転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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番外編057話 その頃の技術班

 ホワイトスターにある魔法区画。

 そこに設置されている魔法球の中にはシャドウミラーの誇る技術班の面々が揃っていた。

 外の1時間が48時間になるというこの場所は、時の指輪の効果により不老となった技術班の面々にとっては最高の仕事場と言ってもいい。

 そんな場所に集まった技術班が現在何を行っているのかと言えば……

 

「腕には増加装甲と共にビームガトリング砲を……」

「却下よ」

 

 技術班の1人の説明の途中にも関わらず、レモンは即座にその案を却下する。

 何故、といった表情を浮かべる技術者の男に、レモンは溜息を吐いてから口を開く。

 

「あのねぇ、貴方達。アクセルからの要望を忘れたの? 特機はともかく、PTサイズの機体全てで使えるようにって前提条件があるのよ。増加装甲ともなれば機体に合わせる必要が出てくるでしょ。シャドウならともかく、私達幹部が乗っているような機体はそれぞれ全く違う機体よ。それこそ、シャドウミラーで製造された以外の物も多くなっているわ。そっちはどうするつもり? 幾ら増加装甲だからって、シャドウとそれらの機体だと大きく違うわよ?」

「そ、それは……何種類かのタイプを用意して……」

「うちではコスト的な無理が出来るけど、だからってそれを全て受け入れるって訳にもいかないでしょ。……どうしようもなければその手段もありかもしれないけど、今はまだ時期尚早よ」

「ですけど……」

「いいから、他に案はないの?」

 

 レモンの却下する声に、周囲にいた他の技術班の者達が小さく首を横に振る。

 今まで何度となく話し合い、アイディアを出してきたのだが、その全てが却下されているのだから当然だろう。

 だが、これは技術班が無能だという訳ではない。

 シャドウミラーの技術班というのは、非常に高い技術を持っている者達の集まりだ。

 それこそ、現在シャドウミラーと繋がりを持っている世界の中には、技術班よりも優秀な技術者はいないとレモンは自信を持って言えるだろう。

 しかし、そんな技術班でも現在シャドウミラーの代表であるアクセルから出されたオーダーには苦戦していた。

 特機を除くシャドウミラーに所属する機体の全てが使用可能な追加装甲兼武装。

 アクセルのイメージにあったのはZガンダムに出てくるガンダムMk-ⅡとGディフェンサーが合体したスーパーガンダムだったが、Gディフェンサーのようにコアファイターが存在するような物は駄目で、基本的に最初から装備したまま出撃するという前提条件があった。

 シャドウミラーの有人機では主力と言える量産型Wだが、その技量故にコアファイターのような物に乗せるのは勿体ないという理由が強い。

 また、リ・ガズィのようにBWSを使い捨てにするようなのも却下としている。

 

「フリーダムのミーティアの発展系はどうなの?」

 

 SEED世界が出身のマリューの言葉に、レモンは少し悩む。

 分類としては先程の技術者と同じような形なのだが、実際に運用された実績があるシステムというのは魅力的だった。だが……

 

「確かにミーティアはいいかもしれないわ。ただ、ちょっと大き過ぎるのよ。全長100m近く、全幅60mオーバー、重量500tオーバー。……とてもじゃないけどシャドウミラーの機体には合わないわ」

 

 シャドウミラーの機体は基本的にほぼ全てがブラックホールエンジンで動いており、それによるグラビコン・システムで重量が軽減されている。

 そこに500tオーバーの追加兵装を身につけるというのは、機体重量が重くなり過ぎるというのがレモンの感想だった。

 また、全長100mともなれば、敵にとってはいい的となる。

 バリアの類がある以上、ある程度の攻撃に備える事は出来る。だが、それでも負担を掛けないに越した事がないのは事実だ。

 そう説明すると、マリューも小さく溜息を吐いて口を開く。

 

「そうね、ちょっとシャドウミラーには向かない兵器だったかもしれないわね。それだけ大きければ特機よりも大きな的になってしまうし」

「特機? 特機ですって?」

 

 ポツリ、と呟かれたマリューの言葉。

 それを聞いたレモンの中で、特機という言葉がヒントとなってアイディアが纏まっていく。

 

「特機程の大きさまでいかなくても、PTより大きければ……それに大きいという事は多少の機体サイズ差は関係なくなる。その辺の遊びを作れば……PTのパワースーツ? いえ、確かヒュッケバインMk-Ⅲにはコアトルーパーという設計思想があったわね。そこまでいかなくても……だとすれば……機体その物を収納するという形なら? でも、それだとその兵装を使い捨てに? いえ、そこまでいかなくても、機体が脱出したら母艦に戻るようにAIを設定出来れば……なるほど、そう考えると機体性能に余裕のある大きさという事で、多少大きくてもある程度の余裕が……」

 

 独り言を呟きながら考えを纏めていくその様子は、何も知らない者にしてみれば驚きを覚えるだろう。

 だが幸い、ここにいるのは技術班の面子だけであり、そんなレモンの姿を見るのも初めてという訳ではない。

 

「でも、動力炉は……いえ、機体が大型になるのであれば、それこそそちらの方にブラックホールエンジンを……であれば、その分エネルギーにも余力が出来るから機体の攻撃力に回して、PTはコントロールユニットのような感じにすれば……そうなると問題なのはやっぱりコストね。それにシロガネとかだとあまり多く搭載出来ないというのも問題になってくるわ。だとすればニヴルヘイムでの運用がメインに? ……いえ、それこそ簡易型のシステムXNを使えばある程度は……なるほど」

 

 こうしてレモンの中ではどんどんとアイディアの断片が1つの形として組み立てられていき……最終的には全高40m程のPTをコアユニットとして使用するMAとでも呼ぶべきものが作られていくのだった。


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