しい。

 当然だろう。今の日本は、間違いなく世界でもトップクラスの国力を持っている。

 その上、更に3人ともが若く、美形で独身。

 こうなれば、当然のように言い寄ってくる相手には事欠かないだろう。

 ……まぁ、政略結婚というのは色々と厳しいかもしれないが。

 そもそも、征夷大将軍の崇継と崇宰家当主の恭子、煌武院家当主の悠陽だ。

 もし口説いたとしても、それはつまり日本に来る事になる訳で……それを許容出来るかと言えば、答えは否だろう。

 いや、中には純粋に魅了されている奴もいるんだろうけど。

 実際、崇継と話をしているどこぞのお偉いさんの娘と思しき相手は、目を潤ませ、頬を赤くしているんだし。

 崇継がその気なら、それこそ本気でお持ち帰りされてしまうだろう。

 さすがにそんな真似はしないと思うが。

 そんな中、夕呼が俺と霞を引き連れて向かっている先は……ソ連軍のサンダーク。

 その時点で、何を目的としての行動なのかを理解出来てしまった。

 更に、何で俺を連れてきたのかというのも、考えるまでもない。

 俺の前で決定的な言質を取ろうというのだろう。

 サンダークも、夕呼が……正確には俺を連れた夕呼が近づいてくるのを見て、更にその近くに霞がいるのを見て、一瞬だけだが顔を顰める。

 普段冷静なサンダークがそんな真似をするのだから、これは余程に予想外のものだったのだろう。

 夕呼と霞だけが近づいてくるのであれば、何とでも理由を付けて逃げ出せたかもしれないが……俺がいては、それも出来ない。

 そんな真似をすれば、シャドウミラーに対して思うところがありますと態度で示しているようなものだろう。

 

「ごきげんよう」

「……初めまして、ミス香月。まさか貴方にこんな場所で会えるとは思っていませんでした」

 

 眉を顰めたのは、ほんの一瞬だけ。

 サンダークは笑みを浮かべると夕呼の方にそう声を掛ける。

 そして、続いて俺の方へと視線を向けて、小さく頭を下げた。

 

「アクセル代表、今日の模擬戦には感嘆しました。強いというのは、今までの事を思えば当然ですが、それでもまさかブルーフラッグに参加した全ての小隊……それも、上位に残った小隊を相手にして、1発の被弾もないままに勝利するとは」

「クリスカ達は強かったよ。勝った俺が言うのも何だが、多分小隊としてはともかく、個人としての強さだけで言えばブルーフラッグに参加した全ての機体の頂点に立つだろう。事実、俺と戦って最後まで残ったのは、インフィニティーズでも暴風小隊でもアルゴス小隊でもなく、クリスカ達だったからな」

「そう言って貰えると、こちらとしても助かります」

 

 ……褒められたのが嬉しかったのか? 予想外な事に、サンダークは口元に小さな笑みを浮かべている。

 まぁ、自分の部下が褒められて悪い気はしないだろうが。

 そんなサンダークに対して夕呼は笑みを浮かべる。……ただし、その笑みは獲物を見つけた肉食獣の笑みだったが。

 

「サンダーク中尉。その辺で少しお話しがあります。よろしいですか?」

「……何でしょう?」

「この子……誰か分かりますわよね? ああ、名前を知っているのかどうかという事ではなく、どのような出身かについてなのですが」

 

 霞が夕呼の横でサンダークに向かって小さく頭を下げる。

 その拍子にウサギの耳が揺れるが、その見ているだけで心が和むような愛らしい姿を見ても、サンダークの表情に変化はない。

 ここで霞が紹介されるというのは、最初に霞の姿を見た時に理解していたのだろう。

 だからこそ、こうして今紹介されても特に表情の変化はないまま、口を開ける。

 

「ああ、勿論知っている。オルタネイティヴ3で生み出された者だろう」

 

 ……そう言えば、今更。本当に今更なんだが、サンダークはオルタネイティヴ計画について知ってたんだな。

 この計画を知っているのは、本当に少人数でしかないって話だったが。

 ああ、でもクリスカとイーニァの上司だというのを考えれば、その辺は当然なのか。

 ともあれこうして見る限りでは、霞を見たサンダークの表情に動揺の色はない。

 

「ええ。その通りです。……ちなみに、スカーレットツインと呼ばれているイーダル小隊のパイロット2人……そちらも、そのオルタネイティヴ3のパイロットだとお見受けしますが……あら、おかしいですね。確か国連からの正式な命令により、私のオルタネイティヴ4は3の研究成果を接収する筈だったのですが」

「それは……」

 

 夕呼の言葉に、サンダークがチラリとこちらに視線を向けてくる。

 何とか誤魔化したいが、ここで下手に誤魔化したりすれば、それはシャドウミラーとの関係が酷くなるかもしれない。そう思っているのだろう。

 事実、今のソ連という国は決してシャドウミラーとの関係が良好という訳ではない。

 イーニァとは仲がいいし、ラピスもイーニァと友情を築いてはいるが、それはあくまでも個人の事だ。

 特にソ連軍は直近だとラトロワの件もある。

 そう考えれば、サンダークもここで下手に言い逃れは出来ないと考えるのは当然だろう。

 

「……」

 

 結局サンダークに出来るのは、沈黙を保つだけだった。

 まぁ、ここで何か妙な事を口にすれば、それがソ連の失態となってしまうのだから当然か。

 だが……当然ながら夕呼がサンダークの言葉をそのままにしておく筈もない。

 笑みすら浮かべて、口を開く。

 

「あら、どうしましたの? あの2人について教えて頂きたいのですが。……そう言えば、霞が能力を使った時、アクセル代表はしっかりとそれを感知出来て防ぐ事も可能なのですが、何でもスカーレットツインと出会った時に、アクセル代表はそれと同じ物を感じたとか。あらあら、これは一体どうなっているんでしょう?」

 

 まさに、鼠をいたぶる猫の如き夕呼の言葉。

 そうして、もう誤魔化しきることは出来なくなったと判断したのだろう。

 サンダークは小さく咳払いをしてから夕呼に向かって口を開く。

 

「ミス香月、実は以前から貴方とお話をしたいと思っていたところです。もしよければ、少し時間をいいでしょうか?」

「……そうね。私もサンダーク中尉とは少し突っ込んだお話をしたいと思っていました」

 

 満面の笑みを浮かべた夕呼。

 見た感じ、サンダークの全面降伏といったところか。

 クリスカ達の事を知られてしまっては、どうしようもないよな。

 勿論サンダークやソ連の者達も、その危険は十分に承知していたのだろう。

 だがそれでも、俺を相手に戦うという行為にクリスカ達を出さざるをえなかったのだ。

 当然だろう。ブルーフラッグでアルゴス小隊とギリギリの戦いを繰り広げたイーダル小隊だが、そのイーダル小隊はクリスカ達がいなければ全く戦力にはならないのだから。

 もしブルーフラッグであれだけの成績を残しておきながら、俺達との模擬戦であっさりと全滅する事になってしまっては、ソ連という国の面子は丸潰れとなる。

 シャドウミラーとの関係が決して良好ではないとはいえ……それでもソ連はこのマブラヴ世界の中ではトップクラスの国力を持つ国の1つだ。

 なのに、そんな国がみっともないところを見せれば、国際社会での影響力が酷く低下してしまう。

 

「では、ここではなんですし、もう少し静かな場所で話しましょう」

 

 笑みを浮かべているサンダークだったが、その内心は明らかに面白くないと思っている筈だった。

 それでも夕呼の提案を拒否出来ないのは、やはり俺という存在がいるからだろう。

 シャドウミラーと日本の仲が良好だというのは、広く知られている。

 特に夕呼は、国ではなく個人として俺を含めたシャドウミラーの上層部と仲のいい相手がいるという特殊性があった。

 そうなれば、当然のように夕呼に危害を加えるとシャドウミラーが出るという事になり……それは、ソ連にとってとてもではないが対処出来ないだろう。

 つまり、俺を連れてこの場所に立った時点で夕呼の企みは既に成っていた訳だ。

 

「霞も姉妹と会いたいわよね?」

「……はい」

 

 小さく、だがしっかりと確実に頷いた霞の言葉は、そういう意味では決定的だったといえるだろう。

 何をしようとしても、サンダークにこの状況を覆すだけの手札は存在しない。

 ……まぁ、俺を含めて完全に消滅させる事でも出来れば話は別だったかもしれないが、少なくてもソ連にそんな真似が出来る筈もなかった。

 

「そう。……サンダーク中尉、私が貴方と話している間に、霞をスカーレットツインの2人と会わせてあげたいのですが、構いませんよね?」

 

 構いませんか? と聞くのではなく、構いませんよね? とサンダークが話を聞かざるを得ない状況になっている。

 うん、こうなると、サンダークは夕呼の掌の中で踊る事しか出来なくなるな。

 まぁ、それは仕方がないか。元々オルタネイティヴ3の成果を自分達で独占していたのだから。

 それが夕呼に知られなければ良かったのだが……夕呼がカリンダ基地に来た時点で、その願いは見事に砕け散ってしまう事になった。

 

「……2人を連れてきてくれ」

 

 サンダークの近くに控えていたソ連軍の軍人が、サンダークの言葉に頷いて去って行く。

 パーティ会場の中にいるクリスカとイーニァを呼びに行ったのだろう。

 

「ありがとうございます。では、私達はお話をしましょうか」

 

 艶然とした笑みを浮かべてそう告げる夕呼は、コーネリアではないが魔女と呼ばれるのに相応しい姿だ。

 ……魔女ではなく、横浜の女狐とか噂されているらしいけど。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:555
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1213

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