転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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0122話

「敵はアルフィミィか」

 

 モニタに映し出されているのは、ペルゼイン・リヒカイトとアインストレジセイア相手に激戦を繰り広げているヒリュウ改とクロガネ、そしてPTやAM等の映像だ。

 敵の数自体はアルフィミィのペルゼイン・リヒカイトが1機にアインストレジセイア11匹とそれ程多くはないのだが、何せアインストレジセイアは100mオーバーの化け物だ。それが11匹となると、その戦力はどれ程のものか。

 不思議なのは、ペルゼイン・リヒカイトからそう遠くない距離にいる4匹のアインストレジセイアだ。ペルゼイン・リヒカイトや他のアインストレジセイアはヒリュウ改やクロガネと戦っているのに、特に何をするでもなくただその場に存在して他のアインストの戦いを眺めている。

 しかし、クロガネやヒリュウ改も俺の干渉により原作よりも格段に戦力アップしている。また、オウカのように原作では仲間にならなかった者もいる為に戦力的には拮抗……いや、むしろ勝っていると言ってもいいだろう。

 そんな2勢力の、これからの地球の行く末を決める戦いを俺はASRSで身を隠しながら観察していた。

 ヒリュウ改やクロガネが押し気味な今のこの状態で、俺が手を出す必要はまだない。

 干渉するのはアルフィミィが倒され、アインストのボス、女王蜂とも言えるシュテルン・ノイレジセイアが姿を現してからだ。

 ちなみに、観察しながらPPを消費して前々から欲しかった気力限界突破のスキルを習得済みだったりする。

 再びこの世に生を受けてから約20年。生き残る為に行ってきた行動の数々の結果がようやく現れようとしている。

 当初の計画通りに進んでいればギャンランドでドルムから脱出してシュテルン・ノイレジセイアが倒されるのを待っているだけで良かったのだが、俺が干渉しすぎたせいかヒリュウ改やクロガネの戦力がかなり強化されてしまったようで、こちらの予定よりも早くウェンドロを倒してしまったのは計算外だった。その結果脱出する暇もなくギャンランドごと俺達もアインスト空間に引きずりこまれてしまったのだからある意味自業自得なのだろう。

 そして結局俺はレモンと共に生き残る為に、絶対戦いたくなかったシュテルン・ノイレジセイア相手に攻撃を仕掛けようとしている訳だ。

 自分が生き残るという目標の中にいつの間にかレモンも含まれているが、特に違和感はない。自然とそういう決断が出来るようになったのだろう。

 そんな事を考えていると、エクセレンのライン・ヴァイスリッターから放たれた弾丸がペルゼイン・リヒカイトへと命中し、その動きを止めた。

 

「アルフィミィを撃破、か。ならそろそろだな……ぐぅっ!」

 

 アルフィミィが撃墜されてから数秒後、念動力を通して強大な思念が叩きつけられる。その強さは念動力のLVがどうこうというものではない。例えるのなら川と海といった所だろうか。同じ水でも、その規模が桁違いだ。

 

「……来るかっ!」

 

 アルフィミィの近くにいたが、殆ど行動を起こしていなかったアインストレジセイアが消え去り、次の瞬間そこにはアインストレジセイアですら比べものにならない巨大な姿があった。

 直径30~40kmはあるだろうか。その姿はどこか城を思わせるがそれも当然だ。なにせあれはインスペクターの宇宙要塞ドルムとノイ・レジセイアが融合した姿なのだから。

 その巨体にヒリュウ改やクロガネの面々も戸惑っているのか動きを止めている。

 まぁ、それもしょうがないだろう。俺は原作知識があるからこうしてものを考える余裕があるが、何も知らない状態でいきなりアレが目の前に現れれば混乱してもおかしくない。

 

『……始まりの地から来た者達よ……新たな進化が始まる……』

 

 そんな声が頭の中に響く。恐らくヒリュウ改やクロガネのメンバーに対して声をかけているのだろうが、その出力が圧倒的な為に離れた場所にいる俺にも聞こえているんだろう。多分、ギャンランドの方にも届いていると思われる。

 だが、聞こえてきたのは最初のその言葉だけだった。原作ではヒリュウ改やクロガネと言葉でやり取りをしている筈だが、それは全く聞こえてこない。

 恐らく声をかけてきた相手、あるいはその周辺のみに限定して返答をしているのだろう。見た限りでは、PTやAMがその場で止まってシュテルン・ノイレジセイアと対峙している。

 やがてそのやり取りも終了し、いよいよ最終決戦の幕が開けた。

 コロニー並の巨体であるシュテルン・ノイレジセイアに対するのは、歴戦の勇士とも言えるヒリュウ改とクロガネの部隊。そしていつの間にかライン・ヴァイスリッターから受けたダメージを修復していたペルゼイン・リヒカイトだ。この辺は原作通り、アルフィミィがアインストを裏切ったのだろう。

 その様子を見ながら、いつでも戦闘に介入できるように準備を整える。アインスト空間を漂っているストーンサークルを形成していた岩塊や謎の結晶体の後ろに姿を隠し、ASRSを解除する。クロノスから伸びているビームガトリング砲、リニアレールガン、ランツェ・カノーネ2門の砲身を展開。その両手にガン・レイピアとハルバート・ランチャーを持つ。ファントム全機をグロウセイヴァーの後方へと浮かべ、システムXNにより転移フィールドを形成。いつでも転移が可能な状態にする。

 

 ヒリュウ改やクロガネとノイ・レジセイアの戦いは激闘だった。

 各機がコロニー並みの巨体を誇るノイ・レジセイア相手に決して怯む事なく最大級の攻撃を仕掛けていく。

 

 

 R-GUNパワードが巨大な銃へと変形しそれを撃ち放つSRXの天上天下一撃必殺砲がその巨体を穿つ。

 アウセンザイターが馬へと姿を変えてその上にダイゼンガーが乗り、刃馬一体の動きによる竜巻斬艦刀で広範囲を斬り裂いていく。

 アルテリオンはその機動力を活かし、ノイ・レジセイアへと牽制の意味を込めて着実に攻撃を当てていく。

 アルトアイゼン・リーゼとライン・ヴァイスリッターの連係攻撃であるランページ・ゴーストによりその表面を破壊され。

 アンジュルグのファントムフェニックスとサイバスターのアカシックバスターで2羽の不死鳥がその身を焼き尽くす。

 ヴァルシオーネから放たれたクロスマッシャーの赤と青の光線が螺旋を描きながらその巨体へと突き刺さり。

 AMガンナーのGインパクト・キャノンがノイ・レジセイアの表面へと着弾し。

 エクサランス・コスモドライバーから放たれたフェアリーによるオールレンジ攻撃が行われる。

 グルンガストの計都羅睺剣・暗剣殺で斬り裂かれ。

 ゲシュペンスト・タイプRVのメガ・バスターキャノンの青い光線が貫く。

 虎龍王がソニック・ジャベリンやランダム・スパイクによる連続攻撃、タイラントオーバーブレイクを叩き込む。

 ジガンスクード・ドゥロがそのシーズアンカーをノイ・レジセイアの巨体に突き刺し、G・テリトリーを展開して体当たりをするジガンテ・ウンギアを食らわせ。

 ズィーガーリオンの両肩から電磁誘導加熱した金属粒子を固定、更にそれを念動フィールドで包み込み、ノイ・レジセイアの巨体へと突き刺す。

 ヒュッケバインのブラックホール・キャノンから発射されたマイクロブラックホールがノイ・レジセイアの巨体へと着弾し、端の方を圧壊させる。

 ヒュッケバインMk-ⅢボクサーがそのAMボクサーを巨大な剣へと変化させ、ノイ・レジセイアへと勢いよく突き刺さる。

 ビルトビルガーとビルトファルケンによる近接攻撃と射撃武器による連係攻撃、ツインバードストライクによりノイ・レジセイアの表面を削り取る。

 2機のフェアリオンが、ノイ・レジセイアの攻撃をシャインの予知能力を使って回避しながら連係攻撃のロイヤルハートブレイカーでノイ・レジセイアを翻弄し。

 ペルゼイン・リヒカイトが2機の下僕を召喚し、その2機と共に幾度も刀を振り下ろす。

 ラーズアングリフ・レイブンの収束荷電粒子砲とランドグリーズ・レイブンのツイン・リニアカノンがノイ・レジセイアへと突き刺さる。

 ヒリュウ改の艦首超重力衝撃砲がノイ・レジセイアの胴体へと突き刺さる。

 クロガネが艦首の超大型回転衝角を回転させながら、砲撃しつつ突っ込み、その超大型回転衝角でノイ・レジセイアの巨体を削り取る。

 

 

 そんな激しい攻防がどれ程続いただろうか。さすがのノイ・レジセイアも動きが鈍くなり、その巨体の至る所から崩壊が始まっていた。

 アインストの中枢機関である赤い宝玉も幾多にも渡る攻撃でその数を減らしている。

 もう少しで倒せる。あるいはそれがほんの僅かな、しかし決定的な隙になってしまったのかもしれない。そしてシュテルン・ノイレジセイアはそれを見逃す程には甘くなかった。

 赤い宝玉から大量のエネルギー弾を生成して、一瞬の隙を見せたアルトアイゼン・リーゼへと発射する。それを何とか防御するアルトアイゼン・リーゼ。装甲自慢の機体だからこそ可能だったのだろうが、シュテルン・ノイレジセイアの攻撃はそれだけでは終わらなかった。

 その攻撃をなんとか防ぎきったアルトアイゼン・リーゼへと向かい、シュテルン・ノイレジセイアは顔でいう口の部分を展開。そこから凄まじいエネルギーを発射しようとしている。

 

「ここだ、転移!」

 

 このままキョウスケをここで死なせる訳にはいかない。そう判断した俺は、岩塊の裏からシステムXNを起動。エネルギーを発射寸前だったシュテルン・ノイレジセイアの顔面の目の前へと転移する事に成功する。

 

「なっ!?」

 

 驚愕の叫びを上げたのは果たして誰だったのだろうか。だが、もちろん俺にそんな事に構っている余裕はない。

 

「愛・直撃……フルバーストだ、食らえっっっっっ!」

 

 レモンと共に歩むと誓い、友であるヴィンデルを殺した時に習得した精神コマンド、愛。それは加速・熱血・必中・ひらめき・気合・幸運・努力の7つの精神コマンドの効果を1度で発揮させる、ある意味スパロボ精神コマンドの奥義とも言えるものだ。その愛と共に直撃を使い、合計6つの砲門から全力で斉射する。胸部装甲を展開し、ファイア・ダガーを残弾0になるまで連続発射。ファントムの全機をレーザーブレードを展開させたままシュテルン・ノイレジセイアの口の中へと突っ込ませて体内を切り刻み、レーザー弾を連続で発射する。

 

「グレイプニルの糸、起動!」

 

 唯一使用が可能な右手のグレイプニルの糸を起動。シュテルン・ノイレジセイアの頭へと絡ませて、そのまま近づき右手で持っていたガン・レイピアをラックへと仕舞いアダマン・ハルパーを取り出す。

 

「アダマン・ハルパー、起動! SPブースト、ナイン・テールモード!」

 

 愛と直撃で使った以外の全てのSPをアダマン・ハルパーへと注ぎ込み、その9条の鞭でシュテルン・ノイレジセイアの顔面を薙ぎ払う。SPブーストの効果により急激にSPを消費したがその分の効果はあり、シュテルン・ノイレジセイアの顔面は既に見る影もなく千切れ飛んでいる。9条の鞭はそれでも威力を弱める事なくシュテルン・ノイレジセイアを斬り裂き、破壊し、粉砕していく。

 

「ファントムっ!」

 

 T-LINKシステムを通して俺の意志を受け取ったファントムは、28機全てがレーザーブレードを展開したままシュテルン・ノイレジセイアの体内を突き破りグロウセイヴァーの下へと戻って来る。

 

「はああああああぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!」

 

 俺の雄叫びに反応し、28機のファントムはその全てが踊るようにシュテルン・ノイレジセイアの周囲を移動しながら、時にはレーザー弾を発射し、時にはレーザーブレードでその身を斬り裂く。

 その間も、SPブーストで威力を増した9条の鞭でシュテルン・ノイレジセイアの巨体を破壊し、クロノスから伸びている4門の砲門はその弾丸やビームを放ち続ける。

 

 どのくらいの時間が経っただろうか。エネルギー消費量が激しくなりすぎた為、永久機関とも言える時流エンジンですらエネルギー供給が追いつかなくなり、弾丸やミサイルも全て撃ち尽くして攻撃手段が無くなっている事に気が付いた。

 

「はあっ、はあっ、はあっ……」

 

 荒い息を吐きながらも周囲を確認すると、既にシュテルン・ノイレジセイアと呼べる物は存在していなかった。そこにあるのは、かつてシュテルン・ノイレジセイアと呼ばれた肉片、あるいは部品が宙へと浮いているのみだ。

 

「アクセル・アルマー……お前は……」

 

 こちらへと送られてきた通信はキョウスケのものだった。何か信じられないようなものを見る目をこちらへと向けている。

 

「お前は、今まで俺達を相手にした時は手加減をしていた、のか?」

「そういう……訳じゃ…ないさ」

 

 息を整えつつも、キョウスケへと言葉を返す。

 

「アクセルさん!」

「アクセル大尉!」

 

 ラウルとオウカがどこか嬉しそうにこちらを見ている。俺に助けられた事が余程嬉しかったのか。

 この2人が無事だったのは、俺としても素直に嬉しい。だが、そんな安堵の気持ちも次の瞬間に入ってきた通信により吹き飛ぶ。

 

「アクセル、大変よ! アインストが倒された為か、次元測定値が反転、次元間不連続面が発生してる。このままだと時空の捻れに巻き込まれる可能性があるわ! 少なくてもグロウセイヴァーでは殆ど保たない。早くギャンランドに戻って!」

 

 レモンにしては珍しい、悲鳴のような声。その声を聞くだけで詳しい事は分からないが、大変な事が起きているというのだけは分かる。

 

「……母艦から連絡があった。どうやらこの空間は長くは保たないようだな。お前達も早く自分の艦に戻って対策を練った方がいい。折角この戦いを生き延びたんだ。こんな所で死ぬなよ。……システムXN、起動。転移フィールド生成開始」

「アクセル大尉、なら私達と一緒に!」

「そうだよ、アクセルさん。皆で協力すれば」

 

 その2人の声に首を振る。

 

「忘れるな。俺達はシャドウミラー。この地球に戦乱を巻き起こした者達だ。そんなのと一緒にいてみろ。お前達まで追われる身になるぞ。ただでさえ今の連邦軍はケネスのような超タカ派が主流なんだ」

「でもっ、大尉は私達を助けてくれました! それに結局この部隊には大尉に殺された人は誰もいません!」

 

 いつもは毅然としているその表情は見る影もなく、その目から涙を流しているオウカ。

 

「ほら、泣くな。折角の美人が台無しだ」

「でしたらっ! でしたら私達と一緒に来て下さい! そうしたら泣きません!」

「……悪いな。オウカにはオウカの道があるように、俺には俺の道がある。共には行けない」

「フィオナは……フィオナの事はどうするんだよ! フィオナに会った時にアクセルさんの事を聞かれたら俺は何て答えればいいんだよ! 見殺しにしたなんて言えないし、言いたくない!」

「ラウル、落ち着け。俺は別に死にに行く訳じゃない。お前も知っているだろう? 俺には最強の勝利の女神が付いているって」

「レモンさん……そうか、レモンさんも無事だったのか」

 

 そろそろ転移フィールドの形成も完了しそうだ。話す事が可能な時間も残り僅か。

 

「アクセル・アルマー……」

 

 その声を発したのはブリットだった。そしてブリットと同時にこちらを真剣な表情で見ているのはリョウトとアヤ。俺と念動力の共振を起こす3人だ。

 

「ブルックリン・ラックフィールドか。そしてリョウト・ヒカワとアヤ・コバヤシ。お前達3人が一緒だと大体何の話か分かるな」

 

 苦笑しながら、話を促す。

 

「アクセル・アルマー。教えてくれ。何で俺達とお前の間には念動力の共振が起きるんだ?」

 

 一瞬、教えてもいいかもしれないとも思うが、すぐに首を振る。

 

「今まで何度も言ってきただろう? その言葉をここでも贈らせて貰う。知りたければ俺を倒して見せろ。俺を倒す事が出来たら、その時には俺の知ってる事を何でも教えてやる、と。……もっとも、この状況でってのは御免だがな。また今度会ったらその時に戦ってやるよ」

「……死ぬ気は、ないんですね?」

 

 確認するようなリョウトの言葉に頷きを返す。

 

「俺達の道は違う方向に進んでいる。それでも恐らく、いつか交わる時が来る。……そうだな。その時になってもまだお前達が俺を倒す事が出来ていないのなら、教えてやってもいいかもな」

 

「その言葉、確かに聞いたわよ」

「ああ。アヤ・コバヤシ。お前程の美人との約束は忘れようとしても忘れられないさ」

「ちょっ、あなた……何をいきなり!」

 

 照れか怒りか、はたまた羞恥か。ともかく顔を真っ赤にしたアヤを見ていると『大尉?』という、どこか背筋が冷たくなるような声が聞こえてくる。そちらの方を見ると、オウカが何故か無表情で俺の方へと視線を向けていた。

 よく見ると、ラトゥーニやアラド、ゼオラが微妙に震えているような気がする。

 

「……よし。転移フィールド完成だ。じゃあ、悪いが俺はこの辺で失礼させて貰うとする。恐らくそのうちまたどこかで会う事になるだろうが、それまで達者でな……キョウスケ・ナンブ」

「何だ?」

「よくアインストに負けないでいてくれた。おかげで俺も生き残る事が出来た」

「何っ!? アク」

 

 キョウスケに最後まで言わせずに、転移を実行した。


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