転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1427話

 生産プラントの7割を奪うことに成功し、上機嫌でコンテナへと戻ってきた俺を出迎えたのは、予想外の光景だった。

 

「……何でこいつがここにいるんだ? うん? あ、いや。格好は似てるけど、違う奴か?」

「ええ。高杉さんからもそう聞いています。月臣さんを助けに行って脱出しようとした時、丁度鉢合わせしまして」

 

 俺の言葉に頷く桜咲。

 視線の先にいるのは、以前木連で騒動があった時に俺を襲ってきた笠の男。

 正確には、その笠の男と同じ格好をした別人だが。

 向こうが何を考えて俺を暗殺しようとしたのかは分からないが、生身の戦いで俺を相手にどうにか出来る筈もなく……結局気絶させて捕らえる事が出来たのだが、最終的には口封じに殺されたと思われていた筈の男。

 もしかして草壁の手の者だったのか? 月臣に関しては、明確に敵対するよりも前に処分しようとしたとか。

 何か草壁であれば普通にありそうだと思ってしまうのは、俺の考え過ぎか?

 

「笠の男の技量はどうだった?」

「この世界の住人としては非常に高いと思います」

 

 その言葉には自分の方が強いと自信が滲んでいる。

 いやまぁ、それは当然だろうけど。

 

「……まぁ、この笠の男は取りあえず置いておくとしてだ。白鳥達はどうしてる?」

「向こうの方は順調よ。優人部隊はほぼ全て白鳥さん達に味方をしているわ」

 

 エリナの言葉に、安堵の息を吐く。

 向こう側で特に何も起きてはいないらしい。

 予想は出来ていたが、それでもこうして明確に言葉にして聞かされれば安心出来る。

 

「革命……いや、反乱の方はどんな具合だ?」

「厳しいわね。幸いバッタを含めた無人兵器はまだ殆ど戦いの場に出て来てはいないらしいけど、純粋に数が問題よ。優人部隊は精鋭であっても、あくまでも少数でしかない。それに比べると、向こうは中将が直々に指揮を執っているという事もあって、人数はかなり多いのよ」

「……だろうな」

 

 中将というのは、軍の中で2番目か3番目くらいに高い階級だ。

 その組織によっては更に何個か上の階級がある場合もあるが。

 そして草壁は現在木連を実質的に動かしている人物であり……そう考えれば、向こうの方が人数が多くなるのは確実だ。だが……

 

「白鳥達もそれを承知の上で今回の件に踏み切ったんだから、何か対抗手段は考えていたんだろ?」

 

 最後の手段としてニーズヘッグが表に出るというものがあるが、それは出来れば避けたいし、白鳥達も他の組織の者の手を借りてどうにかしたい……という訳ではではないだろう。

 最初から他力本願な考えで今回の件を起こしたのなら、俺も白鳥達との付き合い方は考えないといけないし。

 俺達が必要としているのは友好的な勢力であって、何をするにしてもこっちに伺いを立ててくるような者達ではないのだから。

 

『熱血とは盲信にあらず!』

 

 そんな風に叫んでいるのは、少し前まで草壁に捕らえられていた月臣だ。

 そこからグリューノの死やこのままで自分の中にあるゲキガンガーに対して胸を張れるのかといった具合に話が進んでいく。

 それを聞いた木連の兵士は、何人かが手に持っていた銃を地面に落とす。

 

「順調に進んでいるらしいけど……問題はバッタだろうな」

 

 カトンボ、ヤンマ、チューリップといった大きな戦力は宇宙での戦いならまだしも、このまま都市艦の中や、小惑星帯に存在する基地の中で行われる戦いでは過剰な火力であり、出番はない。

 もし出て来たら、白鳥達も自分達で確保している戦力を出さざるを得ず、戦いは無意味な消耗戦になるだろう。

 元々木連の戦力は無人機が主力なんだから、どうしたって意味のない消耗戦にしかならない。

 ……にしても、熱血とは盲信にあらず、か。この戦いが終わったら、熱血革命とか熱血クーデターとか言われるようになりそうな言い分だな。

 熱血革命よりは熱血クーデターの方が何となく語呂はいいか?

 ただ、クーデターとなると賊軍も似たような感じなんだよな。

 その辺がちょっと問題が……いや、その辺は別に俺が心配する事でもない。

 この世界の住人が自分達で決めるだろう。

 

「説得でこっちに引き込める者達は多いけど、それでも全てって訳じゃない。そうなると、やっぱり向こうの方が戦力は多いな。……さて、どうしたものか。生身での戦いとなれば、本来なら俺達の独壇場なんだが……」

「なー、アクセル君。うち、怪我の治療に行きたいんやけどー」

 

 どうするか迷っていると、不意に近衛がそう声を掛けてくる。

 ……なるほど。元々近衛は戦いそのものをそんなに好まない、平和主義者だ。

 いや、別に俺だって戦いを好んでいる訳じゃないんだけどな。

 ともあれ、近衛にとっては怪我をしている人を治せるのに治さないというのは我慢出来ない事なのだろう。

 さて、どうするべきか……そう考えるも、すぐに頷きを返す。

 

「分かった。ただし護衛として桜咲と神楽坂の2人を連れて行くこと。……頼めるか?」

 

 視線を向けたのは、近衛ではなく神楽坂の方。

 桜咲は元々このちゃん命! といった具合の性格だから、それこそ何も言わなくても……いや、行くなと言っても行くだろう。

 それに近衛の性格と外見を考えれば、木連の人間に受けはいい筈だった。

 そんな人物が不思議な力――魔法――で自分達の怪我を敵味方関係なく癒やしてくれるのだから、木連の人間にとっては天使的な扱いとなるだろう。

 そして、近衛が白鳥達と親しくしているのを見れば……さて、どうなるだろうな。

 草壁に忠誠を誓っている者がいても、近衛の魔力……いや、魅力に勝てるかどうか。

 勿論草壁派の全員をこちらに引き込めるとは思っていない。それでもある程度の人数をこっちに引き込むことは出来るだろう。

 護衛として派遣する桜咲も神楽坂も、両方とも標準以上の美人なのは間違いない。

 その辺でも近衛が趣味じゃないって珍しいタイプをこちらに引き込める可能性は十分にある。

 何より……この3人はシャドウミラーのメンバーだと殆ど知られていないのが大きい。

 神楽坂はホワイトスターの案内をする時に草壁と会ってるが、近衛と桜咲は全くの初対面だ。

 そんな俺の思惑を余所に、神楽坂と桜咲、近衛の3人は準備を整える。

 そして3人が準備を整えると、俺の方へと近寄ってくる。

 

「エリナ、悪いけど俺はこいつらを送ってくる。お前は……」

「ああ、私も連れて行ってくれる?」

「……は?」

 

 エリナの口から唐突に出た言葉に、思わずそう返す。

 いや、エリナもずっとコンテナの中にいて外に出たいと思っているのは知っている。

 女の数が少ない中で、エリナのような美人が木連の中を歩き回っていれば、嫌でも人目を引く。……まぁ、そういう意味では神楽坂達も同じようなものだが。

 それでも、ここでそんな言葉を口にするとは思ってもみなかった。

 そんな俺の様子に気が付いたのだろう。エリナは溜息を吐いてから口を開く。

 

「言っておくけど、別にずっとこのコンテナに閉じ籠もっていたから外に出たいって訳じゃないわよ? 勿論それが皆無だとは言わないけど、それ以外にもきちんと理由があるわ」

「理由?」

「ええ。何だかんだと、私はまだ木連という組織をこの目できちんと見ていないわ。勿論このコンテナに来てくれる白鳥さん達は別だけど。今のうちにしっかりと木連というものをこの目で確認しておきたいの。幸い、今は木連内部で内乱が起こっていて、向こうも私達に構ってる暇はないでしょうし」

 

 その言葉は事実だ。

 幾ら木連の女が少なくても、今の状況で木連がエリナとかを見て構ってくるような暇はないだろう。

 もしそんな真似をしている奴がいるとしたら、余程の大物か……全く何も考えていない馬鹿ってところか。

 大物だったら、意外と拾いものになるかもしれないが。

 

「分かった。なら一緒に行くか。……ヤマダはどうする?」

「ガイだ! ……ここに俺だけ残ってても仕方ねえし、一緒に行くよ。奴等のゲキガン魂がどんなものか見てみたいしな」

 

 このコンテナの中にヤマダだけ残して行くのはどうかと思ったんだが、そのヤマダも俺達と一緒に行く事にしたらしい。

 ヤマダが口にしている通り、木連の一般兵士がゲキガンガーをどのように捉えているのか見てみたいってのもあるんだろうが。

 

「分かった。なら全員で行くか」

 

 呟き、全員が俺の側に集まってくるのを待つ。

 ……神楽坂は以前木連の基地に侵入した時の事を覚えているのか、微妙に距離を取っているが。

 そして……俺達の姿はその場で影へと沈んでいくのだった。

 

 

 

 

 

「……アクセル代表!? 一体どうしたんですか!?」

 

 影から出て、白鳥のいる場所へとやってきた俺達を見て、白鳥が驚愕の声を上げる。

 ちなみに直接白鳥達のいるこの部屋に姿を現さなかったのは、木連の人間の場合影のゲートで姿を現した俺達を見ると即座に敵と判断しかねないと思った為だ。

 実際、影のゲートでの転移ってのは普通に考えれば正義じゃなくて敵が使いそうな技なので、何とも言えないが。

 周囲の木連の兵士達も、いきなり部屋に……司令室にやって来た俺達を見て一瞬草壁の手の者かと思ったようだったが、白鳥が驚きつつも迎え入れた事で安心したらしく自分の仕事に……完全に戻ってはいなかった。

 現在が大事な時だというのは分かっているのだろうが、それでもいきなり姿を現した俺達……具体的にはエリナ、神楽坂、桜咲、近衛の4人が気になるのだろう。

 自分の仕事をしつつ、チラチラとこちらに視線を向けている者が何人もいるのが理解出来る。

 木連の男女比を考えればしょうがないんだろうが。

 しかも女4人は全員が美人、美女と呼ぶのが相応しいだけの容姿を持っているのだから、その気持ちは分からないでもない。

 

「お前等、彼女達に見とれてないで、自分の仕事をしろ!」

 

 周囲に月臣の怒声が響く。

 その怒声に、皆がそれぞれ自分の仕事へと戻っていくのを見ながら、こちらに向かって近づいてきた白鳥にここに来た用件を告げる。

 

「そこの近衛はシャドウミラーの中でも、回復魔法の使い手としてはトップクラスの実力を持っている。現在起こっている戦いは生身での戦いだろ? なら、怪我人もそれなりに出ている筈だ。だから、その回復をしたいって言ってな。……ただし、敵味方問わずだが」

 

 敵味方問わず。その言葉が出た瞬間に白鳥は……そして仕事をしつつ、耳だけはこっちの話に意識を向けていた木連の人間が、微妙な表情を浮かべた。

 

「不満か?」

「……いえ。草壁中将に従っている兵士達も、木連の平和を願っているというのは変わりません。それを思えば、回復してくれるのであればありがたいです」

「そうだな」

 

 白鳥の言葉に同意したのは、意外なことに月臣だった。

 いや、本当にこれは意外だ。基本的に強気というか強硬派とでも呼ぶべき月臣が、敵を治療してもいいと言うとは思わなかった。

 

「草壁に捕まった事で、何か心境に変化でもあったのか?」

 

 そう尋ねるも、月臣は鼻を鳴らして再び部隊の指揮へと……どの部隊をどこに進ませるかという指揮へと戻っていく。

 

「元一朗も、今回の件で色々と思うところがあったんでしょうね。……それより、治療の方をお願いします。君、アクセル代表達を怪我人のいる場所に案内してくれ」

「は!」

 

 木連の兵士の一人が敬礼すると、俺達の前に立つ。

 

「こちらです」

「お願いなー」

 

 近衛に笑みを向けられながら告げられた兵士は、頬を赤くしながら部屋を出て行く。

 俺達も白鳥達に見送られながらその後を追っていき……やがて10分程度歩き、一つの部屋へと到着する。

 桜咲が微かに眉を顰めたのは、俺と同じく部屋から漂ってくる血の臭いと苦痛の悲鳴が聞こえたからだろう。

 桜咲も神鳴流の剣士として……そして俺と同じ人外の存在――それでも烏族とのハーフなので、俺よりは人に近いが――であるだけに、感覚も通常の人間よりも鋭い。

 神楽坂も五感は鋭いらしく、微かに悲しそうな表情を浮かべていた。

 そして部屋へと入ると……エリナとヤマダの2人も、俺達同様に厳しい表情を浮かべていた。

 そんな中、最初に行動を起こしたのは近衛だ。

 回復魔法を得意としているだけあって、こういう場面にも慣れているのだろう。

 ……まぁ、実働班を含めてシャドウミラーで行われている生身の訓練でエヴァに怪我をさせられた者達の治療を毎日のように行っていれば、それは慣れるか。

 ぶっちゃけ、シャドウミラーの怪我人はここにいる者達よりも重傷だったりするのも珍しくはないし。

 それでもこっちの方が重い雰囲気なのは、やはりあくまでも訓練のシャドウミラーとは違い、こちらは実戦……相手を殺す事を目的としているからか。

 

「え? ……暖かい……」

 

 近衛の回復魔法により、見る間に怪我が回復していった木連の兵士が呟き……それを見ていた他の者達の視線を受けると、近衛は口を開く。

 

「全員ウチが治したるから、安心してやー」

 

 不思議と、近衛のその言葉は怪我人達の心へと響いているのが傍から見ていても分かった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:505
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1208

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