転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1372話

 その報告を聞いた時、ヨシサダの顔は文字通りの意味で破顔一笑となった。

 

「そうですか、それは連合軍としてもありがたいです。それにしても……本当によろしかったのですか?」

 

 笑みを浮かべつつ、それでも申し訳なさそうな顔でヨシサダはエザリアに尋ねる。

 まぁ、連合軍にとってはヨシサダが口にしたように最高の話の進み具合だろうが、それだけに疑問を持ってもおかしくないか。

 何しろ、木連と連合軍が会談を行うというのだから。

 しかも、その流れを整えたのがシャドウミラーで……その上、俺が暗殺されそうになった件の木連に対する貸しを使ってのお膳立てなのだから、ヨシサダにしてみれば出来過ぎているとしか思えないだろう。

 実際、俺もエザリアからこの計画を聞かされた時には理解出来なかった。

 そもそも、今回ヨシサダを連れてきたのはあくまでもシャドウミラーと木連の交渉の立会人としてだ。

 ……まぁ、実際には色々と事情もあって、その役目を殆ど果たすことは出来ていなかったが。

 それでもヨシサダ本人はシロガネに軟禁状態になっているも関わらず、その生活を楽しんでいた。

 それは、世話役兼監視役として付けた量産型Wとの会話でシャドウミラーという組織がどんな組織かを調べていたというのもあるし、部屋自体もシロガネの中では結構上等な部屋で、色々と設備が整っていたというのもある。

 データベースとかにも潜れるようになっていて、俺達シャドウミラーが今までどんな世界と交流してきたか、そしてどんな存在と戦ってきたかといった事も調べられるようになっていたのだから、暇をする余裕もなかっただろう。

 勿論情報はかなり浅い場所までしか見られないようになっていて、シャドウミラーとして本当に重要な情報は見られないようになっている。

 もっとも、ナデシコのルリとオモイカネがいればそんなのは関係なく全ての情報を見られそうな気もするが。

 食事も当然シャドウミラーが食べているのと同じ食事を出しているし、午前10時と午後3時のお茶とお菓子まで付いている。

 身体を動かしたくなれば量産型Wと一緒ではあるがシロガネの運動場を使う事も出来るのだから、優雅な軟禁生活と呼んでも差し支えないだろう。

 その上で連合軍と木連の会談をセッティングしたのを考えれば、ヨシサダにとって幸運としか言えない。

 だが、エザリアが言うにはこれがシャドウミラーとして最大の利益になるからという事らしい。

 俺の暗殺未遂についてバッタの生産プラントを提供すると言ってきた草壁だったが、エザリアが粘りに粘っても、結局チューリップやヤンマはおろか、カトンボの生産プラント譲渡も拒否されたらしい。

 であれば、無理にバッタの生産プラントを貰うよりは木連と地球の関係を修復した方が結果的にシャドウミラーの利益になる、と。

 そういう事なのだろう。

 まぁ、木連と地球の戦争が終われば、チューリップやヤンマ、カトンボの生産プラントもすぐに使わなくなるとは言わないが、それでも使用頻度は落ちる筈だ。

 そうなれば俺達シャドウミラーが入手出来る可能性が高くなるらしいけど……これ、随分と時間が掛かるんじゃないか?

 下手をしたら数年、いや、下手をしなくても数年単位で時間が掛かりそうなんだが。

 ともあれ、連合軍にしろ木連にしろ、会談を仲介したシャドウミラーに対しては大きな借りが出来るのは違いない。

 だとすれば、借りを貯めてバッタの生産プラントではなく、もっと上の生産プラントを入手出来るという可能性もある……のか?

 ともあれ、そんな具合になっている訳で。

 

「別にこっちの都合もあっての事だしな。それに、会談が行われる場所はシャドウミラーがこの世界で本拠地にしている火星だ。連合軍と連合政府の方で火星にやってくる奴がいればいいんだけど」

 

 そう言うが、実際にはいると思っている。

 グリューノ辺りは強硬派だから正直微妙だが。

 この会談は俺達シャドウミラーが取り持った会談だ。

 恐らくこのナデシコ世界でもシャドウミラーがどれだけの力を持っているのかを知っているという意味では、グリューノは確実に上位に位置するだろう。……アカツキには及ばないだろうが。

 ともあれ、そんな俺達の顔を潰すような真似をするとは思えない。

 それに何より、今回ヨシサダを通して会談を持ちかけるという事は当然ヨシサダを派遣するように手を回した人物……ミスマルの手柄という事にもなる。

 その辺を考えれば、穏健派のミスマルが会談に出てくる可能性も高い。

 そうなれば、まず連合軍側から会談をどうにかするという事は考えなくてもいい訳だ。

 ヨシサダもその辺は考えているのだろう。笑みを浮かべて口を開く。

 

「問題はないでしょう。今回の件を逃せば、色々と手遅れになりかねません。だとすれば、グリューノ司令も確実に参加する筈です。それと、ミスマル提督も」

「だと、いいけどな。……後は木連の方の問題もあるか」

 

 ヨシサダが、不思議そうな表情を俺の方へと向けてくる。

 

「この前、非常警報が鳴っただろ?」

「はい。ですが……いえ、なるほど。つまりまだ完全ではないと?」

「だろうな。そもそも、俺の命を狙った相手も口封じに暗殺されている。だとすれば、まだあの件に関わった相手を全員捕まえたとは思えない」

 

 一応草壁からは、その辺に関しては心配いらないと連絡がきてはいるんだが……現状でそれを完全に信じられる筈もない。

 

「ですが会談場所は火星なのでしょう? では、向こうも何も出来ない……とは言いませんが、それでも打つ手はないのでは?」

「火星に存在するチューリップを全て破壊したとは限らないという事だろう」

 

 俺達の話を黙って聞いていたナタルが口を挟む。

 そう、それが問題だ。

 現在ナデシコ世界の火星における木連の戦力はほぼ全てを撃破したと考えられる。

 だが、ほぼとついている通り、本当に全てを撃破したとは限らない。

 そんな中、もし火星にまだチューリップが残っていれば、会談の妨害を目論む勢力が転移してくるという可能性は十分過ぎる程にある訳だ。

 

「ふんっ、その時は俺が出て蹴散らしてくれる! 木連の兵器は、数は多いが性能は高くない。シャドウミラーの実働班であれば、倒すのは難しくないからな」

「イザーク、少し落ち着きなさい」

 

 血の気も露わに告げるイザークに、エザリアが注意を促す。

 ……少し恥じた様子をするイザークってのも、微妙に珍しいよな。

 全く、イザークのどこがクールなのやら。

 いや、外見だけならそう思ってしまうのは仕方のない事なんだろうが。

 

「ともあれ、連合軍側としてはこの話を進めても構わないんだな?」

 

 親子のやり取りをスルーしてヨシサダに尋ねる。

 すると当然のように頷きを返される……かと思いきや、少し難しい顔をして口を開く。

 

「私としては勿論ですと言いたいですし、大歓迎……と言いたいところです。ですが、知っての通り私はあくまでも見届け人ですからね。このような大事を私だけの判断では決められないのですよ。連合軍の方へと通信を送る必要が……」

「そうか、なら通信を送るか」

「……はい?」

 

 一瞬何を言われたのかといった表情を浮かべるヨシサダ。

 ああ、なるほど。ヨシサダが得られる情報にはフォールド通信の事は入ってなかったのか?

 マクロス世界で得たフォールド通信は、地球と木星どころか、フォールド断層が存在しなければ宇宙のどこにいても大抵の場所ではリアルタイム通信が可能だ。

 それも遅延の類が一切ない状態で。

 木連が恐らくだがチューリップを利用して通信をしているのと似たような感じ……と言ってもいいのか? いや、チューリップを利用しているのだろう通信が具体的にどんなものなのかは、経験してないから分からないが。

 

「この艦で地球と……正確にはニヴルヘイムと通信が出来るから、そこに中継して貰って連合軍に通信を送ればいい」

「……出来るのですか?」

「ああ」

 

 驚いているヨシサダだが、シャドウミラーにとってフォールド通信というのは普通に使われている技術だ。

 現に俺も、木星へとやってきてからニヴルヘイムにいるマリュー達、ナデシコのミナトやエリナ、それと火星のゲートを利用してホワイトスターにいる面々と何度も話をしている。

 フォールド通信とゲートを使えば、ナデシコ世界に居ながらにして他の世界との通信も可能となっているんだよな。

 そう考えると、フォールド通信は俺がマクロス世界に行ってからの短い間によくここまで普及したものだ。

 ……シャドウミラーが勢力的にはともかく、規模としては小さい組織だからこそ可能な事なんだろうが。

 数秒の間唖然としていたヨシサダだったが、すぐに我に返って頷いてくる。

 

「分かりました。では、すぐに地球へと連絡をしましょう。出来ればこちらの報告書の類も送りたいのですが……」

「報告書、か。まぁ、それは構わない」

 

 短期間ではあってもシロガネで暮らし、量産型Wとの会話やコンピュータで調べ、シャドウミラーのメンバーとの会話といった事から得た、俺達の知識。

 勿論木連についての情報もあるだろうが、そちらよりも俺達シャドウミラーについての情報の方がより大きな価値を持っているのは間違いない。

 連合軍にとってヨシサダの報告の中で重要なのは、明らかにそちらの報告書の方だろう。

 まぁ、俺達にとって知られても困るような事は向こうに教えてないから、その報告書を送る分には全く構わないんだが。

 

「ありがとうございます。これで連合軍もシャドウミラーに対して妙な誤解をするような事はないかと。それと木連に対しても、より深い理解をする事が出来るでしょう」

「だといいんだけどな」

 

 連合軍と連合政府にとって、俺達という存在はともかく木連というのは許容するのは難しい。

 最初に木連が使者を送った時ならまだ何とかなったかもしれない。

 だが、今は既に木連と地球の間で戦争が起きてしまっており、地球側で一方的に被害が出ている状況だ。

 ……シャドウミラーと同じように、無人機を主体としている強みが木連側に出ているよな。

 ともあれ、家族、恋人、友人、知人といった者達が死んでる者はかなりの数になる筈だ。

 そんな状況で、実は木連との戦争は過去の連合軍と連合政府が原因であり、何より戦争前に木連が送ってきた使者を暗殺してしまった為にこの戦争が起きました……なんて発表した場合、どうなるか。

 以前アカツキから木連の事を聞いた時に言っていたように、間違いなく民衆の支持は連合軍や連合政府から失われる。

 そんな事になれば、それこそ今の軍上層部や政府上層部といった面々は首を切られる事になるだろう。……物理的な意味で首を切られるって訳じゃないのは、せめてもの救いだろうが。

 そうなれば、歴史上の汚名が未来永劫語り継がれる事になり……それにグリューノ達が耐えられるかどうかと言われれば、微妙なところだろう。

 学校の授業でまで自分達の愚かさを知られ続ける事にすらなりかねないのだから。

 かといって、シャドウミラーが橋渡し役をして行うこの会談で木連に喧嘩を売るような真似が出来る筈もなく……

 連合軍はどうやってここを切り抜ける気なのやら。

 ただ、もう一番大人しく事を収める方法が出来ない以上、ここで一旦区切りを付けておいた方がいいのは事実なんだよな。

 

「では、早速地球に通信を送りたいのですが……」

「ああ、量産型W、連れていってやれ」

「了解しました」

 

 量産型Wが短く答え、ヨシサダと共に部屋を出て行く。

 それを見送った俺達は、少しの間沈黙に包まれた。

 そんな中で最初に口を開いたのは、オウカ。

 

「今回の件、どうなると思いますか? 私は、とてもじゃないですけどまともに終わるような気がしないのですが」

 

 オウカの言葉は、皆が同意見だったのだろう。それぞれ言葉には出さないものの、頷いている者も多い。

 

「ただ、せめてもの救いは私達が橋渡し役をしているという事ではないかしら。木連も連合軍も、迂闊な真似は出来ないでしょう?」

「千鶴の言いたい事も分かる。分かるんだけど……果たしてグリューノ達がそれを受け入れられるかどうかが問題だ」

 

 個人的には、この会談を切っ掛けとして戦争を何とか和平に持っていって欲しい。

 そこまでいかなくても、せめて停戦くらいには出来ればと考えている。

 だが……その辺の出来事は、こっちで何かを考えてもその通りになるとは限らない。

 それこそ、どんな結末となるのかは神のみぞ知るって奴だな。

 ……神は神でも、ダークブレインとかそんな神は真っ平御免だが。

 ふとそんな事を考え、俺は苦笑を浮かべながら会談へと思いを馳せるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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