転生とらぶる1   作:青竹(移住)

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1270話

 ヤマダの見舞いを終えた俺とテンカワは、食堂へと向かって歩いていた。

 結局ヤマダの相手は殆どテンカワにさせていたんだが、それでも見舞いに来て貰ったのは嬉しかったのだろう。病室から出る時に顔をあらぬ方へと向けながらだが、感謝の言葉を言われた。

 余程に照れくさかったのか、短い感謝の言葉を口にするだけだというのに、頬を赤く染めて。

 

「男にツンデレされてもなぁ」

「うん? アクセル、何か言ったか?」

 

 俺の言葉が聞こえたのか、テンカワが尋ねてくるが、それに首を横に振る。

 

「いや、何でもない。それよりテンカワも見舞いに行く前に言っていた事をどうするか、しっかりと考えておけよ」

「あ、ああ。……うん、わかってる」

 

 パイロットとコックのどっちを優先するのか……それを言われたテンカワは、少し迷いながらも頷きを返す。

 ヤマダの見舞いの件ですっかりとその辺を忘れていたのだろう。

 ……ゲキガンガーとやらの件で思い切り盛り上がっていたし。

 いや、さすがにこの件を忘れるなんて事はないか。どちらかと言えば、忘れておきたかったというのが正しい。

 そんなテンカワと話しているうちに、やがて食堂へと到着する。

 まだ食事の時間ではないのだが、ある程度客の姿が入っているのは、連合軍や木星蜥蜴とのやり取りが一段落してゆっくりしたいと思っている奴が集まってきているのだろう。

 誰か知り合いがいないかと思って周囲を見回すが、そもそも俺の知り合いなんてエリナ、プロスペクター、ゴートといったネルガル関係者、テンカワ、ヤマダといったパイロット、ウリバタケを始めとする整備班、それとブリッジメンバーくらい……って、こうして考えてみると結構いるな。

 まぁ、それでもナデシコ全体の人数は200人を超えてるんだから、それ程多いって訳じゃないんだろうが。

 そもそも、ナデシコにいる全員と知り合いになれるなんて……それこそ、食堂に勤めているような奴じゃないと無理じゃないのか?

 そんな風に考えて周囲を見回すと、ハルカが一人でサンドイッチを持て余し気味に食べているのを見つける。

 

「テンカワッ! 何やってるんだい! こっちは忙しいんだから、とっとと手伝いな!」

 

 厨房の方からホウメイの怒声が飛んでくる。

 

「っと、悪いアクセル。俺はもう行くから。ゆっくりしていってくれ」

「ああ。お前もプロスペクターに言われた件、しっかりと考えておけよ」

 

 繰り返すようにそう告げると微妙に顔を顰めたテンカワだったが、それでもしっかりと頷いて厨房へと向かう。

 さて、テンカワがどんな選択をするのか。……もしこれが原作通りなら、恐らくはパイロットを選ぶんだろうが。

 この世界には俺というイレギュラーがいる。

 その上で、何だかんだと俺はテンカワとの接触も多い。

 そうなると、テンカワが原作とは考えが変わってしまう可能性もある。

 ……まぁ、原作を覚えてない以上、その辺が代わっても俺には大して意味はないんだろうが。

 食堂の入り口にある食券売り場でカツサンドとイチゴクレープの食券を買って注文を済ませると、どこに座るのかを見回す。

 とは言っても、今の食堂で俺の知り合いはハルカくらいだ。

 一人で食うか、ハルカと食うか。……さて、どうするか。

 そう迷ったんだが、ハルカの方へと視線を向けると何人もの男が話し掛けるチャンスを伺っているように見える。

 いや、無理もないんだけどな。ハルカは見ての通り大人っぽい美人だ。

 同じ美人という意味ではエリナや艦長もいるが、エリナはネルガルの会長秘書という立場で基本的にこの艦に乗っている者の中でも殆どの者より立場は上だ。実質的には最高権力者に近い。

 更に顔付きを見れば分かる通り、性格もきつい。

 そんな女をナンパして、成功するならともかく、失敗しようものなら確実に酷い目に遭うだろう。

 艦長はと言えば、美人なのは間違いないが、そもそも艦長の目にはテンカワしか入っていない。

 正確には異性としては、という注釈が付くが。

 見るからにテンカワ好き好きという雰囲気を放っている艦長を口説けるような奴がいたら、そいつはかなりの猛者だろう。

 メグミやホウメイガールズと呼ばれているらしいのもいるが、ハルカの大人の魅力には敵わないらしい。

 ま、その辺は個人の趣味だ。

 中にはルリを口説こうなんて考える存在すらいるかもしれないが。

 ……ナデシコに乗ってるメンバーの変人度を考えると、必ずしもないとは言えないんだよな。

 ともあれ、美人でフリー。しかも服装も改造されていて露出度が高いとなれば、ハルカが狙われるのも無理はないだろう。

 もっとも本人はこの空気がどことなく居心地が悪そうにしているようにも見える。

 そんな風にどうするべきか考えていると、俺の視線を感じ取った訳でもないだろうが、ハルカの方が俺を見つける。

 

「あ、アクセルいたんだ。こっちこっち!」

 

 俺に向かって大きく手を振り、自分の方に来いと呼び掛ける。

 瞬間、ハルカに声を掛けるべくタイミングを図っていた男達から厳しい視線が……

 ま、しょうがないか。

 元々他人の視線を気にしない――していれば恋人が9人や11人も作れない――俺は、そのままハルカの席へと向かう。

 

「今日は活躍だったわね」

「ま、特別に雇われてるんだし、このくらいはな。……にしても、ここにいてもいいのか? ナデシコは動いてるみたいだけど」

「いいのよ。今はエリナが動かしてるから」

「……いいのか? 会長秘書なんだろ?」

「いいのよ。会長秘書でも、ナデシコには副操舵士として乗ってるんだから。それに、本人も結構乗り気だったわよ?」

「また、意外な」

 

 てっきりミロンガ改の為に乗ってきたと思っていたんだが……いや、それは間違いないんだろうが、副操舵士としてナデシコに来た以上、きちんと副操舵士としての役目を果たそうといったところか。

 委員長的な真面目さを持っているエリナだと考えれば、そうなっても不思議じゃないか。

 

「それでも、いいのか?」

「大丈夫よ。ルリルリが一緒にいるから。それにいざとなればオモイカネがサポートするし」

 

 オモイカネか。艦を制御するAIとしてはかなり優秀なんだろうな。

 もしシャドウミラーで同じようなAIを使えるようになれば、シロガネやニヴルヘイムももっと少人数で操れるようになるだろうし、エルフの使うアークエンジェル級なんかにも使えれば面白そうな事になる。

 無人機の運用艦は……どうだろうな。

 

「ねぇ、私達これからどうなると思う? 連合軍が本当にアクセルの機体を諦めてくれるといいんだけど……」

 

 物憂げに紅茶を口に運ぶハルカの言葉に、俺は首を横に振る。

 

「無理だろうな。いや、それどころかナデシコがチューリップを一撃で倒したのを見たんだ。ミロンガ改だけじゃなくてナデシコも欲しがってくると思うぞ」

「……マジ?」

「ああ。そもそも、今の連合軍は木星蜥蜴に対して有効な戦力がないんだろ? ナデシコの同型艦をネルガルに頼んでもいいだろうけど、戦艦を一隻作るのにどれくらい掛かるのかを考えると、今はナデシコとミロンガ改を接収しようとするだろうな」

「けど、それだとネルガルとの関係が悪くならない? ナデシコを強引に接収しても、結局得られるのはナデシコだけでしょ? まぁ、今回の場合はミロンガ改もあるけど。それなら、ナデシコ級を十隻、二十隻、三十隻って感じでネルガルに注文した方がいいんじゃない? 関係が悪くなると、その依頼を断られると思うんだけど」

 

 はい、とサンドイッチの皿を俺の方に渡すハルカ。

 ありがたく受け取り、ツナサンドへと手を伸ばす。

 

「そうでもないだろ。幾らネルガルが大企業でも、連合軍と比べるとどうしても力は劣る。幾らでも言う事を聞かせる方法はあるだろうな。……その辺は社長秘書をしていたハルカも分かりやすいんじゃないのか?」

「まぁ、そうね。軍があんな無茶な真似をするとは思わなかったけど」

 

 どのみち連合軍がミロンガ改を入手したとしても、使いこなすのはまず無理だろうけどな。

 ミロンガ改は、その運動性や機動性の高さの代償を、全てパイロットに向ける。

 具体的に言えば、テスラ・ドライブやエナジーウィングで移動する際のGだ。

 俺だから……混沌精霊で物理的な法則から解き放たれている俺だからこそ、ミロンガ改をああいう風に自由自在に操る事が出来ている。

 もし普通の軍人がミロンガ改に乗って迂闊に全速力を出そうものなら、ほぼ確実に死ぬだろう。

 かといって、動いてなんぼの機体であるミロンガ改で動かないってのは機体の持ち味を殺しているとしか言いようがない。

 まぁ、バリアがあるからパイロットが死ぬような事にはならないだろうが。

 そもそもミロンガ改は1機しか存在しない機体だ。だとすれば実戦で使うような真似はせず、技術を得る為の研究資料となるのが一般的か?

 ともあれ、連合軍にとっては思ったような成果を上げる事が出来ないだろう。

 

「はい、おまちどうさん」

 

 そんな声と共に、テンカワが俺の前にカツサンドとイチゴクレープを置く。

 その上で、ハルカの前にある皿が俺の近くにあるのを見て、テンカワはどこか呆れたような視線を俺へと向けていた。

 

「カツサンドにイチゴクレープを注文して、その上でさらに他の人のサンドイッチまで食ってるのかよ。どんな胃袋してるんだ?」

「そうよね。このサンドイッチを渡した私が言うべき事じゃないかもしれないけど、こんなに食べて大丈夫なの?」

 

 なら、何でサンドイッチを注文したんだ? とも思ったが、注文したのはいいものの腹一杯になったとかいうのは普通にあるんだろう。

 

「そう言われてもな。基本的に俺の場合は幾ら食べても太らないし」

 

 そう告げた瞬間、俺に強烈な視線が向けられているのを知る。

 目の前にいるハルカだけではない。食堂で働いているホウメイガールズや、客として食堂にいた他の女からも俺へと視線を向けられていた。

 まぁ、それでも全員が俺に対して男に向ける視線を向けていた……という訳ではないのは理解している。

 俺はこのナデシコに突然現れたイレギュラー的な存在だ。

 当然興味の視線が向けられる事は多いが、その視線は異性へと向けるものじゃないのは確かだろう。

 

「へぇ。私の前でそんな事を言うんだ。……いい度胸をしてるわね」

 

 向かいの席に座っている俺に詰め寄るハルカだが、胸元が大きく開いている制服だけに、深い谷間が露わになっている。

 ……テンカワの視線がチラチラとそっちに向かっているんだが。

 いや、俺も興味がないかと言われれば否と答えるけど、幸い俺の場合は恋人の多くが胸が大きい。

 夜の生活もあって、こういう谷間は見慣れていた。

 

「そう言われてもな。これは完全に体質だし」

 

 混沌精霊の俺は、腹の中に入った食べ物はすぐに魔力へと変化して完全に吸収されてしまう。

 まさに、体質と呼ぶしかない。

 

「あんた、世の中の女の大半を敵に回しているわよ」

 

 呆れたように呟くハルカに、ホウメイガールズや他の女も同感だと言いたげに頷くのが見える。

 その頷きを見ながら、カツサンドへと手を伸ばす。

 カツを包んでいるパンはしっとりとした柔らかさを持ち、カツのサクサクとした食感を殺さない程度に酸味の強いソースが存在している。また、肉もジューシーで食べ応えがあり、噛むと口の中一杯に肉汁が広がる。

 キャベツの千切りやスライスされたタマネギも邪魔にならない程度にカツとパンの間に挟まれ、カツ以外の食感を楽しむ事も出来た。

 

「……美味い」

 

 その言葉に、テンカワが嬉しそうに笑みを浮かべる。

 まぁ、テンカワが作ったんじゃなくて、ここのシェフでもあるホウメイが作ったんだろうけど。

 

「にしても、アクセル。火星に行く時はなるべく加減して食べてくれよ?」

 

 瞬く間にカツサンドを食い終わった俺に、テンカワがしみじみと呟く。

 その理由が分かってるだけに、俺も頷きを返す。

 ナデシコは単艦で火星へと向かう。

 つまり、その間に使う物資も出発前に積み込んだ物だけとなるのだろう。

 あるいは火星に向かうまでに補給物資の集積所を……いや、あっても木星蜥蜴に壊されるか。

 だとすれば、ナデシコは限られた物資だけで火星まで向かう必要があり、それどころか最悪の場合は火星で物資の補給も無理な可能性がある。

 つまり、俺みたいに幾らでも食う事が出来るってのはナデシコにとっては致命的になる可能性があった。

 

「そうだな。そうするよ」

 

 ま、俺の場合は最悪空間倉庫の中に食い物が大量に入っているし……

 ただ、今の俺は基本的に何らかの手段で監視されていると考えてもいい。

 となると、堂々と空間倉庫は使えないか。

 だとすれば……布団の中に潜って周囲から見えないようにしてから空間倉庫から食べ物を取り出し、同じく布団にくるまって食べるとか。

 ……それはそれでちょっと面白そうだと思ったのは内緒だ。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:405
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1415
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.10
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1188

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